※この作品はR-18です。

せっかち姫とじっくり武人   作:矢崎未紗

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第2話(3)

「イルヴァ様、お眠いようですね。寝室へ行かれますか」

「えっ……ええ、そうね……そうするわ」

 

 慰問楽団本部での練習を終えて、午後を少し過ぎた頃。

 帰宅したイルヴァは遅めの昼食を終えるなり、食堂の椅子に座ったまま少しだけ舟を漕いでしまった。すかさずマーシーが気付いて声をかけると、イルヴァはのろのろと立ち上がって寝室を目指した。そしてまっすぐに寝台に向かうと、ころりと横になり、穏やかな波のように意識がたゆたうのを感じた。

 

(夜の睡眠時間が少ないせいかしら……)

 

 薄れていく現実。

 強い眠気に襲われながら、イルヴァはランナルとの夜を思い起こした。

 

 

 

 ――夫のランナルが直々に閨事を教えてくれるようになったあの日。

 まずランナルは、とにかくイルヴァを抱きしめた。立ったまま、あるいは、寝台の上で両膝を立てて、その間に横座りにさせたイルヴァを背後からぎゅっと包むように。それから、互いに寝台に横向きになって寝転んだ状態でも。

 ただランナルの両腕が体に巻き付いてきて、そして至近距離で彼の胸板の厚さや高い体温を感じるだけではあったが、生娘のイルヴァには、それだけでも刺激が強かった。

 長年想い続けた相手と密着する。それは単純なふれ合いではあったが、たったそれだけのことでイルヴァの心臓はドクドクと脈打ち、何をすべきか何を言うべきか、頭の中は大混乱だった。

 

 しかしランナルは落ち着いたもので、そんなイルヴァの様子などお見通しだったのか、「まずはこうしてふれ合うことから慣れていきましょう」と言って、その日は互いに横向きで向かい合って寝入ってしまった。

 それからランナルは、本当にじっくりと少しずつ、しかし確実に、イルヴァに性的なことを教えていった。

 

 イルヴァが抱き合うのに慣れてきた次は、たくさんのキスをした。イルヴァはずっと、キスというものは唇と唇がふれ合うだけだと思っていたが、唇を開けて唾液を交換するように、あんなにも舌をからませていやらしく互いを味わう行為もキスなのだと、生まれて初めて知った。

 最初のディープキスは本当に困惑した。しかし、ランナルが伸ばしてくる舌に無我夢中で応えていると頭の中がしびれてきて、それが無性に心地よかった。キスが終わってしまうと、「もっとしたい」と貪欲に思う自分がいて、そのことにイルヴァは驚いた。

 

 そうして激しいキスにも少し慣れたある日の夜、ランナルは寝間着の上を脱いだ。薄暗くした室内灯の中に浮かび上がる彼の上半身は、抱き合っていた時に感じたそのままに、とても硬質だった。

 イルヴァがランナルに惚れたのは、剣舞会での彼の姿がきっかけだった。第二陸軍第一陸上戦隊を預かる武人の彼の体は、引き締まった筋肉によって全体的に直線的で、筋肉などろくについていないイルヴァの丸みを帯びた体とはとても対照的だった――。

 

 

 

(はあ……ランナル様ってどちらかというと細身に見えるのに、服の下はきちんと武人らしくたくましくて……本当に素敵だわ)

 

 とても眠いのだが、夫の裸の上半身を思い出したイルヴァは、うっすらと目を開けた。スマートな体型に見えるのに、服の下に鍛え上げられた筋肉を隠しているランナル。そのギャップもまた、イルヴァの胸をときめかせる。

 

 グントバハロンの武家の中には、それはもう、いかにも戦う者、という見た目の者が多い。男女問わず、彼ら彼女らは常に体を鍛え、自国の防衛だけでなく、同盟国への軍事支援なども行っている。剣技、斧技、弓術、槍術など、己の得意とする得物の技術を日々磨き、体一つでたくましく生きている猛者たちだ。

 イルヴァはランナルの普段の落ち着いている様子も、長剣を手にして軽やかに舞う剣舞会の姿も、そして見るだけではわからなかった筋肉隆々で引き締まった体も、すべてが好きだとあらためて思った。

 

(ランナル様との子作りは、いつになったらできるのかしら)

 

