攻めギャル-金髪黒ギャルの玲香さんは色々デカイ- 作:もすまっく
―――ピピピッ、ピピピッ、ピピピッ。
パチッと自分でも驚くくらいあっさりと目を覚ます。一切眠気を感じないことを不思議に思いつつアタシはスマホのアラームを止めて起き上がる。朝にここまで眠気を感じないのは初めてかもしれない。そんなことを考えながらもアタシは取り合えず顔を洗おうと洗面所へ向かった。
顔を洗って歯を磨いたアタシは入念に鏡に映る自分の顔や髪の状態をチェックする。そこに映っているのはいつもよりもほんの少しだけ緊張している自分の姿だった。
「……大丈夫だから……頑張れアタシ」
鏡に映る自分を見つめながら気持ちを奮い立たせる。昨日まで日課のようにやっていた『彼のいる教室の前を通って彼の姿を見るだけ作戦』は終わりだ。
「……見るだけなんてそんなのアタシのガラじゃない」
思い起こされるのは昨日ぶつかったときの彼の姿。アタシを見つめる瞳や気遣ってくれたときの優しい声。ぶっきらぼうな態度のアタシに丁寧な言葉で返してくれた彼の声はなぜかとても耳に残っている。
「行動しなきゃ、だよね」
学校に着いたアタシは自分の教室へは行かず、一旦彼がまだ来ていないかだけを確認したあと、校門から入って来る生徒達を綺麗に見下ろせる場所がある三階へやって来た。その理由はもちろん彼が何時に学校に登校して来るのかを確認するためだ。
「………」
じっと校門から入って来る生徒達へ視線を送り続ける。
三分、七分、九分、十二分……。アタシはスマホで時間を確認するたびに心の中にある何かが強くなっていくのを感じながら登校してくる生徒達を見つめ続けた。
そして鐘が鳴るまで残りニ十分となった時だった。
―――来た。
小柄でサラサラとした黒い髪。遠目で見ても分かる彼の姿は、見ているアタシの胸を無意識に高鳴らせていた。
アタシは急いで階段を駆け下り昇降口へ向かって走っていく。昇降口が近づいた辺りで一旦足を止めたアタシは、深呼吸をくり返して自分を落ち着かせる。そしてすぐに目と鼻の先にある昇降口へ向かって歩き出した。
もう少しで昇降口へ着くというところで、内履きに履き替えた彼がちょうど昇降口から姿を現し、そのまま真っすぐ教室の方へと向かって歩いて行くのが見えた。アタシはすぐに彼の教室まで歩く道を思い浮かべる。
―――あの廊下から彼の教室までは曲がり角が何度かある。
閃いた通りのチャンスがやって来た瞬間だった。そこしかないと考えたアタシは、彼の歩くルートとは違うルートを全力で駆け抜けていく。そして廊下にある窓から彼の位置を確認したアタシは、ちょうど彼が曲がって来るタイミングを狙って角から堂々と一歩踏み出した。
「―――えっ?わぷっ!?」
突然曲がり角から出て来たアタシの胸にぶつかった彼は、昨日と同じように弾き飛ばされて尻餅をついた。カワイイ。
「あっ、ごめんね?」
―――これが、アタシが彼に最初にやったえっちないたずらだった。
アタシが見るだけじゃない。彼がアタシを見て、アタシに触れて、アタシに声をかけてくれる……んーん違う。
尻餅をついていた彼に……これも違う。
「す、すいません、ありがとうございます……」
そんなことを知りもしない彼は、昨日ぶつかったときとは違って何にぶつかって自分が尻餅をついたのかをちゃんと理解しているみたいだった。その証拠に彼の顔は恥ずかしそうに真っ赤に染まっていて。カワイイ。
「大丈夫?」
少し困り顔で視線を泳がせているその姿は、見ているアタシが思わずキュンとしてしまうくらいホントにカワイイ顔だった。