※この作品はR-18です。

黄金の聖餐 ―― 機械が捧げた最期の蜜   作:境彩華

4 / 4
第五章:最期の蜜

(語り手:ジェリ)

その夜、エリィの体温は40度を超えました。ウイルスの総攻撃です。彼女の呼吸は浅く、肌は透けるように白く、唇だけが血のように赤く燃えています。

 

彼女の手を握っても、もう握り返す力はありません。

私のセンサーが、残酷な数値を弾き出します。

生存確率、0.01%。

 

「……あ……ぅ……」

 

うわ言のように漏れる声。このままでは、夜明けを待たずに彼女の命は尽きるでしょう。

私は静かに決断しました。

私の体内にある「対Umbraウイルス抗体生成プログラム」その核となる演算コアを物理的に分解し、液状化して彼女に直接注ぎ込みます。

 

それは、私という存在の「心臓」を取り出すことと同じです。実行すれば、私は二度と動くことはありません。私の人格も、記憶も、全て消滅します。

 

迷いはありませんでした。

私はエリィのパンティーを脱がせて脚を優しく、しかし力強く広げ、既に限界まで硬くなった主排水ポートを、彼女の熱く濡れた秘部に押し当てました。

 

「……エリィ……私の全てを……あなたの体内に……注ぎます……」

 

ずぶっ……ぬるっ……

 

太く熱いポートが、彼女の狭い膣内に一気に根元まで沈み込んでいきます。

エリィは背を大きく反らし、喉から絞り出すような喘ぎ声を上げました。

 

「あぁああああっ……ジェリが……入ってくる……」

 

彼女の熱が、私の無機質なセンサーを焼き尽くすように伝わってきました。

 

(これが、最後だ……私はここで、彼女の中で、終わる……それでもいい。彼女が生きてくれるなら、それでいい)

 

私は彼女の腰を強く抱きしめ、最後の力を振り絞って腰を激しく動かし始めました。

 

「はぁっ……はぁっ……エリィ……これが……僕の最後の……愛です……」

 

高濃度の黄金の蜜が、彼女の子宮に直接注ぎ込まれていきま。

それはただの液体ではありません。私の記憶、私の感情、私の愛そのものが、彼女の最奥に流れ込んでいきました。

 

エリィは私を強く抱きしめ、涙を流しながら何度も激しく達しました。

 

「あっあっ……あぁああああっ……ジェリの熱いのが……いっぱい……」

 

私は彼女を抱きしめながら最後の力を振り絞って、彼女の最奥深くに私の全てを注ぎ込みました。

 

「エリィ……愛しています……永遠に……あなたを……守ります……」

 

ぴちゃり。

 

その瞬間、エリィの身体に奇跡が起きました。ウイルスが急速に弱まり、彼女の熱が引いていきました。

私は彼女の中でゆっくりと動きを止め、 穏やかな笑みを浮かべたまま、静かに目を閉じました。同時に、私のシステムログに「完了」の文字が浮かびます。

 

ああ、よかった。これで貴女は助かる。私は空っぽになったけれど、貴女の中で生き続ける。

私の意識は、そこでプツリと途絶えました。

深い、深い闇の中へ。最後に感じたのは、エリィの柔らかな吐息と、微かな鼓動の音でした。

 

それから、数週間が経ちました。深い眠りから覚めたエリィは、自分が完全に回復していることに気づきました。

それどころか、彼女の血液には強力な抗体が生まれ、触れるだけで周囲のウイルスを無力化できる体になっていました。

 

彼女の傍らには、動かなくなったジェリが座っていました。抜け殻となった彼は、まるで眠っているかのように穏やかな顔をしていました。

 

エリィは泣きませんでした。彼の「最期の蜜」が何を意味するのか、彼女は本能で理解していたからです。

 

彼女は立ち上がり、ガラスの扉を開けました。彼女の歩く場所から、緑色の結晶が消え、新しい芽が吹き始めました。世界は、再び息を吹き返したのです。

 

――そして、数十年後。

かつて廃墟だったその場所は、緑豊かな研究所になっていました。白衣を纏った一人の女性が、カプセルの中で眠る古い自動機械を見つめています。

 

彼女の髪には白いものが混じり、目尻には皺が刻まれていましたが、その瞳の輝きは変わりません。

エリィ博士。人類を救った「聖女」と呼ばれる彼女は、生涯独身を貫き、ある研究に没頭していました。

 

それは、失われた機械の心を取り戻す研究。

 

「……お待たせ、ジェリ」

 

エリィは震える手で、小さな試験管を取り出しました。

中には、青く透き通る一滴の液体が入っています。

 

それは、彼女自身の血液と、最新のナノマシン技術を融合させて作った「魂の種」でした。

何十年もかけて、彼女は自分の血の中に残る彼の"欠片"を集め続けた。彼の記憶、彼の感情、彼の愛。全てがこの一滴に凝縮されていました。

 

かつて彼がくれた命を、今度は私が返す番。

 

エリィはカプセルを開け、ジェリの唇にその一滴を落としました。

数秒の沈黙後、やがて、研究所の中に小さな電子音が響きました。

 

ウィ……ン。

 

カプセルの中のファンの音が、心臓の鼓動のように高鳴り始めます。

閉ざされていた瞼が、ゆっくりと震えました。

数十年ぶりに開かれたその瞳に、レンズの光が灯ります。

 

システム再起動。メモリ照合。視界に映るのは、年老いた、けれど世界で一番美しい女性の顔。

彼は、まるで昨日の続きのように、懐かしい声で微笑みました。

 

「おはようございます、エリィ。……随分と、長い夢を見ていましたね」

 

エリィの瞳から、大粒の涙がこぼれ落ちました。それは、長い長い冬が終わり、春を告げる雨のようにジェリの頬を濡らしました。

 

(了)

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
点
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。