無能と蔑まれたTS転生者、実は男女比1対100の世界を終わらせる力の持ち主でした 作:さっきゅんx
こことの違いは性描写差分と内容の微修正、あとかなり話を細かく分けます
その男を一言で表すなら、世界の悪意を濃縮したような笑みを顔に貼り付けた人外。
それこそボクがサイハテ村で、王の取り巻きたちに虐められていたのが、まだマシだと思える位に。
ギターでデスメタルでも披露しそうな白塗りに黒い化粧を顔に施した人物が立ちはだかった。
「ひひひひ思った通りだぜ。やっぱかくまってやがった」
えーっとツムグさん誰ですか、アレ?
「デスギル。うちの団長を勝手にライバル視してる奴よ」
ボクの問いに彼女がそう解説する。
で参考までに、ツムジカゼ団長は……
「眼中にない、というか正直関わり合いたくないと思ってるわね」
そうだろうなぁ。ボクだって正直あんなみるからに不快感の塊の相手したくないや。
「なあこのデスギル様からありがてえ忠告だがよお。これはクダク王に対する明確な反逆行為ってやつじゃねーのかい?」
確かにデスギルの言う通り、ツムジカゼが引き渡しを渋ってる事を知ったら王は激怒するだろう。
その辺、策はあるの軍師さん?
「あら、そんなの策を使うまでもないわ」
にべもなくツムグが言う。
「今回の件を除けば、今まで騎馬団は王からの依頼を着実に成功させているの。一方デスギル一味は欲をかいて、ことごとく失敗してる。
どっちの言葉を信じるかなんて言うまでもないでしょ?」
「——うぐっ!」
どうやら心当たりがあるらしく、デスギルは激しく動揺した。
「だ、だがよう。100個失敗続きでも1個大きな任務を成功させたら良いだけだぜ!
ってなわけで、匿ってる女どもはもらっていく。
お前ら、やっちまいな!」
ああ、結局実力行使か。
どうやらこのデスギル、小物な上に頭も悪いらしい。
「おい、何をしてるお前ら早く……あ゙?」
「「たすけて親分ー」」
デスギルが連れてきた子分らしい、いかにもガラの悪そうな女性達は、地面から飛び出した網状の罠に捕まって身動きが取れなくなっていた。
「確か前回も同じ手に引っかかったと思うんだけど……本当に学習能力がないわね」
「ひひひ卑怯だぞ貴様!」
「ありがとう。それ軍師としては最高の褒め事よ?」
デスギルの言葉に、嬉しそうにツムグが言ってウインクをした。
「さあ、残りはあなた一人ね。今日はどんなお仕置きをされたい?」
と嬉しそうな表情を浮かべるツムグを、ボクはふいに抱き寄せるようにして地面に押し倒した。
「ちょっとカナタ、何の真似……!!」
そしてボクらの倒れたちょうど上の位置を、一本の矢が通り過ぎていく。
鷹の目プラスで気づいてなかったら、ツムグに直撃していた所だ。
「待て待て!何でアレを避けられるんだ?
おかしいだろう!」
どうやらこれがデスギルにとっての切札で、しかも打ち止めであるらしい。
「ほほう、アタイの大事な友人たちに随分と舐めた真似をしてくれるじゃないか?デスギルとやら」
そう言ってタケリが、ポキポキと指を鳴らす。
顔は笑っているが、全身は殺気に溢れていた。
「正直死すら生ぬるい。少なくとも1ヶ月は動けないように痛めつけてやんよ」
「——ゲヒーィ!!」
「えーコホン。
時にツムグとカナタよ、不可抗力とは言えちょっと距離が近づき過ぎるのではないかな?」
大きな咳はらいをしてツムジカゼが言い、
「そうだずるいぞツムグ、アタイと代われ!」
デスギルを殴る手を止めて、タケリもそう口にする。
加えて先程から無言で睨んでいるハルカの視線も痛いので、流石にもう離れた方が良いだろうと思い起きあがろうとすると。
「もし貴女が王になるなら、側室の席は開けておいてね?」
とツムグに離れ際、冗談のように耳元で囁かれた。
えっと……流石に、冗談だよな?
