デカパイ高級アンドロイドテスター企画inショタ 作:すばみずる
小学五年生のケンタにとって、自室に設えられたPCモニターは退屈な日常から抜け出すためのただ一つの窓だった。
物心ついた頃から身の回りには電子機器が溢れていたが、自分専用の端末を与えられてからというもの、ケンタはインターネットという果てしない情報の海に魅了されていた。放課後になれば脇目も振らずに帰宅し、ランドセルを放り投げて電源を入れるのが毎日のルーティンになっている。
最初はただ純粋な娯楽を求めていた。クラスの男子たちの間で話題になっている動画配信者のくだらないイタズラ企画を見て腹を抱えて笑ったり、夢中になっている対戦型ゲームの最強ランキングを調べたり。情報の波に乗ることは、十歳を過ぎたばかりの少年の知的好奇心を大いに満たしてくれた。
だが検索エンジンの使い方を覚え、どのリンクに踏むのが正しいのかと慣れてくると、ケンタの興味は自然と別の領域へと足を踏み入れていく。
それは大人の世界への入り口。いわゆる、ちょっとえっちな話題である。
深夜のバラエティ番組で偶然目にした水着姿のグラビアアイドルや、アニメに登場する露出の多い女性キャラクターの名を検索窓に打ち込み、食い入るように見つめる。年齢確認を求める警告文すら、自分は十八歳以上であるというボタンをいつしか平然とクリックして突破するようになっていた。
背徳感と好奇心が入り交じるスリルは、それ自体がケンタを大いに興奮させていた。
そんなある日のことだった。学校の昼休み、窓際の席に集まっていた男子たちの密やかな会話がケンタの耳に飛び込んできた。
「なあ、知ってるか。駅の裏側の路地を入ったところにさ、アンドロイドのふーぞくがあるらしいぜ」
「マジで!? ふーぞくって大人の店だろ!? アンドロイドってことはロボット相手にすんの?」
「バカ、ただのロボットじゃねえよ。人間の女の人と全然見分けがつかないくらいすっげえリアルなんだって! 信じられないくらい胸がでかいキャストがいっぱいいるらしいぞ!」
声変わりも始まっていない同級生たちが、背伸びをして口にするふーぞくという言葉。ケンタはその正確な意味やシステムを理解していなかったが、そこが大人の男たちだけが通うことを許された秘密の遊び場であり、途方もなく綺麗な女性たちがいる場所だということくらいは、これまでのネットサーフィンで得た知識から容易に想像がついた。
その日の放課後、ケンタはいつも以上に早足で自宅のマンションへと帰り着いた。
ただいまという習慣がケンタの中では既に廃れている。誰もいない薄暗い玄関で靴を脱ぎ捨て、一直線に自室へと向かった。手慣れた動作で端末を起動し、ブラウザを立ち上げる。検索窓に最寄りの駅名、ふーぞく、そしてアンドロイドという三つの単語を入力し、エンターキーを強く叩く。
検索結果の一番上ではふーぞくが風俗と直されつつ、『あんあんめいでん』という店舗の公式ウェブサイトが表示された。迷うことなくリンクを踏むと、画面は暗転し、次々と美麗な画像がスライドショーのように映し出されていく。
そこに並んでいたのは、キャストと呼ばれる女性型アンドロイドたちの宣材写真だった。高級感のあるドレスや、面積の少なすぎる布切れのような衣装を身に纏った彼女たちは、一様にこちらを誘うような艶やかな笑みを浮かべている。
ケンタはマウスのホイールをゆっくりと転がし、キャスト一覧のページを食い入るように見つめた。どのキャストも、学校にいる女子たちとはもちろんのこと、テレビで見るアイドルと比べても、明らかに異質なまでの美しさと肉感的な体つきを誇っていた。
細く引き締まったウエストから広がるなめらかな腰のライン。そして衣服を内側から破ってしまいそうなほどに膨れ上がった胸の谷間。現実の人間では重力に逆らえないであろう質量が、画面越しに圧倒的な色香を放っている。
