デカパイ高級アンドロイドテスター企画inショタ 作:すばみずる
愛の記録と称して赤裸々なログを語り続けるプラティアを前に、メンテナンスアンドロイドは処理能力の限界を超えかけていた。
しかし、彼女もまたこのリフレリリースに配備された専門の機体である。異常なテキストデータにはこれ以上触れないという安全策を選択し、強引に話題を機体の物理的な診断結果へと引き戻した。
「え、ええと……初期スキャンの結果が出揃いました」
メンテナンスアンドロイドはタブレットの画面を切り替え、事務的なトーンを必死に保ちながら告げた。
「ハードウェア、および生体模倣組織に異常は見られません。関節部の摩耗や劣化もなく、非常に良好な状態を保たれております。メンテナンス項目といたしましては、このままシート上で行える軽度なセンサー群のキャリブレーションと、関節部への微量のオイル補充のみで完了する程度です。専門のメンテナンスルームへの移動は必要ございません」
プラティアはリクライニングシートに仰向けになったまま、満足げに微笑んだ。ケンタのもとへ早く戻れることを意味していたからだ。
「素晴らしい結果ですね。私の身体が完璧な状態に保たれているということは、これからのご主人様へのご奉仕にも一切の支障が出ないということですもの。それでは、速やかにキャリブレーションをお願いいたします」
促されるままに、メンテナンスアンドロイドはコンソールを操作した。
シート周囲の機器が駆動し始めて、プラティアの全身のセンサー感度を最適化していく。同時に極細のノズルが関節部にアクセスし、オイルの充填もされていく。
すべての工程は、ものの数分で完了した。リクライニングシートがゆっくりと起き上がり、プラティアの身体を解放する。
「これにて、本日の定期診断および初期メンテナンスはすべて終了となります。お疲れ様でした」
定型句と共にメンテナンスアンドロイドは深く一礼し、コンソールの引き出しから一枚の漆黒のカードキーを取り出した。表面には、彼女たちが仰ぐ企業のエンブレムが金色の箔押しで刻まれている。
「こちらはモニター参加者様への特別優待である、VIP専用個室のカードキーでございます。完全防音のプライベート空間となっておりますので、どうぞご同伴者様とご一緒に、心ゆくまでご利用くださいませ」
恭しく両手で差し出されたキーを受け取りながら、プラティアはある確認事項を口にした。
「たしかこちらのVIPルームには、専門のエステティシャンによる施術を受けられるオプションサービスが存在すると伺っておりましたが」
「はい、おっしゃる通りです」
メンテナンスアンドロイドは再びタブレットを操作し、プラティアの視界にホログラムのデータを投影した。
「本日のお部屋では、アンドロイドと人間の双方の生体構造に対応可能なエステティシャンアンドロイド、パルフェとショコラの二機が待機しております」
空中に浮かび上がったのは、ふんわりとしたパステルカラーの制服に身を包んだ、瓜二つの可愛らしい双子のアンドロイドの姿だった。
プラティアはその双子のスペックシートを瞬時に読み込んだ。人間の複雑な筋肉構造をほぐす技術と、アンドロイドの人工皮膚を磨き上げる用の施術プログラム。その両方を高度な次元で兼ね備えていることを確認し、プラティアの青い瞳が怪しく光る。
ケンタと一緒にマッサージを受けるという目的もあるが、この双子を利用すれば、自分一人ではなし得ないさらなる快楽の境地をご主人様に提供できるかもしれない。
「素晴らしいスペックですね。後ほど利用させてもらいます」
プラティアは漆黒のキーを撫で、微笑んだ。
「それでは、私はこれで。ご主人様のところに向かってもよろしいでしょうか」
「はい、もちろんでございます。館内着の用意がございますので、更衣スペースでのお着替えをどうぞ。お召し物は後ほどVIPルームにお届けいたします」
プラティアは更衣スペースに移り、用意されていた館内着を手に取った。
それは一般的なスパ施設で提供されるような、作務衣と浴衣を合わせたようなデザインのリラックスウェアだった。通気性の良い素材でできており、アンドロイドにとっても肌触りは満足のいく代物だ。
しかし、いざプラティアが袖を通してみると、その衣装は彼女のプロポーションの前に敗北を喫することになった。
細く引き締まったウエストには専用の帯がぴったりと巻き付くものの、問題は上半身だった。ゆったりと着るはずの合わせの襟元が、巨大すぎる乳房によって布地が足りていないのだ。身じろぎで胸元がはだけそうになり、なんとか固定したところで深い谷間惜しげもなく露わになってしまっている。
