初めて真希に倒錯的なプレイをさせた日の夜更け。家に帰ると、ユリの姿がどこにもなかった。
体を得て以降の彼女は、普段からあちこち出かけ回っている。俺の願えば叶う力によって得る無限の資金をありったけ財布に詰め込んで、現世同様の資本主義を模したこの世界の中で、おそらくはありとあらゆる娯楽を堪能して回っている。そしてその娯楽の中には当然、男漁りも含まれる。
初めのうちは、彼女が毎日朝から出かけて夕飯時に帰ってくる様子を見て、あまり俺と一緒に(あるいは特定の誰かと(あるいは特定の男と))居たくないのかもしれないと考えていた。彼女は男をとっかえひっかえしているようだったし、夕食中の話しぶりから察するに決まった誰かと行動を共にしている風でもなかったから。
少し寂しい気もする反面、介護者としての役割を終えたなら俺のような男とは適切な距離を保つのが、お互いの心のためには賢いやり方なのかもしれない。そう思って彼女を引き止めはしなかったけれど、その生活が大体三日ほど続いたあたりで、俺は不意に彼女の意図を察した。
ユリは毎日決まって「そっちは今日何してたの?」と聞いてくる。それもそのタイミングは必ず、彼女が今日どんな男とどんなセックスをしたのかを赤裸々に語ったあとだった。
つまり彼女は言外にこう誘導していたのだ。「君も早く同じことをしなよ」。
思えばユリは、自身の体が見つかった時に「出かける口実をなくしていいの?」と俺に言った。俺が今いる世界は俺専用にカスタマイズされた天国で、男性の普遍的かつ根源的かつ克服困難な欲求(もしくは単にそう呼ぶには特殊すぎる性癖)を満たすために、この天国の中にはサキュバスが無数にいる。道端を歩いている女性は大抵サキュバスで、一声かければその場でセックス可能という馬鹿なエロ漫画みたいな状態が、この天国の常なのだ。だからその案内人であるユリは、俺が天国を十分に活用して存分に幸せになることを望んでいる。
もしユリがずっと家にいたらどうだろう。確かに俺は外出しづらかったかもしれない。ユリ自身もサキュバスであるがゆえに、性欲を満たしたければユリに頼めばいいはずだから、なんだ私では不満なのか……という話と常に隣り合わせになってしまう。一方で彼女がしょっちゅう出かけていれば、俺が他のサキュバスを探しに行くことはとても自然な流れになる。なんならナンパしたサキュバスを家に連れ込むことだって(理論上は)出来る。実際、俺が真希の家に通いやすかった理由の大半も、考えてみればそこにあった。
それに、ユリが本当に俺から離れることを望んでいるなら、夕食は他所で済ませて寝床も別の場所を確保するくらい出来るだろう。それを踏まえて実際のユリの振る舞いをよく振り返ってみると、彼女はいつでも俺に案内人かつ友人として好意的だった。
一方その頃の俺は、見知らぬサキュバスに声をかけることから逃げていた。性欲の解消は主に小夏頼りだった。彼女なら生半可なことでは予期せぬ傷つき方はしないだろうという信頼感と、知り合いであるがゆえの安心感があり、そこから外の世界へ飛び出そうという気にはなれなかった。ある日別の客と鉢合わせて3Pをすることになった話をすると、ユリはつまらなそうに「意外とそういうコミュ力あるんだね」と感想を述べていた。あとから思えばあれは、天国の無駄遣いをしている俺に対する不服の念でもあったのだろう。そのコミュ力でもっと広い世界を渡り歩けと。
だから、そうしてユリの意図に気づいた俺は一つ覚悟を決めて、新たなサキュバスと知り合いまぐわうことを意気込んだ。彼女に胸を張って「今日はこんな風な酒池肉林で暮らした」という話を出来るように、そして自らの世界・見識を広げるために、何があってもいくらでもリカバリーできるだろう「願えば叶う力」におんぶに抱っこの精神でチャレンジしていく。そう心に誓った。
しかしそう決意した日の翌日、朝っぱらから駅の近くでちょっと見た目が好みの女性を見つけて、願う力で彼女がサキュバスであることを確定的に見抜き、深呼吸を三回くらい繰り返してから勇気を振り絞って声をかけた時。悲劇は起こった。
「あ、すみません、これから仕事で。他の人を探してください」
「あっ、はい、ごめんなさいそうですよね……」
至極真っ当な理由で普通に断られた。平日の朝八時半あたりのことだった。
心臓がきゅーっとなり、いわゆる「死にたい」という感情に飲み込まれそうになる。が、本物の希死念慮とそれは別物であることを知っている俺はすぐに別の言葉を探して、その時の感情を正確に「恥」と分類した。
その恥から、俺は学んだのだ。いくら不死身でも、不特定多数との性行為に抵抗がなくても、サキュバスにとっても一日はたった二十四時間なのだ。セックスしている場合じゃないほど忙しいタイミングが日常的にあることは人間と変わらない……常識的に考えてそうだった。
