TS転生者によるハーレムエンド物語 作:8000年ユーザー
コラボライブから一夜明けて、新しい朝がやって来た。
ライブの余韻に浸ったり、ヤチヨとの会話を思い出して心が痛くなったり、もう夏休み終わりかよと時の流れを感じたりと、私は起きてからすぐに色々な感情に振り回されていた。
しかし、私以上に感情に振り回されている人物が目の前にいる。
同じ布団で目覚めた後、寝癖でボサボサになっている頭を抱えながら体育座りで自己嫌悪に陥っている少女――酒寄彩葉だ。
「どうしよう……どうしよう……真実に、なんて言えば……私、なんてことを……」
五分前に起きてからずっとこの調子だ。
まあ、気持ちはわかる。友達の彼氏と同じ布団で朝を迎えちゃったもんね。やましい事はないけど、文章だけ見れば浮気としか捉えられない事態である。真っ当に生きることを不動の精神としてきた彩葉からすれば、今の状況は苦しくて当然だろう。
「ごめん、ごめんね。章吾。……真実には、私から謝るから」
泣きそうな……と言うより、ほとんど泣きながら彩葉は頭を下げてきた。
大分、追い詰められてるみたいだ。かぐやのことと合わせて、余裕がなくなったきたみたい。となればこのチャンス、逃すわけにはいかないな。
「彩葉が謝ることなんて何もない。俺が悪いんだ。彩葉を一人にしたくなかった。真実も怒ったりしないよ」
「で、でも……」
「落ち着いて。ほら、ゆっくり深呼吸」
「……ぁっ」
昨日寝る前にしたのと同じように、彩葉の手を握る。
また冷たくなっていた。自分の体温を伝えるように、少しだけ強く包み込んだ。
「彩葉、よく眠れたか?」
「えっ……あっ、それは……よく、眠れたけど」
「だよな、知ってる。隣で見てたから」
「〜〜〜っ!!」
白い肌が一気に赤くなった。可愛い。
彩葉は攻められると本当に弱いな。からかいたくなっちゃう。
「俺は彩葉の味方だ。いつでも頼って欲しい。俺にできることなら、何だってしてあげたい」
「……章吾」
エメラルドを思わせる美しい瞳に、思わず見惚れた。
吸い込まれるような魅力に抗うこともせず、私はただ彩葉と見つめ合う。部屋には二人だけ。お互いの呼吸音が聞こえるぐらいの至近距離だ。
私は彩葉の手を引き、胸の中で彩葉の頭を抱き締めた。
「っ!? しょ、章吾……? こ、これは……」
「俺の心臓の音、うるさいだろ? 彩葉はいつも俺に恥ずかしいこと言うなって言うけど、俺だって勇気を出して言ってるんだぞ? ……彩葉に、頼って欲しいから」
「……わかってる。……いつも、助けてくれてありがとう」
抜け出そうと暴れることもせずに、彩葉は大人しく抱き締められてくれた。
寝癖を直すために、彩葉の髪に優しく手櫛を入れた。
「何かあったら俺に言え。俺を頼れ。……約束、できる?」
「……うんっ。約束、する」
私が求めていた答えを彩葉が口にすると、気が緩んだのか私の腕をぎゅっと握ってきた。
は? 可愛い。好き。めっちゃ良い匂いする。息子が立ち上がらないように頑張っているけど、無理かも。生殺しにも程がある。彩葉さんマジ魔性の女。
「そ、そういえば、今日の夜に花火大会があるらしいぞ。浴衣でも着て、かぐやと一緒に行ってくると良い」
「……章吾は?」
「俺は少し考えることがあるから、二人だけで楽しんできな。お小遣いは任せろ」
「……でも、私は章吾とも――」
彩葉が私の胸板から顔を上げようとした瞬間、ガララッという音が部屋に響いた。
勢い良く部屋のドアが開けられた音だとわかったので視線を向けてみると、そこに立っていたのはかぐやだった。ひょこひょことアホ毛を揺らしながら眠そうな顔で欠伸をしている。