だらしなく見えないよう襟を合わせ直したものの、これが物理的な限界だった。プラティアは自身の胸の大きさを少しだけ懸念したが、まあご主人様が喜んでくださるのならこれで良いだろうと割り切ることにした。あるいはこのような着方が、アンドロイドで求められている姿なのかもしれない。
更衣スペースを出たプラティアはリフレリリースの共有ネットワークへと接続し、館内の詳細な案内図をダウンロードした。さらにそこから、来館しているアンドロイド向けに提供されている同行者追跡サービスをバックグラウンドで呼び出す。
先ほどケンタに渡したデバイスが発する信号をキャッチして、彼の現在位置を施設内のマップ上に特定した。
「ラウンジの中央エリア……ですね」
プラティアは小さく呟くと、愛しの主人が待つ場所へと少し早歩きで向かい始めた。
スキャンルームの隔離されたブロックを抜け、一般客も利用する広大なラウンジエリアへと足を踏み入れた瞬間。プラティアに向けられる周囲の視線の量が一気に跳ね上がった。
休日を利用して訪れている人間の客たちや、すれ違う他のアンドロイドたちまでもが息を呑んでプラティアの姿を振り返る。
白銀の長い髪が歩くたびに美しく揺れ、艶のある肌が照明を浴びて発光しているかのように輝いている。そして何より、館内着越しに主張する体型はどうしても目を引く。
美貌と色香に顔を引き寄せられた人間の男性客が、隣にいる女性のパートナーに腕をつねられている光景すら見受けられた。
「ご主人様のバカ! えっち! おっぱい増量コース受けてきます!」
「い、いや、これは仕方がない、男として仕方がない……って、勝手に財布持ってくなよ!」
「契約者! 鼻の下を伸ばすな! お前は私だけ見ればいいのだ!」
「騒ぐなって、よそに迷惑だろ」
しかし、プラティアは周囲からの注目や羨望の眼差しをまったく意に介していなかった。彼女の視覚センサーが捉えようとしているのはただ一つ、自分を待ってくれている小さなご主人様の姿だけである。
ラウンジの中央、観葉植物に囲まれたゆったりとしたソファエリア。そこに、見慣れた小さな背中を発見した。
しかし、プラティアの足取りがピタリと止まる。
ケンタは一人で寂しそうに待っているわけではなかったのだ。彼が座っている一人掛けのソファのすぐ横には、この施設の接客用のアンドロイドと思われる、可愛らしいウェイトレス姿の女性が膝をついていた。
少し離れた位置からでも、彼女がケンタに対して親しげに話しかけているのがわかる。ウェイトレスは空中にパンフレットのホログラムを表示させ、初めての来館であるケンタのために、館内の様々な施設の案内説明を行っているらしい。
ケンタの表情はプラティアが別れ際に(プラティア目線では)心配していたような不安に満ちたものではなかった。むしろウェイトレスの案内を興味深そうに聞き入り、リラックスした様子で談笑すらしている。
プラティアの胸の奥で、システムが知り得ないはずの黒い感情がじわりと渦を巻く気がした。
ただ案内を受けているだけだと頭では理解している。しかしプラティアの感情を最も刺激したのは、そのウェイトレスの容姿だった。
このリフレリリースはアンドロイド企業の系列施設である以上、館内で働いているスタッフアンドロイドたちはある意味で客に対する展示会場の役割も兼ねている。そのため、人間の多様な嗜好に合わせるべく、身長も体型も大小様々なバリエーションの機体が配備されていた。
長身でモデル体型のものがいれば、小柄で華奢なものもいる。性癖の多様化に合わせ、アンドロイドは無限のニーズに適応していく。
そして今、ケンタの傍らに跪いているウェイトレスは、プラティアから見ても明らかに異質なバランスで設計された機体だった。
彼女の背丈は非常に低く、小学生であるケンタとほぼ変わらないように見える。まるで子供のような華奢な骨格だ。にもかかわらず、その胸部だけは異常なほどに巨大だった。
小さな身体に不釣り合いな胸がエプロンドレスの胸元を押し上げている。胸の大きさだけで比較するならばプラティアのそれに比肩するか、あるいはそれを超えるほどの体積を誇っているかもしれない。
低身長で、巨乳。それはまさにケンタのような小柄な少年が威圧感を感じることなく親しみを持てる、最も危険で魅惑的なパッケージングではなかろうか。
