次世代VRゲーム世界でリアルの女ども食い散らかしてハーレムなのに一生気づかない人生終わってる系おじさん 作:萍水
「寝不足?」
「あ、うん。海外の友達と通話してて。英語教わったり日本語教えたりしてる」
言い訳がごく自然に出てくるようになっていた。
あまり触れられたくない話は相手が大して興味を持たなそうな話題に移行させる。オンラインゲームをやっていて夜ふかししてた、と言えばより突っ込んだことを聞かれるかもしれない。
あまりこの話を掘り下げられたくないのだった。
「ヒナ」
「ゆう君……」
声をかけてくる男子生徒の顔を見て、女友達はによによしながら離れて行った。
彼との恋愛関係は周知である。
「今日そっちも部活ないよな?」
「ん、うん」
「いっしょに帰ろ」
「うん」
二人分のカバンを前カゴに積んで、自転車を押して歩く彼氏に並んで歩く彼女。最初のうちは冷やかされたりもしたけれど、今はそういう声すら心地よい。早くも安定期に入りつつあるようにすら周囲から見られている。
だが。
「昨日も友達と通話してたん?」
「あ、うん……女の子だよ?」
「わかってるって」
最近、寝不足気味なことが多い彼女の様子を気にしている少年だった。気遣われるほどに申し訳なさで身が縮むような思いをさせていることには、当然気付けない。
他愛も無い話をしながら並んでの帰り道。
少女にとっては今も変わらず、尊いひと時だった。彼と一緒に居るだけで楽しい気持ちにさせてもらえるし、心があたたかくなる。
やがて分かれ道で。
「うち、今日さ」
「ん?」
「親、帰って来るの遅いんだって」
「あ……」
誘われている。
もちろんその意味は、わかっていたけれど。
「ごめん、今日……家族で叔父さんと一緒に食事なんだよね……」
「あ、そっか……ん、じゃあ、しょうがない」
笑って背中を見せる彼。遠ざかっていく後ろ姿が、じわりと滲んで見えて、少女の感情が弾けた。
「ゆうくんっ!」
びっくりした顔で振り返る。
「また……またゆう君のお部屋行きたいよ。絶対……行きたい!」
「……おう!」
一瞬、目を丸くしてからにかっと笑って拳を突き上げる少年。自転車に跨り、軽快に去って行く姿は遠目からでも喜びに満ちていた。
(やっぱり、嬉しいんだ。女の子から求められると……)
────こういうこと、ひとつひとつ彼と一緒に知っていきたかった
そう思う気持ちが無いわけではなかったが、今更そんな事を考えても仕方ない。もう今の彼女は、結城妃菜は今までの彼女とは違ってしまったのだから。
今日だって、
(最低だ、わたし……)
咄嗟に家族のことを言い訳にした事もチクリと心を刺してくる。あの鬱陶しい叔父を引き合いに出した事にすら若干の後ろめたさがあった。
(あ……そうだ)
玄関に入ってすぐにスマホを開く。
SNSのメッセージ、送り主は確認しなくてもわかる。彼にしか公開していないから。
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Zain:21時、西城壁タレットで
Zain:設定変えとくから先に入って待っておくように
Zain:今日の日課も忘れずに
Kiara:わかりました
Kiara:いま帰ったので今から撮ります
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彼のメッセージはいつもそっけない。
でも、いや、だからと言うべきか。会っている時に優しくされると離れられなくなる。こうして今も、本当はイヤなのに、彼からの
(こんなの、言う事聞かなくていいのに……)
自分の部屋に入ると、制服を脱いで鏡に向き合う。
そこに映っているのは下着姿の媚びた顔の女だった。
(嫌われたくないからって、ほんと……わたしバカだな……)
カシャリ、と電子音が鳴った。
* * *
今日も糞な一日が終了した。
糞職場、糞同僚、糞客、糞一色である。
朝、家を出る時からまた家に帰って来るまでの間、彼は全ての心を殺している。何も感じぬ石であり土であり肉の塊に過ぎない存在と自己を定義する。
そうして耐え抜いてやっと帰還した1Kアパートで、生命維持のためのカロリーを流し込み、ユニットバスで汗を流す。
現実の肉体は煩わしい。
維持コストは無駄にかかる上に年々劣化していく。こんなもの今すぐ投げ捨てちまっても構わないというのが彼の偽らざる本音であったが、なんとこの肉体が無くなると意識も消失するらしい。
(つくづく糞仕様だな、この世界は)
自分の生身を仮想の肉体を動かす為の出力器官としか見ていないのだ。
彼にとって
「おっと、先にメッセ確認しとかねえと」
SNSのやり取りは完全な“外付けだ”、ログインした後は外部の情報を確認する術は無い。ごちゃごちゃと何人もから届いたメッセージのほとんどは「お誘い」である。遊び相手がいない時はこういう「保険」の連中に適当に声を掛けるが、今日は既に先約があった。
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Kiara:これでいいですか?