くそ……小夏なら二十四時間いつでも相手してくれるのに……。と、俺は内心歯ぎしりする。人はこうして出鼻をくじかれることで閉鎖的な心を形成してしまうのだなと自覚的に思う。天国はどこまでも俺の都合に合わせて設計された世界だけれど、そこには俺の「ある程度リアリティを重視する」という性分まで反映されてしまっている。それによって、恥という概念の自家中毒を体現したような状況が完成してしまった。
傷心を癒すため、俺はそのままナンパは諦めて映画館に向かった。天国で俺が行く映画館では新作旧作問わず、俺の見たい作品が必ずちょうどいいタイミングで上映されている。その枠の映画を見る時、シアターは必ず一番奥と決まっているから、きっと本来は無い「もう一つのシアター」が生えてきている形なのだろう。少し嫌なのは、リアリティの法則により、見るタイトルによって客足や客層に変化があることだ。好きな映画が不人気だと若干悲しい。
俺はその日そこで、ホームアローンを見た。今までに何度見たか数えきれない作品だけど、劇場のスクリーンで見るのはこれが初めてだった。
かつてホームアローンを初めて見た頃の俺は幸せだった。まだ幼く、立ちはだかる困難の全てが普遍的で、自分が社会不適合者だと知らなかったから。……傷心を癒すにはそういう思い出のある映画がいいと思った。
上映開始直前に、右隣の席に女性が座った。彼女もサキュバスだ。手くらい握っても、きっと何とも思われないだろう。……だけどその時の自分にそれは出来なかった。何か予想だにしない理由でそれを拒否されたら、二度と立ち直れない気がしたから。
……約二時間後。エンドロールまで見終えた俺のメンタルはそこそこ回復していた。主人公の仕掛けた罠にしてやられる泥棒のコミカルなリアクションを見ていて、それを自分に重ね合わせたのだ。俺は何の努力もせずに女性を手に入れようとする泥棒で、今朝は罠にかかったのではないかと。それなら俺はもっとコミカルなリアクションをするべきだった。ホームアローンがサスペンスではなくコメディであるように、ここは現世ではなく俺の天国なのだから。
席を立つ前に、隣の女性の手を握る。普通なら悲鳴が上がったり、相手が強張るなり困惑するなりするところなのだろうけど、今回ここではそうならなかった。
手を握ったあとどうするかまでは考えていなかった。けれど、とにかく沈黙は論外だろう(それではナンパ以下の不審者だ)という強迫観念のような物が、己の内から無理やりにでも言葉を搾り出させる。
「あ、あの」
「はい?」
「……このあと、予定空いてますか?」
照明が灯って明るくなった劇場の中で、眠そうなタレ目が印象的なその女性が微笑んだ。
手の中に、何か硬い物の感触がある。
「はい。子どもが帰ってくるまでなら」
……その人は普通に人妻だった。
サキュバスは年齢に関わらず、基本的にみんな若々しい。目の前の彼女は見た目二十歳前後だったけれど、平均的な感覚からいえば子持ちの人妻が二十歳というのはイレギュラーだろう。が、そもそも実際が何歳なのかを聞く勇気は俺にはない。知りたくないわけではなく、単に失礼に当たるから。
今日日、大抵の映画館はショッピングモールと一体化している。今回来た場所では四階が映画館で、その下には様々な店がテナントとして軒を連ねている。一階には広いフードコートがあり、俺たちはそこで昼食を摂ることになった。いきなりセックスに誘うような勇気は俺にはなかったからだ。
「そのうち家族で来るかもしれないし、偵察ですね」
タレ目の彼女はそう言って歩き、店を選び始める。家族とは旦那や子どものことだろう。彼女がサキュバスでなければ、俺はその言い回しを「あなたを男として見てはいない」という意味の牽制として捉えていたかもしれない。
ぐるりと一周したあと、彼女はカレーをチョイスした。俺の方はなんでもよかったから、その隣にあった中華を食べることにする。具体的にはエビチリ定食を。
それぞれ呼び出し機を持って空いている席に着く。向かい合って座り目が合ってから、初対面の二人に適任な話題は限られていることに気づく。
必然的に、今さっき見てきた映画の話題になる。
「ホームアローンって、どれが一番好きですか?」
「え? あぁ、どっちも好きだけど、僅差で2ですね。鳩おばさんとか玩具屋の寄付の話が印象に残って。あとあちこち冒険する分、クリスマスを感じる部分も強くなってるし、泥棒と顔見知りって状況も特殊で面白いし」
「ふふ。お気に入りなんですね」
「あっ……。すみませんぺらぺらと」
「いえいえ。ちなみに私も2派です。泥棒との間に因縁があるのがなんというか、盛り上がりますよね」
