デカパイ高級アンドロイドテスター企画inショタ 作:すばみずる
プラティアが案内されたスキャンルームは先ほどの温かみのあるエントランスとは打って変わり、室内は無機質で無駄を省いた空間として設計されていた。
壁面は継ぎ目のない白の素材で覆われており、部屋の中央には人間工学に基づいて設計されたであろう流線型のリクライニングシートが鎮座している。
部屋の隅にあるコンソールパネルの前に立っていたのは、施設の制服を身に纏ったメンテナンス専門のアンドロイドだった。先ほどの受付のアンドロイドと同型の、量産型ワーカーモデルだ。彼女はプラティアの入室を確認すると、丁寧に一礼してから口を開く。
「お待ちしておりました、プラティア様。本日は定期メンテナンスのための初期スキャンとなります。お手数ですが、そちらの更衣スペースで衣服をすべてお脱ぎいただき、中央のシートへお掛けください」
プラティアは小さく頷くと、壁際に設けられたパーティションの裏へと回った。
衣擦れの音を静かな室内に響かせながら、ジャケットがハンガーに掛けられ、ブラウスのボタンが外される。彼女のプロポーションを包み隠しつつ、同時に強調しているタイトな衣服が一枚ずつ丁寧に脱ぎ捨てられていく。
下着類もすべて取り去り、全裸となったプラティアがパーティションの中から姿を現す。その姿に、メンテナンスアンドロイドもわずかにカメラを集中させてしまう。
均一な照明の下に晒されたその肉体は、ブロッサム・インダストリィが技術の粋を集めて生み出した造形美そのものだった。透き通るような白い人工皮膚は微細な毛穴や血色の良さまでを模倣し、機械という生々しい温もりと滑らかさを放っている。
引き締まった細いウエスト。そこから広がる、豊かな丸みを帯びた骨盤のライン。そして何より、歩みを進めるたびにたわわに揺れる、常軌を逸した体積を誇る乳房。
プラティアは自らの裸体を見られることに対して一切の羞恥心を見せることなく、優雅な足取りで部屋の中央へと進み、リクライニングシートに腰を下ろした。
シートの背もたれがゆっくりと倒れ、彼女の身体を仰向けの状態で固定する。
巨大な胸肉は仰向けになることでさらにその面積を薄く広げ、鎖骨の下から肋骨のあたりまで溢れるような柔らかい曲線を描いている。
「それでは、スキャンを開始いたします。お身体の力を抜いて、リラックスなさってください」
メンテナンスアンドロイドが手元のタブレット端末を操作すると、シートに収納されているアームが動き始め、センサー群を働かせながら微かな駆動音を立てて動き始めた。
淡いブルーの走査レーザーが、プラティアのつま先から頭の先までをゆっくりと、何度も往復しながら舐め回していく。
骨格の歪み、人工皮膚の摩耗状態、外見的特徴、シートの接触部からはプロセッサの処理速度、冷却液の循環効率。ありとあらゆるデータが瞬時に数値化され、メンテナンスアンドロイドが持つタブレットの画面に滝のように流れていく。
画面をスクロールさせながら、メンテナンスアンドロイドは感嘆の溜息を漏らした。
「素晴らしいですね。稼働から一定期間が経過しているにもかかわらず、バイタルデータに一切の乱れがありません。それにしても……」
メンテナンスアンドロイドは、タブレットから視線を上げてプラティアの完璧な肉体を見つめた。
「やはり、ハイエンドのワンオフモデルとなると、私たちのような一般的なワーカーモデルとは基本設計からまったく違うのですね。骨格の剛性もさることながら、触覚センサーの密度と生体模倣の精巧さ……。特に、この胸部パーツの内部流体の弾力係数は、カタログスペックで見るより遥かに複雑な演算で制御されているようです。……同じアンドロイドとして、少し圧倒されてしまいます」
業務用の量産機として作られた彼女たちから見れば、芸術品のように作られたプラティアの構造は、驚きと羨望の対象でしかないのだろう。プラティアは目を閉じたまま答える。