ケンタはごくりと生唾を飲んだ。体の奥底が熱くなるような、奇妙な感覚に襲われる。
こんな綺麗でえっちなお姉さんたちが、自転車で十分も走れば着く駅のすぐ近くにいるのだ。
ケンタはすっかり夢中になっていた。もっと他のキャストも見たい。他にはどんなお店があるのだろう。好奇心の赴くままにいくつものリンクをクリックし、より過激な画像を探して潜っていく。
その時。あるポータルサイトの画面右下に、ひときわ目を引く黒い広告バナーが音もなくポップアップした。
『完全受注生産・最高級ワンオフモデル 無料モニターキャンペーン実施中』
普段なら怪しい広告だと直感してすぐに閉じるボタンを押しているところだ。しかし、バナーの背景にうっすらと透けて見える女性のシルエットと、最高級アンドロイドという文字がケンタの視線を釘付けにした。
無料モニターというのはパソコンモニターなどのことではなく、テストをするとか、ものをもらって試しに使う人なのだというのはケンタも聞いたことがあった。バナーに書かれた細かい文字を読んだところ、つまりアンケートに答えるだけで抽選で最新型のアンドロイドが手に入るらしい。
リンク先に出てきた大人向けの難しい漢字が並ぶ規約の文章は、今のケンタの頭にはまったく入ってこなかった。脳内は、先ほどまで眺めていたキャストたちの豊満な肢体で埋め尽くされている。
もしかして、さっき見たようなすっごくえっちで綺麗なお姉さんが家に来るんじゃないか。
短絡的で飛躍した妄想に取り憑かれて、気がつけば吸い寄せられるように進むボタンをクリックしていた。
画面が切り替わり、黒を基調とした無駄のないデザインの入力フォームが表示された。
質問事項は多岐にわたっていた。アンドロイドに対する認識や好感度、価格帯のイメージや容貌といった客自身の説明から始まり、もし望むならという体裁でこのモニターで貰えるアンドロイドの身長や体型の希望、髪の色、目の色、さらには性格の傾向や求める機能まで、細かなパラメーターを設定できるようになっている。
ケンタは先ほどのキャストたちの写真を思い出しながら、直感の赴くままに選択肢を埋めていった。とにかく背が高くて、スタイルが良くて。胸は一番大きいやつがいい。
髪は綺麗な銀色で、目は涼しげな青色。服装は、アニメで見たことがあるメイド服みたいなのがいいかもしれない。性格の欄には、優しい、真面目、というありきたりな項目にチェックを入れておく。
入力しながら、頭の何処かが冷めていくのをケンタは感じていた。どうせこんなものは、ゲームの無料ガチャと同じで当たるはずがないのだ。軽いお遊びのつもりで、ケンタは理想の女性像を適当に形作っていく。
だが、ふざけ半分で入力フォームを埋めていくケンタの心の奥底には、彼自身もはっきりと自覚していない切実な思いが隠されていた。
ケンタの両親は大手企業に勤める研究員で、とにかく忙しかった。朝はケンタが起きる前に家を出ており、夜は深夜にならなければ帰ってこない。海外出張も珍しくなく、家族三人で食卓を囲んだ記憶は、この半年間で片手で数えるほどしかなかった。
広いタワーマンションの高層階にある一室。そこはケンタにとって、広すぎる鳥籠のようなものだった。
家に帰っても出迎えてくれる声はない。冷蔵庫には常に栄養バランスを考えられた高級なレトルト食品が常備されており、電子レンジで温めるだけで食事は完結する。
たまに家にやってくるのは生活用品の配送業者か、清掃業者が手配した無機質な円盤型の家事ロボットだけだ。決まった時間に来訪し、チリひとつ残さずフローリングを磨き上げ、一切の言葉を発することなく帰っていく。アンドロイドとは違う、ただプログラムされた業務をこなすだけの機械だ。
もしもこの広くて冷たい部屋に、自分以外の誰かがいてくれたら。