「あぁ、そうなんですよ。続編っ、って感じしますよね」
「そうそう、分かります。……まぁ、1ありきの理由で2を好きって言っていいのか、ちょっと迷いますけど」
「あー、どうなんでしょう。2から見る人も多いんじゃないですか、あれだけ地上波でやってたら」
「2から見たら感想変わりますかね?」
「記憶がおぼろげなんですけど、もしかすると僕は2から見たかもしれないんですよね。子どもの頃に」
「あぁ、へぇ、そうなんですね。……私は1からでした、やたら覚えてます」
「やたら印象的だったんですね」
「そうなんですよ」
やわらかく笑うその人は、どうやらそれなりの思い入れを持っているようだった。それが俺と同じような子ども時代の思い入れなのかは、分からないけれど。
平日の昼間で人入りはまばらなのに、お互いの呼び出し機はまだ鳴らない。料理をしたことはあっても厨房で働いたことのない俺には、その遅さの原因は測りかねる。エビチリはともかく、カレーなんて鍋にいっぱい作ってある物なんじゃないのかと思いはするけれど、実際にその光景を見たわけではないのだ。
俺は自分が短気な性格であることを自覚しているけれど、目の前の彼女の方はどうやら気長な人物らしい。未だに一度も、呼び出し機や店の方を見もしない。
こちらが目線を向ければ、いつでも彼女と目が合うほどだった。
「でも私、ホームアローンシリーズに一つ納得いかないことがあって」
「ほう」
「ケビンの親は、どうしてもっとケビンを褒めてあげないんでしょう? 彼はなんというか、あの家族にとっての英雄なのに」
「……んー。再会の喜びを噛み締めることに必死になってたから、ですかね? それに確か2には、いじわるだった兄弟が最後にケビンの功績を認めるシーンがありましたよ」
「兄弟が認めるのと、親が褒めるのは違うじゃないですか」
「なるほど……? まぁ、あとは単に、劇中のタイミングだとまだケビンの功績がふわっとしか認識されてないとかですかね。エンドロールのあとに視聴者の知らないところで、改めて褒められてるのかも」
「……なるほど」
言葉と裏腹に、彼女はまだ納得していなさそうだった。人の親をやっている身として「自分ならもっと子どもを褒めるのに」という歯がゆさがあるのかもしれない。俺には分からない視点だから知ったかぶりの憶測だけど。
話がひと段落したところで、二台の呼び出し機が同時に鳴った。それは偶然ではなく天国の仕様だったのかもしれない。
ホームアローン2の方が好きなのに今日は1が上映されていたのは、好きなあまりに見すぎたことで2には飽きてしまったからだ。天国はいつも俺に絶妙に気を遣ってくれる。呼び出し機を返却した女性店員の声がやたらと聞き取りやすいことまで、その一環なのではと思えてくるほどに。
昼食を乗せたお盆を持って席に戻り、いただきますと手を合わせる。熱々で湯気を立てるエビチリは、リアリティ優先の法則によって俺の猫舌に厳しかった。それくらいは願う力で勝手に調整してくれということなのかもしれない。
一方で向かいの彼女の方は、カレーを一口食べて眉を上げた。
「わ、結構からい」
「本格派なんですかね」
「たぶん。……うーん」
「からいの苦手ですか?」
「子どもがそうなんです」
「あぁ、じゃあまぁ、偵察の価値ありですね」
消去法が一つ進んだ程度のことをそう言っていいのかは諸説あるけれども。なら二つ進めてはどうかということで、俺はエビチリを彼女に勧める。こちらはどちらかといえば甘口で、一口つまんだ彼女の舌もそれに同意した。
甘口でも、ちびちび水を飲む。フードコートの水はセルフで用意する物だけど、おかわりをするのに席を立つのが面倒だから、必然的にちびちび飲むことになる。
「お兄さんは、からいの好きですか?」
「え、あぁまぁ、そこそこ。得意とまでは言えませんけど」
「たまにものすごくからい物ってありますもんね」
「そうなんですよ。一回食べた火鍋がトラウマレベルでそうだったんです」
「私も、CoCo壱の2辛にやられました」
「あれ10まであるのおかしいですよね」
「ほんとに。でもうち、旦那はからい物が好きで。それでも3辛が限度みたいですけど」
「へぇ。それだとご飯作るの大変ですね、お子さんと好みが違うから」
「そうなんですよ。わざわざ分けて作るんです、カレーとか麻婆豆腐とか」
「わぁ。想像したくもない手間だ」
「暇だからいいんですけどね」
「いやいや」
暇があっても体力気力の方が……と言おうとして、サキュバスにそれは適応されないことを思い出す。小夏は不眠不休で働いている。それと同じとまでは行かなくても、人間よりは遥かに疲れにくいのがサキュバスであるはず。