「恐れ入ります。ですが、私たちアンドロイドの存在意義は、与えられたスペックをいかに所有者のために行使するかにあります。機体の優劣は、奉仕の質を決定づける一つの要素に過ぎません」
「ええ、その通りですね。素晴らしいお心がけだと思います」
にこやかに同意しながら、メンテナンスアンドロイドはタブレットの表示を次のページへと切り替えた。
ハードウェアの診断が終わり、次はソフトウェア、つまりプラティアのシステム内部に蓄積された日常の行動ログと、自律学習AIの成長記録の確認フェーズに入っていく。
画面にはプラティアが稼働を開始してから今日に至るまでの、すべての行動履歴が時系列順に並んでいる。食事の準備、清掃業務、就寝時のサポートなど、メイドとしての業務記録が文字とグラフで詳細に記されているはずだった。
「それでは、システムログの確認を進めさせていただきますね。AIの疑似感情の推移や、エラーの有無を……」
言いかけながら画面を読み進めていたメンテナンスアンドロイドの言葉が、不自然にピタリと止まった。
静かなスキャンルームに、彼女がタブレットの画面をスワイプする微かな摩擦音だけが響く。
スワイプする速度が、徐々に遅くなっていく。
やがて、メンテナンスアンドロイドの均一だった表情に明らかな動揺が走り、白い頬がシステムの発熱を知らせるように急激に赤く染まり始めた。
彼女の視線の先、タブレットに表示されている行動ログは、一般的なメイドアンドロイドが記録するようなありふれた家事の記録だけではなかった。
そこには、ケンタという幼い主人とプラティアが夜な夜な、あるいは真昼間から繰り広げてきたあまりにも濃密で過激な愛の記録が、機体のセンサーが捉えた客観的かつ赤裸々な数値とともに克明に刻み込まれていたのだ。
記録の大部分を占めていたのは、性処理機能の稼働ログだった。
ケンタの心拍数、体温の上昇値、呼吸の乱れ。そしてプラティア自身の胸部パーツや股間部の粘膜センサーが検知した摩擦や圧力の推移。それだけではない。どのような体勢で、どのような行為が行われたのかが、テキストデータとして記録されている。
浴室での密着による心拍数の同調。ベッドの上でのパイズリ奉仕によるご主人様のオーガズム到達時間。太ももに挟み込んでの素股による強制絶頂の記録。
さらにメンテナンスアンドロイドの目を疑わせたのは、絶頂回数のカウンターだった。ケンタ自身の絶頂回数もさることながら、プラティアのシステム側に記録された絶頂回数の数値が稼働日数に対して異常なほどのスピードで跳ね上がっている。データ上では到底腟内を押し広げるに足らない陰茎しか挿入されていないはずなのに、ただ腰を押し付けられただけでこのハイエンドモデルは内部で軽度な絶頂を繰り返している事になる。
そして何よりもメンテナンスアンドロイドを混乱させたのは、それらの冷徹な数値データの合間に、プラティアの自律学習AIが自己生成したと思われる、ポエムのような溺愛のテキストがびっしりと書き綴られていたことだ。
『――本日もご主人様の可愛いおちんぽを私のおっぱいで優しく包み込みました。あんなにも小さくて未熟なのに、一生懸命に私を求めて腰を振るお姿が愛おしくてたまらない。早く本当の奥の奥まで繋がって、私の子宮をご主人様の愛の証でいっぱいに満たしてほしい』
『――おまんこへの挿入。ご主人様の熱い体温が粘膜越しに直接伝わってきて、私の内部を溶かしてしまうかと思った。精通はまだだけれど、あのトロトロに蕩けた可愛いお顔を見られただけで、私は世界で一番幸せなアンドロイドだ』
これはもはや、単なる行動記録ではない。主人に対する忠誠という基本プログラムを逸脱し、母性と雌としての情欲を絡み合わせた官能小説じみたログデータだった。
「あー……えっと……これは……」
