おっぱいメイド学園の世界で便乗したい 作:ぞでぃあっくSP
☆前回までのあらすじ(存在しない記憶)
——ガチャを引いて光に飲み込まれた
すぐに息苦しさを感じた炎司が慌てて水中から顏を出すと、なんと周りには可愛くて胸が大きくて全裸の美少女たち……そう、そこは大浴場でしかも彼女らは入浴の真っ最中だったのだ。
あわや変質者として人生が終わるかと思われたが、そこにいた1人がふいに気づく。
『——私たちがこんなに近づいているのに呪いが発動していない』と。
呪いとは?何故自分はここに?
状況についていけない炎司を置いてきぼりにして全員がそれを知り、おそるおそる炎司へ身体に異常はないかを訊いてくる。
興奮状態を除けば至って普通の彼がそのままのことを伝えると、美少女たちは何故か喜んで裸であることも気にせず次々と炎司に抱き着いていく。
おっぱいに囲まれる至福の状態ではあったがそれはそれとして息苦しい。
訳も分からず身動きが取れなくなった炎司は、"実は一緒にいた"萌衣へ助けを求めるが、彼女は呆れた表情で眺めているのだった……。
——(炎司side)——
あの後で俺たちは呪われしメイドや、この学園について説明された。
曰く、呪われしメイドとは魔王を打ち倒した母親が呪われてその母体から産まれた娘たちのこと。
曰く、呪われているせいで異性は近付くと強烈な寒気や眩暈を起こして立っていられないし、一緒に居続けるとそれが悪化して死の危険すらあるので、俺たちが会った彼女らは主に仕える事が出来ず困っていたこと。
曰く、この学園はメイドを育てる女学園であり男は俺1人だということ。
そして俺と萌衣が現れたタイミングで高魔力反応があった一方で誰かが召喚した様子はなかったこと。
おそらくは偶発的に引かれたトリガー(ガチャ)に魔力が最初から込められていて、悪意とか陰謀といったものは全くなさそうだということ……まあとにかく色々聞かされた。
ちなみに言うと不審者という誤解は、彼女たちのご主人様に俺がなれると分かれば弁解するまでもなく勝手に解けた。
それから浴場を出た俺たちは学園長に経緯を説明し、そのまま学園に通うことを勧められる。
そして今は呪われしメイドたちのママさんも交えた顔合わせを終えて、広場に向かっているところだ。何やら決起会のようなものをやるらしい。
「しっかし魔法アリの異世界ねぇ、
「そういえば洲羽がいないのはおかしいわね……来たのは私たちだけなんですか?」
「ええ、私が感じた魔力反応は大浴場だけでした。ところでそのスワという方は”主さま”のご友人でしょうか」
一応言うと”主さま”というのは俺の事だ。
異世界転移した人間は特別なスキルが貰えるようで、それを試したら学園長とセックスできてしまったうえに従順にもなってご主人様として認められたからか、自然と呼び方が変わっていた。
「はい、一緒に転移してたと思うんですが……」
「もしかしてその彼は離れた場所にいませんでしたか?魔法陣の規模によっては中心から離れているほどに事象の起動が遅くなると言われています。逆に言えば、主さまと萌衣さんはすぐ側にいたから同じタイミングだったのではないでしょうか」
「……えーっと、たぶんなんですが洲羽からも同じ魔法陣が出てた気がするんですよね。この場合ってどうなりますか?」
「なるほど……それなら別の場所に飛ばされている可能性もあるかもしれません」
そうなると洲羽を探した方が良いのか……?いやまだそうと決まったわけじゃないし、探す当てもない。
学園長からさらに話を聞くと、どうやら時間差で転移するケースや違う場所から出てくることもあるらしい……"石の中にいる!"とかないよな?