「おはよ〜、彩葉〜。今日夏期講習って言ってたけど時間だいじょー……あれ? ……章吾? 章吾だっ! なんでなんで!? なんで章吾がいるの!? 来てるなら早く言ってよぉ〜っ!」
「朝から元気だな。おはよう、かぐや」
私の顔を見るなり、笑顔いっぱいで飛びついてきた。
懐き方が犬みたいなんだよな。尻尾をブンブンと振っている幻覚が見えた。
「すーっ、彩葉の匂いだぁ。章吾と彩葉、一緒に寝てたの? ずるーいっ! かぐやも一緒が良かったぁっ!」
「かぐやが先に寝るって言ったんだろ? 彩葉から聞いたぞ。ライブで疲れてたんだろうな。よく眠れたか?」
「うんっ! バッチリ! かぐやちゃん完全復活! 彩葉も〜、心配かけちゃってごめんね〜?」
ヘラヘラといつも通りのかぐやが手を合わせながら、彩葉に緩く謝った。
話しかけられた彩葉はと言えば、私と抱き合っているところを見られた羞恥心からか、少しばかりフリーズしている様子だ。
「んーっ、やっぱり彩葉からも章吾の匂いがする。一緒の布団で寝たんだー、良いなぁ〜」
「なっ、ち、違っ……くはないけど、これはその……」
かぐやに詰められ、彩葉は私のジャージを強く握り締めながら俯いた。
小さな子供に性行為を見られた母親ってこんな感じの反応なのかな。そう考えると今のシチュエーション熱すぎるだろ。股間に血が流れていきそうになったので、すぐにこの考えを振り払った。危ない危ない。
「――ほら、彩葉。花火大会のこと、かぐやに言わなきゃ。自分の口で誘わないと、意味ないだろ?」
「それは、そうだけど……」
「花火大会っ!? 行きたいっ! 行きたい行きたいっ! 彩葉ぁ〜、誘って〜?」
クネクネしながらおねだりするかぐやに、彩葉はぐっと表情を強張らせる。
私に助け舟を求めるような視線を向けてきたけど、すぐに決意を固めた目をする辺りは流石スパダリだ。
私のジャージを掴んだまま、彩葉は女の子座りでとんでもない威力のお誘いを披露した。
「…………あそぼー?」
吐血しそうになった。
あ、危ねぇ……。彩葉が可愛すぎて失明するかと思ったわ。
「あ、危なっ……。彩葉が可愛すぎて失明するかと思った」
子は親に似るってやつかな?
私が口に出さないように我慢した言葉をそっくりそのままかぐやが口にした。わかる、殺人級の愛おしさだよね。法で縛った方がいい存在だよ、酒寄彩葉は。
「……か、夏期講習の準備するからっ! 二人とも、出て行って!」
顔を真っ赤にした彩葉に追い出され、かぐやと共にリビングへと移動する。
タワマンの高層階ということもあり、窓から見える景色は絶景だ。雲一つない青空が広がっている。
「えへへ〜っ、彩葉に誘われちゃった〜っ。花火大会楽しみだねぇ、章吾」
「言っとくけど俺は行かないぞ? 彩葉と二人で楽しんできな」
「うぇぇっ!? なんでなんで! 章吾も一緒がいいーっ!」
「用事があるんだ。お小遣いやるから勘弁な。その代わり、写真たくさん撮ってきて見せてくれると嬉しい」
ぶっちゃけ用事なんてない。真っ赤な嘘だ。
それでも、この花火大会に私が同行するわけにはいかない。彩葉にはかぐやと二人っきりの時間を過ごしてもらい、ちゃんとかぐやに対する感情を高めてもらわなければならないからだ。目の前からかぐやがいなくなった時に、心の底から絶望してもらえるように。
「むーっ、わかった。……ねぇ、章吾」
「ん? どうした?」
「……こっち、座って?」
急に大人しくなったかぐやに言われるがまま、ソファーに並んで座った。
