無能と蔑まれたTS転生者、実は男女比1対100の世界を終わらせる力の持ち主でした 作:さっきゅんx
数日後、周囲の村の王を集めた集会が始まった。
当然だがそこにはサイハテ村と、その息のかかった村は出席していない。
それだけでこの集会が目指す方向が見て取れた。
会場には、まるでボクが前世で体験した会社のプレゼンのように、何かを投影できるような大きなスクリーンが置かれていた。
ん?待て、会社員だったのかボク。
それともそう言うドラマを過去見てそんな気になってるだけ?
さらに、そのスクリーンがある壇上の中央には何やら大きな布がかけられて隠された物が。
「あれがバンリの言ってたセツナのコア?
にしては大きいわね」
『おそらく何かの装置に取り付けられてる、と思われますが、それ以上は見てみないと』
うちの知恵袋二名がその中身を推測する。
やがて壇上にはこのジューサンリ村の長、イチリが現れて大きな拍手の嵐で迎えられる。
「こんなにも多くの人に集まってもらってワシは嬉しいぞ!」
そこにはボクが知る畑仕事をするカバさんではない、凛とした王の風格を持った男性が立っていた。
「さて君たちは不満に思っていないか!
強い血統を持つ村が、弱い村を支配するこの構図に!
彼らは自分たちの力を振り翳し、やりたい放題だ!」
そうだそうだ!
という声がどこからか、挙がる。
あの王の圧力に不満を持っている者は、少なからずいるようだ。
「そしてリョウエン村の代表よ、君たちは気づいている筈だ。男性と言う王を失った村の脆さを」
会場にはムスビが来ているが、イチリ王の言葉に大きくうなずく。
「これらは全て過去の忌まわしき風習、決まり事によってもたらされたもの。我々は悪しきそれを捨て、新たな一歩を踏みださなければならない!」
その言葉に再び大きな拍手が起き、感性があがる。
何と言うかこれは……
「煽動が上手ね、あの王は」
ツムグが、ボクの言葉を代弁してくれた。
「しかしサイハテのクダク王は強い。故にそれに従う村も多い。本当に対抗出来るのか?
君たちはそう思うかもしれない」
確かに実際対峙してその威圧感は肌で感じているが、それが周囲の複数の村まで影響を与えているのは村を出てから知った。
やはりイチリ王の言う、間引きと言う選民思想がそうさせているのだろうか。
「だがワシは!その為の武器を手に入れた!
我が同胞バンリが実現したのだ!
ここからの説明は彼女に譲るとしよう!」
そう言ってイチリ王は、壇上の主役を発明王に譲った。
「あー、いま王から紹介を受けたバンリだ。
正直こう言う場は苦手なんだけどね、作った本人しか説明出来ないだろうし」
いきなり言い訳から入るバンリ。
会場から軽く笑いが漏れる。
「その前に、優秀な我が弟子を紹介させてくれ。センリとジュウリだ」
「よろしくお願いするです」
「よろしくであります」
「さてと、まずはこれを見てもらおうか」
そうバンリが言い、スクリーンに映し出された場所は。
「カナタ、あそこって確か……」
「ああハルカ、すごく見覚えあるな」
ハルカとタケリも気づいたようだ。
そうそこは以前良くハルカと一緒に行き料理を作り、タケリと初めて出会った洞窟のある、サイハテ村にほど近い山で、いわばボクらの思い出の地だ。
「ああ、どうやってあの場所を映し出しているかは聞かないでくれ。その説明だけで半日を要すると思う。
大事なのは一点。
今からあそこを、この兵器で破壊しよう。じゃん!」
そう言ってバンリが、助手達と協力して目の前の大きな布を取る。
現れたのは、一言で言うと天井に先が向いた一本の槍のような装置。そして……
『なっ、あれはセツナのコア!』
どうやらトークのお目当てのものが部品の一部で使われているらしい。
なあトーク、すごく嫌な予感がするんだが。
『ああ、おそらくカナタの想像通りじゃ。確かに無尽蔵なセツナのコアを使えば、それは実現するだろうよ』
えっと、止めた方が良いかな?
「その場合、最悪ここの会場に集まった村の王達とジューサンリ村のイチリバンリが我々の敵に回るわね。
ただでさえサイハテ村とその取り巻きに目をつけられてるのに、ある意味世界全部を敵にして自滅したいならどうぞ?」
ツムグが辛辣な口調でそう言う。
『同感じゃな、今は動くべきでない。
あ奴がコアには傷を付けないと約束したのじゃ、今は見守ろう』
トークも珍しく消極的な意見を出す。
……わかった、そうする。
「ではみなさん5から順番に、数字を減らしてください。5、4、3、2、1……はいっ!」
と言うバンリの掛け声の後、装置が大きな唸り声をあげコアが眩しい輝きを放つ。すると槍の先から放たれた光が天井を貫いて……
次の瞬間。会場にどよめきが起こる。
スクリーンに映っていたあの山が光に包まれたかと思うと、文字通り消滅し、代わりに山でなく隕石でも落下したかのようにクレーターが現れたのだ。
「以前紹介したテッポウが小さな雷なら、これはサイハテ村に罰を与える、いわば天雷と言った所でしょうか」
その強すぎる威力に会場は一瞬息を呑むが、やがて割れんばかりの拍手と歓声で迎えられる。
これなら勝てる!サイハテ村がなんぼのもんだ!
そんな声まで聞こえてくる。
かくして村の長を集めた集会は、大盛況で幕を閉じたのだった。
——
「それじゃ約束だ、これは返すよ」
集会が終わった後、バンリは拍子抜けするほどあっさりコアを返却してきた。
いや、でも良いの?あの兵器を使うのに今後も必要なんじゃ……
「あーあの会場では伏せたけど兵器には重大な欠陥があってね」
欠陥?
「一発打ったら壊れて数ヶ月は使い物にならない。サイハテ村に脅威を示して周囲の村の協力を取り付けただけで十分だよ」
確かに、そう言う意味では効果があったと思う。今頃サイハテ村は大慌てだろう。
「ま、もし今後も作るとしたら火力を落として連発が可能な感じにするかねえ。それはそのコアでなくても実現しそうだし」
飄々と言ってのけるバンリは、本当に発明しか興味がないんだなと言うのがボクの感想だった。
——
そこから数時間も経たないうちに。
「サイハテ村から伝言があってな、急遽このジューサンリ村を見てこいと、何があった?」
と、村にツムジカゼが単独でやって来た。
あまりにも早すぎるので、以前話のあった転送能力者の協力で飛んで来たのだろう。
ボクは彼女に、簡単に事情を説明する。
「そんな事が……にわかには信じ難いが」
ツムジカゼは驚きというより、ありえないと言う否定の表現を強くする。
「しかし事実であれば、これは世界が大きく動くぞ」
それに関してはうん、ボクも同じ意見かなあ。
天雷……自動人形セツナのコアを流用した超兵器
山を吹き飛ばすほどの強力な威力を持つが、巨大なエネルギーに兵器自体が持たないためほぼ単発兵器(修復に数ヶ月かかる)
ただ、世界を牛耳る勢力に脅威を与える事には成功(ツムジカゼ団長を慌てて派遣するあたり動揺が見て取れる)