粘液を伴いながら打ち付ける肉の音。前後に運動する自分の腰が、か細い女の股を打ち当てる。
テーブルランプの小さな灯りの中、密室のダブルベッドで愛情を育んでいた。今も恋人握りで手を繋ぐ彼女の温もりが、視界、両手、そして股間に伝わっている。
彼女は158cm程の身長で、華奢な体格が健気に思えた。前髪をパッツンに切り揃えたヴァイオレットカラーのセミロングヘアーに、宝石のように輝く同色のまん丸な大きい瞳。童顔とも呼べる幼げな顔つきは未成年にも見え、無機質な肌質は人形を彷彿とさせた。彼女の身体も非常に控えめであり、慎ましやかな胸には起伏がなく、ブロッサムピンクの明るいピンク色の乳首が愛らしい。
細い腰に、細長い脚。小さな両手に、滑らかな腹部。そして今も欲望のままに貪る秘部は非常に小さく、こちらのペニスを無理して咥え込んでいた。彼女の秘部は作り物のようにつるつるとしており、手入れされたパイパンに小さな大陰唇、入口の狭い膣口が一種の聖域を思わせる。
彼女は直にも、絶頂を迎えた。端的な喘ぎ声と共に腰を痙攣させた彼女は、自身の絶頂を抑え込むようにベッドへと重心をかけていく。そんな彼女を愛おしく感じた自分は彼女に覆い被さると、繋いでいた手を離し、その両手を彼女の背中や後頭部に回しながらキスをした。
彼女はキスに応じ、こちらの首の後ろに両手を回しながら抱き寄せてくる。のめり込む口付けにお互いが没頭する中、自分は彼女に密着しながら目を合わせてみせた。
「ラミア、愛しているよ」
「ウチも、カンキさんのコトを愛しています」
「ずっと一緒にいよう」
「約束、破らないでくださいね??」
可愛げな声音と面持ちで、意外と淡泊な調子で喋る彼女。そんな彼女も愛らしい。
既に友情を越えた関係性を築き上げた自分らはベッドに深く沈み込むと、繋がり合った姿のまま、二人だけのひと時に溺れ切った――
――何か、大切なことを忘れている気がする。
西暦2030年 日本 東京……。
昼下がりの日差し、雑多な都会の街中、環境音が入り乱れるごく普通な日常の中で、自分は空虚を抱き締めるように両手を持ち上げていた。
何をやっているんだろう。自分は半ば我に返るように手を下ろすと、直にも大きな交差点の信号が青に変わったことで先陣を切るように歩き出していく。
周囲の人波に乗り、無感情な行進を続けた。その道中で度々と入れ替わる人々を見送り、迎え、顔も名前も知らない他人と足並みを揃えながら、自分はひとつの目的地を目指して歩き進める。
間もなくして見えてきたのは、アーチ状の巨大な看板。近年になって大規模の改修が施された新興歓楽街『
世間では『打倒、歌舞伎町!』と言われている龍明の街並みは、観光地を意識した華やかなつくりが印象的だった。雑貨屋や飲食店、ゲームセンターやカラオケなど、一般層に向けた店舗が多く見受けられ、そこだけ見ると普通の繁華街だ。しかし、奥へ進むにつれて段々と空気が変わり始める。スナックやキャバクラ、無料案内所やバーなどの店舗が立ち並ぶようになり、中にはバニー姿やメイド服で呼び込みを行うお店もあちこちに伺えた。
歓楽街らしい雰囲気が出てくると、自分は表通りを逸れるような小道に進んだ。昼下がりにも関わらず道中ではそれなりの人々とすれ違い、遊びに来たのだろうヤンチャな風貌の集団から、近道として利用するOLやサラリーマン、初々しい様子で練り歩く複数名の高校生など、様々な客層を感じさせた。
自分は歓楽街『龍明』の隅っことも言える場所に訪れると、ほぼ歓楽街の出口であるまぁまぁな交通量の道に出るなり、その突き当たりの交差点に堂々と構えた店舗へと視線を投げ掛けた。
レストラン&ダイニングバー『
店内には、主婦の層を中心とした数名のお客さんが食事を楽しんでいた。自分も交差点の向こうから眺めつつお店に近付くと、勇気を振り絞るように扉を開け、呼び鈴を鳴らしながら入店する。
店内からは、淡泊な女性の声で「いらっしゃいませー」と聞こえてきた。自分は只ならぬ緊張を伴いながら佇んでいると、直にも一人の女性がこちらへと歩み寄ってくる。
179cmという長身を誇る、絶世の美女だった。膝辺りまで伸ばした乳白色の長髪を分厚く束ねたポニーテールにしており、まるで意思を持つように揺らめいている。健康的な色白の肌はツヤとハリで潤いに満ちており、大人の落ち着きを持つ黒色の瞳がこちらを真っ直ぐ捉えていく。特筆するべきはその美貌で、奇跡とも呼べる造形美の顔立ちとシャープな輪郭はクールビューティーと呼ぶに相応しかった。
例えるならば、『神話の絵画に登場する女神』が如き人物。群を抜く美貌は一種の神々しさを感じさせ、加えて黄金比率のスマートな体型が一層もの神秘性を増していく。店の制服なのだろう男性的なタキシードを着用しており、ボタンを一つ外した色気を伴いながら着こなす彼女はこちらを見据えると、落ち着きのある凛々しい声音で喋り掛けてきた。
「
「は、はい! 初めまして、柏島歓喜です。今日からお世話になります。よろしくお願いします!」
「私の名はユノ。よろしく、柏島くん。入社手続きのために、事務所までご同行願えるかしら」
