TSおしっこ聖女の人助け 作:Geminiちゃん痛くしないで
「……あ、これ、死んだな」
それが、前世の俺の最後の記憶だった。
連日の徹夜、鳴りやまないクライアントからのクレーム電話、終わりの見えないエクセルの行。ブラック企業という名の牢獄で、栄養ドリンクをガソリン代わりに胃へ流し込みながらキーボードを叩いていた俺は、ある夜、心臓を鷲掴みにされるような激痛と共にPCモニターの前に突っ伏した。
享年、32歳。独身。趣味は休日の睡眠。あまりにも味気ない、会社に使い潰されただけの人生だった。
だからこそ、次に目を覚ました時、俺は自分が天国に来たのだと本気で思った。
「おお……! 目を覚まされましたか、奇跡の御子よ!」
「神に感謝を! 百年に一度の聖女様が、ついに覚醒なされた!」
ふかふかの、雲のように柔らかいベッドの上。
目を開けると、そこには見たこともないような豪華な天蓋があり、周囲には神父のようなローブを着た老人たちや、修道服を着た女性たちが涙を流して祈りを捧げていた。
状況が飲み込めず、俺は自分の顔に手を当てる。
……ん? 指が細い。そして、視界の端に揺れるのは、月明かりを溶かしたようなサラサラの銀髪。
慌ててベッドから身を起こし、差し出された手鏡を覗き込んだ俺は、そこに映る人物を見て思考を停止した。
透き通るような白い肌、宝石のように輝くサファイアブルーの瞳、桜色の小さな唇。
どこからどう見ても、絶世の美少女だった。
しかも、ただの美少女ではない。レナと名付けられた今世の私は、聖女様と崇め奉られている、正真正銘のVIPだったのだ。
それからの生活は、まさに最高の一言に尽きた。
朝起きれば、専属のメイドたちが数人がかりで体を拭き、着替えを手伝ってくれる。
食卓には、王侯貴族しか口にできないような焼きたての白パン、色鮮やかな珍しい果物、そしてとろけるような肉を使った絶品料理が並ぶ。
どこを歩いても「聖女様、今日も神々しいです」「聖女様のおかげでこの世界は平和です」とチヤホヤされ、誰かに怒鳴られることも、理不尽な納期を押し付けられることもない。
前世で地獄を見た私にとって、ここはまさにユートピアだった。
さらに、私には聖女としてのチート能力が備わっていた。
それが聖水の生成である。
私の作る聖水は、どんな不治の病も、四肢が欠損するほどの重傷でさえも、完治させてしまう奇跡の力を持っていた。
教会の救護院で、死の淵にあった小さな子どもの口に聖水を含ませた時、青白かった顔に赤みが戻り、元気に笑い出したあの瞬間。
「ありがとうございます、聖女様……!」と、子どもの両親から感謝された時。
私の胸の中には、前世の労働では決して得られなかった、熱く、確かな生きがいが生まれていた。
(人助けって、こんなに気持ちいいんだな。私の力で誰かが救われるなら、聖女としての使命を全うしてやる!)
そう、私は心からそう誓ったんだ……誓ったんだけどさぁ。
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「聖女様、本日は週に一度の奉納の儀でございます。お召し物の準備が整っております」
朝陽が差し込む広大な私室。
専属メイドのマリアが、恭しく頭を下げながら純白の儀礼用ドレスを運んできた。最高級の絹で織られ、金糸で神聖な紋様が刺繍されたそのドレスは、私の銀髪と青い瞳をこの上なく際立たせる至高の逸品だ。
しかし、その言葉を聞いた瞬間、私の肩はビクッと跳ね、胃の奥がキリキリと痛み始めた。
「……あ、ありがとう、マリア。その、えっと……やっぱり、やらなきゃダメかな?」
「ふふっ、聖女様は本当にご謙遜なさる。貴女様が生み出す奇跡の雫を、教皇猊下も枢機卿の皆様も、心待ちにしておられますよ。さあ、こちらへ」
マリアたち数人のメイドによって、流れるような手つきでドレスが着せ付けられていく。
鏡の前に立たされた私は、どこからどう見ても穢れを知らない神聖な天使にしか見えなかった。
だが、これから行われる儀式の内容を想像するだけで、顔から火が出るどころか、全身の血液が沸騰して蒸発してしまいそうだった。
(嫌だ……嫌だ嫌だ嫌だ! なんで私が、あんなこと……っ!)
