神殿騎士団本部の重厚な石造りは、800年にわたってエル・ノキア聖国と極星教を守護してきた神殿騎士団の武威を言外に告げていた。
かつては神殿騎士達の祈りを響かせていたその壁は、今や嬌声を反響させることの方が多い。
旗騎士や大騎士の執務室が並ぶ上階の廊下には下階よりも厚い絨毯が敷かれ、壁には歴代大騎士の肖像と異端者を誅滅した栄光を描いた絵画が並ぶ。
その廊下を一人の従騎士、シラ・シェレトが歩いていた。
16歳という若さは幼さを残しているものの、800年続く彼女の血筋の所為か、淡い金糸のような髪と透き通る白い肌、澄んだ蒼い瞳には生来の気品が宿っている。華奢で柔らかな肢体と整った目鼻立ちは少女らしさを留めながらも、整った目鼻立ちと穏やかな微笑は、どこか人を惹きつけた。
肩に触れる程度の長さをした金色の髪が燭台の明りを透かして淡く輝き、陽の光を肌から退ける魔術を込めた指輪により、そのハリのある肌は騎士団員とは思えないほど白い。
纏った騎士団服は規定のそれとは大きく異なり、肩から先は外気に晒され、胸の下から腰までも布がない。脚衣は膝の遥か上までの丈しかなく、白い太ももを惜しげもなく覗かせていた。
シラは廊下に籠る性臭を鼻腔に感じながら、最初の執務室の前を通った。
真鍮製の名札にアルヴェン・ヴェルト旗騎士執務室と刻まれた扉の奥から、若い女の嬌声と共にくぐもった男の声が漏れ聞こえている。
「ヴェルト卿…もう、むり…です…♡」
「ダメではないか、リタ。私はなんと教えたかね」
「んっ…!り、リタ…イきます…!ぁ、イく…イくっ…!」
吹き出すような水音と共に、ボタボタと絨毯を汚す音が漏れる。
どうやら絶頂したらしい。
シラはそれを聞き流しつつも足を止めずに目的の執務室を目指す。
いちいち反応することでもない。神殿騎士団では従騎士や騎士見習いが旗騎士や大騎士といった高位の騎士に侍り、指導を受けることが定められている。
その指導の中身がどんなものかは高位騎士による。そう定められている以上、それが正しいのだ。
ヴェイレス・ハルディン旗騎士執務室―。
そう書かれた真鍮製の名札が打ち付けられた扉の前でシラは脚を止める。
二度扉を叩くが返事は無かった。
シラは特に反応せずに取っ手を回して中へ滑り込む。
机の上には書きかけの報告書が積まれ、封蝋の割れていない手紙が端に寄せられていた。
「あ、ぁっ!」
奥の寝室から女の嬌声が響いた。
高く、息を細く震わせる声だ。
シラは執務室を横切り、寝室の扉を叩いた。
「ヴェイレス卿。夜の側付きに来たんだけど」
ぎしっ、と寝台が大きく軋む音がした。
「少し、待て…っ」
低いうめき声が落ち、それを追いかけるようにひと際高い嬌声が響く。
声は天井へ突き抜けるほど鋭く、すぐに長い吐息へと変わった。
しばらくして扉が開いた。
濃い赤髪の女が、薄衣の胸元を抑えながら出てきた。
「あ、セレナだったんだ?」
「シラ様」
セレナは乱れた髪を手櫛で整え、にこりと笑った。第三層・奉環区の娼館でも金貨を払える客しか取らない高級娼婦である彼女は、シラと共にヴェイレスの寝台に侍ったこともある間柄だった。
シラは肩をすくめ、セレナの背中に回って首紐を結びなおしてやる。
「今日はもう終わり?まっすぐ帰るなら東門がいいよ。本部でまだ客を取るなら旧訓練場かな。夜番前の騎士達が集まってるから」
「ご親切にありがとうございます」
セレナは椅子に掛かっていた外套を拾い、肩に羽織った。
「でも、今日はもう帰ります。ヴェイレス様にはずいぶん可愛がって頂きましたから」
「そう?じゃあ東門だね」
「えぇ。次はシラ様もぜひご一緒に」
「ヴェイレス卿次第かな」
セレナは微笑み、執務室の扉へと向かった。
「よい夜を」
「君もね」
扉が閉じる。
シラがセレナを見送って振り返ると、ヴェイレス・ハルディン旗騎士が寝室から出てきた。
30代も半ばを過ぎ、黒褐色の髪を撫でつけるように後ろへ流し、顎には短い髭を蓄えている。
衣服は纏っておらず、その体は肩幅が広く、訓練で鍛えられて引き締まってはいるものの、矢傷も切傷もない。
それは当然だった。エル・ノキア聖国は300年にわたって戦を経験していない。実戦の場が無ければ傷など負い様がなかった。
ヴェイレスはシラを見るなり、酒精の混じった息を満足げに吐く。
「遅かったな」
「礼拝に行ってたんだよ。それに、別に遅刻じゃないよ」
従騎士が二階級上の旗騎士に話す口ぶりではなかったが、ヴェイレスがそれを気にした様子はなかった。
ヴェイレスは裸のまま大股に足を進め、シラの手首をつかんだ。
「ん…っ」
力は強い。
