※この作品はR-18です。

TS転生者によるハーレムエンド物語   作:8000年ユーザー

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2話 次の獲物

 

 

 真実との幸せな時間を過ごした後、私は予想通り21時前に帰宅した。

 場所は先程までいたタワマンとは比較するのも烏滸がましいぐらいにボロいアパートだ。

 しかし、都内で家賃38,000円は破格と言うしかない。そんなアパートの二階にある角部屋に私は住んでいる。

 

 そう――酒寄彩葉(主人公)が住む部屋の隣に。

 

「お待たせ〜っ、彩葉。今日はキーマカレーだよ。食べたいって言ってただろ?」

「うわぁ、ありがとっ。章吾。……お腹減ったぁ」

 

 机の上にゴトリと皿を置き、座布団の上に腰を落とす。

 水の入ったコップは準備してあるし、スプーンも持った。夕食の準備完了である。

 

 私は同じように座布団に座りながら目を輝かせている少女、酒寄彩葉を見て頬を緩めた。

 

「食べるか。いただきます」

「い、いただきます。……うまぁ。疲れた体に沁みるぅ」

「だろ? 野菜たっぷりで栄養も完璧だよ」

 

 パクパクと食べ進めていく彩葉を見ていると、だいぶ心を開いてもらったなと実感させられる。

 私がタマワンではなくボロアパートに住んでいるのは、言うまでもなく彩葉との距離を縮めるためだ。そのためにこうして毎日、私の部屋に彩葉を連れ込んでは夕食を振る舞っている。たまに彩葉のバイトがない土日には朝食から数えて三食振る舞うぐらいだ。

 

 思えば、この部屋を探し出すのにも随分と苦労させられた。

 うろ覚えな記憶からそれっぽいアパートを調べ尽くし、彩葉が入居するであろう時期までに隣の部屋を確保する必要があったからだ。

 

 努力の甲斐もあって、こうして無事にお隣さんとしてのポジションだけでなく、作ったご飯を警戒されずに食べてもらえるぐらいの関係性は築けた。しかもお互いに苗字ではなく名前呼び、同級生の異性としてはそれなりの親密度と言えるはずだ。

 

 流石は私。自分でも引くぐらいの行動力と執念である。

 彩葉にご飯を作るという任務があるからこそ、私はこのアパートに帰らなければならない。それがタマワンではなく、このアパートに住んでいる理由の全てだ。

 

「バイトお疲れ様。今日はどうだった?」

「いや〜、後輩の子がちょっとミスしちゃって……良い子なんだけどね。少し慌てやすいって言うか、これからに期待って感じかな」

「ははっ、先輩は大変だね。半熟のゆで卵もあるけど食べる?」

「いっ、いただきますっ!」

「制服にカレー飛ばさないようにだけ気を付けてな」

 

 流石にまだパジャマ姿で部屋に来てもらえる信頼度はないので、彩葉はバイト帰りの格好。つまりは制服姿だ。

 水色のネクタイに白のセーラー服。水色のスカート丈は一目見ただけで優等生なのだと分かる長さで揃えられている。

 

 恋人でもない異性の友達なら当然だろう。

 早く関係を進展させてパジャマ姿をじっくり拝みたいところではあるけど、焦ってはいけない。酒寄彩葉の攻略難易度は間違いなくトップクラス。確実に堕とせる段階まで手は出せないからだ。この10年の準備期間を無駄にしないためにも、今は信頼される友人を演じなくては。

 

「はい、水のおかわり」

「ありがとう。……はぁ、甘やかされてるなぁ」

「別に良いんじゃない? いつも通りなら明日が一週間で一番大変な日でしょ? 疲れることが分かりきってる前日ぐらい、ゆっくりしたら良いよ」

「……金曜じゃなくて木曜が死ぬほど混むの何でなんだろうね。ウチのバイト先、そこだけはずっと謎なんだけど……」

 