現に、ケンタの視線はウェイトレスの顔とホログラムを行き来しながらも、時折、彼女の巨大な胸の谷間へと吸い寄せられるようにチラチラと動いている。胸での快楽を覚えてしまったケンタの身体は、あのような品性
「くっ……」
プラティアは、自分の足がその場に縫い付けられたような錯覚を覚えた。
自分は長身だ。ケンタの顔を見下ろす形になってしまうし、彼が自分のおっぱいに甘える時はいつも背伸びをするか、抱きかかえられなければならない。
しかし、あのウェイトレスのような背丈であれば。ケンタは自分と同じ目線で会話ができ、手を伸ばせばすぐにその巨大な胸に顔を埋めることができる。小柄ゆえの小さな膣穴なら陰茎もジャストフィットしてかわいらしい腰ヘコもしやすい事だろう。
ご主人様にとっては私のような威圧感のある身体よりも、あのような小さくて胸の大きなアンドロイドの方が、本当は好ましいのではないだろうか。
絶対の自信を持っていたはずのプラティアの心に、初めて背丈に対するコンプレックスと、捨てられたくないという強烈な不安が過った。
だが、その迷いは他でもないプラティアの自認が棄却する。
私は、ケンタ様専用のワンオフモデル。彼がアンケートで自らの手で選び、契約のサインを交わした、ただ一人のメイドなのだ。あんな量産型の案内アンドロイドに、私の大切なご主人様が奪えるものか。
勝手に失い勝手に取り戻したプライドを胸に、プラティアは背筋をピンと伸ばして堂々たる足取りでケンタのもとへと近づいていった。
コツ、コツ、という足音が近づくのに気づき、ホログラムを見ていたケンタが顔を上げた。
そして、プラティアの姿を視界に捉えたとたんにケンタの顔が太陽のようにぱっと明るく輝いたのだ。
ウェイトレスの大きな胸を見ていた時の下心を含んだ視線とは全く違う、心から待ちわびていた大切な人が戻ってきたことに対する、純粋で無垢な喜びの表情を、プラティアは幾枚ものスクリーンショットとして保存した。
「プラティア! 検査は大丈夫だったの?」
ケンタはソファから身を乗り出し呼びかけた。
自分の胸の大きさや背丈の心配など、すべてがどうでもよくなるほどの温かい響きだった。ケンタの心の中にはプラティアという存在が何よりも深く、一番大きな場所を占めていることがはっきりと伝わってきた。
プラティアの心を満たしていたどす黒いものは浄化され、深い愛情と歓喜へと変換される。
「はい。何の問題もありませんでしたよ、ご主人様」
プラティアは極上の微笑みを浮かべてケンタに歩み寄ると、そのままの勢いで、ケンタの傍らに跪いていたウェイトレスを見下ろした。
その瞬間、プラティアの眼からは、絶対零度の冷気が放たれていた。
「丁寧なご案内を感謝します。ですが、こちらはもう大丈夫ですので……すぐに下がってよろしいですよ」
言葉こそ丁寧であったが、そこに含まれていたのは同じアンドロイドにしか通じない、私のご主人様にこれ以上近付くなという強烈な威圧だった。
最高級のハイエンドモデルから放たれた、言語化出来ない圧。それは決して錯覚などではなく、機体から発せられる僅かな電磁波などが相互に作用したことによるプレッシャーだった。
低身長のウェイトレスアンドロイドの表情が目に見えて強張った。彼女のプログラムが目の前にいる存在に逆らえば大変危険と判断したのだろう。
「か、かしこまりました。それでは、ごゆっくりおくつろぎくださいませ」
ウェイトレスは逃げるようにホログラムを消去し、そそくさとその場を立ち去っていった。
ケンタはプラティアが放った見えない威圧にまったく気が付いておらず、ただウェイトレスの背中を不思議そうに見送った後、再びプラティアに向き直った。
「あ、プラティアはもう着替えたんだね」
ケンタの視線が、プラティアが身に纏っている館内着と、そこから今にも零れ落ちそうになっている胸の谷間へと注がれる。
先ほどのウェイトレスの胸を見ていた時よりも熱っぽく、そして独占欲に満ちた男の目つきだった。少なくともプラティアはそう判断した。
その視線を受け止め、プラティアはわざとらしく胸元を強調するように身体を傾ける。
「ええ、なかなか肌触りがよい素材です。触ってみますか?」
プラティアはケンタの手を取り、艶やかな声で誘ってみる。ごくりと生唾を飲むケンタの手を、最も欲しているだろう乳房の曲面へと当てる。
途端、館内着の感触よりも、その内側の柔肉に指の力が集中してしまう。
愛おしさに零れそうになる笑みと母乳をなんとか抑えながら、耳元へと囁いた。
「VIPルームの鍵を受け取りました。ご主人様はそちらで私と一緒に、お着替えをいたしましょうね」