 イルヴァは気だるげに寝返りを打つと、仰向けになった。

 

 

 

 ――ある日の夜。自分の肌を見せたランナルは、イルヴァに言った。

 

「イルヴァも寝間着を脱いでください」

「えっ、わ、私もですか!?」

 

 イルヴァは大きく目を見開いた。大好きなランナルの目の前で服を脱ぐことを躊躇し、困ったように眉がへにゃりと下がる。

 そんなイルヴァに、ランナルは理由を説明した。

 

「子作りの行為は、基本的に裸で行うものです。俺の裸を見ること、そして自分の裸を見せることの両方に慣れてください」

 

 ランナルだけでなく、自分も裸にならねば子作りはできない。そういうものならば、嫌だと言うわけにはいかない。

 イルヴァはたいそう恥ずかしいと思ったが、おずおずと寝間着を脱いだ。さいわい、下着はまだ脱がなくていいと言われたので、寝間着の下に着ていた薄い綿布のシュミーズもパンティも身に着けたままではあった。しかし、薄い生地の下着姿でランナルに抱きしめられると、羞恥心で気を失うかと思った。

 

 その日からは、下着姿で抱き合い、ふれ合い、キスを続けた。毎度緊張してしまうイルヴァだったが、そんな夜が幾日も過ぎれば、羞恥心は徐々に薄く、小さくなっていく。それどころか、そうしてランナルとふれ合うことに、熱っぽい興奮を覚えるようになってきた。

 そうしてまた数日が過ぎ、ランナルは次の段階に進んだ。そこで初めて、イルヴァは正しい子作りの方法を知った。つまり、男女それぞれの性器の作りと使い方についてだ。

 イルヴァはランナルの手に導かれて、彼の下着越しに初めて男性器をなでた。下着の下で大きく、硬くなっている肉茎の存在感は、明らかにイルヴァの小さな手のひらよりも大きい。その熱を感じながら、イルヴァは何度も何度も尋ねた。

 

「ほ、本当に、この……これが……私の中に入るのでしょうか……」

「入りますよ。恥ずかしいでしょうが、はっきりと言葉にしましょう。俺のペニスが、あなたのヴァギナの中に入る。そして、あなたの膣に俺が子種、つまり精液を出すと、あなたの腹に子が宿るのです。ですが、一度の射精で必ずできるわけではありません。女性の月の障りとのタイミングもあると言われていますので、できれば日々、子作りをすることが望ましいのです」

 

 ランナルが教えてくれた赤子ができる仕組みは、本当に初耳だった。

 宗家にいた頃、姉たちと一緒に性教育を受けたつもりではいたが、今にして思えば本当に自分は幼くて、教師の言葉を何も理解していなかった。つまり、頭の中に何も残っていなかった。そして末姫ということで教える側も、何より父母も、イルヴァの性教育に関してはおろそかになっていたのだろう。イルヴァが何も知らないまま育ってしまったことを、誰も認知していなかったのだ。

 

「イルヴァのはしたない部分もさわらせてください」

「どっ、どうしてですのっ!?」

「何も準備をせずに挿入すると、イルヴァが痛みを感じてしまうからです。女性のその部分は、やさしくさわられたり、先に指を入れられたりすると、粘性のある潤滑油を出します。濡れる、という状態です。しっかり濡れていれば、挿入の痛みが軽減されるのです。それに、さわり方次第では、イルヴァが気持ちいいと思えるはずです。性行為は、子作りだけが目的ではありません。互いに心地よさを得て、お互いの愛情をたしかめ合う行為でもあります」

「そ、それは……つまり、その……」

「かわいいイルヴァを、気持ちよくさせたい……ということです」

 

 そう言ってイルヴァの女の秘所に手を伸ばしたランナルは、イルヴァのふにっとした割れ目や恥肉を下着越しにやさしくなでさすった。しばらく互いにさわり合っていると、イルヴァの胸には妙な心地が生まれてきた。

 武人の彼の大きく、そして皮が硬くなった手のひらが、自分の恥じらいの丘全体を覆う。それは恥ずかしいことではあったが、同時にイルヴァは、この行為に続きがあることを自然と悟った。心と体を包むこの妙な気持ちには、もっと先がある。そしてその場所で感じるのは、ランナルの言う「気持ちいい」という感覚なのだろうと。

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