 彩葉は肩を落としながらも、スプーンは放さずにカレーを食べ進めていく。

 こうやって彩葉に食事を用意し始めてからもう結構経つ気がするな。

 極度の空腹からアパートの前で動けなくなっていた彩葉を発見したのが全ての始まりだった。あれは自分でも運が良かったと思う。それから色々と理由を付けて、今の関係になれたのだ。結局、胃袋を掴むのが最強って話。

 

「はぁ……美味しかったぁ」

「お粗末様。ほんと、美味そうに食べてくれるね」

「いや、実際めちゃくちゃ美味しいですから。……いつも、お世話になっております」

「ははっ、一人で食べるのも寂しいからさ。彩葉が一緒にいてくれて、俺の方が助かってるよ」

「っ……! あ、洗い物するねっ。章吾は少し休んでて」

「ありがとう。じゃあ、頼もうかな」

 

 彩葉は僅かに声を上擦らせながら立ち上がると、空になった皿を重ねて台所へ移動した。

 少しばかり耳が赤くなっていたのを私は見逃さなかったぞ。可愛いなぁ、恋愛経験がないからこそ『ちょろ葉』である。

 

 ……まあ、褒(・)め(・)ら(・)れ(・)慣(・)れ(・)て(・)な(・)い(・)の(・)も(・)、大きいんだろうけどさ。

 

 幼い頃に父親を亡くしてしまったことで、彩葉の育った家庭環境は中々に酷い。

 優しかった母親は強さを求めることに固執し、唯一の味方だった兄は家を出た。ヤチヨという心の支えがなかったら、彩葉はとっくの昔に壊れてしまっていたはず。

 

 だからこそ、私(・)は(・)彩(・)葉(・)を(・)甘(・)や(・)か(・)す(・)。

 彼女が受け入れても良いと思える、ギリギリの匙加減で。

 

 バイトの量を減らすことは出来ないが、自殺行為のような食生活だけは改善出来たと思う。

 出会った頃とは比べ物にならないぐらい健康的な顔色になったし、触れれば折れてしまいそうな細い腕も平均的な太さに落ち着いてくれた。

 

 男になってみて改めて思うけど、女が考える『細い』って男からしてみれば『ガリガリ』でしかないんだよなぁ。

 彩葉には私の性欲のためにも、健康的な体になってもらわなければ。

 

「……? どうしたの?」

「いーや、なんでもない」

 

 洗い物を終えて戻ってきた彩葉に怪訝そうな顔をされてしまった。ニヤけてるとこ見られたな。表情筋に気を張りながら、笑顔で誤魔化した。

 

「そっか。じゃあ……今(・)日(・)も(・)、す(・)る(・)?」

 

 食事と後片付けを終えた午後22時。

 座布団に座り直した彩葉が、少しだけ上目遣いになりながらそんなことを言ってきた。本当にやめて欲しい。可愛すぎるし台詞がえっちすぎる。

 

 このまま押し倒してお母さんにしてやりたいところだけど、鍛え上げた鋼の理性で欲望を抑え込む。

 分かってる、彩葉が『何を』しようとしているのかぐらい。それが私の提供している料理に対して彩葉が払う、一方的な施しにならないための『報酬』なのだから。

 

「あ、ああ。お願いします」

「うんっ。昨日の続きからやろっか」

 

 そう言って彩葉は、鞄の中から数学の教材とノートを取り出して机に並べた。

 これが私の受け取る報酬。

 ――酒寄彩葉による勉強会だ。

 

 お金を使うこともなく、彩葉にとってもメリットのある時間を私は料理を振る舞う対価として要求した。

 正直言ってしまえば、今の彩葉よりも私の方が学力は上だ。でもそれじゃあこの報酬は成立しない。だから定期テストでは点数を調整して毎回7〜10位ぐらいを取れるように努力している。無駄に使える頭はこういう時に便利だ。

 

「やっぱり彩葉の教え方は分かりやすいな」

「いやいや、章吾の覚えが良いんだよ。……本当、もっと上の順位でもおかしくないんだけどね」

「そう言ってもらえるのも、結局は彩葉のお陰でしょ? ありがとう、彩葉。全部、彩葉のお陰だよ」

「……ッ。だ、だから……お礼を言うのは、私の方だから……」

 

