セメギャル-僕の彼女は金髪黒ギャルの玲香さん- 作:もすまっく
僕は取り出した鍵を差し込んでドアを開ける。そして荷物を持った玲香さんを先に入るように促した。
「ありがとたっくん。おじゃましまーす」
「玲香さん荷物はとりあえずそこに置いてもらって、先に洗面所に行って手洗いとかしちゃいましょう」
「はーい」
玄関でそんな会話をしていると、リビングのドアが開き母さんが出て来た。
「おかえり拓斗、遅かったね」
「ただいま母さん。ちょっと色々あって結構時間かかっちゃってさ。それで彼女が僕の―――」
「えっと、初めまして花宮玲香ですっ。あの、たっく……拓斗くんとお付き合いをさせてもらってますっ」
「初めまして、拓斗の母親の彩音です。いつも拓斗がお世話になっております」
玲香さんと母さんは、まずはお互いに形式的な挨拶をして頭を下げる。
「随分と緊張しているみたいだけど大丈夫かな?」
「えっあっはいっ」
「あぁ、突然そんな事を言われても困ってしまうか。そうだね、もし良ければだけどお互いに名前で呼び合うのはどうかな?」
「え?いいんですか?」
玲香さんは驚いた様子で母さんを見つめている。
「もちろん。だって拓斗の事が好きなんだろう?」
「大好きです」
何の迷いも無く玲香さんはそう言い切った。
そんな玲香さんをまるで心の奥底まで見透かしているような、そんな瞳でじっと見つめていた母さんは珍しく顔を綻ばせる。
「それなら私にとって玲香ちゃんは娘も同然だ。母娘《おやこ》なら名前で呼び合うのは当たり前の事だよ」
その瞬間、玲香さんの目が大きく見開かれた。
「おっと、勝手に玲香ちゃんと呼ばせてもらったけど良かったかな?」
娘も同然という言葉に思わず感極まった様子の玲香さんは、薄っすらと目に涙を浮かべたまま抱き着くような勢いで母さんの元へ近寄り、両手で母さんの手をしっかりと握った。
「はいっ!もちろんですっ!すっごい嬉しいですっ!」
「そんなに喜んでもらえると私も嬉しいよ。私の事は彩音さんとでも呼んでもらえればいいからね?」
「はいっよろしくお願いします彩音さん!」
「それと玲香ちゃん、私の前でも気にせずに拓斗をいつも通り呼んであげて?その方が玲香ちゃんも過ごしやすいと思うから」
母さんの言葉を聞いた玲香さんは僕を見ると「だってさたっくん!」と嬉しそうに笑って言った。
そんな玲香さんを微笑ましく見ていた母さんは、ふと僕の方へ顔を向ける。
「それで拓斗、ご飯はすぐに食べられるけどどうする?」
「もう出来てるの?それならお腹空いてるからすぐ食べるよ」
「そう。なら荷物を置いたら二人共下に降りて来て?今日はすき焼きを用意したからたくさん食べるといいよ」
「すき焼き!?やった彩音さんのすき焼き!すぐ荷物置いて来ます!」
すき焼きという言葉を聞いて目をキラキラとさせた玲香さんは、荷物を持って慌ただしく二階にある僕の部屋へと駆けて行った。
「あっ玲香さんっ、まだ手洗いとか……まぁ荷物置いてからでもいいか」
あっという間に階段を上がって二階に行ってしまう玲香さんの姿は、こっそりと何度も来ているからかその動きは慣れたものだった。
ちなみに階段を上る時にふるふると揺れるお尻と太腿はしっかりと目に焼き付けている。神様ありがとう。
「拓斗」
「ん?」
「良い子だね」
「……うん」
玲香さんとは違う意味で緊張していた僕は、母さんのその一言に重くなっていた心がとても軽くなるのを感じた。
「僕の自慢の彼女だよ」
◇◇◇
荷物を置く為に自分の部屋のドアを開けた僕が目にしたのは、僕のベッドで匂いを嗅いでいる玲香さんの姿だった。
「玲香さん?荷物を置いたらすぐ下に降りるんじゃなかったんですか?」
「だってたっくんの匂い好きなんだもん。ついでにアタシの匂いもいっぱい付けとくね」
「やめてくださいっ、興奮して寝れなくなっちゃうじゃないですかっ」
「あはっ、寝れなくなっちゃうんだ?ならもっといっぱい染み込ませちゃお」
僕の枕を抱き締めながら布団の中に包《くる》まった玲香さん。どうやら本気で匂いをつけるつもりのようだった。
「ちょ、本当に寝れなくなるんで玲香さんっ」
玲香さんが包《くる》まっている掛け布団を剥がしにかかると、玲香さんは可愛い声を出して抵抗する。
「たっくんのえっちっ!やーんっ!」
「やーんじゃないですよもうっ」
「女の子から布団を引き剥がそうとするなんて、たっくんのヘンタイっ」
「元々僕の使ってる布団じゃないですかっ」
格闘の末、何とか布団を引き剥がすことに成功した僕が一息ついていると、ニヤニヤとした笑みを浮かべながら玲香さんが言った。
「でもさーたっくん忘れてない?」
「え?何をですか?」
「今日は泊りだよ?染み付いたアタシの匂いだけで興奮しちゃって寝れなくなるならさー?生のアタシを抱き締めながら寝れるのかなー?」
「えっ?あっ」
「まさか寝る時は別々でなんて言わないよねー?」
「い、言わないですよっ」
「だよねー?」
「……でもそっか、今日は朝までずっと玲香さんと一緒に寝れるのか」
「あれあれ?たっくんもしかして本気で頭から抜けてた?」
「えっと、はい。玲香さんが家《うち》に泊まるって事だけが頭にあって、正直めちゃくちゃ嬉しくて寝る時の事なんて完全に抜けてました」
それを聞いた玲香さんは、ベッドから降りて優しく僕を抱き寄せる。僕の顔は玲香さんの大きな胸に埋まり、頭の中は玲香さんの匂いでいっぱいになる。
「じゃあ寝るときアタシをいっぱい抱きしめる?」
「……いっぱい抱きしめまふ」
「アタシの匂いもいっぱい嗅いじゃう?」
「……いっぱい嗅ぎまふ」
「ふふ、たっくん可愛い♡」
玲香さんの甘やかすような言葉と包み込まれる温かさと柔らかさに、僕はただされるがままとなっていた。