無能と蔑まれたTS転生者、実は男女比1対100の世界を終わらせる力の持ち主でした 作:さっきゅんx
結構な人物登場してるので→作りました(2026.8.8)
「カナタ、元気だったのね!」
久々に会ったボクの産みの母ナユタは、何ならサイハテ村にいた頃より元気になっていた。
ハルカも久々に母親、ハトバに会えて嬉しそうだった。
「ほうほうその子が、ナユタの子供かえ?」
不意に一人の老婆が、ボクたちにそう声をかけてくる。
ええと母さん、この人は?
「このハザマ村の長老で、村の長であるナギ王の祖母ナミ様よ」
母の説明によれば、何でも現王がまだ20代と若く、いまいち頼りにならないためこの老婆がハッパをかけてるのだそうだ。
確かにさっきちょっと王を見かけたが良く言えば親しみやすく優しそう、悪く言えば線が細く頼りなさそうな印象を受けた。
少なくともザ、厳格なサイハテ村の王とは大違いだ。
ちなみにハザマ村についてからトークはずっと無言で物言わぬ普通の首飾りに擬態しているがこれは彼女なりのこだわりであった。
それは村に到着する少し前の話……
『ハザマ村に着いたら私は貝になりますので』
また訳わからない事を言い出してるなと思ったが、一応理由を聞いてみた。
『マスターに出会って覚醒した事で饒舌になりましたが、一応その前の記憶も私にはあります。
当然形見としてマスターが手にする前の、母ナユタと一緒だった頃の事も』
ふむふむ、それで?
『でも当時は力を封印されていて会話など出来る状態になかった。なのに今マスターと語り合える所を彼女に見せるなど不義理ではないですか』
んー、ボクだったら単純に当時の思い出話で盛りあがれば良いと思っちゃうけど、考え方の違いかねえ。
そんな訳で村に着いてからトークは絶賛寡黙中であるが、時々母の会話に合わせてキラッと発光したりしている。
多分母と出会えて嬉しいし黙ってられないのだろう。全く素直じゃないなあ。
さてハザマ村は海岸線に位置し、内陸のサイハテ村と違い海への漁で食料を確保している。それを生のままか焼き魚にして食べるのがこの村では一般的らしいけど。
せっかくお世話になるんだから、料理の一つも振る舞いたい。と言っても土鍋は逃げてきたサイハテ村に置いてきちゃったし、土器用の粘土なんてそうそう簡単に転がってる訳も……
「鍋?あるぞ。セツナちゃんが村にいたころ持ち込んで来たものじゃ」
長老ナミがそう口にする。
「ああ懐かしいねえ、セツナちゃんも良く鍋料理を振る舞ってくれたもんじゃよ」
……セツナちゃん?
「その首飾りの元の持ち主よ」
母ナユタが補足説明する。
「そう言えばカナタは、昔から教えてもないのに変わった料理を作っていたわねえ」
結論から言うとボクの作った鍋料理は好評だった。
海が近いと海藻で出汁が取れるので、久々の旨み調味料に個人的にも大満足の出来であった。
そんな事もありボクら余所者が、ハザマ村の住民と少しだけ仲良くなれたかなと思っていた矢先。
「私はサイハテ村の王、クダクの代弁者です」
そんな平和ムードを壊しにきたのは、村の伝言役であるツゲルであった。
「カナタ、ハルカ、タケリの三名は村で犯罪を起こした重罪人です。
おとなしく引き渡せばよし、もし庇うような事があればこの村ごと滅ぼされると知りなさい!」
「カナタ、何をやらかしたの!」
非難するように母がボクに詰め寄る。
「違うんですナユタさん!カナタは無茶をしたわたしを逃してくれたの。だから悪いのはわたし」
いや発端はハルカが夜伽の身代わりになった訳だから、むしろそれを拒否ったボクの方に責任が……
「あーもう面倒くさいなあ」
そう言い放つのはタケリ。
「大喧嘩して揉め事にしたのはアタイだ。
なあツゲル、あの二人は見逃しちゃくれねえか?」
ちょっとタケリ……
「タケリはむしろ恩人だよ、引き渡すなんてそれこそ筋が通らないって!」
ハルカがボクの言いたいことを代弁してくれた。
「……おいどうする?」
「罪人をかばって巻き添えは嫌だなあ」
「でも、そんな悪そうな子たちには見えないのよねえ」
村の中でも、どうするか意見が割れているようだ。
と、その時。
「静かにおし!」
と言う長老ナミの鶴のひと声で、村の喧騒が収まる。
「お前らの目は節穴か?彼女達が良い子なのは一緒に過ごしていて分かっただろうに。
どうせあの坊主の何か機嫌を損ねたんだろうけど、きっと村に帰ったら酷い目に遭わされる。
それで良心の呵責が痛まないのかい」
すごいなあナミさん。あのサイハテのハーレム王を坊主扱いだよ。
「ナギ、あんたはどう思うんだい?