 私の部屋にある机は大きくないので、勉強を教えてもらう時は彩葉と肩が触れ合う距離にまで近付ける。

 ふわりと香る僅かな汗の匂いはバイトの努力を感じさせた。髪を後ろで纏めあげているので、横目でうなじも見放題。カレーを食べた後だからか、エアコンを効かせている部屋にも関わらず一筋の汗がすうっと流れていた。

 

 恥ずかしそうな表情で髪を耳に掛ける彩葉に見惚れたのは、もう何回目になるだろう。

 

「……? どうしたの? 理解出来ないとこ、あった?」

「ううん、大丈夫。……ただ、やっぱり給料とかも余裕で出せるなって考えてたところ」

 

 彩葉には私の懐事情を、ある程度だけど教えている。

 流石にトップライバーであることは明かしていないけど、食費についての心配をされないぐらいの資金力はあると理解してもらえているはずだ。

 こんなボロアパートに住んでる理由についても『出来るだけ家賃を抑えたかったから』と説明した。節約が死活問題の彩葉からすれば納得出来る理由だったようで、特に疑われもしなかった。

 

「教え方も上手いし、優しいし。それに……彩葉みたいな可愛い子に教えてもらえるなら、財布の紐も緩むってもんだよ」

「だっ、だからっ! ……可愛いとか、そんなことないから。……恥ずかしいこと言うの禁止だって、前にも言ったでしょ?」

「え、可愛い。わざとやってる?」

「〜〜〜ッ!!! 揶揄うなら今日はもう終わりっ! ご飯っ! ご馳走様でした! ――おやすみっ!!」

 

 教材を鞄に叩き込み、彩葉は顔を真っ赤にした状態のまま部屋を出て行った。

 ご近所さんに配慮してか、扉を閉める音だけは控えめなのがまた愛おしい。彩葉のそういうところがたまらなく好きだ。

 

「……そろそろ、かなぁ」

 

 ノートを片付け、思考を巡らせる。

 真実は完全に堕とした。彩葉との関係も良好。ハーレムエンド計画は着々と進行しつつある。

 故に、次(・)の(・)獲(・)物(・)に(・)手(・)を(・)出(・)す(・)時(・)が(・)や(・)っ(・)て(・)き(・)た(・)と見るべきだ。

 

「…………」

 

 スマホを手に取り、写真フォルダを開く。

 指を滑らせ、一枚の写真を画面に表示した。

 

 真実から貰ったその写真には、一人の女子が写っている。

 少女の名前は――『綾紬芦花(あやつむぎろか)』。

 

 肩を超える程度の長さをした鮮やかな桃色の髪に、透き通るような白い肌。

 大半の女子達が羨望の眼差しを向けるであろう顔面偏差値の高さに加えて、時間をかけて積み上げてきた化粧技術によって高校生二年生とは思えない大人びた美貌を持つ少女だ。

 モブではない、ネームドキャラ。彩葉と真実の親友として、映画でもその魅力を存分に伝えてくれた。

 

 もちろん、私が狙う獲物の内の一人だ。

 

 原作開始まで残り三ヶ月と少し。夏休みに入ってしまえば私も色々と忙しくなってしまう。

 だからその前に、真実と同様に芦花のことを堕としておきたいのだ。今日で真実の私への依存度が確認出来たので、芦花の攻略を始めても問題はない。

 

「明日……いや、どうせなら金曜の方が良いか」

 

 どう攻めるかは明日を使って考えよう。真実とは違って時間もないし、強引に攻略させてもらうつもりだ。

 真実を純愛で堕とした反面、芦花は強姦(レイプ)系で攻略する。

 

 だって無理矢理する方が……芦花は可愛いと思うから。

 

 自分の口元が酷く歪に歪んでいる自覚を持ちながら、私は風呂を済ませるために浴室へと向かった。彩葉の弁当も作らないといけないし、私の朝は早いのだ。

 それに今日は真実と思いっきり愛し合ったお陰で珍しく疲れてる。疲労は睡眠で取るのが一番だ。パッと風呂に入って歯を磨いて寝るとしよう。

 