かぐやはこてんっと頭を私の腕に預けると、普段とは違う静かな声音で言葉を落とした。
「……昨日のさ、ライブ、どうだった?」
「めっちゃ良かった。可愛かったぞ、かぐや」
「……へへっ、嬉しい。……最後のさ、あれ、なんか変なの来たでしょ? びっくりしなかった?」
月人のことか。触られたことで、自分の運命を自覚させられたんだろうな。
この時のかぐやはもう、抵抗せずに月へと帰るつもりのはずだ。
「びっくりしたよ。ヤチヨの演出だって周りも騒いでたしな」
「……だよねーっ。……あのさ、章吾」
「なんだ?」
「かぐやが月に帰っちゃうとしたら……寂しい?」
「寂しい」
「……っ!」
ここは当たり前に即答した。
そんなもん、寂しいに決まってるじゃん。
「……よっと」
「うわぁっ!」
かぐやの脇に両手を差し込んで持ち上げ、私の膝の上に向き合う形で座らせる。
金髪がふわりと揺れ、ルビーを思わせる赤い瞳が輝いた。
「おおーっ、力持ちだぁ〜っ」
「かぐやが赤ん坊だった頃以来、こんな風に抱っこしてなかったからな」
「……うんっ。章吾に抱っこされるの、好き」
これだけ密着しても勃たない辺り、私はかぐやのことを本当に性的な目で見てはいないらしい。
もし私がかぐやにも劣情を抱いていたのなら、ハーレムエンド計画は頓挫していただろう。月に帰ろうとするかぐやを全力で引き止め、月からの使者たちと死ぬ気で戦っていたはずだ。勝てない戦いだと、分かっていても。
「……章吾、あったかいね。……んんっ」
私の首に手を回し、かぐやが更に体を密着させてきた。
柔らかい手と胸と脚の感触が伝わってくる。ヤチヨカップを優勝したばかり超新星ライバーとこんな風に抱き合える男は、世界広しと言えど私だけだ。
「ふふっ、鼻息がくすぐったいよ。かぐや、わざとだろ? 悪い子だ」
「うへへ〜っ、キュートな
「俺もだよ、かぐや。大好きだ」
本当に、心が痛い。
こんなにも大好きなかぐやを――
その事実が、改めて私の胸を抉った。
覚悟していたはずの別れが間近に迫ったことで、感情が再び熱を持ってしまったようだ。
それでも、私のやることは変わらない。
全ては二度目の人生を悔いなく生きるため。
ハーレムエンド計画を完遂し、幸せに生涯を終えるためだ。
「ねぇ、章吾。今日さ、花火大会から帰って来たら……かぐやと一緒に寝てくれる?」
「今日もお泊まりしろってことか?」
「うんっ。だって……彩葉だけずるい。かぐやも章吾とくっついて寝たい。なんなら彩葉も一緒に三人で寝たいな〜」
「……わかった。じゃあ、今日も泊まらせてもらう。二人が帰ってくるのを、この家で待ってるよ」
そう答えると、かぐやは心底嬉しそうな顔で笑った。
可愛いかぐやの頼みだ、断るはずがない。むしろ私の方からお願いしたいくらいだよ。
「――章吾、かぐや。私、そろそろ家出るから……って、なんでそんなに距離が近いの?」
パジャマから制服へと着替えた彩葉が顔を見せた。
しんみりし始めたところだったので、ナイスタイミングだ。
「愛娘とのスキンシップだよ、お母さん」
「パパがお小遣いくれるって〜! ママ葉〜、出店とかたくさん回ろうね〜っ!」
「だっ、誰がお母さんだっ! 誰がママだっ! もう行くからね? かぐや! 昼前には戻るから、出かける準備だけしといてっ! 行ってきますっ!」
「「いってらーっ」」
別れの時は近い。
二人が花火大会に行っている間、計画に見落としがないかチェックしておこう。この世界はゲームでもアニメでもない。私というイレギュラーがいる以上、何が起きてもおかしくはないのだ。油断はしない。セーブなんてないから、リセットもできないんだ。
