おっぱいメイド学園の世界で便乗したい 作:ぞでぃあっくSP
俺と真亜紗さんが転移でこちらに来た後、理事長は改めて説明が必要だと思ったようでその場にいた全員を連れて一度理事長室へ向かうことになった。
俺が呪いを受け付けない二人目の男であることもそうだが、真亜紗さんに対しても萌衣の保護者というだけでなくメイド喫茶の経営経験を買って異世界のメイドとしてこの学園に招きたいようだ。
確か原作での真亜紗さんも学園内のメイド喫茶で働いていたから、おそらく原作通りの流れになると思う。
「(あれ……?そういえば女性オンリーの学園でメイド喫茶って需要あるのか?何かカラクリがあったんだっけか)」
勿論思うだけで口にはしないが、あとで実地調査をしてみてもいいかもしれない。
…………
理事長室に来た俺たちだが、さすがに件のメイド九人とそれぞれの保護者までいると多くて部屋に入らない——なんてことはなく、理事長と向かい合うように俺と真亜紗さん、それに炎司と萌衣がソファに座り込み、他の皆さま方は備え付けのリビングで寛いでいた。一個人の仕事部屋としてはいささか広いように思える。
「(理事長のワークスペースというよりかは、来客対応用の部屋って感じかな?学園の卒業生は各国で重用されるらしいしヒロインにも身分高い人いるしってことでたぶん学園の権威付けに必要な広さなんだろう)」
「……こほん。一応道すがらに肯定的な返事は頂いていますが、改めてこの学園について説明いたしますね」
「お願いします」
真亜紗さんも相変わらずほんわかしていたがしっかりと頷き、それから理事長の話が始まった。
ちなみに自己紹介はもう済んでいる。
理事長ももれなく顔面偏差値が高く、切れ長の目に手入れの行き届いた綺麗な髪、そして何よりもスタイルの暴力と露出がヤバいので自己紹介をするときは目線を下げないように必死だった。
大胆に露出した太ももと谷間を惜しげもなく晒した服装は指導者の恰好ではないと思います……。
「ここは"ファンデミナージュ・メイド学園"です。生徒も教員も全員メイドで男子禁制ですが御主人様と洲羽様は特例として入学していただく形になります。そして呪われし9人のメイドは親が受けた呪いによって"主となる男"が近づくと体調不良にさせてしまい、側に居続けると最悪死の危険もあってか今まで主がいませんでした」
ふむふむ、さすがにバックボーンは原作通りっぽいな……あと藪蛇かもしれないけど既プレイヤーとしてこれを訊かないわけにはいかなかった。
「質問です。主にならない男なら近づけたのでしょうか?それと女の主はいないんですか?」
はっきり言えば揚げ足取りのような質問だ。
わざわざ尋ねた俺に対して萌衣と炎司は不思議そうな顔をしてるし真亜紗さんも気にした様子はない。
さて、何故俺がこれを訊いたのか。
一言で言えば矛盾しているからである。
前提として理事長の言う"主となる男"というのが、主になる予定の男性を指すと俺は認識している。
つまりその部分だけで取り上げれば、呪われし9人のメイドに『男の主は絶対に現れない』という状況は出来上がる——のだが。
そうなると今度は『主にならない男性は近づける』理論が成り立ってしまう。
これが一番の問題だ。
実は原作において9人のメイドたちは、炎司が呪いの影響を受けてないと知った時に「ご主人様がついに現れた」という旨の発言をしているわけだが……何か気づかないだろうか?
まあ大した答えじゃない。『主となる男性が近づけない』とするなら、呪いの影響を受けてない炎司を『主とならない男』と判断してないと矛盾してしまうのだ。
というわけで理事長の返答が非常に気になるところだが、当の彼女は意外にも不思議そうな顔をしていた。
「……?ああ、すみません。この世界では女性はご主人様になれないのです。ですから主になるとすれば男、ということです」
…………ああ!そっちか!