 いやぁ、毎日が楽しくて仕方がないね。

 私は改めて、私をTS転生させてくれた声も姿も分からない存在に感謝した。

 

 

 

● ○ ● ○ ●

 

 

 

 金曜日の放課後。

 私は事前に呼び出しておいた目当ての少女、綾紬芦花と共に校舎裏に立っていた。

 桃色のセーターを着用しており、彩葉と比べて随分と短いスカート丈には自然と視線が吸い寄せられてしまう。女子にしては身長が高く、165cm近いモデル体型だ。スラッとした細い脚は完璧なバランスをしているし、黒のソックスによって肌の白さがより一層引き立っていた。

 

 これから帰宅する者、部活動に励む者、私達の耳に届くのは青春を感じさせる生徒達の声だけ。

 そして当然、私達も青春を謳歌している最中だ。大事な話があるという呼び出しで校舎裏に集まるなど、告白イベント以外の何物でもないのだから。

 

 私より先に校舎裏に来てくれていた芦花も呼び出された理由を察していたのか、少しだけ困り顔で出迎えてくれた。

 その圧倒的な美貌で何人もの男から告白を受けていた彼女にとって、こうした呼び出しをされる経験は割と日常なのかもしれない。そう思わされるぐらいには落ち着いているように見えた。芦花が気不味そうに軽い会釈をしてきた瞬間に、告白してもフラれるなと私は確信した。

 

 まあ、それで当たり前。

 なにせ私は芦花と全く接点を持たないのだ。所属しているクラスも、委員会も、帰る方向すら別。彼女にとって私は、同じ学校に通うただの同級生でしかない。

 一応私もめちゃくちゃモテるので、よく告白される男子生徒として認知されている可能性が少しぐらいはあるかもだけど……芦花は異性なんて眼中にないだろうからね。

 

 普通なら、無謀な告白だ。

 フラれるのが自然な流れ、万が一にも成功なんてあり得ない。

 

 案の定――私は芦花にフラれた。

 

 時間にして一分もなかったと思う。

 私の短い告白に対して、芦花はこちらを気遣うように優しい口調で『ごめんなさい』と返してきた。それで終わりだ。

 金曜の放課後、校舎裏にて行った私の告白は呆気なく敗北を迎えた。

 

 だが、それは想(・)定(・)通(・)り(・)。

 私は申し訳なさそうな顔で帰ろうとした芦花を引き留め、用意していたカードを切った。それは芦花の冷静さを失わせるには十分過ぎる威力を秘めており、やはりと言うべきか彼女はその足を止めた。

 

 芦花は血の気が引いたような顔色になり、大きな瞳を不安で揺らしながら私を見ている。

 

 

 ――綾紬さんは、酒(・)寄(・)彩(・)葉(・)さ(・)ん(・)が(・)好(・)き(・)な(・)ん(・)だ(・)も(・)ん(・)ね(・)。

 

 

 すれ違う瞬間にそう告げた私は、彼女の目にどう映っているんだろうか。

 再び視線を交わらせ、私と芦花は正面から向き合った。

 芦花は震える右手を胸に当て、左手は何かに耐えるかのようにスカートを握り締めている。耳に届く生徒達の声が、酷く場違いなもののように思えた。

 

「……な、何を……言ってるの?」

 

 同じ状況になったのなら、ほぼ全ての人間が今の芦花と同じように誤魔化そうとするだろう。しかし、それに意味はない。何故なら私には確信があるし、『原作知識』という証拠もある。

 綾紬芦花が酒寄彩葉に対して『友情』だけでなく『愛情』を持っているという指摘は、間違いなく事実の刃となって芦花の心に突き刺さった。

 

「誰に告白されても断るわけだよね。酒寄さんが恋敵なら、どんな男だって勝てるわけないもん」

「……ち、違うよ。急に変なこと言わないで。……じゃあ、私は帰るから」

「気持ちを伝えられないなら俺が手伝おうかー? 綾紬さんは酒寄さんのことが好きなんでしょー? 恋(・)愛(・)的(・)な(・)意(・)味(・)で(・)さ(・)〜ッ!」

 