改めて覚悟が強くなった気がする。
この輪廻に私を刻み込む、その覚悟が。
時刻は午前1時。日付は変わって、もう9月1日だ。
夏休みは終わり、明日からまた学生としての日常が戻ってくる。宿題が終わっていない学生たちは今頃、泣きながら課題と向き合っているんだろうか。
そして私もまた、課題と向き合っている真っ最中だった。
宿題ではない。この世で最も優先度の高い課題だ。
「……おやすみ。かぐや」
私は隣の布団で眠るかぐやを起こさないよう、慎重に動きながら布団出た。
添い寝してくれないと寝られないってゴネられた結果だ。
祭りから帰って来たのが0時過ぎだったので、疲れからかすぐに寝てくれたのはありがたかった。
物音を立てないよう静かにリビングへ行くと、彩葉がソファーの上で小さく丸くなるようにして体育座りしていた。
背中を見るだけでわかるほどに消沈している。楽しい楽しい夏の思い出、花火大会から帰って来たばかりとは思えない姿だ。
「彩葉。かぐやはもう寝たぞ。彩葉も、疲れたろ? そろそろ寝ないか?」
「…………」
何も反応はなし。彩葉は両腕で膝を抱えながら、ただ静かに俯いている。
花火大会でかぐやの月に帰るという意思を聞かされたからだろう。また大切な人を失うという恐怖に、今の彩葉は怯えている。
――
「隣、座るよ? ……花火大会、楽しくなかったか?」
優しく訊ねると、彩葉は小さく首を横に張った。
「だよな。かぐやに見せてもらった写真、どれも楽しそうだったから。浴衣の二人、可愛かったぞ。来年は、俺も一緒に行きたいな」
「……来年……?」
顔を上げた彩葉が、私の右腕に顔を押し付けて来た。
小刻みに震える両手は不安に耐えるようにジャージを強く握り締めていた。少しだけ乾きの甘い湿った髪が、私の肩に重さを感じさせる。
「……かぐやが、月に帰っちゃう。……私たちのかぐやが、いなくなっちゃうよ。……章吾……私、どうしたら……!」
「……そうか。……やっぱり、そういう話になってくるんだよな」
震える彩葉を落ち着かせるために背中へと手を回す。
小さな体を包み込むようにして抱き締め、宥めるようにポンポンと手で背中を軽く叩いた。
「わかってたことなのにな、本当に迎えが来ると……どうしたら良いかわかんないよな」
「……嫌だよ。……かぐやが、いなくなっちゃうなんて」
「俺もだ。ありがとう、話してくれて。彩葉はちゃんと、俺を頼ってくれるんだな」
「……うんっ。私……章吾にしか、甘えられないよ」
彩葉はそう言いながら、ぎゅっと私を抱き締め返してきた。
手の震えは止まっていないけど、冷たくはない。確かな熱を感じる。
「……最悪だよね、私。……彼女がいる男の子に、こんな風にくっついてさ」
「それを言うなら、彼女がいるのに他の女の子とくっついてる俺の方が最悪だろ。振り払わない時点でな」
「……違うよ。……私が、章吾の優しさに甘えてるだけだよ」
「違わない。俺が彩葉に甘えて欲しいんだ。だって俺は……俺は……」
私は彩葉の耳元で、囁いた。
「――彩葉のことが好きだから」
息を呑んだ音が、聞こえた気がした。
体に伝わってくる熱は上がり、心臓の鼓動も強さを増した。
信じられない様子で顔を上げた彩葉と視線を交わらせ、軽く笑って見せる。
「な? 最悪だろ? 真実のことも好きだし、彩葉のことも好きなんだ。……それから俺、実は芦花とも付き合ってる」
「……は、はぁっ!? ……そ、それってどういう……てか、それ、二股じゃ……!」
