無能と蔑まれたTS転生者、実は男女比1対100の世界を終わらせる力の持ち主でした 作:さっきゅんx
遺跡の塔の中に入ると、目の前にはエレベーターのような装置。
ごめんみんな、ここから先は一人で行く。
「おい水臭いぞカナタ。いつも一緒だったじゃねーか」
タケリが不満を漏らす。
「カヤも、ずっと一緒」
そう言ってカヤも、ボクの腕にしがみつく。
「ダメよ二人とも、カナタを困らせないで」
「ハルカ……」
「でも……」
二人のわがままにダメ出しをするハルカ。
タケリもカヤも、彼女には敵わないようだ。
「カナタ、一つだけ約束。何があっても、必ずここに戻って来てね」
ハルカはそう言って、ボクの両手を握る。
「もしカナタがカナタじゃない存在になっても。
わたしはここで、ずっと待ってるから」
ハルカ……。
分かった、約束する。
——
どれだけ時間が経ったのだろう、上昇を続けるエレベーターがやがて停止し、ドアが開く。
そこに置かれていたのは、
”
“Towa=Langzeit...“
「話しづらいか?
では“慣れ親しんでる日本語”で話そうかのう」
「そうしてくれると僕的にも助かるかな、
ラングツァイトの提案に同意する僕、ファーディことファーディナンド・シュミット。
塔に「帰って」来た「僕ら」は塔と接続する事で「全て」を思い出す。
そもそも、カナタの一件は転生でなく「憑依」というのが多分正しい。首飾りの正体もトークという謎の存在ではなく、僕ことファーディと永遠・ラングツァイトの意識が半分づつ詰まった分体だ。
夢の中で出てきた賢者トワ様は……銀の髪色だけ僕の本体寄りかな、ラングツァイトは黒髪なので。
全体の容姿は彼女っぽいけど。
それが「能力を持たない者」の手に渡る事で、本来の意識と首飾りの意識が「混ざり」合う。
そうやって僕と融合して出来たのがカナタという精神の存在で、今回ラングツァイトはサポーターのトークという立ち回りだった。
そして僕とラングツァイトは、幾度となくこれを繰り返している。この世界が崩壊して、自らの肉体から精神をこの首飾りに分体として写してから。
今回は僕の人格が表に出たが、以前にはラングツァイトの人格が主で、サポートとして僕が裏になる時もあった。
何故こんな面倒な事をしているかと言えば、生き残った僕ら元々の肉体では、細菌や大気の環境から数分も生きられないからだ。
カプセル内の肉体が今の世界の環境に適応できるようになるか、あるいは世界の大気を作り変えるか、その研究はずっと進めているのだが。
そしてこの世界で男性が間引きで力を得たのも、女性だけが特殊な能力を持つようになったのも、ある意味神のような存在となった僕らが仕掛けたマッチポンプ。
そうやって長い長い年月をかけて少しづつ世界は変わっていった。
世界……本当に僕らの知る世界がここだけなのかは分からないけど。
僕らは元々
大航海時代まで世界の歴史を進めたら、あるいは海の向こうに行けるかも知れないけど(作者注:二部伏線)
「しかし今回はまた派手にやったのう、破戒の救世主よ」
揶揄うようにラングツァイトが言う。
この妙に老婆くさい口調が、日本語の彼女の素である。実際、年数で言えば数百年を生きているので間違っては……いけないいけない、女性の歳は詮索するなと先日某軍師に言われたっけ。
「今回は大きく世界が変わるが、どうするのじゃ?」
……そこなんだよなあ。
成り行きと言え現体制の崩壊レベルまで話を進めてしまった。
正直やり過ぎたか、とも思っていると。
既に僕と同化し、元々の意識のないはずの「カナタ」が首飾りを握る。
まるで僕らに「大丈夫」と言っているかのように。
「とりあえず、ファーディ」
「何だいラングツァイト?」
「ハルカとの約束は、守ってあげるのじゃぞ?」
約束……ああそうか、戻るって約束したっけなあ。
「カナタ!おかえり」
ただいま、ハルカ。そしてみんなも。
結局ボクは、カナタという今までの人格に何も修正をかけずにここに戻って来た。そうする事がみんなにとっても一番と感じたからだ。
……ただし。
『ワシもおるぞ!』
「トーク、いえ賢者トワ様。結局今後はそっちで行く事にしたんですね」
とツムグが首飾りに笑いかける。
『まあ、この方がワシらしいと言うか楽じゃからのう』
笑いながらトーク、いやトワが言う。
ツムグは知らない、これもまた作られた人格である事に。と言っても元の
「時に、賢者様。今後はどうなさるおつもりで?
出来ればそのお姿を拝見したいもんですがねえ。いや科学的好奇心を抜きにしても」
そう言ってバンリが傅く。
「そうだカナタ、結局賢者様の封印とやらはどうなったのだ?」
ムジカ団長も興味深々と言った感じで尋ねてくる。
あー、それなんだけど。みんなの前に顔を出せるのはもうちょっとかかりそうなんだ。
……うん嘘は言ってないぞ。いつかそうなったら良いと思う。ここにいる皆が生きてるうちに叶うかは分からないけど。
「大丈夫、その願いはきっと叶うよ」
カヤだけが何かを察したのかボクの手を取り、そう告げるのだった。
『それより皆の者、これから忙しくなるから覚悟するが良い』
「何が始まるんだよトーク、いやトワ様だっけ?」
トワの言葉にタケリが尋ねる。
『時計の針を進めるのじゃ!
原始の時代は終わり、新たな世界の幕開けじゃぞ!』
そしてトワの宣言通り、この先十年もしないうちに原始世界は終わりを告げ一気に技術革新が進んでいくのだった。
そしてそこにはまだ見ぬ世界、そして仲間だった彼と袂を分つ大きな出来事が起きるんだけど……それはまた別の話。