 少しだけ大きな声を出すと、芦花は慌てて私を睨みつけた。

 それでも、怒りよりも動揺が勝っている。

 誰かに聞かれたくない。そう顔に書いてあった。

 

「だっ、だからっ! 変なこと言わないでっ! 彩葉は……私にとって、大切な友達なの」

「別に良いと思うよ? 同性愛、尊いじゃん」

「……そういうのじゃ」

「悪いけど、誤魔化せないよ? こんな失礼なこと、確信を持ってなきゃ言えないでしょ?」

 

 そう言われて諦めがついたのか、芦花は目線を下げた。

 まるで怯える小動物のようだ。可愛くてもっと虐めたくなってしまう。

 

「い、彩葉に……言うの?」

「綾紬さんが俺の告白を受け入れてくれないなら……口が滑っちゃうかもしれないね」

「――ッ!」

 

 我ながらクズだなと思う。まあ、思うだけで変わる気はないんだけどさ。芦花を手に入れられるなら、どんな手段だって躊躇うことなく使う。

 私はこの二度目の人生を本気で生きている。どれだけ落ちぶれようとも、野望は必ず叶えてみせる。その上で、私は私が愛する女性達と共に、死ぬまで幸せな生活を送るのだ。

 

「綾紬さんが俺の彼女になってくれるなら……黙っていられるんだけどなぁ」

 

 距離を詰め、芦花の耳元で囁く。

 完全に脅迫だ。それも、綾紬芦花に最も効くタイプのやつ。

 

「酒寄さんも罪な女だよね。こんなに可愛い子が好きでいてくれるのにさ。左(・)耳(・)の(・)ピ(・)ア(・)ス(・)、その意味にだって気付いてないんだろうね」

「ひっ、嫌っ……」

 

 芦花の左耳に付いているピアスを指で触ったら、また良い声で怯えてくれた。

 本当に可愛いなぁ。女の子っていうか、守りたくなるっていうか、芦花はどうにも独占欲を刺激してくる女子だ。

 

「酒寄さんはどう思うのかな? 綾紬さんから……そ(・)う(・)い(・)う(・)目(・)で(・)見(・)ら(・)れ(・)て(・)た(・)っ(・)て(・)知(・)っ(・)た(・)ら(・)」

「……い、言わないで。……お願い、だから」

 

 芦花は自分を抱き締めるように両手を交差すると、涙目になって震え始めた。よっぽど彩葉に気持ちを知られたくないらしい。友達でいられなくなる恐怖心がほとんどってところかな。

 

「それは綾紬さん次第だってこと、もう分かるよね?」

「……で、でも、彼女になるとか……やっぱり、そういうのは……」

 

 おおっと、意外と強情だ。

 なんかここまで拒否られると自信なくなるなぁ。磨き上げてきた『男の魅力』が全く通じていない。流石は彩葉大好き女子と言ったところか。

 

 ……仕方ない。奥の手を使うとしよう。

 

「ごめんね。これ以上は時間がもったいないからさ、これ見てもらえる?」

「えっ……動画? ……ッ!? な、なんで……なに、これ……」

 

 スマホで再生した動画を見せた途端、芦花は口に手を当てながら絶句した。

 面白いぐらいに青ざめており、どれだけのショックを受けたのかが一目で分かるレベルだ。

 

 芦花に見せた映像。

 それは――真(・)実(・)の(・)フ(・)ェ(・)ラ(・)動(・)画(・)である。

 

「俺さ、実は真実と付き合ってるんだよね。彼氏がいるって話ぐらいは聞いたでしょ? 綾紬さんは、真実とも仲が良いんだからさ」

「そ、そんな、こんなのって……酷すぎるっ」

 

 肩に回した手を振り払うこともせず、芦花はスマホの画面に映し出される動画に意識を奪われていた。

 モザイクもかけられていない勃起した男性器(イチモツ)を美味しそうに頬張る親友の姿ともなれば当然の反応か。芦花は何度も小さく首を左右に振り、現実を受け入れられない様子で震えていた。

 