俺の『逆説で主にならない男がいる』という解釈は間違っていたらしい。
つまり分類としては『主になれない女』と『主となる男』が正解なわけだ。
メイドたちに主がいないのも、突然現れた男が呪いの影響を受けなかったので喜んだことも、ちゃんと成立する。
例えるなら最初の俺の考えは『パパとなる男』と『パパにならない男』で、正解は『パパとなる男』に対し『パパとならない女』だった……ということなんだと思う。いや何言ってんだ俺。
一応理由っぽいのが存在していた事に思わず感心する。
「(……ん、待てよ?そうなると呪われしメイドが会場に来たら他の出場者の主が体調不良になるのでは?)」
もしかしたらあまり深く考えてはいけないのかもしれない。
「納得しました。すみません、話の腰を折ってしまって」
「いえいえ続けますね。呪いは魔王を倒した伝説のメイド一行が魔王から受けたものです。しかし先ほども言ったように呪いの対象は一行ではなくその娘たち。メイドでありながら主に仕えられない歯痒さを感じていたことでしょう。そして娘たちに呪いを背負わせてしまった母親たちも失意に沈んでいました」
そう言って理事長はメイドとその母親たちを見た。
……つまり単語だけ聞くと勘違いしがちだけど、"呪われし9人のメイド"というのは、『呪われたのは母親だけどその対象は娘』というものなのである。
「……そこで現れたのが御主人様と洲羽様、という訳です。異世界出身であるお二人がこの世界の呪いを受けずに問題なく触れることができることの価値は、集まった皆様の喜びようから伝わるでしょう」
「もう手に取るように分かりますよ!俺が皆のご主人様になれば解決ということですね!あ、勿論理事長もです!」
「もう……御主人様ったら」
炎司の堂々とした宣言に理事長は頬を赤らめた。
美人の照れ顔は可愛いなぁ。
まあそれはそれとして二人の世界に入られると話が進まないから困るんだが。
そして丁度いいタイミングで、何やら思案していた萌衣が身を乗り出して理事長に尋ねる。
「そういえばその伝説のメイドの娘が全員この学園にいるってことになるんですよね?やっぱり授業レベルも高かったりするんですか?」
「そうですね。ここのメイド教育は高く評価されていて、各国ではエリートメイドと称されるほどです」
「おお、エリートメイド!!良い響きだ!!」
メイドという単語に炎司がすかさず反応した。
目の前にいる理事長はMAID1グランプリ初代王者なので、実はメイド界の重鎮とも言える存在なのである。
その人が理事をしている学園だからノウハウがあるし優秀な人材も集まるに違いない。
「勿論皆様におかれましてはこちらで最大限のサポートをいたしますので、不安がらずとも大丈夫です。それと安心していただくために敢えて言いますが、この学園に集まっているのはここが女学園で色々と全員揃っている方が都合がいいという理由もあります。皆が肩を並べて学ぶ立場ですし、変に畏まる必要もありません」
俺と炎司は特別な扱いで真亜紗さんも経営経験を買われているのに1人だけ立場が宙ぶらりんで不安だったのだろう。
萌衣からホッと息の吐く音が聞こえた。
…………
それから学園やこの世界のことも説明され、萌衣と真亜紗さんは学園のメイド喫茶で働くことに、萌衣はそれに加えて学生として授業も受けることになった。
そしてついに俺と炎司の番がやってきた。
「お二人についてですが……どちらも御主人様になる、というのは難しいでしょう。MAID1グランプリにおいて主として認められるのは1人だけなのです」
「…………すまん、洲羽。ご主人様の立場は俺に譲ってくれないか。俺、皆にグランプリで優勝するって言っちゃったんだ」
炎司が真剣な顔で言ってきたが俺には分かる。
この顔はメイドでスケベな事を考えてる時の顔だと。実際先ほどから炎司は股間をモゾモゾとさせており、カッコ付けるために勃起したチンポをどうにか隠そうとしてるから間違いない。
