セメギャル-僕の彼女は金髪黒ギャルの玲香さん- 作:もすまっく
「ねぇ」
「はい、何ですか玲香さん?」
あの日から彼には『玲香さん』と呼ばれるようになった。
「お願いがあるんだけど」
「え?お願いですか?」
「うん、お願い」
これ自体はすごく嬉しくて幸せだったけど、アタシ自身はまだ彼のことを名前で呼んでなかったのがずっと気になってた。
「アタシのこと名前で呼んでって言ったじゃん?」
「はい、言ってくれました」
「だからさ……アタシもその、拓斗くんって……名前で呼んでも、いい?」
アタシに下の名前で呼ばれた瞬間から拓斗くんは大きく目を見開いたあと、すごく嬉しそうに笑ってくれた。
「―――はいっ、もちろんですよ玲香さんっ」
その笑顔を見ただけで、アタシの心は羽のように軽くなる。
「あの、実は僕もその、自分だけ玲香さんって名前を呼んでいるのが気になってて。だから玲香さんにも僕のことを名前で呼んで欲しいなって、ずっとそう思ってたんです……だから、本当に嬉しいです」
しかもそれだけじゃなくて、すぐにその可愛い顔を照れたように薄っすらと赤く染めて、はにかみながら心の内に秘めていた気持ちをアタシに伝えてくれた。
彼のその素直さと、照れながらも気持ちを伝えてくれてるときの可愛さに、アタシは何度もキュンとしてしまっていた。
「ふふ、ならさ?今日から拓斗くんって呼ばせてもらうね?」
「はいっ、お願いします玲香さん」
彼のその真っすぐな瞳はやっぱり心地よくて。
「……拓斗くん」
だから、つい彼の名前を呼んでしまった。
「はっ、はいっ?」
まるで子犬が尻尾を振っているときのような、何かを期待するよな目でアタシを見つめる彼の姿はとても愛らしくて。
「んーん、呼んでみただけ」
「あっ、そうなんですね」
アタシがそう言ったときのちょっとだけ落ち込んだ顔をする拓斗くんの顔もまたすごく魅力的で、それもまたアタシをキュンとさせた。
「―――えいっ」
そんな彼にお詫びじゃないけどちょっとだけ慰めてあげようと思ったアタシは、拓斗くんの顔を自分の胸に押し付けるように抱き寄せた。
「わぷっ!」
突然のことに驚いた彼は、最初はどうしていいのか分からず腕をバタバタとさせてたけど、時間が経つにつれて気持ちが落ち着いて来たのか、その腕を恐る恐るアタシの腰に回してそっと抱きしめ返してくれた。
それに喜びを感じたアタシはその勢いのまま気になっていたことを彼に聞いてみることにした。
「ねぇ、教えて欲しいことがあるんだけどさ?」
拓斗くんは少しだけ顔を上げ、ブラウス越しに当たっているアタシの胸に頬をすり寄せながら、上目づかいでアタシと目を合わせてくれる。
「拓斗くんってさ?おっぱいは大きい方が……好き?」
拓斗くんのその甘えるような行動からとっくに答えはわかっていたけど、それでもアタシは彼の口から直接聞きたかった。
だって彼の口から直接聞いて初めて、アタシを不快にさせ続けて来たこの大きな胸をアタシ自身が好きになれると思ったから。
彼がアタシのこの大きな胸が好きな人だったら、アタシは心から安心出来るから。
「……えっと……その」
拓斗くんは見つめ合っていた目を急に泳がせ始める。流石に大きなおっぱいが好きかどうかを聞かれた上に、さらにそれを言葉にするというのは恥ずかしいみたいだった。
「ねぇ教えて?大きい方が、好き?」
だからもう一度聞いてあげることにした。アタシの方からこうして何度も聞いてあげれば拓斗くんもきっと言葉にしやすいと、そう思ったから。
「……好き、です」
二度目に聞いたとき、ようやく彼は小さいけれどはっきりとした声でアタシに伝えてくれた。
その顔はさっきよりもずっと赤く染まっていて、それがまたとても可愛くて。
「ふふ、そっか」
アタシがずっと求めてた彼のその『好きです』の一言が、全身に広がるようにゆっくりと染み渡っていく。
痺れるような興奮と、お湯に浸かっているような温かさ。そして体を内側から包み込んでくれるような安心感はとても心地良くて。
「……もし良かったさ?もう一つお願いがあるんだけど、いい?」
そんな夢心地の中で、アタシはもう一歩だけ攻めてみることにした。
拓斗くんは顔を赤くした状態のまま、じっとアタシの目を見つめてくれている。彼のその目を『肯定』の意味だと捉えたアタシは、彼に二つ目のお願いを言葉にして伝える。
「拓斗くんの家……行ってもいい、かな?」
その日を境に、アタシと拓斗くんの秘密の関係は次々と加速していった。