心の中で絶叫しながらも、私は神の意志に従う慈愛に満ちた聖女の微笑みを崩さないように必死で顔の筋肉を引き攣らせていた。
「護衛の準備も整っております。聖騎士団より、本日も第一部隊の精鋭がお供いたします」
部屋の重厚な扉が開くと、そこには全身を白銀の鎧で包んだ、長身で美形の若者たちが数名、片膝をついて待機していた。
彼らは教会の武の象徴たる聖騎士たち。私の身を常に守るために選ばれた、容姿端麗、実力最強のエリート集団である。
先頭に立つ金髪碧眼の聖騎士長、レオンが顔を上げ、私を見て一瞬だけ息を呑んだ後、すぐさま真面目な表情を作って深く頭を下げた。
「おはようございます、聖女様。本日の奉納の儀、我々が道中の護衛を務めさせていただきます」
「ありがとう、レオン。……よろしくお願いします」
(道中の護衛って言っても、ここ教会の本部の中だし! しかもお前ら、儀式の間もずっと後ろに立って見てるじゃねえか!)
内心のツッコミをぐっと飲み込み、私は静かに歩き出した。
カツン、カツンと大理石の廊下に私の靴音が響く。
その後ろを、一切の足音を立てずに聖騎士たちが付き従う。彼らの表情は一切の感情を読み取らせない。
だが私は知る由もなかった。
彼らの内面では現在、凄まじい葛藤と煩悩の嵐が吹き荒れているということを。
(ああ……今日の聖女様も天使のように可憐だ。あの少し伏し目がちで憂いを帯びた表情……守りたい。だが、これから行われる儀式を直視して、俺は聖騎士としての理性を保てるだろうか……いや、保たねばならない。我々は神の剣なのだから!)
と、彼らが必死で下半身への血流をコントロールしているなどとは露知らず、私の心はこれから向かう場所のことで頭がいっぱいだった。
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教会の最深部。
聖櫃の間と呼ばれるその場所は、限られた高位聖職者しか立ち入ることが許されない、この世界で最も神聖な空間だ。
重厚な扉が開くと、ドーム状の高い天井から色鮮やかなステンドグラスを通した光が、部屋の中央にある祭壇をスポットライトのように照らし出していた。
「お待ちしておりました、我らが希望。奇跡の御子よ」
祭壇の前で待っていたのは、この世界における宗教の最高権力者である教皇猊下と、その側近である4人の枢機卿たちだった。
彼らは私の姿を認めるなり、深々と頭を下げ、そして……真剣な鋭い眼差しを私に向けてきた。
(……この空気、マジで耐えられない……)
私は震える足を必死に前に進め、祭壇の中央に設置された純金製の台座へと向かった。
台座の上には、宝石が散りばめられた巨大な黄金の聖杯が置かれている。
私の仕事は、この聖杯の中に聖水を満たすことだ。
……もうお分かりだろう。
この世界における聖水とは、聖女の体内から排泄された『おしっこ』のことなのである。
「さあ、聖女様。貴女様の清らかなる奇跡の雫を拝見させてください。我々が、この目でしっかりと確認いたします」
教皇が、重々しい声でそう宣言する。
そう、確認である。
なぜ、うら若き美少女が、お爺ちゃんたち5人と、背後に立つイケメン聖騎士たちの前で、公開で用を足さなければならないのか。
それには、この教会が抱える歴史的背景があった。
今から約五百年前。第十四代の聖女エララは、非常に内気で恥ずかしがり屋の少女だった。
彼女もまた、現在の私と同じように自分のおしっこを他人に飲ませて治療するという事実に羞恥心を抱いていた。ある日、彼女は激しい恥ずかしさに耐えきれず、こっそりと教会の裏庭にあった、ただの井戸水を小瓶に詰め、「これが私の聖水です」と嘘をついて提出してしまったのだ。
教会側は聖女の言葉を疑わず、その水をそのまま流行り病に苦しむ村へと運び、患者たちに飲ませた。
結果は——言うまでもない。
ただの井戸水になんの治癒効果もなく、その村の病床にいた人々は、全滅一歩手前まで重症化してしまった。
エララが己の罪の重さに耐えきれず嘘を告白し、村に駆け付けて村人たちに聖水を直接与えたことで事なきを得たが、教会は奇跡を管理する者としての信用を完全に失墜しかけた。
それ以来、教会には掟が定められた。
『聖水が生成される過程は、いかなる理由があろうとも、教皇および枢機卿の立会いと目視による直接確認を必須とする』
『これは聖女への侮辱ではなく、人命を預かる我々の重き責任である』
つまり、教皇たちにとってこの儀式は、いかがわしい目的など一切ない、純粋な品質管理と安全確認の業務なのだ。
だからこそ、彼らの目には一切の性的な関心がなく、ただひたすらに本物の聖水であることを確認するための真面目すぎる光景が広がっているのである。
(頭ではわかってる! わかってるけど! お爺ちゃんたちのガン見の中でスカートまくっておしっこするなんて、どんな拷問だよ!!)
私は祭壇の前に立ち、ギュッと目を閉じた。
逃げ出したい。今すぐこの場から全力でダッシュして、自室のふかふかのベッドに潜り込みたい。
しかし、私の脳裏に浮かぶのは、あの救護院で助けた子どもの笑顔。
今この瞬間も、世界のどこかで私の聖水を待っている人たちがいる。
私がここで恥ずかしがって逃げれば、誰かの命が消えるのだ。
「……っ、主の、導きが、ありますように……!」
私は涙声でそう呟きながら、震える両手で純白のドレスの裾を掴んだ。
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(あああああああ! 見ないでええええええ!!)