ただ、俺の返答次第でありつつも選択権はないに等しいだろう。
俺が後から来て関係の構築に遅れを取っている事は勿論、理事長も炎司のスキルによって彼を主と仰ぐようになったので、心情的にはあちら寄りだからだ。
ぶっちゃけアウェーな状況だが、俺は最初からこの展開を予想していた。
「分かった。じゃあ俺は――」
この世界に来た瞬間からずっと考えてきたことがある。
それは『どうすれば俺"も"ヒロインたちとHできるか』だ。
炎司が主人公なのは俺にとって純然たる事実で、成り変わろうなんて気はさらさらない。
しかしいくら主人公は特別だからと納得してもあわよくば便乗してセックスしたいという自身の気持ちは偽れなかった。
同じようにじゃなくていい、ちょっとでも良い思いができればそれでいい。
常日頃から幼馴染やその母親の胸を揉みしだいている炎司からすれば、ちっぽけな願いだろう。
でも俺はそのちっぽけで興奮できるなら良いと思うんだ。
「俺は――相談役になるよ」
「相談役……?」
俺の宣言を聞いて思案顔になった理事長へ説明する。
人によっては『勝手に役職作るな!』なんて言うかもしれないけど、これは形だけなので問題ない。
考えたきっかけは原作での炎司の立場だ。
炎司は呪われしメイドたちのご主人様になるわけだが、よくよく考えると学園にはあまり関係がない。
あくまで理事長にもお願いされたってだけで、この女学園においては『呪われしメイドのご主人様として特別に入学した男性』でしかないはずだ。
……字面で見ると"でしか"なんてとても言えないが、つまり周りが特別扱いすることはあっても立場的には学生の1人であり、何か権限を持ってるとか金銭のやり取りがあるとかそういった存在ではないということ。
だから俺もそれに倣って相談役を思いついたのである。
「はい。まあ便宜上は、といったところでしょうか。呪われしメイドの皆さんが接せる男は呪いを受けない俺たちだけなんですよね?そうなると彼女らが異性に接すると考えたときに思い浮かべることができるのは、接せる男である主と一応俺だけです」
「なるほど……話が見えてきました」
「続けます。ですがそうなると男性の基準もまた、ほぼ唯一といって良い接せる男である主になってしまいます。そうなると性差による違いをご主人様固有のものと誤認してすれ違いが起こる――なんてことがあるかもしれません」
女性社員の月のものを考慮せずに上司が自己管理不足と詰ってトラブルが起きるのはネットでよく見る話だ。
男女比9:1のこの国なら男は丁寧に扱っているかもしれないが、丁寧な扱いと理解できているかは別だろう。
結局俺は男性サンプルとして協力しますよ、と言っているだけだ。
「(というかわざわざ男を女学園に入れるのに『普通の学生でお願いします(何もしたくないです)』とか言われたら困るだろうし)」
そもそもここがメイドを育成する場所だということを忘れてはならない。
俺と炎司はメイドにならないのだから普通の学生なんて選択肢は最初からないわけだ。
正直言って思いつくまでにはかなり悩んだ。
好き放題できる主とまでいかずとも、色々と受け入れてもらえる立場ではありたいのである。
何せヒロインが主という存在を特別視しているのだから、仮に普通の学生で良いですなんて言ってしまえばヒロイン達との関係性はより遠くなるだろう。
その仮定は俺が呪いの影響を受けない事を加味しても主人公で満たされていれば妥当だ。
「分かりました。では洲羽様には相談役をお願いしてよろしいでしょうか?」
「ええ、任せてください」
「よっしゃ!これで俺のハーレムメイドライフが始まるぜ!」
話は終わったとばかりに炎司が立ち上がって拳を突き上げた。
……悪気はないのだ、本当に。
俺をないがしろにしてるとか当てつけではなく、自分がご主人様になったことを純粋に喜んでいるだけだ。
「(まあ何にせよ、これで俺の真の転生者ライフが始まるぜー……なんてね)」