セメギャル-僕の彼女は金髪黒ギャルの玲香さん- 作:もすまっく
「あっ、玲香さん鍵開けるのでちょっと手を離しますね」
「え?ヤダ」
「……え?いや、あの?拒否されても困るんですけど?」
「だってまだ離したくないんだもん」
「でももう家に着いちゃいましたよ?」
「うん知ってる」
「それなら―――」
「ヤダ」
「玲香さん?」
「だって繋いでたい気分なんだから仕方ないじゃん」
「……いやまぁ、玲香さんがそういう気分ならそうかもしれないですけど」
とはいえ、このまま家の前で手を繋いだまま立っていてもなと考えていると、ふと今日の朝のことを思い出した。
「そういえばですけど玲香さん?」
「なに?手は離さないよ?」
「あっ違うんです、手じゃなくて朝のことなんですけど」
「朝?」
「はい。確か今日の朝、明日土曜なので帰って来たらって僕が―――」
そこまで言った瞬間すぐに手を離した玲香さんは、家のドアを早く開けるように急かし始めた。
「たっくん早く早くっ、早く中入ろっ」
「今の今まで手を離したくないとか言ってたのに」
「だってしたいじゃん」
「それを言われたらもう早くするしかないじゃないですか」
「あはっ、ほらほらたっくん早くー」
「今開けますからっ」
「たっくんもうアタシ待てないー」
玲香さんは僕の服の上から胸の辺りを指でクリクリと的確に弄って来る。
「ちょっ、玲香さんっ」
普段は触られることがなく、あまり感じ慣れていないその感覚に僕は思わず強く反応してしまう。
するとそれを見た玲香さんは、悪戯をするときの子供のような表情から大人の女の顔へと一変させ、獲物を狙う妖しい目つきで僕を見つめ始める。
「ふふ、もしかして今のだけで感じちゃった?たっくん可愛い♡あっそうだっ、今日はたっくんにプレゼント貰っちゃったからさ?お返しとしていっぱいご奉仕してあげよっか?」
「……お願いします」
「あはっ♡りょうかーい♡」
玲香さんは大人の色気をムンムンに醸し出しながら、最後にどこか子供っぽさを感じさせる笑顔でそう言ってくれた。
◇◇◇
『水崎拓斗』
学校にいるときも、家に帰る途中も、今こうして部屋で横になっているときも。
何度画面を見ても、何度瞬きをくり返しても、そこにある水崎拓斗という文字は消えることがなくて。
だからこれは夢なんかじゃなくて現実なんだと、スマホの画面に表示されている彼の名前がそう理解させてくれる。
アタシからの告白を彼が受け入れてくれたことで、無事にアタシ達は恋人同士になることが出来た。
生まれて初めての彼氏。嬉しくないわけがない。
でも一つだけ不思議に思ったのは、彼がアタシにとって初めての恋人となったそのときから、アタシはこうして彼の名前を見るだけでなぜかとてもふわふわとした感覚に包まれるようになったこと。
温かくて、嬉しくて、心が落ち着かなかった。
だから一度スマホを置いてもまたすぐに手に取ってその名前を確認してしまう。
「―――ふふっ、なにこれ?」
アタシはそれがおかしくて仕方がなかった。
それはもしかしたら、名前を見る度に込み上げる喜びと温まる心が、アタシを幸せでいっぱいに満たしてくれているからなのかもしれない。
「ふふっ、あはははっ、んふっふふふっ」
いっぱい笑って、いっぱい幸せを感じることが出来たアタシは、今度はその名前を丁寧にゆっくりと呼んでみることにした。
だって見るだけでこんな気持ちになれるのなら、その名前を声にしてみたら一体どうなっちゃうんだろうって、すごく気になったから。
「水崎……拓斗……くん……」
その瞬間から顔は火照り、全身にと痺れるような感覚が走る。
「―――んぅっ♡」
さっきとは別の意味でおかしくなりそうだった。名前を見ていただけの時とは全く違って、頭が痺れて蕩けそうになった。
ぼんやりとした頭に浮かんだのは『発情』の二文字。
そのぼんやりとした頭のまま、アタシは無意識に手を下の方へと伸ばす。
「水崎、くん」
さっきよりも弱い痺れがアタシの中を駆け巡る。
「―――んくっ」
これじゃない。こんなんじゃもうアタシは満足なんて出来ない。
「水崎……拓斗、くん」
最初の時と同じ痺れがアタシを襲う。
「―――んあっ♡」
これだ。でも、まだアタシは彼をフルネームで呼んでる。
もし、下の名前だけを呼んだら……?
「……拓斗、くん」
一番大きな熱と痺れがアタシの体を駆け巡った。
「―――う”ん”っ♡」
無意識に足をピンと伸ばし、大きく体を仰け反らせる。
「拓斗く―――ん”あ”っ♡」
そこからもう、アタシは止まることが出来なくなっていった。