セメギャル-僕の彼女は金髪黒ギャルの玲香さん- 作:もすまっく
「はぁ、はぁ……は、恥ずかしかった……!」
家から十数メートルくらいの距離を一気に駆け抜けた僕は、走る前からびっくりするほど熱くなっていた顔を両手を使って冷ますように仰いだ。
何が一番恥ずかしかったかと言えば、ふと鼻で息を吸った際に香った母さんの匂いに凄く安心してそのまま思いっきり甘えそうになったことだった。
「……本当に恥ずかしかったけど……でも、ちゃんと出来た」
玲香さんが見守ってくれてたとはいえ、ちゃんと自分から母さんにハグをしてあげることが出来た。
そのことに喜びを噛み締めていると、後ろから追い駆けて来た玲香さんが僕の隣に並んで声をかけてくれた。
「たーっくん?」
「っ玲香さん」
「ちゃんと出来たじゃん?」
「はい、ありがとうございます玲香さん。玲香さんが教えてくれたやり方と、あとすぐ側で見守ってくれてたお陰です」
「ふふ、そっか。おめでとたっくん」
「はい、ありがとうございます」
「もっといっぱい感謝しちゃっていいんだよ?」
「?……本当に助かりました、ありがとうございます」
「んーん、そうじゃなくてさ?」
「え?」
「だからー、いっぱい感謝しちゃって、ね?」
思わず立ち止まった僕の隣で、玲香さんは僕の部屋でのときのように両手を僕に伸ばしておいでおいでをする。
「えっと……?」
「感謝しないの?ほらほら?いっぱい感謝して?」
両手を伸ばしたまま、踵だけを細かく上下に動かし僕に催促する玲香さん。踵が地面にコツコツ当たるその振動で、ブラウスの中で静かにその時を待っているおっぱいが上下に揺れる。
僕は周囲を見渡しまだ人が全然いないことを確認すると、その大きな胸に飛び込むように抱きついた。
「はーい、いらっしゃーい♡」
ブラウス越しでも十分に僕の顔を包み込んでくれる大きさと柔らかさ、そして伝わって来る玲香さんの甘やかしてくれるその気持ちがとても心地良い。
母さんとは違う玲香さん特有の甘い香りには、安心感や幸福感が多分に含まれていて、さらにそこにスパイスとしてちりばめられている興奮や高揚感が僕を玲香さんという沼に引きずり込んでしまう。
「たっくんが彩音ママとハグしてるときね?アタシすっごく嬉しくてさ?ホントに良かったって思ってたんだけどね?」
僕の頭に腕を回してしっかりと抱き寄せる玲香さん、その大きな胸に僕の顔がさらに深く沈んみ込んだ。
「アタシって自分で思ってるよりもずっと独占欲が強いみたいでさ?あんな短い時間しかハグしてなかったのにすっごい安心してるっていうか、心地よさそうにしてるたっくん見てたら悔しくなっちゃった」
玲香さんの言葉を聞きながら、僕はその柔らかさと匂いを堪能し続ける。
「アタシから彩音ママに甘えるように言っといてなんだけどさ?彩音ママにハグしたらその何倍もアタシにハグして?何倍もアタシに甘えて?ね?」
何かちょっとだけ病んでるように聞こえなくもないようなことを言い始めている玲香さんだけど、僕はそんな嫉妬心剝き出しの玲香さんが可愛いし心から愛おしいと思える人間だ。
だから僕はそんな可愛いらしい玲香さんへの答えとして、玲香さんの腰に回していた腕に力を込め、僕の体に押し付けるように強く抱き寄せた。
「ぁんっ♡ふふ、ありがとたっくん♡」
当然のように伝わった僕の答えに、喜びを隠せない様子の玲香さん。
「ね、たっくん?今日のお昼もさ?あそこでいっぱいハグしよ?ご飯食べたらずっとハグ♡いいよね?」
「はい、いっぱいしましょう玲香さん」
「やたっ!急げばニ十分くらいはこうしてられるかな?」
「確かにそれくらいの時間は出来るかもしれないですね」
「ふふ、楽しみーっ」
幸せそうに笑う玲香さんから体を離した僕は、玲香さんと手を絡めるように握り合いながら学校へと向かった。
◇◇◇
―――そして訪れた昼休み。
例のトイレの代用として使っていた屋上前のちょっとしたスペースに来ていた僕と玲香さんは、なぜかそこにあった教室で使われている物と同じタイプの四組の机と椅子を見つめながら立ち尽くしていた。
椅子はひっくり返して机の上に重ねて置かれており、掃除のときによく見るスタイルで並べられている。
「玲香さんどこから持って来たんですかこれ?」
「え?アタシじゃないよ?」
「あれ?違うんですか?てっきりこのためにこっそりと用意しておいたのかと」
「椅子一個だけとかならいいけどさ?こんなにアタシ一人でやるわけないじゃん」
「それはまぁ、確かに……。それにしても一時的な置き場所としてなのかは分かりませんけど、四つもあるならその内誰か取りに来たりしそうですし、そのとき僕達が見つかったら面倒なことになりそうですね」
少し考え込んだ様子で眉間に皺を寄せていた玲香さんは、僕の話を聞きながらふと思いついたのか、意外な事を口にした。
「ん-……ならさ?お菓子一個用意しよっか?二人で食べられるやつ」
「……お菓子、ですか?」
どうしてお菓子なんだろう?そう思った僕に玲香さんは話を続ける。
「うん。ここでアタシがたっくんをいっぱい甘やかしてるときにもし誰か人が来たらさ?アタシがたっくんにお菓子をあーんしてる状態で待ち構えんのね?」
「ふむふむ」
「そしたら
「……なるほど」
人気《ひとけ》のない場所で男女が抱きしめ合ってる姿を見られれば、きっと見た人は抱きしめ合う以上の事をしているだろうと想像してしまうかもしれない。
だったらやることは単純だ。人に見られるのが恥ずかしいからとか、あーんしてる姿を見せつけられると嫌な気持ちになる人がいるからとか、そういった理由があるから僕と玲香さんはわざわざこの人気《ひとけ》のない場所でイチャついているんだという体《てい》を取ればいい。
それなら仮に見られることでそういう風に思われたとしてもいくらでも言い訳が利く。つまり玲香さんが言いたいのはそういうことだろう。
「いいですねお菓子作戦」
「ふふ、でしょ?」
「それに細長いあのお菓子ならお互い口で咥えてそのままキスとかも出来ますし」
「あっそれ採用っ!名案じゃんっ!」
「ありがとうございます」
「あはっ、じゃあ採用案を出してくれたたっくんにご褒美♡」
そう言って玲香さんは僕を抱き寄せる。
「今日はお菓子がないから、このまま……♡」
そして、そのまま僕に唇を重ねてくれた。