サキュバスが苦痛を魔力で遮断できるなら、同じ理屈で10辛だって食べられるはず。彼女がそれをしないのは、わざわざする理由がないからだろう。一方で、サキュバスからは必ずサキュバスが産まれるから、彼女の娘が同じ理屈で父親の味覚に合わせれば、もしかして旨味の部分だけ上手く感じられたりはしないのだろうか……と一瞬考えるけれど、それでまた思い出す。魔力の扱いは年齢と共に習熟するもので、子どものそれは拙いのだという。だからサキュバスだろうと人間だろうと、からい物が苦手な子どもはからい物を食べられない。
魔力操作がおぼつかずからい物が苦手な子ども、からい物は平均程度に好み魔力を十分に扱える奥さん、人よりちょっとからい物が好き気味な人間の旦那。……この三人で同じ食卓を囲むのはちょっとややこしくないか? 素朴にそう思う。
「……なんていうか、大変そうですよね。家族の食の好みの管理みたいなのって」
素朴な感想をそのまま手なりで言葉にしてから、「しまった」と気がついた。それはロクに料理の手伝いもしない実家暮らしのまま生涯を終えた男の口からボロが出た「他人事の台詞」だった。そういう物言いはこちらの想像以上に相手を不愉快にさせる物だと噂では聞く。
実際のところ、彼女は困り顔で笑った。
「旦那にも同じことを言われます」
「あー、あはは」
他人事みたいな言い方しちゃってすみません……とも、これで言えなくなった。笑って誤魔化す。
それからも雑談を交えているうちに、二人とも食事を平らげていく。そうしてお盆に残った食器類を返却口に持って行く時に、なんとなくこれはこれで、すでに天国を満喫しているのではないかと思った。
好きな日の好きなタイミングに劇場で好きな映画を見て、近くにいた異性に話しかければ快く感想戦を兼ねた昼食に付き合ってもらえる、その流れで雑談もする。それが確実に叶う、いつでも好きな時に叶う。……現世ではとてもあり得ないことだ。
けれどその幸せを噛み締めようとした時……もとい、「幸せを噛み締める」と「その幸せだけで満足する」の違いを意図的に見失おうとした時、脳裏にこれまで関わってきたサキュバスの姿がよぎる。思い浮かぶ絵面には肌色が目立つけれど、それは単に色欲を呼び覚ますものではなかった。
彼女たちの声が重なって、誰の声でもない物として、頭の中に音もなく聞こえる。
お前がたったそれだけの幸せで満足する人間なら、私たちはどうしてこんなひどい目に遭っているの……?
……そう、俺には、最大限の幸せを貪る義務がある。それは権利と一体化しているけど、その一体化は労働の義務と権利のような言葉遊びの欺瞞ではなく、確かな意味をもって一つに合わさっている。
幸せを貪る義務がある……と感じさせること自体が、天国が俺に手渡してくれる免罪符なのだ。
俺が借り物の道徳を使って蓋をしようとしている本心の、その根深いにおいを嗅ぎとって、蓋を開けることを促してくれる。この義務は、天国が俺の幸福を望むばかりに俺を追い込んでしまうバグの類などではなく、正しく俺のためにこそある物なのだ。
蓋は天国が取る。俺はその邪魔をしなければいい。
「さて。このあとはどうしましょう?」
解散の選択肢は二番手以降に回されているような言い回しで、左手の薬指に指輪をはめている彼女が俺に聞く。
サキュバスは近くにいる人間の性欲を察知する……と、この時の俺はまだ知らなかったのだけど。それでも、まるで今後の予定をこちらに委ねるかのような言い回しを選んだサキュバスに、どこか本能で感じるものがあった。
彼女はやはり、初めからそういうことを想定して俺について来てくれたのではないかと。
「……子どもさん帰ってくるまで、あとどれくらいありますか」
「えーと。3時間くらいですね」
「…………俺の家とか来ませんか?」
口に出した瞬間、あっ、これは、拒否されたらトラウマになるやつだ……と分かってしまった。これが人間同士のやり取りなら、本来必要な何もかもをすっ飛ばした欲望丸出しの誘いをしておいてトラウマも何もないだろうと客観性の声がしただろうけど、今はそんなの知ったことじゃない。だってここは天国だから……天国だと俺は聞いているから。人間から拒否されるのと天国から拒否されるのでは話が別だ。
恐れる気持ちが膨らむあまり、ダメだった時はもはや、願う力で何物だろうとこちらの都合に合わせてねじ曲げてやる……と邪悪その物の思考がよぎる。ロボトミー的なことはしないと、ユリの生首を携えながらチュートリアルを受けていた頃には思っていたものだけど、今はそれすらどうでもいいと思った。
「……もう、お兄さん。目が怖いですよ」
スクリーンの前で手を取ったあの時と同じように、そのサキュバスは微笑む。
「お兄さんさえよければ、お邪魔させてください」
……俺は心の中で、雄叫びと共にガッツポーズを決めた。
