無能と蔑まれたTS転生者、実は男女比1対100の世界を終わらせる力の持ち主でした 作:さっきゅんx
深い森を抜けると、そこには大きな塔のような遺跡。
武装した集団が、その周囲を取り囲む。
これがトワの言ってた「本腰の妨害」か。
「よしワタリ、作戦開始だ」
とムジカ団長が愛馬ミツの上から合図する。
そして。
「なんだこれ……ギャイン!」
ワタリがイチジクを頭の上に転送、そのままペチャっと潰れて隙が出来た瞬間に騎馬団が切り込む。
前回名前からどんな作戦かと思ったが、そのまま物理的にイチジクを転送するのかよ!
しかし効果は抜群で。
「よし道は出来た。突っ込むぞ!」
とタケリが先頭になり、進んでいく。
道案内は鷹の目持ちのハルカと、植物から情報を得られるカヤ。
本当は千里眼能力持ちのツゲルをあてにしてたんだけど……。
「カナタさん、実は私も貴女と同じ無能力なんです」
そうツゲルが白状する。
「もの凄い頭を使って観察して、あたかも能力があるかのように見せてた。そういう風にわたくしが育てたの。
そうしないとあの村を追い出されてたからね」
ツナグがそう補足する。
「かく言うわたくしも無能力でね、娘が一人前になった際に、今度は幼いツムジカゼを託されたのよ。先代の騎馬団長、ツムジカゼの親にね」
そういう経緯があったのか。
あれ?ってことはツゲルとツナグの年齢って……
「……カナタさん?」
「女性の歳を詮索するのはタブーって、親から教わらなかった?」
うん、この話題はこれで終わり。
——
さてその二人は発明王と、何やら別行動で動いているようだ。三人とも賢いし何か考えがあるのだろう、そちらに一任する事にした。
さて取り囲む集団を半分ほど抜けたところで。
「無能のくせに王に逆らうなんて百年早いよ!」
「ハルカちゃんは賢いから、てっきりこっち側だと思ってたんだけどねえ」
ボクらの前に立ちはだかる枯れ木と雪だるま。
それはサイハテ村で散々いじめられたクダク王の取り巻き、ホムラとフブキだ。
ワタリからのイチジク転送にも怯む事なく、ホムラは炎で、フブキは冷風で、それを払いのける。
この二人、使い勝手の良い能力持ちだけあり普通に強い……でも。
ボクはずっと無能力だったから、そして無能力の仲間がいるからこそ分かる。無能力でも出来ることがあるし、能力に頼り過ぎると怖いって。
「はい?何か寝言が聞こえたねえ」
「あいにく能力があって、怖いなんて思ったことは一度もないよ」
ああ、結局あんたらはそういう価値観でしか生きられないか……なら容赦しない。
発動、「お取り寄せプラス」!
「ほの、炎が使えない!えっカナタ!?」
「吹雪も……あんた、何をしたんだい!!」
お取り寄せは物体を手元に持ってくる能力だが、お取り寄せプラスは更に、相手の能力を奪う。
実質、能力の封印だ。
「「能力を、かえせぇぇ!!」」
とボクに突っ込んでくる二人に。
「——熱っちぃぃぃっ!!」
「こごこご……凍えるぅ」
そのまま元の自分の能力で「お返し」したが、気分はどうだい?
——
遺跡の入り口に仁王立ちする一人の男。
それは誰あろう、サイハテ村のクダク王であった。
イチジク転送弾かれる。
タケリとムジカの渾身の攻撃も、バリアのような物で弾かれる。
「無駄だ。
王は、すべての女からの能力や物理攻撃を無効にする。そうやって代々伝統は守られてきた」
クダク王はそう言い放つ。
「定められた秩序を我々は維持してきた
それで世界は回ってきたのだ。
それを壊すなど間違っていると何故わからない」
何が正解なんてわからない。
でもボクはボクの手の届く範囲の人たちを守りたい。
目の前にある障害でそれがかなわないのなら、払いのけるだけだ。
「ふん、吠えるのは簡単だ。
だが言ったろう、いくら女性が集まっても男の王には……」
ああ、ヒントを出し過ぎだよクダク王。
ボクは笑いを堪える事が出来なかった。
「女」はダメって?だったらさあ……
ボクはトークからもらった最後の能力、「共感」を発動する。
これはボクの能力男性化を、周囲の女性にも瞬時に分け与える能力、つまり。
「オラァ、バカ兄貴がぁ!!」
「ぐへらっ!」
タケリの本気のパンチも。
「哀れなり、クダク王!」
「げひっ!」
ムジカ団長が射抜く弓も。
「個人的な恨みはないけど!」
「すべてはカナタのため!」
「あっちい!寒いい!」
ボクが炎と吹雪の能力を譲渡した、ハルカとカヤの能力も。
「そーれ、どどめだ!」
「……あがががが!」
発明王バンリが作った、「ツムグツゲル母娘が人力で漕いだ自転車のような装置の動力を変換してぶつける」電撃も、全部有効な攻撃であった。
後に残ったのは、炭のように黒焦げで気を失ったクダク。流石元王、まだ息があるので丈夫さだけは折り紙つきであった。