次世代VRゲーム世界でリアルの女ども食い散らかしてハーレムなのに一生気づかない人生終わってる系おじさん 作:萍水
01. 人生終わってる系おじさん(37)
中年、低学歴、低収入、肥満、童貞、交際経験なし
あなたはいくつ当てはまりましたか?
全部当てはまった人は完全に人生終わってます、おめでとう!
この物語の主人公と同じだね!
性格はザ・陰キャ。
小学校(多分3年生)の頃、クラスの誰とでも仲良し!って感じの底抜け明るい系女子がバレンタインにクラスの男子全員にチロルチョコを配ったんだけど……
その時1人だけ忘れ去られていたのが“陰”ルート確定の瞬間かな。
いや正確に言うと、翌日その女子がやっと彼のことを思い出したらしく話しかけてきた時かも。
本気で忘れてただけなんだね、良かったね。
「昨日はごめんね!1日遅れだけど、はいっ」
そう言って差し出してくれたチョコ。人生初の母親とおばあちゃん以外から貰ったチョコ。
を──
「いや、いらんし(笑)」
「チョコとか嫌いだし(笑)」
そう言って拒否した瞬間だったね!
その子はポカンとしていたね。その表情ごとこのエピソードは彼の脳裏に今も強烈に刻まれているよ。
人生の選択肢をミスった瞬間として?違うよ!
彼に母親以外の女性が深く関わってくれた事って本当に無いから、こんな出来事でも重要な1ページを占めているんだよ。CG回想モードに突入したら重要イベントとして閲覧できるかもしれないね。
しかも彼的にはこれが「割と女子ともガンガン話せていたし昔はチョコとか貰ったりしてた」「他のガキっぽい男子よりクール系で女子は遠慮してたけど勇気を出して話しかけてきた」という認知を上書きした上でアーカイブされていて、「子供の頃は結構モテてた」という歪んだ自意識を抱えているみたい。
現代が生んだモンスターだね!
それから中学高校とずっと共学だったけど女子と関わり合うエピソードはほとんど無かったよ。
チロルチョコ事件が今でも不動のベスト3だからね!
1浪して行った大学は、それまでみたいに何となく席に座っているだけではダメだったみたい。
不愉快なエピソードをいっぱい溜め込みつつ、1年留年して結局中退。
学費は全部親が払ってくれたよ!良かったね。
1番長かった仕事は荷物の仕分けだっけ。4年くらい続いていたはず。
人と向き合う仕事が向いてないんだろうね、かと言ってそれ以外の能力に優れているわけでもなく。自分の後から入ったバイトの人が増えていくほどに居づらくなっていって最後はいつもなんとなく行きたくない日が続いて辞めちゃう感じだよ。
職歴の欄に何を書いたらいいのかいつも迷ってるね!
そんな彼は、月に1度か2度くらい実家に帰っているよ。
両親が心配なのかな?行くたびに荷物の上げ下ろしとか庭の草刈りとかちょろっと雑用をこなして、お母さんから5000円とかお小遣いをこっそり貰うルーティンが成立しているみたい。
お父さんに会うといろいろ言われるからお父さんがいない時の方がいいんだよ。
でもお父さんは一人息子に今でも期待している気持ちがあるみたいで、それは陽平君ですら理解しているんだ。
お母さんは息子を甘やかしているけど、期待はしてないみたい。
何しろ……
「まあ……あなた、今日来ちゃったの?」
そう言われると嫌な予感がしてくるよ。
「ああ……うん、なんか、花?植え替えるとか言ってたから」
「あら、そうなの。ちょっと今日は、ねぇ」
玄関先。手にしたスマホをチラ見しながら受け答えるお母さん。
げ、って思った陽平君。もしかして……
「あ……今日あいつ来んの?」
「そうなのよ!妃菜ちゃんも来るんですって」
「あ、じゃあ……」
だったら帰ろうかと決断した矢先、
「せっかくなんだからお前も会っていったらどうだ、正月以来だろう?」
しゃしゃり出てきたお父さんが余計なことを言ったよ。
いきなり出て来られると陽平くんは親が相手でもあんまりうまく話せないよ。でも彼なりにうまく言い繕ってこの場を去ろうとしたけど、手遅れだったよ。
「ただいま~!」
ピンポンもせずに入って来るのは実家がいつまでも自分を歓迎してくれていると信じ切っているからかな?実際そのとおりなんだけど。
陽平くんには2つ上のお姉さんがいるんだけど、それがこれだよ。
「まあおかえりなさい!早かったのね~」
「おお、おかえり」
微妙な日本語のニュアンスだけど、陽平くんが来ると「来た」でお姉さんが来ると「おかえり」なのはどういう違いなんだろうね?
そして……
「おばあちゃん、おじいちゃん、こんにちはっ!」
はきはきとした気持ちの良い(大人が好みそうな)声の主が玄関に入って来て、彼を一瞬見て。
とびきり愛想のいい声の後だから余計にそう感じるのかもしれないけど。
「あ、どうも……」
久しぶりに会った姪っ子の声は急にどんよりと湿っていた。