攻めギャル-金髪黒ギャルの玲香さんは色々デカイ- 作:もすまっく
いくつかのアイスが入った袋を手に、僕と玲香さんは来た道を歩いて戻る。
「あっそうだたっくん」
「はい?」
「逆バニーの衣装なんだけどさ?」
「はいっ、なんでしょうかっ?」
「急に元気じゃん」
「いえいえ、決してそんな事は」
「まーいいけどさ?それでね?実はそれ用の耳を買うの忘れてたんだよね」
「耳って、うさ耳ですよね?」
「うん。アタシもてっきりセットかと思ったら別売りでさ?そこはセットにしといてよって感じなんだけど」
「いやまぁ、耳があってもなくても僕は正直あまり……」
「ダメだよたっくん?コスプレするならちゃんと揃えないと?」
「え?あっはい、ごめんなさい」
優しく注意された僕は、何か僕よりもちゃんとコスプレに拘りを持っているのはどうしてなんだろうと首を捻る。
「それで注文とかはもうしてるんですか?」
「あっうん、注文はもうしてるしてる」
「あっそうなんですね」
「それで届くのが早くても来週になっちゃうのね?」
「ふんふん」
「だからそれのせいもあってさ?たっくんは楽しみにしてたかもしんないけど、逆バニーはそれが届く来週まで我慢してね?」
ドサリ、とアイスの入った袋が地面に落ちる。
「あっちょっとたっくんアイス入ってるのにーー」
「……え?あっごめんなさいっ」
「もー、いくら逆バニーのアタシを見れないからってさー」
玲香さんは繋いでいた手を離して僕が落としたアイスの入った袋を拾い上げる。
「アタシが持つからたっくんはこっちの手握って?」
「はい、ごめんなさい、ありがとうございます玲香さん」
そして離した手を再び握ってから歩き出す。
「それでね?ホントは逆バニーのコスプレしながらえっちしたかったんだけど出来なくなっちゃったじゃん?だから代わりになに着ようかなって悩んでてさ?」
そんな男なら十人が聞けば十人全員が喜びのあまり叫びながら踊り出してしまいそうなことを当然のように言う玲香さん。
言っている内容としてはつまり『逆バニーのコスプレえっちは出来なくなったけど、えっちをすること自体は決まっている』ということだ。喜ばないわけがない。
ちなみにそれを聞いた僕は、つい先ほどの逆バニーのショックなどどこかへと吹き飛んでしまい、心の中で歓喜の雄たけびを上げている。休日の昼間に外で言うことではないけれど嬉しいものは嬉しいので良しとする。
「それにしても何かあれですね」
「んー?」
「いや、何かとんでもなく贅沢な悩みだなって思って」
「んーそっかな?」
「そうですよ。だってこれって本来は僕のただの我儘ですから」
「そうだったっけ?そうだったかも?」
「玲香さん?」
「あははっ、たっくんに見せたくて色々考えてたらわかんなくなっちゃってた」
なんて健気で可愛い人なんだろう、僕はそう思わずにはいられなかった。
「でもそっか、考えてみればそうかもしんないね」
顔を上げた玲香さんは、大きく広がっている昼の青空を見つめている。
「アタシもたっくんがいなかったらさ?コスプレしてするどころかまだまだ経験なんてしてなかっただろうし……。それに、多分だけどさ?」
空を見上げていた玲香さんはパッと僕の方へ顔を向ける。
「たっくんがいなかったら、そもそも男なんてって思ってずっと独りだったかもしんなかったわけだし?それ考えたら贅沢な悩みってのは間違ってないかもね?」
そう言って僕を見つめる玲香さんのその瞳には、深い感謝と愛情の念が込められているような気がして。
「……今こうして僕と玲香さんが恋人同士になれているからってわけじゃないですけど」
「ん?うん」
「玲香さんは独りにはならないと思います」
「えー?そかな?」
「はい。だって僕が見つけますから」
「……っ」
「僕が独りにはさせないです。だから玲香さんが独りになるってことは無かったと思いますよ」
それから玲香さんは部屋に戻るまでずっと無言のままだった。それでも、僕の手を握り返してくれるその手だけは決して離れる事は無く。
―――そして。
「玲香さんっ!アイス食べるんじゃなかったんですかっ!」
部屋に着いたと同時に僕は有無を言わずに押し倒された。
「ダメだよたっくん?寂しがり屋の女の子にあんなこと言っちゃ?」
「いやっ寂しがり屋も何もっ」
「もうダメなんだよね。あんなこと言われたらホントにダメ。絶対むり」
「まだ昼過ぎでっ……夜にするんじゃないんですかっ……ちょっ力つよっ―――」
「たっくんいいよね?あんなこと言うんだから襲われても文句ないよね?てかホント無理だから抵抗するなし」
週に二日ある土日という休みの日。その一日目となる土曜日は玲香さんに襲われることから始まり、そして夜は僕が襲うことで終わりを迎えた。