セメギャル-僕の彼女は金髪黒ギャルの玲香さん- 作:もすまっく
―――とても優しく体が包まれているような気がした。
そんな感覚が、深い眠りから僕を呼び覚ました。
―――温かい……それに凄くいい匂いがする。
微睡んでいる僕を包んでくれているこれは、一体何だろうか?
そんな疑問をふわふわとした頭で考えながら、僕は薄っすらと閉じていた目を開いて行く。
―――目の前に、天使が眠っていた。
輝くような金色の髪は見る者を魅了してしまう程に美しく、朝日に照らされている小麦色のきめ細やかな肌を彩る黄金のようだった。
大人と子供の間となる美しくも可愛らしいその魅力的な顔には、形のいいツンとした鼻とふっくらとして艶のある唇がバランス良く配置されている。
閉じているその瞼を開いた姿を早く見たいと、そう思わせる程に目の前にいる彼女はとても美しかった。
「……ぁ……玲香……さん……?」
花宮玲香。誰よりも大好きで、何よりも大切な僕の彼女がそこにいた。
「玲香さん……玲香さんがいる……」
僕は目の前で眠っている彼女の胸に甘えるように顔を埋め、その匂いを胸いっぱいに吸い込みながら頬を擦り付けた。
「たっくんてば、起きたらすぐアタシに甘えるとかさ?可愛過ぎじゃん?」
すると、僕の耳に大好きな彼女の声が届く。玲香さんの胸に顔を埋めて甘えていた僕が驚いて顔を離すと、とても優しい瞳で僕を見つめる玲香さんの姿があった。
「起きてたんですか?」
「うん。でもまだ時間あったし、たっくんの寝顔見てた」
「僕も玲香さんの寝顔見るの好きですけど、やっぱりいざこうして見られるとちょっと恥ずかしいですね」
「ふふ、そう?すっごく可愛いかったけどなー?」
「玲香さんだって凄く綺麗でしたよ?」
「ホント?化粧とかしてないけど」
「本当ですよ。それに化粧をしててもしてなくても、玲香さんはいつも綺麗ですし可愛いです。僕が保証します」
「ふふ、ありがと♡」
僕と玲香さんはお互いの瞳を見つめ合いながら、今こうして目の前にいることを確かめるようにそっと頬を撫で、伸ばした指先で唇をなぞる。
「そういえば玲香さん」
「なに?」
「玲香さんが日課をやめたいって言った理由ってもしかして?」
「あはっ、そうそうっ。こうしてアタシとたっくんが朝から一緒にいられるならさ?わざわざ早起きしてまで学校に行く必要ないじゃん?」
まさかの玲香さんによるお泊りサプライズでそこまで頭が回っていなかったけれど、考えてみれば玲香さんの言う通りだった。
朝早く起きて学校で会うよりも、こうして起きた時から一緒にいる方が遥かに効率的だし何より他人に見られる心配がない。
「正直な話、ちょっと不安に思ってはいたんですよね」
「あはっ、それってアタシが急に日課をやめるって言ったから?」
「はい。だって玲香さんですし」
「あっ、たっくん酷くなーい?」
「だってあんなにキスしたがってたのにそんなこと言われたらそうなりますよ」
「ムムム……確かに言われてみればそうかも?」
「でも今その理由を知って凄く安心したというか府に落ちました」
確かに学校で行う日課というのはとても刺激的で背徳感もあって、それはそれで
素晴らしいものだった。
だけどこうして温かくて幸せな気持ちで朝を迎えられるならこの方が断然良い。
「前にもお泊りはありましたけど、今はその時よりもずっと玲香さんと一緒にいたいっていう気持ちが強くなってるので本当に幸福感がヤバイです僕」
「あはっ、アタシもアタシも」
「玲香さんも?」
「うん。ここ最近はもうたっくんが側にいないとホント寂しくてさ?だからこうしてたっくんと一緒にいられるとすっごい安心するし幸せ感がハンパないんだよね」
そう言ってくれた玲香さんは優しい瞳で僕を見つめながら微笑んでいた。
「あっそれにしてもさ?流石ママって感じじゃない?アタシとたっくんのそういう気持ちの変化にちゃんと気付いてたってことでしょ?」
「あー……確かにそうですね。母さんもそんなようなこと言ってましたもんね」
「うんうん。ちゃんとアタシ達のこと見てくれてるんだね」
「はい、自慢の母さんですよ本当に……」
そう言った僕の頭の中にふと、母さんが一瞬だけ見せてくれたあの寂しげな表情が浮かんだ。
玲香さんと出会うまではほとんど表情を変えないようなそんな人だったのに、玲香さんと出会ってからはよく表情を変えるようになった。
そんな母さんが見せたあの表情は、思い出した僕の心を強く締め付ける。
「どしたの?たっくん大丈夫?」
その一瞬の変化に気付いた玲香さんが心配そうな顔で僕に声をかけてくれた。
「大丈夫です……ただ……」
「……ただ?」
「……母さんのことを思い出して」
「彩音ママを?」
「……はい。昨日のあの寂しげな顔は僕も初めて見たんです。それでその時の母さんの姿を思い出したら、なんだかちょっと……」
―――いつかその日が来た時に寂しいと感じるのは、あなた達二人だけでは無いっていう事も、ちゃんと理解していてもらえると嬉しいよ。
母さんはきっとそれを理解して、納得して、受け入れているはずだ。でもだからといってそういった気持ちが無くなることは無い。
いや寧ろ玲香さんと仲良くしている姿を見て、いつか来るその日が明確になった事を悟ったからこそあんな顔をしていたのかもしれない。
「……たっくんさ?」
そんなことを考えている時だった。
「ママのこともいっぱい抱きしめてあげたらどうかな?」
玲香さんが僕の瞳を見つめながらそう言った。