無能と蔑まれたTS転生者、実は男女比1対100の世界を終わらせる力の持ち主でした 作:さっきゅんx
さてツムジカゼ団長がやって来たものの、今回は転送されて来たので帰りの馬がなく、騎馬団そのものがこのジューサンリ村に到着するのは数日後。
その間退屈じゃない?と聞いてみると。
「いいや、その間は自己鍛錬に回そう」
と言う、いかにもな回答が帰って来た。
「ほほう、じゃあ久々にアタイと組み手でもするか?」
タケリが嬉しそうにそう焚き付けるが。
「待ちなさい、二人とも。
団長、いくらなんでも働きすぎ。たまには休む事も必要よ。体も、心もね」
たしなめるようにツムグが口を挟む。
「あっ、じゃあカナタを貸すからデートに行って来たら?」
うちの幼馴染がとんでもない事を言い出した。
ちなみにデートという言葉はボクがハルカに教えて、その文化が気に入ったのか、旅に同行してる他の子たちとも一通り経験済みだ。
「でえと、とは何だ?」
と案の定ツムジカゼが聞いて来るのを、カヤが耳打ちして説明すると。
「な、何という羨ましい……いや、けしからん行為をしているのだ君たちは!」
団長は真っ赤な顔になる。
「あら、まだお子ちゃまの団長には早かったかしら?」
ツムグがそう言って大人の笑みを見せる。
「だ、誰がお子ちゃまだ!良いだろう、その“でえと”とやら、受けてたとうではないか」
いやツムジカゼさん、デートは勝負事じゃないからね?
——
ところで、ツムジカゼ?
「な、何かな?」
なんでさっきから、ボクの後ろを歩いてるのかな。
「こ、これは何かあった時の護衛だ」
いやこれ護衛任務じゃなくてデートだからね。
ちょっと隣を歩いてくれるかな?
「ととと隣は、ちょっと距離が近いというか恥ずかしいというか」
え?今からもっと恥ずかしい事お願いするんだけど。
「なななんだと!まさか街中でしてしまうのか?!
君にそんな趣味が」
おいどんな想像したんだこのムッツリすけべ。
そうじゃなくて、手を繋ぐか腕を組むかを選べって意味なんだけど。
「そう言う意味か、てっきり……って!ちょっと待て!
普段他の女の子にもそんな事をしてるのか君はっ?」
ちなみにハルカとカヤは手を繋ぐ派、タケリは腕を組む派だね。
ツムグは腕を組むどころか、肩を寄せてもたれかかって来たので歩きにくいから止めさせたけど。
「肩!肩でお願いしたい!ツムグに負けてたまるか」
だから勝負事じゃないってば……そして。
「きゅうー……」
自分で言い出したにも関わらず、肩にもたれかかった瞬間にツムジカゼは羞恥心のあまり、そのまま気絶した。
——
「いや済まない。みっともない所をお見せした」
気絶から回復したツムジカゼが謝罪する。
少し落ち込んでるようにも見える。
じゃあ、お詫びの代わりに一つお願いを聞いてもらうと言うのはどうかな?
「えっちなのは無しだぞ」
しないわ!どんだけ性欲モンスターだと思われてんだよボク。
そうじゃなくて、呼び名。
「呼び名?ああムジカの事だな、良くタケリがそう呼んでるが」
そうそう。ツムジカゼって正直呼びにくいし、タケリとの関係性がうらやましいなって。
「ふふっカナタでも嫉妬する事があるのだな……構わないぞ」
ツムジカゼ……いやムジカがあっさりそう言う。
「確かにタケリにはその名で呼ぶなと言ってるが、正直嫌な気分ではないのだ。しかし、ふふ……」
どうしたのムジカ、嬉しそうに。
「その名でワタシを呼ぶのはワタシの母親とタケリと、カナタで三人目だが、嬉しいもんだなと」
——
「おやカナタ。今日も違う恋人を連れて同伴かい。
うちはそう言うお店じゃないんだが」
そう軽口を叩くバンリ。
「ふふっ、うらやましかろう」
その軽口にムジカが、普段の団長らしからぬ口調で言い返す。少しはデート慣れしたかな。
って言うか、別に見せつけてる訳じゃないからね?
たまたまバンリへの用事がデートの日と重なってるだけで。
「バンリ様は色恋沙汰より発明命なので大丈夫でありますよ」
何が大丈夫か分からないが、助手のジュウリがそう口を挟む。
と言うか、話が進まないなあ。例の試作品が出来たらしいから見に来たんだけど。
「ああ、そっちね。全くカナタの“空想”には毎回恐れいるよ」
バンリの能力の「鑑定」でボクが転生者で前世の知識持ちであることは彼女にバレているが、当然ムジカはそれを知らない。
空想という言葉を選んだ事で、少しは言い方に気を使ってくれたみたいだ。
とにかくボクはムジカから、手のひらサイズよりやや大きい、片手で抱えるほどの大きさの金属の箱を受け取った。
「それは?」
ムジカがそう尋ねる。うん、これは後でのお楽しみ。
——
「うん、まーーぁい!」
ムジカが満面の笑みでそう答える。
バンリに発明してもらったのは、機械人形セツナのコアを動力源にした冷蔵庫で、ボクが作ったのはそれを使った冷菓子でゼリーのようなもの。
甘味成分はカヤにテン菜を探してもらって何とかなったけど、ゼラチンになる材料がなく代用品を使った。
……一応食用に大丈夫だよな、ス○イム。
「甘い物なんて子供の時以来だ」
逆にムジカが子供の時に食べた甘いものが気になる。
この世界の気候的にサトウキビ存在感しないし、甘い果実だってほぼお目にかかった事がないし。
「花の蜜を少々な。行儀が悪いと母に怒られてからは手を出してないが」
何その可愛いエピソード!
——
さてその日の夜。デートの流れからで部屋に二人きりになり、ムジカが要求したのは口淫、いわゆるフェラチオだった。
いや、本当どうしてこうなった。いや普通はデートの後は段階踏んでキスからとかさあ。
「いや無理無理!顔を近づけるどころか今のカナタに見つめられたら死んでしまう」
ボクは見た人を石化させるメドゥーサか何かかな?
「それにデートのお礼に、ワタシが気持ち良くさせてあげたいのだ。こうすると喜ぶとタケリも言ってたし」
何教えてんのタケリ!
そして、脱がせるまでの手際の良さに程よいフィット感。とても初めてだとは思えないテクニックだ。
くっ、やばい。もう出る!
「出ひてぇ……あああっ」
——
『おめでとうございます。新しい能力、「共感」を獲得しました』
え、トーク?まだボクとムジカはそこまで深い仲になってないような。
『何を勘違いしているか分かりませんが、大事なのは相手との絆の深さ、いわゆる好感度であって行為そのものではありません』
そう言うものなのか。
『まあムジカはチョロインなので、体を重ねたらもっと協力な絆が得られるでしょうけど』
「誰がチョロインだ……ってチョロインてなんだー、むにゃむにゃ」
ムジカが寝言でトークに抗議するのだった。
新たなスキル「共感」……それを使うのはかなり先になります。