セメギャル-僕の彼女は金髪黒ギャルの玲香さん- 作:もすまっく
僕は待ち合わせの場所となる駅へ着いてすぐ、玲香さんの住んでいるマンションのある方の改札口へと向かう。
この駅は入り組んでいるような駅ではないので歩いてすぐに改札口が見えて来る。僕はポケットからスマホを取り出し改札口から出るため準備をした。
次々と通過していく人の流れを改札口へ向かって歩きながら目で追っていると、改札口の奥の方でスマホを弄って待っている玲香さんの姿が見えた。
僕は他の人にぶつからないよう小走りで改札口へと近づき、ピッという音と共にすぐさま玲香さんの元へ駆け寄っていく。
玲香さんは黒いショートパンツ姿だった。上は両肩が広く露出していて、胸の辺りにはふわっとしたフリルがついている。今日の玲香さんの服装は両肩を大胆に見せているけれど、代わりに大きな胸が目立ちにくいように隠している、そんな印象だった。
「お待たせしました玲香さんっ」
僕が声を掛けると、まるで仮面を被っているかのように無表情だった玲香さんの顔がパッと花が咲いたように明るくなった。
「あっ、おはよたっくんっ」
「おはようございます」
「ふふ、どうどう?可愛い?」
「凄く可愛いです」
「でしょー?」
「はい、本当に可愛いです」
「たっくんさ?今日は胸が見えないからって太腿見過ぎじゃない?」
「いやだって玲香さんのショートパンツの太腿ですよ?もう何か見ない方が逆に失礼なんじゃないかって」
そう言いながら僕は黒のショートパンツの裾をパツパツにして悲鳴を上げさせている玲香さんの太腿を凝視する。
それは決して太っているからそうなっているのではなく、サイズが小さいのを履くとこうなるよねっていう感じの理想の太腿だった。
小麦色の肌のムチムチッとした太腿は、玲香さんがゴツッとヒールを地面に当てる度にふるるっと振動している。生まれて来た事に感謝を。
「逆に失礼とかそんなわけないじゃんっ!ホントにたっくんはえっちなんだから。そんな舐めるように見つめちゃってさ」
「―――!!」
「舐める?その手があったか!みたいな顔やめてね?」
「そ、そんな顔してないですよ?」
「ふーん?」
「そ、それで今日はこれからまずどこに行くんですか?」
「たっくん誤魔化したー」
「誤魔化してないです」
「正直に言ってみ?」
「正直に言ってますよ?」
「正直に言ったら舐めてもいいよ?」
「誤魔化しました」
「認めんのはやっ」
そんなやり取りをしていた僕と玲香さんは取り合えず電車に乗って移動しようという事になり、たった今僕が通って来た改札口へと再び入って行った。
休日で朝が早かった事もあって比較的に電車の中は空いていて、空いていた席で僕と玲香さんは並んで席に座る事が出来た。
そうして一緒になって電車に揺られていると、僕にだけ聞こえるように声を抑えながら玲香さんが話し掛けて来た。
「(たっくんは朝ごはん食べた?)」
「(食べましたよ。味がしなかったですけど)」
「(……どゆこと?)」
「(まぁその、色々あったんです)」
「(何か遠いところ見てるみたいだけど大丈夫?)」
そういえばデートが決まって浮かれてたせいで忘れてたけど、帰ったら母さんと話さないといけないのかあの事を。
「(アタシまだ何も食べてなくてお腹空いてるんだよね)」
「(あっそうなんですか?じゃあまずは何か食べましょう)」
「(いいの?たっくん食べたんでしょ?)」
「(食べましたけど、玲香さんがまだならそっちが優先ですよ)」
「(ホントに大丈夫?)」
「(大丈夫ですよ。朝ご飯を食べたって言っても飲み物とかデザートとかを口に入れるくらいは出来ますから)」
「(そっかデザートっ!たっくんにあーんしたい!)」
「(いいですよ)」
「(アタシもあーんして欲しい!)」
「(いくらでも)」
「(んん?たっくん何かいつも以上に優しいけど何かあった?)」
「(何もないですよ?)」
「(いや絶対あったって!何かおかしいし)」
「(おかしいは酷くないですか?あれですよ、ただ休日に玲香さんとこうしてデートしてるのが凄く嬉しいだけです)」
「(やっぱりおかしいっ)」
「(顔を赤くしながらそんな事を言ってる玲香さんも可愛いくて好きですよ)」
「(だからっ!もうっ!たっくんのヘンタイっ!好きっ♡)」
「(えぇ?)」
そうこうしている内に目的の駅へと着いた僕達は、駅を出てすぐの所にあるハンバーガーチェーン店の中へ入る事にした。
◇◇◇
「たっくんたっくん、はいあーん」
「あ、あーん」
指で摘まんだポテトを僕に向けてあーんをして来る玲香さん。出来るだけ人の視線が気にならない席を選んだつもりだけど、やっぱりどうしても羞恥心は感じてしまう。
「たっくんおいしい?」
「おいひいです」
「ふふ、はいじゃあ次アタシ」
そう言って玲香さんは顔を近づけてくる。目を瞑りながら小さく口を開けて待っている玲香さんのぷるっとした唇が目に入る。
それを目の前で見た事で、その唇にキスをしたいという衝動が込み上げて来てしまった僕は素早く視線を動かし周囲を確認する。
そしてすぐにリップが塗られた艶のある唇にキスをした。
「んぅっ!?……んっ……♡」
まさかキスをされると思っていなかったのか、一瞬本気で驚いた反応をした玲香さんは、怒るでもなく嫌がるでもなくそのキスを受け入れてくれた。
時間にして数秒だろうか?重ねていた唇を離した僕はチラチラと周囲を確認して誰にも見られていないことを確認する。
改めて確認し終えた僕がほっとしていると、何やら思い付いたらしい玲香さんはポテトを一本だけ指で摘まんで再び僕にあーんをして来た。
「玲香さん?僕まだ玲香さんに食べさせてあげてませんけど……?」
「いいからいいから、はいあーん」
僕は本当にいいのだろうかと思いながら、玲香さんからそのままポテトを口に入れてもらう。
そしてそのポテトを口の中で何度か嚙んだ時の事だった。
「たっくんそれ、あーん」
咀嚼している僕の口を指で刺しながらそう言った彼女は、またも目を瞑って口を開ける。
(それ?それって、これ?えっもしかして今僕が口の中に入れたこれ!?)