「二股だな。でも、好きなんだ。真実と芦花のことが好きだから、二人と付き合ってる。もちろん、二人ともちゃんと理解した上で恋人でいてくれてるよ」
「そ、そんなの……」
勢いで告げた二股宣言に、彩葉は動揺を隠し切れないといった感じだ。
そりゃそうだよね。我ながら最低なことを言っている自覚はある。でも、好きなんだから仕方ない。
二股だろうがなんだろうが、真実と芦花を幸せにすることは私にとって絶対だ。
前世で読んだ漫画には最終的に100人の恋人ができるであろう主人公もいたし、愛する女をたった二人も幸せにできないようじゃ男として生まれ変わった意味がない。
「できることなら、俺は彩葉とも恋人になりたい。勝手なこと言ってるのはわかってる。……それでも、好きなんだ。彩葉のことが、大好きだ」
「〜〜〜っ! ……で、でも……真実と芦花が」
「彩葉なら大歓迎って言ってたよ。それとも、やっぱり彩葉は二股してた俺のことを……嫌いになったか?」
「嫌いになんてなってないっ! 確かに驚いたけど……嫌いになんてなるはずないじゃん。私が章吾を……あり得ないよ」
凄い勢いで嬉しい否定をしてくれた。
やはり、稼いできた好感度は十分足りていたようだ。
「じゃあ……俺のこと、好き? もちろん友達としてじゃなく……
「…………それは」
曖昧な訊ね方はしない。
逃げ道も用意しないし、言い訳だって挟ませない。今ここで、明確な答えが欲しい。条件はクリアしているはずだ。今の彩葉の心理状態でしか、こんな話はできないんだから。
私は彩葉の手を両手で握り締め、真っ直ぐに視線をぶつけた。
「――彩葉、好きだ。俺と……付き合って欲しい」
余計な言葉は必要ない。ただ正直に、思いの丈を解き放つ。
そんな私の告白を聞いて耳まで赤く染め上げた彩葉の反応は――小さな頷き一つだった。
「……私も、好きだよ。好きに決まってるじゃん。好きにならないわけないよ。章吾のことが好き。……貴方の、彼女になりたいです」
……夢の中にいるような感覚だった。
気分がふわふわとして、地に足がついていない感じだ。私の告白を彩葉が受け入れてくれたという事実が、上手く飲み込めない。
「ごめん、ごめんね。……でも、好きなの。章吾が好き。……私なんて、迷惑ばっかりかけてるし、好かれてるなんて思ってなかったから。嬉しくて……ダメだってわかってるのに、好きだって言ってもらえたのが幸せなの……」
「謝らないで、大好きだよ。これからは、恋人として彩葉を支えるから。俺にとっては真実と芦花と彩葉の三人が、この世で一番大切な存在だ。全てをかけて幸せにする。――約束するよ」
「……うんっ、うんっ。一緒にいて欲しい。ずっと、私の隣にいて……」
目尻に涙を浮かべながら、彩葉が強く抱き付いてきた。
かぐやを失うかもしれない恐怖と、私に依存してもいいんだという安心感。その二つの感情に揺らされるまま、彩葉は嗚咽を漏らしながら私を抱き締め続けた。
「……真実と芦花にも、連絡しとかないとな」
結局、彩葉はそのまま泣き疲れて眠ってしまったので、お姫様抱っこで部屋の布団まで運んで寝かせた。
一緒の布団で寝たい気持ちもあったけど、今日ぐらいはぐっすり寝て欲しいと思ったので我慢を効かせる。リビングに来客用の布団を敷いてから、私もすぐに目を閉じた。
いよいよ、終盤戦が始まる。
ミスは許されない。緊張は高まるばかりで一向になくならない。
それでも、意識が落ちる瞬間まで――酒寄彩葉を彼女にできたという幸福感によって、私の頬の緩みが消えることはなかった。