セメギャル-僕の彼女は金髪黒ギャルの玲香さん- 作:もすまっく
「ねぇたっくんどう?おかしいとこない?」
「おかしい所なんて無いですし今日も可愛いです」
「そう言ってくれるのはホント嬉しいけどさ?ちゃんと見てくれてる?」
体を動かす度に玲香さんのその短いスカートが揺れるため、そこから伸びるむちっとした太腿を僕はガン見していた。ありがとうございます。
「見てないじゃんっ!太腿ガン見じゃんっ!えっち!」
「いやだって、なんだかんだで玲香さんの制服姿が一番見慣れてますし、おかしいところとかがあったらパッと見で気が付きますからね」
「ふーん?」
「何かまだちょっと納得してない感じですね玲香さん」
「うん。だってマジで太腿から目を離さないじゃん。まだ見続けてるじゃん。普通そろそろアタシの目を見るとこじゃないのそこ?」
余りにもガン見し続けていたからか、玲香さんは落ち着かない様子で内腿を擦りつけるようにもじもじとし始めた。本当に素晴らしい。
仕方がないので僕は太腿から目を離して視線を上げる。するとそこには瞳を潤ませながら少しだけ唇を噛みしめ、恥ずかしそうに顔を赤く染めている玲香さんの姿があった。
「あの、玲香さん?朝から凄くえっちな顔してますけど、大丈夫ですか?」
「たっくんのせいじゃんっ!えっち!スケベ!ヘンタイッ!」
「えぇ?太腿を見てただけなのに……?」
そもそも玲香さんはおかしなところが無いかを聞いて来たけれど、一体僕がどれだけ玲香さんの制服姿をこの目で見守って来たと思っているのだろうか?
さっきも言った通り、本当におかしなところがあればすぐに気が付くくらいには玲香さんの制服姿は目に焼き付いている。
「ホントたっくんってば、たっくんなんだから」
最初の頃は憧れで見ていたその姿も、玲香さんに告白されて恋人関係になってからは、僕も他の男子達と同じように下心全開で見守って来た。
だって僕が玲香さんの姿を見ているだけで、たくさんの喜びや幸せを感じられるのと同じように、玲香さんもまた僕に見られることが大好きで、嬉しくて、そして興奮してしまうということを僕は知っているから。
「あんまりそうやって見られると……我慢出来なくなっちゃうじゃん……」
だから例え先程のように玲香さんに罵倒されたとしても、それは玲香さんなりのお約束というか、ただのスキンシップみたいなものだということも僕は理解している。
「玲香さん?明日は土曜ですから、今日帰ってきたらその時は―――」
そこまで聞いて我慢できないといった様子で僕に抱き着いた玲香さんは、僕の顔をその大きな胸に抱え込むように強く抱きしめる。
「―――うん♡」
そして、とても嬉しそうな声で僕に返事をしてくれた。
◇◇◇
「おはよう拓斗、玲香ちゃん」
「おはよう母さん」
「ママおはよっ」
玲香さんは挨拶をしながら流れるようにさらりと母さんに近寄ると、そのまま母さんの頬に自分の頬を軽く触れさせるようにしてくっ付けた。海外のドラマや映画でよく見るあれだ。
そんな外国人のようなスキンシップを終えた玲香さんは、先に座っていた僕の隣に座る際、パチリと僕にウィンクをしてくれた。
「(今みたいな感じでやればいいよたっくん)」
「(あまりにも手慣れ過ぎててびっくりしたんですけど)」
「(仲の良い子同士とか仲の良いママとなら結構するんじゃない?アタシもママとよくしてるし?)」
「(へー、でも言われてみれば確かに学校でも女の子同士で軽く抱きしめ合ってたりとかしてますもんね)」
「(でしょ?だからたっくんもそんな感じで軽ーくやればいいと思うよ?)」
「(その軽ーくが大変なんですよ……?)」
「(あははっ、あっじゃあさじゃあさ?今アタシとしてみようよ?)」
「(え?今ですか?)」
「(うん、ほらほらたっくん)」
すぐ隣にいる玲香さんが僕の方に体を伸ばすように傾けて来たので、僕も同じように上半身を玲香さんに向かって伸ばすように傾けた。
お互いに少しだけ手を肩と腰の後ろに回してタッチしながら頬をそっとくっ付けてすぐに離す。
「ね?簡単でしょ?」
「……はい」
確かに簡単ではある。けれどそれは相手が玲香さんだからであって、母さんにやる時にこれが簡単かと言われると何とも言えないラインだった。
「どうしても恥ずかしいならさ?家を出る前とかにサッとやってサッと家を出ちゃえばいいんじゃない?」
「……なるほど」
つまりはやり逃げをする形でハグをして、終わったらすぐに家を出ると。
「……一旦それでやってみます玲香さん」
「うん、頑張ってね?」
玲香さんの優しい瞳に見つめられながら、僕は目の前にある母さんの作ってくれた朝食を口に運んだ。
◇◇◇
朝食を食べ終えて少ししたあと、学校に行く準備が整った僕と玲香さんが玄関で靴を履いていると、母さんが見送りに来てくれた。
「二人共、気を付けてね?」
「うん、ありがとう母さん」
「はーいママ」
僕は敢えて靴の紐を時間を掛けて結び、心の準備を整える時間を稼いでいた。
僅かに顔を上げ、玲香さんの顔を覗き見る。覗き見た玲香さんのその顔は優しく微笑んでおり、まるで僕を見守ってくれている天使のようだった。
しっかりと靴の紐を結び終えた僕は一度だけ喉を鳴らし立ち上がると、ゆっくりと母さんの方へ振り返った。
「……あ、えっと……母さん」
「うん?」
破裂しそうなくらいバクバクと鳴っている心臓。それでもすぐ隣で玲香さんがちゃんと見守ってくれているという事実が僕の背中をそっと押してくれた。
僕は目の前にいる母さんにそっと抱き着いて頬を寄せる。
「行ってきます、母さん」
何も言わずにただ優しく僕のハグを受け入れてくれている母さんは、玲香さんとはまた違う温かさで僕を包んでくれていて。
「うん、いってらっしゃい。拓斗」
一言だけそう言ってくれた。
その一言を噛み締めた僕は、静かに体を離したあと、母さんの顔を見ることなく飛び出すようにして家を出る。
この時の僕は火傷でもするんじゃないかと思うほどに、顔が熱く火照っていた。