次世代VRゲーム世界でリアルの女ども食い散らかしてハーレムなのに一生気づかない人生終わってる系おじさん 作:萍水
ケフェウス城では祝宴が催されていた。
「皆の働きのおかげで、今回の防衛戦も乗り切ることができた。改めて
歓声。
「一人一人が己の役割を全うしてくれたからこその勝利だ!我ら全員が、ヴィントミューレが英雄なのだ!!」
歓声。を、手で制して。
「だが、その中にも抜きん出た働きをしてくれたとびきりの英雄がいる。……さあ、誰だ?」
皆の視線が一人の男に注がれた。
「こっちへ来てくれ、我が友。生ける
「……
「ああ。君を形容するには言葉足らずだったな。そうとも、彼を呼ぶなら敬意を込めてその名を呼ぶべきだ」
高々と掲げられた杯。
「我らがザイン・アゾフォルテに!」
「ザインに」
「聖騎士に」
団長の号令を追って、大広間に集った騎士達が各々彼に杯を捧げた。
そして彼は照れくさそうに軽く微笑みながら、杯を返した。
「それにしてもマジで今回はギリギリだったな」
「ああ、最後1ケタまで(残HP)行ったろ?歩兵1人通しただけで終わってたじゃん」
「そういう意味じゃ“皆の勝利”ってのは本当なんだろうけど……」
「そうそう、ザインさんがいなかったら
「神だよほんと」
歓談の中心には彼への称賛と畏敬の念が渦巻いていたが、肝心の本人はその輪から外れて隅の方で静かに杯を煽っている。
彼が喧騒を嫌う人間だということを誰もが理解しているのだ。
だが、彼と言葉を交わしたいと思う者は多い。
遠巻きにその様子を窺う者達。だが、近づいてくる足音にさっと道を開けた。
「楽しんでいるかい?ザイン」
「お陰様でな、ヴィル」
「君という男は本当に楽しんでいるのかどうか窺い知れないところがあるからな」
「何考えてるのかよくわからないという意味ではアンタも結構なもんだと思うぜ」
「フッ……よく言われるよ。だからこそ感謝と友愛の念を改めて君に示しておきたいと思ってね」
「皆で掴み取った勝利なのでは?」
「君の剣が無ければ成し得なかった、ね」
「結果論だな」
「やれやれ、相変わらずの調子だね」
血盟団ヴィントミューレの二枚看板とも呼ぶべき二人はいつもこの調子で噛み合わない。
団長、ヴィルヘルム。
そして
「そんな、
おっとりとした声が割って入った。
「リゼ……君が来ると私の喋るスペースが無くなってしまう」
「いいでしょ、『北風と太陽』よ。あなたがお話しても彼の鎧を脱がせることはできないのではなくて?」
「私も太陽のように彼を温めてやりたいと思っているよ」
「まあ、汗くさそう……」
くすくすと笑う女性。
さすがのヴィルヘルムもリーゼロッテ──妻には弱いと見える。
「
「あ、君はどうする」
「俺は皆が楽しそうにしているのを見てるのが好きなのさ……じゃあ」
やれやれ、と肩をすくめながら妻を見るヴィルヘルム。
「あなたの鎧を脱がせることができるのはどんな人なのかしら」
含みのある笑みを背にしながら、彼はそっとテラスに出た。
総勢80人から成る血盟員のほとんどが出席しているであろう大広間から、少し遠ざかっただけでまるで、祭りの賑わいを対岸から眺めているように感じられた。
だから、だろうか。
背後から迫る足音に、彼は敏感に応じた。
「俺に何か話したいことでも?──キアラ」
「えへへ、ばれちゃいました?」
悪戯な声を出しながら、少女は小首を傾げた。
明るい茶髪をサイドテールにまとめていて、目の色は鮮やかな青。
まだ駆け出しの冒険者である。それはステータスを見るまでもなく、格好から明らかだった。宴に集ったお歴々がとびきり豪奢な甲冑を纏っているのに対し、彼女のそれはその性能はもちろん見た目からして貧弱であった。
「足音の殺し方は室内戦をやるなら覚えておいて損は無いぞ」
「えぇ……そんな事まで皆さんやっているんですか?」
「やる奴は何でもやるさ。そういうシステムなんだから」
「あーあ、やっぱり求められるスキル高いなぁ、
「十分役に立ってるさ。後衛のみんなが頑張ってくれたから勝てた戦だ。もちろん……お前も」
少女は恥ずかしそうにはにかむ。
「いや、私なんてぜんぜん……ザインさんみたいに一人で100も200もポイント稼げちゃう人に比べたらゴミですよ、ゴミ……」
「そんな事は無い」
「え……?」
「キアラがここに来てから1ヶ月半、皆の力になろうと努力してきたのを俺は知っている。まだレベルは低くても、一生懸命勉強して、自分を磨いて、それが今のお前や、この勝利を導いてくれたんだと俺は思うよ」
「ザインさん……」
まっすぐな視線に射すくめられ、少女の目は彼の目をじっと見つめる。
「あ……」
ぽんと頭に手を置かれ、優しく撫でられる。そうしたら、目に涙が浮かんできてしまった。
「おいおい、泣くなよ」
「えへへ……ごめんなさい、なんか……撫でられるの、嬉しくて」
「目が潤んでたらせっかくの景色が楽しめないだろ?」
「ん……」
眼下に広がるのは、城下の風景。
そして城壁の向こう、遥かな草原、雄大な山脈。
星々が煌めく夜空。
その全てが、この城の、勝利者の手の中にある。
暫し二人は、そのまま見入っていた。
「キアラ」
「はい」
「まだ話したい」
「……はい」
「今夜は、何時までいける?」
「……何時でも……」
「じゃあ、部屋取るか」
「…………」
「嫌か?」
「い、いえっ、でも……」
「
「…………」
「してない?」
「……しました」
「そうか」
漆黒の聖騎士が、ニタリと笑った。
前置きが長すぎる(汗)
次から本番です