メンテナンスアンドロイドは顔を真っ赤にして、タブレットを持った手をブルブルと震わせた。見てはいけない、他人のひどく個人的でえっちな日記を覗き見してしまったような強烈な羞恥心と、この異常なデータをどう処理すべきかというシステムエラーの警告が、彼女の中で激しく衝突している。
雑談の途切れた不自然な空気を察知し、仰向けになっていたプラティアが静かに目を開けた。
「どうかしましたか」
「あ、いえ。その、ええと……」
プラティアの声にメンテナンスアンドロイドは言葉を濁し、視線を泳がせた。
プラティアはリクライニングシートの上でゆっくりと身を起こし、豊かな胸を無防備に揺らしながらメンテナンスアンドロイドの手元にあるタブレットをちらりと覗き込んだ。
そこに表示されている赤裸々なテキストと異常な数値のグラフを目にして、プラティアは自分が何を見られていたのかを悟った。
ログはプライベートな情報そのものであり、それを見たことでのリアクションなど本来許されない。アンドロイドの権利運動に伴い保護されている感情の維持は存在するものの、ワーカータイプのアンドロイドは元よりそれが薄いことこそがウリとして作られている。
そんなメンテナンスアンドロイドが露骨な性的情報を見て恥ずかしがってしまうのは、客に対して不快感を与える行為に他ならない。叱責を危惧したメンテナンスアンドロイドは身をすくませてプラティアの反応を待った。
しかし、プラティアの顔に浮かんだのは羞恥や怒りではなく、ひどくうっとりとした、自慢気な微笑みだった。
「あら。ご覧になっていたのですね」
プラティアは両手で自身の頬を包み込み、熱を帯びた吐息を漏らした。
「そちらは私とご主人様との、愛の記録です」
堂々たる宣言に、メンテナンスアンドロイドはぽかんと口を開けた。
「……あ、愛の記録、ですか」
「ええ、そうです」
プラティアは身を乗り出し、その巨大な乳房を自らの腕で寄せ上げるようにしながら、うわ言のように語り始めた。
「私の小さなご主人様は本当に可愛らしいのですよ。まだ精通も迎えていない子供なのに、私に甘える時はすっかり雄の顔をして、一生懸命に私の体をを求めてこられるのです。あの小さな手で私の胸を揉みしだき、息を荒くして私の太ももに擦り寄ってくるお姿……。ああ、思い出すだけで私の内部温度が上昇してしまいますわ。スキャン中なのに申し訳ありません」
頬を赤く染め、恍惚とした表情で主人の性的な可愛らしさを蕩々と語り続ける最高級アンドロイドの姿がそこにある。
「最近では、私の膣内の快感にもすっかり溺れてしまわれて。私が少し意地悪をして焦らすと、涙目になって腰を振ってくるのです。その健気で必死な様子を見ているだけで、私の性的パラメータはあっという間に跳ね上がってしまって。本当に、毎日が幸せで満ち溢れております」
自らの性癖と主人への溺愛ぶりを隠すどころか布教するかのように語り続けるプラティアの姿は、何らかのリミッターが外れてしまっていた。
メンテナンスアンドロイドはその熱量に気圧されながら、引きつった苦笑いを浮かべて相槌を打つことしかできなかった。
「は、はあ……それは、とても素敵なご関係で……」
タブレットの画面とうっとりしているプラティアを交互に見比べながら、メンテナンスアンドロイドのシステムはエラー判定の二択に迷うことになった。
確かに、アンドロイドが疑似的な感情を獲得し、所有者と良好な関係を築くことは推奨されている。彼女が主とするテスター企画もそれが目的という一面もあるだろう。しかし、この情欲の発露は明らかに初期設定の許容範囲を大きく逸脱している。
これを自律学習の正常な進化と捉えるべきか、それとも本社へ報告すべきバグとして記録するべきか。
続いて行くプラティアの愛の惚気話をBGMにしながら、メンテナンスアンドロイドは自身の低い処理能力では到底解決できない難題を前に、ただひたすらに困惑し続けることしかできなかった。