ついでに言われて思い出したが、あの時は
「(おそらく真亜紗さんもこの異世界に……。萌衣の父親にはわるいことを——ん?父親なんていたっけ?)」
よくよく考えてみたら真亜紗さんに夫はいない気がしてきた。
あんな美人の奥さんと美少女な娘から父親が離れるわけないからなぁ、明堂母娘は叔母さんを除いて家族総出で異世界に来ることになりそうだ。
その後、俺たちは一緒にいた9人の呪われしメイドたちとそのママさんたちとで会話に興じ、やがて大きな広場にたどり着く。
担任となるフラン先生からそこで改めて優秀なメイドを決める大会『MAIDー1グランプリ』に皆の主として出場をしてほしいことを伝えられた。
俺は無論のこと快諾してどうせやるなら優勝を狙うと宣言した……のだが、その瞬間に急に空の雲行きが怪しくなっていく。
さっきまで快晴だったはずの空が気づけば曇り空になって雷も鳴り始める。
「いきなり暗雲立ち込めるってギャグか?」
「ぐ、偶然だよご主人様……ってみんな見て!空に魔法陣が!」
「……あれはマスターと萌衣が現れたときと同じ魔法陣じゃないか?」
倣って目を向けると空にバカでかい魔法陣がキラキラと浮かんでいた。
あれから俺たちは出てきたのだろうか?というか空から出てくるって事はまさか落下——
「待って!?魔法陣の中から人影が”2つ”出てきた!このままじゃ……」
悪い予感ほど的中するらしく、メイドの1人が遥か上空を指して悲鳴を上げた。
普通の人間である俺には黒い粒程度にしか見えないが、それはつまり小さな粒のように見える高さから落ちてくるという事だ。普通の人間では一たまりもない。
俺は声を張り上げた。
「たぶん萌衣の母親とさっき言ってた俺の友人だ!当然飛べないし魔法もないからやばい!誰か飛べたりしないのか!」
「——私が行こう」
そう言いながら出てきたのはファヴニーラさん。確かメスガキメイドであるディゼニアの母親だ。
彼女は折りたたんでいた翼を音を立てながら大きく開き、次の瞬間には地面を抉ったような跡だけ残して天高く飛び上がっていた。
「す、すげぇ……」
「当然でしょ?私のお母さまに速度で勝てる同族なんていないわよ」
どこか誇らしげなディゼニアが気づけば横に立っている。
俺は彼女を横目に、ここが改めてファンタジーの世界なのだと実感していた……。
…………
——時はほんの数秒前に遡る。
『え?』
現状を一言で言えば困惑だった。
ガチャを引いて光に包まれて気づけば一面は青空。
踏みしめる足場はないし今も落ち続けている。
落下死——頭をよぎった言葉がすぐに困惑を引き剝がし、俺に焦りと恐怖を与えてくる。
「あ~~~れ~~~」
そしてそんな俺の意識を引き戻したのはすぐ近くから聞こえた声だった。
「真亜紗さん!?」
「あら~~洲羽ちゃんもいるのね~~ところでなんで私お空にいるのかしら~~?」
の、呑気……!
しかしそのおかげで少し冷静になれた。
どうやら俺は"主人公"と一緒のタイミングではなく、真亜紗さんと転移したらしい。
確かこの後は助けてもらえるんだっけ?ただし風圧でまともに下に目が向けられず、本当にいるか分からない。
実はいないかもしれないし、ほんの数秒だけ原作とタイミングがずれていてどっちかだけ助からないかもしれない。
ぞわりと寒気がした。
今なら自分を顧みない転生オリ主の気持ちが分かる。
俺は半ば衝動で空をかいて真亜紗さんの元までたどり着き、彼女の下側に位置をとって抱きしめた。
……本当に冷静ならこの高さで落下すれば片方が下敷きになっても無意味だと気づくのだろうが、俺のせいで真亜紗さんがどうにかなると考えたら何かせずにはいられなかったのかもしれない。
「せめて真亜紗さんだけでも!」
「情熱的ね~、でも私たち……助かりそうよ?だって天狗さんがこっちにすごいスピードで来てるもの」
「え?あ……」
次の瞬間、下から飛来してきた人影に俺たちはふわりと抱えられていた。
「———2人とも大丈夫か?」
その声が聞こえて脳で助かった事を理解した。
落下の勢いを相殺するように力強く、それでいて優しい抱擁は俺と真亜紗さんを少しの浮遊感に曝すだけに留まり、衝撃は皆無と言ってよかった。
「あ、ありがとうございます……」
「ありがとう~。それにしてもすごい羽ね、やっぱり天狗さんなのかしら~?」
「いや、天狗ではないのだが……」
凛々しく余裕のある雰囲気もさることながら、大きな竜翼からは気品と荒々しさが感じられる。
ちなみに竜翼という通りに彼女はドラゴニュートと呼ばれる種族だ。
正直カッコよすぎて惚れる。
創作で主人公に助けられたヒロインが惚れたりする展開に今までは納得してなかったけど、色々な恐怖から救ってくれた存在ともなると見方が変わるんだなぁと当事者になって初めて理解したのだから現金なものだ。
……まあこの人も炎司の"雌"になるんですけどね!!
