セメギャル-僕の彼女は金髪黒ギャルの玲香さん- 作:もすまっく
教室の中で大胆にも告白して来た彼。そんな彼の勢いに押されてそのまま付き合う事になった美香は、何だかんだで毎日が幸せで楽しくて仕方が無かった。
そんな彼に取ってもらった大きなウサギのぬいぐるみ。結局自分では取れなかったそのぬいぐるみは、結果的に大好きな彼からのプレゼントとして受け取る事になり、美香はぎゅうっとそのぬいぐるみを抱きしめて喜びを噛み締めていた。
「うん?」
そんな美香の耳に、彼が何かに気付いたかのような声が届く。
「どしたの?」
「いや、水崎と花宮がいる」
「えっどこ?」
色々ありはしたけれど、それでもやはり親友である玲香がいると言われた美香は、すぐに周囲に視線を配りその姿を探す。
「あそこ。あっちのクレーンゲームの筐体があるところ」
「んー……あっ本当だ」
こことは反対側の位置にあるクレーンゲームのところで立っている玲香が、何やら祈るようなポーズで見つめている姿が見える。
「あの二人もデートかな?」
「うん、二人でゲーセンに来てるんだしデートでしょ」
「どうする?声かけて一緒に遊ぶか?」
美香は数秒程悩んだ後、首を横に振った。
「……んーん、やめとく」
「そうか……じゃあ向こうの方も少しだけでいから見に行かないか?ちょっと気になるゲームがあってさ?」
「うんいいよ、行こ?」
彼の言葉に了承した美香がそちらの方へ一歩踏み出した時。
「みーちゃん」
彼が美香に向けて手を差し出した。
美香は自分の目の前にそっと差し出された手を見て彼が何をしたいのかをすぐに理解すると、抱き締めるように両腕で胸に抱き抱えていたウサギのぬいぐるみから片方の腕を離し、その離した手で差し出されている彼の手を握る。
美香は玲香とは違い身長が低いために、玲香と同程度の身長がある彼の手はとても大きかった。
そしてそんな大きな彼の手に、自分の小さい手がまるで包み込まれるように握られることが美香は大好きだった。
「―――ふふ」
ぬいぐるみと取ってもらった喜びと、大好きな彼の包み込むような手の大きさに思わず笑みを零す。
「ん?」
そんな美香の零した嬉しそうな声に反応した彼は、美香の方へどうしたのかと顔を向ける。
「んーん、なんでもない」
美香はその一言だけしか言わなかったが、それでもすぐに理解を示した様子の彼はその優し気な瞳で美香を見つめ顔を綻ばせる。
まだ付き合って短いというのに、たったこれだけのやり取りで通じ合える程に二人の仲は深まっていた。
それがまた嬉しくて、美香は顔を赤くしながらも彼に笑顔を向けた。
彼と手を繋ぎながら目的の方へ向かって進んだ時、美香は一度だけ親友である玲香の方へと振り返った。
美香の視線の先では、何やら小さなぬいぐるみらしきものを手に取った玲香がとても嬉しそうに拓斗を抱きしめている姿があった。
(……そっちも取って貰えたんだ……良かったじゃん、玲香)
大好きな彼にぬいぐるみを取って貰うという喜びをついさっき知る事が出来た美香は、同じように喜んでいる親友の姿を見て目元を和らげる。
(ねぇ玲香?自分に大好きな人がいるってさ?自分を大好きでいてくれる人がいるってさ?毎日がこんなに嬉しくて、こんなに楽しく感じられるんだね?)
美香は玲香から目を離し、手を握ってくれている彼の横顔をそっと見上げる。
大きな彼の姿を見ていて思い浮かぶのは、大きな玲香に抱きしめられている小柄な拓斗の姿だった。
「……ねぇ修《しゅう》?」
「うん?っと」
向こうの二人は彼女である玲香が大きく、彼氏である拓斗が小さい。
しかし自分達はその真逆で、彼女である自分が小さく、彼氏である修が大きい。
つまり、玲香と拓斗のカップルとは逆の事を自分達は出来るという事。
だから美香は玲香に抱き着く拓斗のように、彼氏である修に甘えるように抱き着いた。