徐々に言われた事を理解した僕が流石にそれはと思いどうしようかと悩んでいると、目を瞑ったままの玲香さんが急かしてくる。
「んっ!」
これはやらないと納得してくれないなと覚悟を決めた僕は、念のためもう一度周囲の人達の視線がない事を確認する。
そしてそっと彼女の口に自分の口を重ね合わせ、咀嚼したポテトを舌に乗せて彼女の口の中へと運んだ。
それを受け取った玲香さんは満足そうな顔でポテトを咀嚼しながらゆっくりと顔を離していく。
「……ふふ、おいし♡」
こくりと小さく喉を鳴らした玲香さんは、艶めかしく自分の唇を舌でなぞりながら微笑んだ。
「今日のたっくん大胆過ぎ。マジで好き♡」
「そ、そうですか?」
「うん。アタシ的には今みたいにもっともっと積極的になってくれたら嬉しんだけどなー?」
「それは……頑張ります」
「うん♡期待してる♡」
玲香さんはとても嬉しそうに微笑みながら、その綺麗なネイルの施されている指で摘まんだポテトを口に運んだ。
「…………」
今もこうして僕の目の前で幸せそうにポテトを摘まんでいる彼女の姿に、僕は駅前で声をかけたときに見た彼女の表情の変化を思い出す。
それまでは他の誰も寄せ付けない、まるで仮面を被っているかのように無表情だった玲香さんの顔が、僕の声を聞いただけで花開くような笑顔へと変わったあの瞬間を。
心からの愛情と信頼を感じさせる玲香さんのあの瞳は、見つめられるだけで気分が高揚し僕の胸を高鳴らせた。
「―――玲香さん」
だからだろうか?僕は無意識の内に玲香さんの名前を声に出していた。
「んー?どしたの?」
「―――え?あっ、いやっ、えっと……」
玲香さんが反応したことで声に出していたことに気が付いた僕は言葉を詰まらせてしまう。
そんな僕の様子に何かを察したのか、玲香さんは何かに気が付いたような目で僕を見つめた。
「……なんかいつもより素直だなーって思ってたけどさ?たっくんもしかしてだけどさ?なにか悩んでる?」
先程の幸せそうだった姿は鳴りを潜め、ただひたすらに僕を想い気遣ってくれている玲香さんのその瞳は僕を捉えて離さない。
「いや、別に僕は……」
「うそ。絶対に悩んでる。なに?なにに悩んでんの?教えて?」
玲香さんは少しでも抵抗しようとした僕の嘘を嘘だと断定し、すぐその理由を問いただして来た。
そんな彼女の僕を想うからこその真っすぐさに、僕は気が付けば口を開いていた。
「…………僕の家族のこと、なんです」
家族という言葉に、はっきりと分かりやすく強い緊張を見せた玲香さん
「たっくんの家族……?」
玲香さんのその強い緊張を見せた顔に焦った僕は一度断りを入れる。
「あっ、いやっ、別に何か重い病気だとか大きな怪我をしただとか、そういうような話じゃないんです」
「えっ?そうなの?アタシてっきり……」
緊張を和らげ安堵の息を吐いた玲香さん。
これは完全に僕の言い方が悪かった。
深刻な顔をしている状態で家族ことで悩んでるなんて言われたら重い方向に考えてしまうのは当然のことだ。
「……はい。というかその、玲香さんもガッツリ関係ある話なんです」
「え?アタシ?アタシがたっくんの家族と?」
「……はい」
僕は一度周囲へ視線を送り、声を落として玲香さんへ伝える。
「この前、僕の部屋でしたじゃないですか?」
僕の様子に不安そうにしていた玲香さんは少しだけ顔を赤らめる。
「えっと……ぅん」
「そのあとシャワーを浴びるために二人で一緒に入った浴室でその、続きもしたじゃないですか?」
「ぁっ……ぅん……♡」
「それで、なんですけど……」
「うん……?」
「実は、そのとき母さんが家に戻ってたらしくて……そのときのを全部……」
それを聞いた瞬間、玲香さんはその綺麗な目を大きく見開いた。