「ラブラブでしょ? 真実って性欲強くてさ。色々とエロいこと覚えさせたら乾いたスポンジみたいに吸収してくれるんだよね」

「……う、嘘。真実がこんな……貴方が、無理矢理、させて……」

 

 画面を指でタップし、消音を解除。

 芦花の言い分を真っ向から否定してやった。

 

『章ちゃんのおちんちん、おいひいよぉ♡ おっひくて、んちゅ、れろぉ♡ あご、はずれちゃいそぉ♡』

『無理しなくていいよ? やめる?』

『じゅるっ、やだぁ♡ もっと、もっと舐めたいのぉ♡』

 

 小さな手のひらでイチモツを握りながら、いやらしく舌を這わせる真実。

 どう見ても自らの意思で快楽に浸っており、無理矢理やらされている様子は感じ取れない。当たり前だ、真実はフェラが好きなのだから。

 

「理解してもらえたかな? 俺達、愛し合ってるからさ」

「…………だったら、なんで、私に告白なんて」

「えっ? 綾紬さんのことも好きだからだけど? 真実と同じように、君とも愛し会いたいんだよね」

「――ッ! さ、最低……!」

「うん、よく知ってる。俺は最低なんだ。でも、好きだっていう気持ちは本物だよ? 信じてもらえないだろうけどね。俺はこの世界に生まれてくる前から、真実と綾紬さんのことが好きだったんだ」

「意味……わかんない」

 

 全部本当のことなんだけどね。

 まあ、取り敢えず打てる手は全部打った。最後の仕上げに入るとしますか。

 

「今ここで決めて欲しい。綾紬さん……いや、芦花。俺からの告白を受け入れて、俺の彼女になってくれない?」

「……っ!」

「もちろん、断ってくれても良いよ? 酒寄さんに対して口が滑るかもしれないし、今見せた動画を誰かに見られちゃうかもしれない。俺としては、そんな事になって欲しくないんだけどね」

 

 顔を近付け、再び芦花の耳元で囁いた。

 親友二人を脅しの材料に使われ、反撃の方法もない。

 

 

 綾紬芦花は完全に――詰んでいた。

 

 

「……君の彼女になれば、いいの……?」

「うん、いいの」

「彩葉と真実に……酷いこと、しない……?」

「うん、しない」

 

 震えた声で確認を取ってくる芦花に、私は力強い頷きを返す。

 真実に対しての酷いことは動画についてだろうけど、彩葉に対しての酷いこととは自分の気持ちを暴露しないことについてって認識で合ってるよね? 

 それを『酷いこと』にカウントしちゃうあたり、芦花は本当に優しい子だなぁ。

 

 逃がさない。綾紬芦花は私のものだ。

 彩葉じゃなく、私に愛情を向けてもらう。たとえ、どんな方法を使ったとしても。

 

「芦花。――俺の彼女になってくれる?」

「…………はいっ」

 

 掠れて消えてしまいそうな声量で、芦花はそう呟いた。

 これで私と芦花はめでたく恋人同士というわけだ。めでたいめでたい。

 

「じゃあ、俺のことは章吾って呼んでね。呼び捨てが難しいなら、君付けとかで良いからさ」

「……うんっ。……章吾くん」

「ありがとう、嬉しいよ。――じゃあ、こ(・)の(・)ま(・)ま(・)俺(・)の(・)部(・)屋(・)に(・)行(・)こ(・)う(・)か(・)。せっかく恋人になれたんだから、もっと芦花と仲良くなりたいしね」

「えっ……」

「いいよね? 芦花」

 

 返事はなかったけど、小さな頷きは返してくれた。

 諦めて全てを受け入れたんだろう。私が持てる全てを使って幸せにするからね。

 

 真実に続いて芦花も攻略完了。

 後は私好みのエロい女に調教するだけだ。

 

 芦花はもう私からの命令に逆らえないだろうし、めちゃくちゃ気合い入れて育てるとしよう。

 

「――さあ、行こうか」

 

 こうして私は、二人目の彼女を手に入れた。

 

 




芦花は可哀想だから抜ける……異論は認めます。
不幸が似合う美少女っていいよね(ゲス)。
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