自宅まではワープゲートで帰る。玄関に直接繋がったそれを物珍しそうにくぐりぬけた彼女は、そのままベッドのある寝室に連れ込まれる。寝室の扉は独りでに閉まる。そして、もう外からは開かない。またどんな音も部屋の外には漏れない。願えば叶う力につき。
こちらの目的をよく分かっている彼女は、あからさまにこちらの下半身を見下ろしてくる。
「それで、なにしましょう?」
「……何ならしていいですか?」
「えぇ? したいことがあったから、連れてきてくれたんじゃないんですか?」
「それはそうですけど……」
サキュバスにも、性的趣向にはそれなりの好き嫌いがある……とユリが言っていた。NG無しの小夏ばかり抱いていた俺には実感のない話だけど、リアリティきっかけの悲劇にはすでに懲りている。あまり理解の得られなさそうなプレイを初手から要求することは避けるべきだろう。
……と思って「何ならしていいのか」と聞いたのに、返ってきた答えが妖艶ながら曖昧な物だったから困ってしまった。願う力で正直に答えさせれば、彼女の中の詳細な線引きも知れるのだろうけど……。
その前にふと、良い案を思いつく。
「旦那さんとは、どんな風にしてるんですか?」
「え?」
きょとんとした顔をされて初めて、それが全然良い案などではなかった可能性に思考が及んだ。
旦那としていることならNGということはないだろうと、俺は安直に考えたのだ。「好きな人だから出来るの! 他の人とは嫌!」みたいな理屈はサキュバスにはないはずだと踏んだから。しかし改めて考えてみるとどうだろう、「旦那としてることならOK」と「旦那とどんなエッチをしてるのか聞かれることもOK」は必ずしもイコールで結ばれている物だろうか……? さらに言えば、夫婦仲が比較的良好だろうという見立ても、実はミスリードである可能性まである。
「あ、いや、参考までに……」
と、自分の口が勝手に、言い訳のように意図を付け加える。人妻の性生活に興奮を見出す趣味があるわけではないですよ、と。
彼女の方はそれを汲んでか、それとも全く関係なくか、とにかく苦笑を浮かべながら答えてくれた。
「旦那はちょっと、その、乱暴なのが好きな人で」
「乱暴……?」
「SMプレイとか、そういう」
「なるほど」
「……参考になります?」
「死ぬほどなります」
人妻の性生活に興奮を見出す趣味がないという話は、俺の思い違いだったかもしれない。
「実は俺もそっち側の性癖で……」
「あら、それならよかった」
「いやでも、どうかな、程度の問題もありますし。旦那さんとは普段、具体的にどんなことを……?」
「うーん、そうですねぇ……」
昨晩の夕食のメニューを思い出すかのように、彼女はしばし上の空になる。ユリを拷問し、小夏に悲鳴を上げさせ、真希の涙でこっそりシコっていた……と数々の前科を持つ俺は、その数秒の間を緊張と共に待つ。
世の中には、ちょっとタオルで手を縛ってみたり目隠しをしてみたりすることを「乱暴」と表現する人もいる。相手のことをご主人様呼びしてみるだけのことを「SM」と称する人もいる。目の前の女性もそちら側かもしれない。本性を隠す者にとって、最もその擬態能力を問われるのが、その手の「近くて遠い例」に触れた時だから、俺の緊張は「会話」というコンマ数秒を争う世界で加速度的に増していく。
そしてついに、映画の感想を語り合った時と何ら差のない穏やかな口調で、その真相が明かされる。
「結構太いディルドをですね、お尻の穴に入れたままにするんです、エッチする時は。口でする時も本番の時も、とりあえずずっと」
「なるほど」
「あと、口でする時は根元まで咥えないとお仕置きされたり。本番中に首絞められたり、お腹殴られたりお尻叩かれたり。……そんな感じですかね?」
「あー、大体分かりました。……旦那さんとは趣味が合いそうです」
「わぁ、よかった。ちょっと安心しました」
「あはは。俺もですよ」
そのプレイをこれから要求される側は、安心なんかしている場合ではないのではないかと、どの立場からなのか俺は心配に思う。けれどそれは人間の感覚であって、サキュバスには通用しないのだ、きっと、たぶん、おそらくは。
俺たち二人は部屋に入ってからずっと立ち話をしている。この寝室に椅子はなく、本来は男一人が寝るために備え付けられている狭いベッドには、一度そこに立ち入ればもうただの友達として過ごす可能性には戻れないことを予感させる圧が漂っている。
まだそのベッドには向かわない。俺は願う力でディルドを取り出して、それを彼女に見せる。大体、旬のキュウリくらいの太さだった。
「お尻に入れるのって、こんな感じですか?」
「あ、いえ。もう少し大きいです」
「このくらい?」
「んー、もう少しだけ。あと、普段使うのにはイボイボが付いてるんですよね」