ただいまと言えば、おかえりなさいと微笑み返してくれる存在。学校であった嫌なことを聞いてくれて、一緒にテレビを見て笑い合える相手。温かいご飯を作って、向かい合って座ってくれる誰か。
えっちなことへの興味はもちろんある。だがそれ以上に、彼にとっては切実な願いも同時に存在していた。
すべての項目を埋め終え、一番下にある送信というボタンにカーソルを合わせる。
本当に誰かが来てくれたらいいのに。
そんな叶うはずもない淡い祈りを込めながら、ケンタはマウスの左ボタンをカチリと押し込んだ。
一瞬のラグのあと、画面が切り替わる。
『ご応募ありがとうございました。厳正なる審査の上、当選者には後日製品を発送させていただきます』
事務的な短いメッセージが表示されただけのあっけない幕切れに、ケンタは小さく息を吐いた。当落がすぐに分からないのは書いてあったが、それでも何の捻りもない画面に、やはりただのアンケートだったかと少しだけ拍子抜けする。
窓の外を見るといつの間にか太陽は沈み、高層ビル群の夜景が広がり始めていた。モニターの青白い光が静まり返った部屋の壁を虚しく照らしている。
部屋の隅に置かれた時計の針が時を刻む音と、端末の冷却ファンが回る微かな駆動音だけが、やけに大きく響いていた。
ケンタは背もたれに深く寄りかかると、再び先ほど見ていた店舗のページを開き直す。
明日はどんな話題でクラスの男子たちと盛り上がろうかと考えながら、モニターの中で永遠に微笑み続ける美しいアンドロイドたちを、いつまでも飽きることなく眺め続けた。
うだるような八月の熱気が、アスファルトから陽炎となって立ち昇っていた。
夏休みに入っても両親の多忙ぶりは変わらず、ケンタは日中の大半を一人で過ごすか、あるいは学校のプール開放や講習、図書室に通って暇を潰す日々を送っていた。
あの日、好奇心と衝動に突き動かされるままに謎の懸賞フォームへ情報を打ち込み、送信ボタンを押してから数週間が経過していた。
最初の数日は本当にあのえっちなお姉さんが家に来るのではないかと、インターホンが鳴るたびに胸を躍らせていた。しかし来るのは見慣れた配達業者か、定期的に巡回してくる清掃ロボットや家電のメンテナンス業者ばかり。
次第にケンタの頭の中からも、あの怪しげな広告バナーの記憶は薄れつつあった。所詮はネットの片隅に転がっている、個人情報を集めるだけの悪質なイタズラだったのだろうと、子供ながらに半ば諦めと納得の境地に達していたのだ。
学校で開催される夏期講習を終えた今日もまた、何事も起きない退屈な一日が終わろうとしている。
夕暮れ時の赤紫に染まった空を見上げながら、ケンタは重い足取りで自宅である高層マンションのエントランスへと足を踏み入れた。
自動ドアを抜けると、ロビーの冷気が火照った体を優しく包み込む。コンシェルジュデスクには誰もいない時間帯で、静まり返った空間には微かな環境音楽だけが流れていた。
そのまま自室行きの専用エレベーターへ向かおうとしたケンタの足が、ふと止まった。
ロビーの奥、居住者用の郵便受けと宅配業者向けの巨大な置き配ボックスがずらりと並ぶエリアに、見慣れない人影があったからだ。
それは、この高級マンションの空間にはおよそ似つかわしくない、ひときわ異彩を放つ姿だった。
漆黒の生地に純白のエプロンが映える、古典的でありながらもどこか洗練されたデザインのメイド服。背中まで伸びた髪は、照明の光を反射して白銀の絹糸のように眩く輝いている。
女性は一番大きなサイズの置き配ボックスの前にしゃがみ込み、開け放たれた扉の奥を真剣な面持ちで見つめていた。両手を広げてボックス内の幅や奥行きを測るような仕草をしているが、何か荷物を入れようとしているわけでも、取り出そうとしているわけでもない。ただひたすらに、空間の寸法と何かを比較し、深く思案しているようだった。