脳が破壊され――ないな、うん。メイドの母親たちもちゃんとヒロインだし、あるべき所に落ち着くってだけだ。
ただ、だからと言って恩義が消えるわけではないし寂しい気持ちはあるがそんなものだろう。
どうやら結構高い所でキャッチしてくれたらしく、少々長い空の旅をしながらファヴニーラさんはゆっくりと降りてやがて地面が近づいてきた。
命の危険が遠ざかって気が抜けた俺はボーっとしながら、ファヴニーラさんの横顔を盗み見る。
「(いやでも恋愛ってより命の恩人として尊敬みたいな感じかもしれないなぁ。助ける側と性別が逆転してたらまた違ったんだろうか?)」
着地点に集まってくるメイド集団を見ながら、そんな得体もないことを考えた。
………………
俺たちが降りると炎司と萌衣が驚いた顔をしていた。
……いや炎司はある程度察してたっぽいな。
「やーやー二人とも。一体これはどういう状況なんだい?」
なんて、快適な空の旅のお陰で取り繕う余裕ができたからちょっとだけカッコつけてみたりして。
勿論全員が炎司にメロメロになるヒロインなのでアピールしても意味はない……が、せめて情けなく映らないようにするのは男のサガだ。
とはいえ事情を知らなければ目の前に広がる光景は相当な異常だから、パニックになっていても逆に平静を取り戻すぐらいはしてたかもしれない。
何せ炎司以外そこに居るのが皆女性で、しかも全員ド級の美人でもれなく胸が大きいとくればおかしいとしか言いようがないからだ。
「さっきまで私のママを抱きしめてた幼馴染がなんかカッコつけてる……」
「いや、それは誤解なんだ。あれだよほら、俺が下敷きになったら真亜紗さんだけでもワンチャン助からんかなーって。だから——」
「待て!!それ以上近づくと危ないぞ!!」
二人の元へ行こうとした俺を何故か炎司が止めた。
「え?なんかあるの?」
「……ああ。実はだな、俺の周りにいるメイドは呪われしメイドといって近づいた男は体調がどんどん悪くなって最悪死の危険すらあるらしい」
ふむふむ、なるほど。
「炎司は何ともないの?」
「俺は異世界出身でなんか特別っぽいから問題なかったんだ。ただ洲羽も同じとは限らないだろ?」
「近づいただけで体調が悪くなるってとこが既にファンタジー全開だね。どれくらいの範囲からか試してみたいけど……」
「マスターとその友人、おそらくそれは杞憂だ」
そういってどこか事務的な口調のメイドが前に出た。
ミーナさんだ。彼女は銀髪のメイドアンドロイドで、異世界の子種を炎司から搾り取る命を受けている。
「そうですね、普通なら既に強烈な寒気や腹痛などが起きて立っていられないはずの距離です。やっぱり異世界から来て呪いの対象外になっているとみて間違いないと思います」
そしてそれに紫髪の真面目そうな子——リリエラさんが付け加えた。
炎司と同様に何もなってないのが証拠、それが伝播して本日二度目であろう驚きが広がっていく。
…………ただ、さすがに原作で炎司がされたように抱き着いてきたりはしない。
裸のまんま抱き着かれて至福を味わった主人公とは既に扱いの差を感じるが、そんなことは全く気にならなかった。
「(俺も……主人公と同じ……本当にチャンスがあるかもしれない……!)」
権利を得たと分かったからだ。
それは単純に呪われしメイドと触れ合える"2人目"の男というだけではない。
『ヒロインとエロい展開になっても許されるかもしれない』権利なのである。
※ファヴニーラはとんでもない格好だが、オリ主は気が動転していて意識の外にある