「なるほど……?」
「あ、そうそう、こういうのです」
リテイクを重ねるうちに、俺の手の中のディルドはゴーヤのような姿に変貌していた。本当にそれが尻穴に入るのかという以前に、入ったとしても本当に入れていい物なのかどうか、サディストであっても不安になってくる。まぁサキュバスは不死身だから、万が一怪我をしてもその時はその時なのだけど(小夏のスナッフフィルム(仮)を見ておいて今さらだと自分でも思う)。
その凶器を片手に、俺は最後の確認をする。
「……俺も今から、乱暴なことしていいですか?」
「ふふ、もちろん」
愚問だとばかりに彼女は笑う。
あとになって泣く女も、事前の確認では同じ態度を見せるものだと、天国に来る前から童貞ではなかった俺は知っている。
だから、ここでも天国の力を使う。
「じゃあ、約束してください。これから起きることを少しでも嫌だと感じたら、すぐにそれを伝えるって」
「はい、分かりました」
余裕げな微笑みが返される。それすら単体では信用しきれない物だけど、天国の力は絶対だ。俺が命じたからには、彼女は必ずそれに従う。
あとから思えば、俺は同じだけ厳格な確認を真希にはしなかった。あらかじめ仲良くなった相手と行為に及ぶのと、その日ナンパした相手とすぐに行為に及ぶのでは、いろいろと認識が違ったのだろう。
約束します。……そうはっきり口にして、目の前の彼女が小指を立てて見せる。俺はその意図を察して、陰キャがハイタッチを要求された時の緊張感に似たものを感じながら、自分の小指をそこに絡ませる。
「ゆーびきーりげーんまーん、嫌って思った時はすぐに嫌って言〜う。指きった、嘘つかない」
歌って、彼女はまた微笑む。
「旦那と初めてした日も、同じことを言われたんです」
彼女は他のサキュバス同様、俺を安心させることが……もとい、俺が本性に被せた蓋を取り払おうとすることが上手かった。
生前も天国でも、俺はこの手指で、女性の服を脱がせたことがない。俺が最大限に性欲を満たそうとすると、同意の確認はノーマルなセックスに臨む場合以上に重要な物となり、それと(形だけ)強制的な脱衣は相性が悪いからかもしれない。本当になんとなく、ただ流れに身を置いていたら、そういう経験の偏りが生まれていた。そして天国に来てからというもの、小夏は初めから裸だし、ユリには首から下がなかった次第である。あるいはそもそも、俺には「この手で相手の服を脱がせてみたい」という欲求が備わっていないという面もある。
だから願う力によって、時を飛ばしたかのように今日の相手の脱衣は完了する。脱がせるという過程は存在せず、脱がせたという結果だけが残る。がさつな俺の手では不可能だろう丁寧さで、一瞬前まで彼女が着ていた衣服の類は全てベッドの隅にたたんで置かれていた。
さすがに面食らったようで、常にどこか眠たげな印象を与えてくる彼女の目がその時ばかりは見開かれた。俺はその目をジッと見つめて、無言で問う。
今後もこのスピード感で事は起こるけど、本当に約束を守れそう?
「……ふふ、手錠とかはしなくていいんですか?」
状況を理解した彼女が、手首を擦り合わせるようにして胸の高さに掲げながら、いたずらっぽくそんなことを言った。俺なら即座にそれが可能なこと、俺ならそれを望むかもしれないこと、そして何より、そういうことを言うと相手が喜ぶだろうこと。彼女はすべてを理解している。
手錠はしなかった。もし「嫌」とは言わない彼女に抵抗されたら、その時初めて身動きの自由を奪った方が面白いと思ったから。
窓からカーテンごしの日差しが差し込んで、照明の立場を奪っている。部屋を暗くする方法は何なりとあるけれど、それを俺が望まれることはなかった。また俺自身もそれを望まない。有るものは見えた方が面白いから。
ベッドの上に彼女を四つん這いにさせる。ディルドにローションは塗らない。サキュバスはアナルすら自前の体液だけで性交に適した状態に出来るのだと、小夏を虐めた経験から知っている。同じように、ほぐす必要すらないことも。
そういえば、小夏のアナルには腕をねじ込んだことがある。それで彼女は怪我をしなかった。ゴーヤのようなディルドは見た目こそえげつないけれど、人の拳がその直径に劣るとも思えない。旦那との行為で慣れているならなおさら平気なはずだろう。
だから俺は遠慮なしに、そのディルドを無抵抗なアナルに突き入れる。
慣れている者には不似合いな苦悶の声が、全身を強張らせた彼女からあっけなく漏れた。
俺が射精する頃には、彼女は泡を吹き、失禁しながら意識を手放していた。