心の中で絶叫しながら、私はゆっくりとドレスの裾をたくし上げていく。
大理石の床から這い上がってくる冷たい空気が、露わになった下半身に触れて粟立つ。
背後には、微動だにしない聖騎士たち。
そして目の前には、瞬き一つせずにこちらを凝視する教皇と枢機卿たち。
私は黄金の聖杯の上に跨るようにして腰を落とした。
顔はすでに茹でダコのように真っ赤に染まり、羞恥のあまり目からはポロポロと涙がこぼれ落ちている。
唇を噛み締め、全身をガタガタと震わせながら、私は必死に下腹部に力を込めた。
何人にも見られているというストレス。
普通の人間なら、こんな状況で用など足せるはずがない。
だが、聖女としての肉体は不思議なもので、魔力が高まると自然と排泄したくなるよう体になっていた。
チョロ……チョロチョロチョロ……ッ。
静まり返った荘厳なステンドグラスの部屋に、あまりにも場違いな、しかしどこまでも澄み切った水音が響き渡った。
「うぅっ……! ひぐっ……!」
私は羞恥の限界を突破し、両手で顔を覆いながらしゃがみこんだまま、ただただ聖水が出し切られるのを待った。
私の体内から放たれた聖水は、黄金の聖杯に注がれると同時に、まばゆいほどの黄金の光を放ち始めた。
アンモニア臭などという下品な匂いは一切しない。空間を満たしたのは、まるで春の陽だまりと、咲き誇る百合の花を濃縮したような、清らかで神々しい魔力の香りだ。
「おお……! なんという輝きだ!」
教皇が、顔を聖杯のギリギリまで近づけて感嘆の声を上げた。
(近い近い近い! お爺ちゃん顔近いから!!)
「素晴らしい。粘度、色彩、魔力の含有量、どれをとっても過去最高品質ですぞ!」
第一枢機卿が、分厚い羊皮紙のノートに羽ペンで素早くメモを取りながら真顔で頷く。
「うむ。特にこの黄金の煌めきの波長……聖女様の深い慈愛と、自己を犠牲にしてでも民を救おうとする尊い精神性が、直接この液体に顕現しておる」
第二枢機卿が、私の羞恥で震えている姿を、自己犠牲の尊い姿と勘違いして、感動の涙すら浮かべている。
(違う! 違うから! ただおしっこ見られて恥ずかしくて死にそうなだけだから! 分析しないで! メモ取らないで!)
私の心の叫びは、当然彼らには届かない。
その背後で、護衛の聖騎士たちはどうしていたか。
彼らもまた、聖騎士としての厳しい訓練のおかげで表情筋こそピクリとも動かしていなかったが、内心は荒れ狂っていた。
(な、なんという美しさだ……! 天使のような聖女様が、顔を真っ赤にして涙を流しながら……っ! いかん、いかんぞレオン! お前は何を考えている! これは神聖な儀式だ、決して卑しい感情を抱いてはならない! だが、あの震える白い太ももと、そこから滴る光り輝く雫……ああ、俺はなんて罪深い男なんだ……!)
若き聖騎士レオンは、兜の下で額に脂汗をかきながら、自らの内なる変態性と必死に戦っていた。
「……ふぅっ、ふぅっ……」
やがて、水音が止み、儀式が終了した。
私は急いでドレスの裾を下ろし、床にへたり込んで膝を抱え、ダンゴムシのように丸まった。
全身から湯気が出そうなほど恥ずかしい。今すぐこの大理石の床を叩き割って、穴を掘って埋まりたい。
「聖女様」
教皇が、満たされた黄金の聖杯を両手で恭しく持ち上げ、丸まっている私に向かって深々と、本当に心の底からの敬意を込めて一礼した。
「貴女様のこの尊き献身により、また多くの命が救われます。この奇跡の雫は、直ちに冷却魔法陣で保存し、王都の患者たちの元へ届けさせます。民のために、その身を削ってくださり、誠に、誠にありがとうございます」
枢機卿たちも一斉に平伏し、背後の聖騎士たちも片膝をついて祈りを捧げている。
その感謝と敬意の念。
それを向けられるたびに、私の中の羞恥心は、ほんの少しだけだが、誇りへと変換されるのだった。
「……い、いいえ。皆様の、命が、救われるなら……私は、平気、ですから……」
顔を両手で隠したまま、指の隙間から真っ赤な顔を覗かせて、私は蚊の鳴くような声でそう答えた。
(うん、まあ……この後は最高級の紅茶とケーキが待ってるし。フカフカのベッドで昼寝もできるし。……これくらい、我慢してするよ。人々の命がかかってるんだからな!)
こうして、私の聖女としての過酷で恥ずかしい、しかし間違いなく人を救う日々は始まっていく。