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メッセージと共に添付されているのは、
生身の、実在する、少女の姿だった。
男はにんまりと微笑む。
彼が現実世界に興味を抱く瞬間は、そして現実世界に影響を及ぼすのはこの時だけであった。
仮想世界で落とした女達に、彼はしばしばこういう要求をする。
つまり、「
するとそのうち焦れて切なくなった者から、再び連絡を取ってくる。
『どうしてもやらなきゃ会ってくれませんか?』
『顔は写せません。顔だけは隠してもいいですか?』
『見たら絶対すぐに消してください。お願いします。それでもいいですか』
そんな女達にいろいろ条件をつけたり勿体つけたりすると、まあ面白いほどに色々と言う事を聞いてくれる。一番笑ったのはそういうのは絶対イヤです、と言っていた女をしばらく放置していたら勝手に顔つきの全裸の自撮りを送ってきた挙げ句にゲームでもリアルでもいいから会ってくださいと迫ってきた時だ。
(割と美人だったけどメンヘラくせえから切ったんだよな~、リアルで会ってたら刺されてたかもしれんw)
会おうと思えば、いくらでも会えるだろう。だが、そうした事は一度も無かった。
現実世界への干渉は、しない。それが彼の、阿曽原陽平の唯一のこだわりであり、プライドだった。
「その点こいつは優秀だね~、今日も欠かさず送ってくるし。ずっぽり穴にハマってんなァ」
ニヤニヤしながらキアラの『日課』を眺める。
下着姿で、鏡の前で、卑猥なポーズの自撮り写真。
14歳の体はいかにも頼りない。未成熟な骨格は、これから大人の女性へと成長していく過程でしか見られないものだった。細い腰も薄い胸も、まだ成長の余地を残したまま、しかしそれを男の欲望の対象として差し出している姿だった。
仮想崇拝主義者の陽平ですら、認めている事がある。
仮想世界の再現は、未だ現実には遠く及ばないということを、少女のセルフィーを通して再実感させられる。キアラの体は、既に彼が知り尽くしていた。
現実で指1本触れられないままに、少女の肢体は男の欲望に嬲り尽くされている。
そんな彼ですら、こうして
それこそが彼にとって、現実への最後の執着心だった。
彼の執着を満たす為だけに、こうして身を捧げる女が居る。それだけが陽平と
「まだ脱ぐ覚悟はできてないらしいな。まァ……今はいいさ、それでも」
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キアラからザインへのお願いは2つ。
『顔だけは許してください』
『裸は、まだ恥ずかしいからむりです』
それに対しザインはいくつかの条件を課した。
『これから毎日自撮りを送ること。1日でも送れなかったら罰を与える』
『送った写真はすぐに完全削除すること』
『いずれちゃんと裸の写真も送ること』
『いつか勇気が出たら顔も写して全てをさらけ出すこと』
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未だにその約束は果たされていない。だが、彼は焦らない。未成年相手に深追いする危険性よりも、美学の問題だった。醜い生物が美学を持つこともある。
仮想の世界で脳を灼かれた女が、現実の自分を差し出して────
仮想と現実の主従が逆転する。それこそが陽平にとって──ザイン・アゾフォルテにとっての最高の愉悦なのだった。
手で顔を隠しながら、一生懸命にリクエストに応えようとする少女の写真は、そのものよりも、それを撮っている時の感情を想像すると込み上げてくるものがある。
いつか素顔を晒してくれるかどうか。
今夜もまた少女の心を揺さぶるような濃厚な夜にしてやろうと誓いつつ、
* * *
こうして、ザインとキアラは今宵も逢瀬を重ねた。
会うほどにこの男から離れられなくなりつつある自分を感じながら、それでもキアラは自分を止められなかった。
求められるままに仮想の体を、現実の体を。そして何よりも、心を捧げる。
恋人への裏切りの罪はそれが最も重い。
会えない日でも毎日連絡を取り合う二人。と言ってもそれは
皮肉なことにこの叔父と姪はそれぞれの
キアラ編これにて完結です
次から違うヒロインの話になりますが、キアラもサブキャラとして登場します(多分)