行為の最中、そういえば聞き忘れていた彼女の名前をようやく聞いた。チカというらしい。……チカは旦那から「余裕そうだとつまらない」と言われて、まるで人間が同じ仕打ちを受けた時のようなリアクションを毎晩のように求められているらしい。それで彼女は上達したのだ、苦痛にのたうち回る演技を……ではなく、実際に苦痛を受けて見せることを。
サキュバスは魔力を使えば苦痛を遮断できる。が、チカはそれをわざと控える。小夏も同じことをやっていたが、狂気的な精神性でやってのけるあちらとは違い、チカのそれは明らかに無理をしていると分かるものだった。
やめたい、やめていいと言ってほしい、もうこれ以上一秒たりとも続けたくない。……行為中どころか休憩中まで、そんな内心が痛いほど伝わってくる、等身大の限界が常に彼女の全身に張りついていた。にも関わらず、彼女はその内心を口にしない。嫌だと思った時はそれを言葉にすると、破りたくても絶対に破れない約束をしたはずなのに。
サディストとしてチカをいじめながら、だから俺は推理することになった。チカにとってセックスとは、逃げ出したくなるほどの苦痛を受け止めながら、それにのたうつ様を男に見せる物である。しかし彼女はそれを「嫌だ」とは言わない。いったいなぜか? 約束に抵触しないまま、しかし何かを懇願するようにこちらを見つめてくるチカを観察して、必ず何か答えがあるはずだと考えた。
そして、一つの仮説に行き着いた。彼女が求めているのは「ギブアップを許されること」ではなく、もっと彼女にとって理想的な「終わり方」なのではないかと。
その仮説にもとづいて俺は、チカのことを褒めてみた。頑張ってるね、えらいね、おかげで興奮するし気持ちいいよ……と。すると彼女は満面の笑みを浮かべて「ありがとう。もっと頑張れるよ」と、さっきまで限界その物の表情で脂汗を流していたのに、さらに強い苦痛へ自分から身を投じようとしたのだ。
その末に訪れた結果が、泡を吹いて失禁しながら意識を手放す最後だった。魔力を用いない場合のチカの体は人間に比べてもセックスに不向きなのか、まるで処女が拷問レイプを受けているかのような反応を終始見せていたから、行くところまで行けばそういう結末になることは必然だった。
俺は性的に満足すると共に、チカの病的な「褒めたがり」を見たことで苦い気持ちを生じる。拷問プレイの最中、まるで懺悔するように彼女は俺に教えてくれた。なぜそこまでして褒められたがるのか、どうしてそんな人格に育ってしまったのか。
チカは子どもの頃、親から全く褒めてもらえなかったらしい。それも決して無関心なせいではなく、絶対的な成果主義が両親の価値観を蝕んでいたせいで、「上手くできた時」しか褒めてもらえなかったのだと。そしてそんな家に生まれたチカは、何をやっても良くて平均にギリギリ届く程度の、いわゆる「中の下の凡人」にしかなれなかったらしい。
上手くできない、だから褒めてもらえない。……幼少期からずっと褒められることに飢え続けて、そのうち彼女は自分自身を責めるようになった。私が何も出来ないのが悪いんだ、ダメな存在なのに、褒められたいと思うこと自体が罪なんだ……と、精神を病んでいった。
そんな彼女が人生で初めて思いきり褒められたのが、SMプレイの相手をした時だったのだという。人より上手くできることがない彼女にテクニックや演技の才能はなかったが、サディストの欲求を満たすには技術がいらない場合がある。ただひたすら苦痛に耐えていれば、それで喜ばれることがある。他の子はこんなことさせてくれない、させてくれてありがとうすごく感謝してる……と。
チカの人格はそれで完全に歪みきってしまった。褒めてもらうには何をすればいいのか、彼女は学習してしまったのだ。そして彼女は、最も自分を褒めてくれる男と結婚して、今に至る。
ホームアローンを見た感想が「親はもっと主人公を褒めるべき」だったのは、チカの切実な叫びだったというわけだ。俺は、薄情なことを言ってもいいのなら、正直そんなこと知りたくなかった。
……願う力で部屋はすぐに完璧に片付く。気絶している彼女の体も、何事もない日の朝にシャワーを浴びたあとのように綺麗になって、脱いだ服も「着せる」という過程を飛ばして着せたことになる。
さすが不死身のサキュバスということなのか、彼女の意識が戻ったのは、全てが済んでから十秒も経たないうちのことだった。
飛び起きた彼女がきょろきょろと状況を確認したあと、ハッと申し訳なさそうな顔をして謝罪の言葉を口にする。
「ご、ごめんなさい寝てました」
苦痛のあまり気を失うほどのことをされてまず出てくるのが「ごめんなさい」であることに成果主義の闇の一端を垣間見た気がしながら、俺は彼女と行為中に交わした約束を守る。
「ううん、よく頑張ったね。気を失うまでやめなかったもんね、本当に頑張った。えらいえらい」