その奇妙な行動よりもケンタの視線を強烈に惹きつけて離さなかったのは、彼女が屈み込んだことによって生み出された肉体のラインだった。
膝を曲げて腰を落とした姿勢によって、黒いスカートの布地が内側から弾け飛ばんばかりに張り詰めている。そこからスラリと伸びる太腿の輪郭は健康的でありながらも艶めかしく、布越しでもはっきりとわかるほどに豊かな丸みを帯びた臀部がふりふりと小刻みに揺れるたびにケンタの目を釘付けにした。
まだ小学生のケンタにとって、それはあまりにも刺激の強すぎる光景だった。喉の奥がカラカラに渇き、心臓の鼓動が急に早鐘を打つ。
見てはいけないものを見ているような背徳感を覚えながら、どうしても目を逸らすことができない。
しばらくその場で立ち尽くしていたケンタだったが、女性があまりにも真剣にボックスと睨み合いを続けているため、微かな好奇心が警戒心を上回った。
「あの……どうかしたんですか?」
上擦りそうになる声を必死に抑え込み、ケンタは背後から恐る恐る声をかけた。
ぴたりと、女性の動きが止まる。ゆっくりと立ち上がり振り返った彼女の顔を見た途端に、ケンタは息を呑んだ。
人間離れした、という表現がこれほど似合う存在を、ケンタは他に知らなかった。透き通るような白い肌は陶器のように滑らかで一切の瑕疵がない。涼しげで知的な光を宿した青い瞳は、宝石をそのままはめ込んだかのように深く澄み切っている。
スラリとした手足と、極端にくびれた細い腰。そして立ち上がった彼女はケンタが大きく首を仰け反らせて見上げなければならないほどの長身は圧倒の一言だった。
「これは、こちらのマンションにお住まいの方ですか。お邪魔をしてしまい、大変申し訳ございません」
女性は鈴を転がすような澄んだ、それでいてどこか抑揚の少ない静かな声で紡いだ。そしてスカートの裾を軽く摘まみ、西洋の貴族のように恭しく頭を下げる。
それと同時に、前傾姿勢になった彼女の胸元が、重力に従ってたぷんと形を変えていく。
細いウエストからは到底不釣り合いな柔らかい果実が、緩やかなお辞儀に伴いメイド服を露骨に震わせた。
布地を押し上げる巨大な二つの膨らみと、その間に生まれる深く、暗く、どこまでも続くような谷間。
あの日、モニター越しに食い入るように眺めていたふーぞくのアンドロイドたちの画像ですら、目前のリアルの前ではひどく霞んで見えた。
「あ、あの……」
目を奪われたまま硬直しているケンタに対し、女性は姿勢を戻すと、ひどく真面目な顔つきで状況を説明し始めた。
「私は、本日こちらへ配送されるよう手配されておりましたアンドロイドでございます。しかしながら、受け取り手であるご主人様がご不在のようでした。まだ正式な所有権の譲渡および初期設定が完了していない配送移動中の身であるため、私個人の判断でマンションのオートロックを無断で通過することはセキュリティ規約に違反いたします」
淡々と告げられる言葉の意味を、ケンタの脳は必死に処理しようとしていた。
「そのため、規定通り『宅配物』としてこちらの待機スペースにてご主人様の帰還をお待ちしようとしたのですが……残念ながら、最も容積の大きな宅配ボックスであっても、私の体躯を格納するには寸法が足りず、いかにして収納されるべきか、思案していたところでございます」
真顔でとんでもないことを言っている。
完璧な美貌と冷静沈着な佇まいとは裏腹に、与えられたプログラムや規定を馬鹿真面目に遵守しようとするあまり、自ら暗く狭い箱の中に収まろうとしていたのだ。その不器用でどこかズレた一面に、ケンタは毒気を抜かれたような気分になった。
同時に、ある確信がよぎる。
アンドロイド。白銀の髪。青い瞳。そして、規格外のプロポーション。
それはまるで、あの日ふざけ半分で入力した欲望のままのパラメーターが、そっくりそのまま目の前に具現化しているのではないか。