こういう時こそ王の決断が必要な時だよ!」
「え?えーっとババ様の言う通り、かな」
ナギ王は長老に、半ば押し切られるようにそう言う。
うん、ナミさんの気持ちはありがたいけどさ。
やっぱり、ボク一人でサイハテ村に戻るよ。
「「……カナタ?」」
ボクの発言に驚く母と幼馴染。
今までだって村で酷い目に遭ってきたんだ、それが罰として少し重くなるくらいなら全然平気。
それより、ハザマ村の人に迷惑かけられない……痛っ。
そこまで言いかけて、ボクはタケリに背中を叩かれた。
わりと強めに。
「そうやって弱い奴が強がるのは嫌いなんだよ、アタイ」
タケリはかなりご機嫌斜めの様子で。
「なあツゲルよ、サイハテ村がここを滅ぼすのに差し向ける兵隊は何人だ?10人か、20か。それくらいならアタイ一人で全員ぶっ倒してやんよ」
「よく言った!ワシらだっていつまでも力で押さえつけられると思うな、サイハテ村がナンボのもんだい!」
タケリの怒りに長老ナミが同調し、村人達もそうだそうだと声をあげる。
「あなたたち……どうして」
これには伝言役のツゲルも困惑し、そして思案する。
そして。
「……では、こうしましょう。私はこの村にカナタさん達を探しに来たが、既に村を出たあとだった」
——え、それって。
「そうと決まったら、とっとと旅支度をしてください。私を嘘つきにしないために。
これは、一つ貸しですよ?」
早口で話すツゲルは、少し顔が紅潮してるようだった。
「なんだよツゲル、ただの冷酷な伝言役かと思ったら良いともあるじゃない」
「……知りません」
タケリがニヤニヤしながらそう煽ると、彼女は顔を伏せた。
「それにあなたなら……いえ、何でもありません」
更にツゲルが何か呟いたような気がしたが、小声すぎてよく聞こえなかった。
という事で駆け足でハザマ村を出ることが決まり、皆が見送ってくれた。
「もし今後行き先に迷うなら、その首飾りの持ち主のセツナの後を追うが良かろう」
長老ナミはボクにそう声をかけた。
「彼女は太陽の沈む方向を目指しておったようじゃ。そこに何があるかまでは聞かされておらなんだが」
なあトーク、ボクらの目的地もそこで良いのかね?
そう呟くと、首飾りが肯定するように輝きを放った。
⬜️今回の新キャラ
ナユタ……主人公カナタ母、今はハザマ村に譲渡されている。
ハトバ……ハルカ母、同じくハザマ村に
ナギ……ハザマ村の王だが若く影が薄い
ナミ……その祖母で長老。発言権はこっちが強い。
ナユタ……カナタの首飾りトークの本来の持ち主。村を出た
あと初じゃないけど
ツゲル……久々登場のクダク王の伝言役。今回は損な立ち回りに