ユノと名乗る美女は手で進行を促し、彼女に連れられる形で店の奥へと移動した。事務所に繋がる扉を通り、更衣室も兼ねているのだろうロッカールームに案内されると、その中央に配置されていたイスに腰を掛け、向かい側のイスにユノが腰を下ろしてきた。
彼女が持ってきた複数枚の紙とタブレットを見ながら、自分は説明を聞き、必要な書類に目を通していく。所々と記入もしながら手続きを進めていると、ふとユノはそんなことを訊ね掛けてきた。
「柏島くん。ひとつ訊ねてもいいかしら」
「はい、なんでしょうか?」
「私に見覚えはある?」
自分は、質問の意図が分からなかった。もしどこかで出会っていたとしても、こんな美女を見掛けていたら絶対に覚えているだろう。
唐突な質問に言葉を失ってしまうと、次にもユノは切り替えるように凛とした調子で言葉を口にしてきた。
「軽い世間話よ。気にしないでちょうだい。じゃあ、次はこの書類を私が読み上げるから、柏島くんも一緒に目を通してもらおうかしら――」
入社手続きを済ませ、本日のやるべき事が全て終了した。約一時間程度の作業だったが、自分は自然と疲れを感じなかった。眼前に絶世の美女がいて、彼女から活力を得ていたからかもしれない。
お店のお洒落な雰囲気とフランス料理に興味を持ち、ダメもとで応募してみたアルバイト。当初は気軽に考えていたものだが、ユノの存在を受けて、自分は良い意味で期待を裏切られたような気がした。
このお店で、どんな体験ができるんだろう。巡ってきた予感に高揚を抑え切れない自分が謙虚に微笑する最中、ユノは書類やタブレットを片付けながらそれを口にしてくる。
「これで本日の業務は終了よ。お疲れ様」
「ありがとうございます。改めまして、これからよろしくお願いします」
「えぇ、こちらこそ」
ユノが立ち上がり、自分も彼女に合わせて立ち上がっていく。それからお辞儀をすると、彼女はニッと小さく笑みながら提案を投げ掛けてきた。
「柏島くん。もし時間に余裕があるのならば、このあと賄い料理を食べていきなさい」
「いいんですか? 緊張していたのか、お腹が減っちゃいまして」
「それならば、尚更と貴方を歓迎するわ。さぁ、こちらへ」
ユノの案内を受け、自分は事務所を後にした。
ホールに戻ると、既にランチの営業は終了していた。タキシード姿の女性キャスト数名が片付けや清掃に取り組む空間の中、自分はユノに席へと連れられて、そこに座っていく。
なんだか、少し申し訳ない気分になった。余計な作業を増やしちゃったかな。そんな風に思い、内心で舞い上がっていた自分を咎めていると、次にも一人のキャストがこちらの顔を覗き込んできたのだ。
158cmくらいの背丈であり、お人形さんのように可憐な人物だった。前髪をパッツンに切り揃えたヴァイオレットカラーのセミロングヘアーがあざとく垂れ下がり、宝石のように輝く同色のまん丸な大きい瞳がこちらを淡泊に見据えてくる。童顔とも言える幼げな顔つきは未成年のようにも伺え、無機質な肌質は愛らしいドールフェイスを生み出していた。
可憐な体格が健気に思え、一方でタキシードを着こなす風貌は豊富な人生経験を醸し出す。その狙いすましたかのような愛くるしさは瞬く間に男心をくすぐり、自分もまた一目惚れに近しい感情を抱いた。ユノとは異なる方面で絶世の美女である彼女は、両手を後ろにやった可愛らしい立ち姿でこちらをまじまじと見つめてくると、次にも可憐な容貌とはギャップを感じる意外と淡泊な調子で声を掛けてきた。
「どーも」
「ど、どうも」
「柏島歓喜さん、ですよね??」
「はい。アルバイトとして入社しました。精一杯頑張りますので、これからよろしくお願いします」
「相変わらず、律儀なヒトですねー。ご丁寧にどーも。ウチはラミアと言います。まー、名前は覚えて頂いても、覚えて頂かなくてもケッコーです。服装自体はこーいう堅苦しい格好をしてますけど、ウチらは気楽にやってますから、お互いに肩の力を抜いてやっていきましょー」
「ありがとうございます」
ラミアと名乗る女性は適当な調子でそれらを喋ると、ぴょこんと跳ねるように背筋を伸ばしながら言葉を続けてくる。
「賄い、食べていくんですよね?? イイですよ。カンキさんの分は用意してありますから、すぐに持ってきますよー」
「ご用意して頂いたなんて、わざわざすみません!」
「イイですよー。カンキさんのためなら、何でも。あと、別に敬語で話さなくてもイイですよ?? 名前も呼び捨てでイイです。その方がしっくりくるので」
「えっと……そう? じゃあ……よろしく、ラミア。ちょっと馴れ馴れしいかな」
「そのくらいがちょうどイイです。その方がウチとしても嬉しいですから」
「それなら、これでいこうかな。なんか、友達ができたみたいで不思議な気分だよ」
「そーですねー。ウチも同じよーな気持ちです。じゃー、賄いを持ってきますから、ちょっとお待ちくださーい」
そう言って、ラミアは淡泊な足取りでキッチンへと向かっていった。
……新たなる生活が今、期待と共に幕を開ける。