攻めギャル-金髪黒ギャルの玲香さんは色々デカイ- 作:もすまっく
上手く行った。不意打ちとも呼べるスリーポイントシュートを狙い通り。
とある理由からバスケはある程度は出来る僕にとって、この最初がとても重要だった。これで次からは僕も警戒対象になるだろうと僕は読んでいた。そうなればあのバスケ部の人も動きやすくなるはずだと心の中で笑う。
「嘘だろ?マジかよ」
「スリーポイントまでの動きもちゃんとしてたから普通に出来るなあいつ」
「水崎お前バスケできたんかいっ」
「おいバスケ部ワンマンじゃないなら話変わってくるじゃねぇかっ」
色々な声が周囲から上がっている感じから、僕のスリーポイントシュートは相手チームだけではなく、他のチームにもかなりの衝撃を与える事に成功しているみたいだった。これだけ僕に注目してもらえたのであれば、想定していたバスケ部の人だけじゃなく、他の三人のメンバーも動きやすくなる可能性も高くなる。
もしかしたらこれは結構いい所まで行けるかもしれない、そんなことを考えながら僕は試合に意識を集中させた。
―――昼休み。
結果は二戦して一勝一敗。バスケ部がいなくても流石に五人チームの内の四人がそれなりに出来るチームは強かった。次回の体育の授業の時に僕のチームは残り三戦をする事になっているので、その結果次第ではまだまだ上位に食い込める可能性が残されているので頑張ろうと思う。
だけどそんなバスケの試合よりも気になる事が一つ。それは体育の授業が終わってからの周囲の人達の変化だった。
体育の授業が終わった直後に起きたちょっとした事件?によって、なぜか僕に対する態度が変化した人(主に隣のクラスの男子)が多数現れたのだ。授業中は思わず恐怖を感じるような形相で睨んで来ていた彼等は、その事件?以降は逆に温かい目を僕に向けて来るようになった。
何が原因でそうなったのかを理解出来ずにいた僕にこっそり教えてくれた人の話によると、男子達がそうなった理由はやはりというか玲香さんだったらしい。
今回の分の試合が終わり、授業の終わりを知らせる鐘の音と共に挨拶を終えたときのこと。玲香さんが僕の元へゆっくりと近づいて来たことに気が付いた僕が、何かあったのかなと思ってその顔を見上げると、玲香さんは頬を赤く染め潤んだ瞳のまま僕の手を取った。そしてとても大切なものを扱うようにそっと僕の手を両手で握り、そして―――。
「―――お疲れ様、たっくん。すごくカッコよかった」
ふわりと微笑みながら僕にそう言ってくれたのだ。
その光景を見た男子達が『あれは無理。花宮の事は忘れた方がいい』という事を話していたとか何とか。他にもその様子を見ていた女子からは『もう完全に夫婦だった』『映画だった』みたいなことまで言われていたとか。夫婦はありがたく受け取るけど映画はちょっと言い過ぎじゃないかと思う。
とにかくそれ以降『頑張れよ』という言葉を掛けられたり、肩を軽くポンッと叩かれるようになるなど、一体どうしたんだろうと思うようなことが続くようになった。
そして今、僕と玲香さんはあの屋上前のスペースでぎゅうっと抱き締め合っていた。最初はもっと激しくやるのかとも思っていたけれど、玲香さんはそういう気分ではないらしく、お弁当を食べ終わってからすでに十分以上はこうしている。
「……たっくんごめんね?なんかわかんないけどさ?今はなんかこうしてたいんだよね」
そう言ってから玲香さんはずっと僕の首の後ろに手を回して、まるでしがみ付くようにしっかりと僕を抱きしめ続けている。
「……玲香さん?もう少しで昼休みも終わっちゃいますよ?」
「……うん。でももう少しだけこうしてたい」
玲香さんは僕の首筋に頬をすり寄せる。この残り少ない時間を惜しむかのように僕を抱きしめながら。
「……はい、玲香さんがそうしたいのなら喜んで」
体を重ねるときとはまた違う感覚が僕を包み込んでくれていた。
温かくて、柔らかくて、優しくて、心が安らぐようないい匂いが。こうしてただ抱き締めているだけなのになぜかとても気持ちいい。快感とはまた違う、時間すらゆっくりと感じてしまうこの充足感のようなこれはきっと……。
「……ねぇたっくん」
「……はい?」
「……アタシね?」
「……はい」
「……今、すっごい幸せなんだよね」
「……僕もです」
「……ふふ、たっくんもなんだ?」
「……凄く幸せです」
「……そなんだ……嬉しい」
「……僕も嬉しいですよ」
「……ねぇたっくん」
「……はい」
「……好き」
「……僕もです」
「……たっくんも好きって言って?」
「……好きです」
「……ふふ♡」
これはきっと、本当の意味での幸福感なんだと思う。