——
などと色々あったが、ボクらは結局ツムジカゼ騎馬団から解放される。
「ツゲルと言ったか、君の村の伝言役と同じ手段を取らせてもらう」
とは団長ツムジカゼの弁、つまり。
「あたりを付けたが一足先に逃げ出された、って事ね。残念だけど」
ツムグがそう続ける、嬉しそうに。
こうしてボクらは騎馬団から解放され、別れを告げて旅を続ける……つもりだったのだが。
「あら奇遇ね」
それから1時間も経たないうちに、そう背後から声をかけられるボクら一行。
そこにはツムグの姿があり。
「せっかく解放したのに見つけてしまったわ。
これは任務通り追いかけるしかないわねえ、ああ困った困った」
と棒読みのような口調で彼女が言う。
どうやら最初から追跡という名目でボクらに同行するつもりだったようだ、この腹黒参謀役は。
ちなみに来たのはツムグだけ?ツムジカゼをはじめとする他の騎馬団たちは?
「流石に全員を引き連れたら目立つし、他の任務で忙しいからね?
でも大丈夫、呼んだら”すぐに“駆けつけてくれるわよ」
それは喜んで良いのかどうなのか。
でもそっか、他の団員はいないのか。
お世話係をしてくれたカヤとはもう少し話をしたかった気がするけど……。
「……呼んだ?」
え、カヤ?どこから出てきたの。
って、まさかと思うけど「呼んだらすぐに」ってそう言う……
「ご名答。転送って能力持ちの子がいるの。
カヤは植物を通して遠くまで会話が出来るから特に相性が良いのよ」
ああなるほど……って、待って待って。
ひょっとしてカヤは呼ばれるのを期待して、遠くからずっとこちらの様子を伺ってたって事?
「——デリカシーのない人は嫌いだな」
耳まで真っ赤にして、カヤがうつむいた。
『さて側室候補も出揃った所で』
ボク以上にデリケートとは無縁な自称乙女のトークが、そう口を挟む。
『次の目的地を提示します。ズバリ、セツナを探して切ない気持ちになってください』
おいそれはダジャレなのか?
何そのうまいこと言ったみたいなフリ!
ああでも、確かハザマ村のナミばあさんの知り合いって言ってたな?ああそうか、すでに亡くなってるのか。
『いえバリバリ生きてると思います。奴がそう簡単にくたばると思えないので』
しんみりした気分を返せ!
ひょっとして長寿だったり不老不死だったりするのか?
『♪ピーピピー』
こいつ口笛で誤魔化しやがったぞ、って事は図星か。
「実は、わたくしに心当たりが少しあるの」
そう口を挟んでくるのはツムグ。
「物語の伝承レベルで本当のところはわからないんだけど……」
と前置きして、ツムグは昔話を始めるのだった。
彼女の話によれば、今のような原始時代になる前には、神の加護の元に優れた文明が発展していたらしい。
しかし思い上がった学者が神の逆鱗に触れ、文明が全て消滅し世界が巻き戻ったのだと言う。
そして不死の呪いをかけられた学者は、贖罪のために世界を廻っていると。
「似たような言い伝えは聞いた事あるよ」
とハルカ。
「お母さんが、そのまた母親から聞いたんだって。
ただ内容は少し違って、学者さんは古い遺跡に封印されてるって」
「それで言うなら、亡くなったばあちゃんからアタイも似た話があるぞ」
とタケリ。
「そもそも女性が能力を持ってるのは、それまで力を持たず地位が低かった女性のために学者が分け与えたから。
その代償に骨だけの存在になって意志をもたぬまま世界を彷徨ってるらしいってな」
なんか似てるようで全部バラバラだなあ。
実際、真相はどうなんだトーク?
『さあ』
いや、さあって。
『昔話なんて長い年月で尾ひれがついて変わっていくものです。なのでトークが言えるのは全部微妙に正しく全部が間違ってるとしか』
全然答えになってない。
うん、君に尋ねたのが間違いだったよ。
『ただし』
た、ただし?
『セツナを見つけたらその一端は判明する、かもしれません』
いや、せめて判明するのかしないのかだけでもハッキリしてくれ。
⬜️新キャラ
デスギル……「出過ぎる」と「デス」「ギルティ」を組み合わせて作った悪役。分かりやすい小物なので、多分また出します。
転送役の子……今回騎馬団メンバーである事を示唆のみ。能力で行きたい場所に飛ばしてくれるが転送先のイメージが必要なので普通は行った事ある場所のみ。カヤは植物経由で遠くまで場所を把握出来るので、この転送能力と相性は抜群。