言いながら彼女の頭を撫でる。我ながら子ども扱いするような……つまりかなり気色の悪い声と言い回しになったけれど、社会不適合者が人の褒め方に慣れているはずもないのだから仕方がない。それに何より、チカはこういう褒め方を喜んでくれる。俺はそれをすでに知っていた。
こちらの言葉遣いに応じるかのように幼さのにじんだ満面の笑みが、約束の履行を表すように返ってくる。
「ふふ、ありがとうございます。喜んでもらえたなら何よりです」
喉元過ぎれば……というやつなのか、嘘とは思えないほど湿っぽく、彼女はそう応えた。
それどころか、帰り際に「連絡先交換しませんか?」と切り出してくれたのも彼女の方からだった。一度肉体関係を持ったチカは……いやもしかすると元々そうだったのかもしれないけど、とにかくノーガード戦法の人だった。ワープゲートで任意の場所まで送るとこちらから申し出ると、なんと住所を明かすことで自宅前を指定してきたのだ。
よほど信頼されたのか危機感がないのか……と考えかけて、どちらも違うのかもしれないと思い直す。チカは「この人がその気になったらどのみちどうしようもない」ということを、俺の力の一端を垣間見たことで察していたのかもしれない。
玄関で靴を履いて、ドアを開くことはなくワープゲートを指定された住所に繋げる。開いた輪の先には見知らぬ景色が広がり、俺はただ彼女を見送る。
「都合が合う時、またしましょうね」
楽しいデートの終わり際のように、ゲートの先で振り返ったチカが言う。次に会った時は優しくしてもらえるだとか、まさかそんなことを考えているはずもないのに、なぜそんな雰囲気を出せるのか。俺には分からない。
都合が合う時……という言葉に、次はないかもしれないと予感がよぎる。チカは既婚者で子どももいる、基本的に多忙なはずなのだ。
そう考えた瞬間に、ふと彼女の映画感想が頭をよぎった。「親は子を褒めるべき」。そんな切実な叫びが、今となっては彼女の教育方針にもなっているのではないかと、唐突に思い至る。
俺は、誰かの親にはなれないけれど、この心にそんな器はないけれど。それでもこの天国において、力だけはある。
「俺ならっ」
ワープゲートの先で、チカは標準的な一軒家の中へ消えていこうとする。その家の中にはいつも、家族の団欒と、夜な夜な繰り返される「レイプに同意を足しただけの行為」があるのだろう。
彼女の旦那が重ねる道徳的な罪を他人事と思えない俺は、だからこそ、それを妨げることで贖罪したつもりになりたかった。
「俺ならチカさんに、努力しなくても褒められる世界をあげられますけど」
彼女がもし諦念からノーガードなコミュニケーションを選んでいるなら、諦念を抱かざるを得ないほどの力を持った俺の口から出る言葉が、ロマンチシズムからは完全に切り離されていることを分かってくれるだろう。
そう信頼して提案した。俺が天国から授けられた力は、天国の住人を「その住人にとっての天国」に送ることだって出来るはずだ。それをしてみたいと衝動的に思った。短絡的かもしれないけど、悪い提案ではないはずだと思った。
けれどチカは、ほんの数メートル先で困った風に微笑む。
「そんな世界に行ったら、私、罪悪感で死んじゃいます」
そう言って彼女は、好意的にバイバイと手を振りながら、天国と地獄が入り交じる家の中へ消えていった。
ゲートを閉じたあと、俺はしばらく玄関に立ち尽くした。自分の浅はかさに自己嫌悪が生じると共に、どこか嬉しくなっている面もあった。
チカの言ったことが俺にも分かる。俺も、ただ「何をしても許される女」を与えられるだけでは幸せになれないから、こんな悪趣味な天国を与えられている。チカも同じだ、ただ褒められるだけではダメで、彼女には彼女の哲学に合わせた、複雑怪奇な天国が必要なのだ。それは俺のような凡人の発想力で片手間に作り出せるものではない。
そうか、天国を与える側の気持ちはこんな風なのか……。そう少しでも理解できたことが、なんだか嬉しかった。人間は自分を客観視できると精神的に落ち着くケースがあるというけど、これがその一例なのかもしれない。俺はチカを通して、今居るこの天国が自分にとって確かに必要な物であることを再確認できた。
その日以降、俺がチカを呼び出すことはなかった。彼女には旦那がいる、彼女の哲学に沿って褒める役がすでにいる。チカは真希と違って精神的に孤独ではない。乱暴されても本当は少しも興奮できない彼女に、俺があえてちょっかいをかける必要はないのだ。良い体験で背中を押してくれたことに感謝しながら、俺はまた別のサキュバスを探しに行くことにする。
その決意の表明と共に、チカとの間に起きたことの一部始終をその日の夜ユリに話すと、案内人の冥利にでも尽きるのか、彼女はあからさまに嬉しそうにしていた。
次回更新、未定。