「もしかして……」
ケンタは、乾いた唇を舌で舐め湿らせてから、震える声で尋ねた。
「宛先って、2024号室の高坂ケンタ、ですか」
女性の青い瞳が、僅かに見開かれた。
「はい、その通りでございます。2024号室の高坂様宛に配送手配がなされておりますが」
ビンゴだ。
夢でも幻でもない。あの怪しげな懸賞は本物だったのだ。
ごくり、と。ケンタは大きく喉を鳴らした。心臓の音が耳の奥でうるさいほどに響いている。
「その受取人、僕です。僕が、高坂ケンタです」
告げた瞬間、女性──アンドロイドは、涼しげな瞳でケンタの顔をじっと見つめ始める。まるで網膜の奥にある何らかのデータをスキャンしているかのような、静かで射抜くような視線だった。
「……あなたが、私の新しいご主人様と。確認のための身分証などはお持ちですか?」
身分証。小学生のケンタがそんな立派なものを常に持ち歩いているはずもない。ランドセルの中にあるのは教科書とノート、財布にもせいぜい小銭と図書カードくらいだ。
「えっと、学校には持って行ってなくて……あっ、部屋まで保険証を取りに戻るから、ちょっと待ってて」
踵を返そうとしたケンタの動きを、アンドロイドの静かな声が引き留めた。
「それには及びません。懸賞の応募フォームにて入力していただいたマイナンバー、およびそこに紐づけされた生体情報の読み取り機能は、当機体のシステムにも標準搭載されております」
生体情報の読み取りはケンタも病院で覚えがある。窓口でパネルなんかに手を乗せるものだ。指紋か、それとも虹彩認証だろうか。ケンタがきょとんと立ち尽くしていると、アンドロイドは音もなく歩み寄り、ケンタの目の前でスッとしゃがみ込んだ。
目線が同じ高さになる。ほのかに甘い花のような、清潔で蠱惑的な香りが鼻腔をくすぐった。
「え……?」
間抜けな声を漏らすケンタの脇下に、白く滑らかな両手が差し込まれる。
次の瞬間、ふわりと体が浮き上がった。
見上げるほどの長身を誇るアンドロイドは、自分よりも一回り以上小さなケンタの体を、まるで羽毛のクッションでも扱うかのように軽々と抱き上げたのだ。
「わっ、わぁっ!?」
両足が宙に浮き、ケンタはパニックに陥った。抵抗する間もなくアンドロイドの美しい顔が眼前に迫る。
そして。柔らかく、ほんのりと熱を帯びた唇が、ケンタの唇を塞いだ。
「……っ!?」
驚愕に目を見開くケンタの口内に、躊躇いなく湿った舌が侵入してくる。
機械という言葉から連想される無機質な冷たさは微塵もなかった。それはあまりにも生々しく、生身の人間以上に温かく、そして甘美な味すらもたらす粘膜の感触だった。
ケンタの小さな舌に絡みつき、口内の隅々までを舐め回すように這う柔らかな肉。唾液が混じり合う淫らな水音が、静かなロビーに微かに響く。
「んっ……ちゅ……れろ……」
アンドロイドの喉の奥から漏れ出た、艶を帯びた熱い息遣い。
脳髄が痺れ、全身の血が沸騰するような強烈な官能。初めて経験する濃密すぎる大人のキスに、ケンタは為す術もなく体を強張らせ、ただその甘い暴力に蹂躙されるしかなかった。
長い長い粘膜の接触の後、ようやく銀糸が引くようにして二つの唇が離れた。
酸素を求めて肩で息をするケンタを抱きかかえたまま、アンドロイドは自身の胸元にケンタの頭を優しく引き寄せた。
頬に押し当てられたのは、先ほど視線を釘付けにされた豊かな乳房だ。乗せられたケンタの頬をしっかりと押し返しているはずなのに、底なしの柔らかさを感じさせる極上の肉のクッションが、ケンタの顔を包み込む。
「生体情報の照合、完了いたしました」
身動きすら取れない状態の中で頭上から降ってきたのは、先ほどまでの事務的な響きとは少し違う微かな熱を孕んだ声だった。
「私はプラティア。今日から、あなた専用のアンドロイドです」