しかし、魔術師でもあるシラであれば、僅かに魔力を巡らせればこの程度どうとでもなる。
それでもシラは何もせず、寝室へと連れ込まれることを選んだ。
ヴェイレスに引かれ、寝台へ押し倒される段になってようやくシラは空いた手をヴェイレスの胸へ置いた。
「もう、少し待ってよ」
ヴェイレスが不満げに振り返ると、シラはくすりと笑う。
「服、脱ぐから」
シラは手をほどかせ、寝台から一歩退く。
そして―
「…ん」
見せつけるように、ゆっくりと肩布の留め具を外し、床へと滑り落ちる。
続いて革帯を解き、上衣の紐へ指をかける。
それをヴェイレスは寝台の縁へ座り、杯を片手に黙って見ていた。
シラは急くことなく、細い紐を一つずつ抜き、布を肌からはがしていく。
燭台の火が、露わになった肩から胸元を照らし、桜色の頂をヴェイレスの視線に晒す。
上衣が衣擦れの音をそよがせて足元へ落ちた。
形の良い双丘を揺らしながら、脚衣の留め具へと手を掛け、ヴェイレスの目を見たままゆっくりと下ろす。
熱をもった無毛の秘裂が姿を見せ、内ももには汗とも蜜とも取れない筋が滴っていた。
ヴェイレスの喉が動き、生唾を飲み込む音が寝室にはっきりと響いた。
「ヴェイレス卿」
シラは寝台の側へ片膝をつく。
金の髪の毛先が肩のあたりに触れる。
ヴェイレスから見れば、薄紅色の乳暈は顔を隠し、一筋の割れ目も暗がりの奥へ姿を隠しているだろう。
シラはそれが最も男の興奮を煽ることを、これまでの経験から知っていた。
「…僕に、閨に侍ることをお許しください」
シラは床へ片膝をついたままヴェイレスを薄く見上げ、寝台の上でだけ用いる従順な響きを声で囁いた。
「…っ」
ヴェイレスは思わず息を止めた。
旗騎士である彼は、騎士団の序列においてシラよりも上位にある。
従騎士に命令を出し、任務を割り振り、訓練の成績を記録し、夜にはその身を味わう。
従騎士を騎士へ推薦する権限は旗騎士にあった。
だが、その権限は騎士団の壁の内側に限った話でしかなかった。
しかし彼女はシラ・シェレトである。
神権国家であるエル・ノキアの礎を築いた極星教の開祖、初代聖王エルバーン。
その彼に最初に従った20人の高弟達の末裔。
それが聖20家であり、エル・ノキアの国政を今なお握る20家である。
シラ・シェレトはその内の一家であるシェレト家本家の一人娘だった。
彼女の祖父ザフィール・シェレトは法を定め、罪を判じ、執行する聖律院の長である聖律卿。
父アリー・シェレトは法を執行する聖律院執行局の副局長。
法を作る者と裁く者、そして執行する者。
その全てにシェレト家の血が通っていた。
シラが父や祖父に一言、ヴェイレスへの不満を口にすればどうなるか。
来週にはヴェイレスの下に辺境への異動命令が届くだろう。
ヴェイレスも当然、それを知っている。
だからこそ彼は、シェレト家の娘が自分の前に膝をつき、奉仕の許可を求める姿に抗いがたい快感を覚えていた。
「許す。来い」
寝台に横たわったヴェイレスが掠れた声でそう命じれば、シラは微笑んで寝台へ滑り込み、覆いかぶさった。
「失礼します、ヴェイレス卿」
シラはヴェイレスの首筋に舌を這わせながら、硬い胸元を指で撫でる。
くるくると指を回すようにしながら、それに合わせて舌も回す。
顎の線に沿って上へと登り、耳朶を甘く噛んでから唇を交わす。
啄むようにヴェイレスの上唇を何度も自身の舌で挟み込み、歯の奥へと舌を押し込む。
「…ふ、んぁ…」
唇の間で二人の吐息が混ざり合い、行き場を無くして霧散する。
若く高貴な生まれの娘の舌を味わいながら、ヴェイレスの手がシラの胸へと伸びる。
決して大きくは無いが、手の動きに吸いつくように柔らかく形を変え、頂点にある蕾だけが硬く主張していた。
「あ、んっ…卿…」
ヴェイレスの手が蕾を摘む度、シラの背が僅かに震えて腰が揺れる。
シラはこの男との閨を厭んではいなかった。
聖20家として、幼少の頃から極星の導きを信仰してきた彼女にとり、閨での快楽はむしろ好ましいものだった。
彼女が初めて絶頂を迎えたのは初潮が来てもいない幼い頃だった。
シェレト家の屋敷にある祭壇で聖句を口にした時、彼女は胎から昇る絶頂に貫かれ、極星を象った意匠に見つめられながら石畳に水溜まりを作った。
それ以来、彼女はその快楽の虜となった。
礼拝の度に頬を染め、聖句を唱えれば絶頂し、部屋へ戻れば自身を慰める日々。やがて彼女は屋敷を訪れた司祭を部屋に連れ込み、そこで処女を失い、屋敷の使用人とも寝るようになった。
相手を選ばず、行為を選ばず、彼女は肉欲に溺れた。
その方が相手が滾るというのであれば跪き、反対に足蹴にすることもあった。
少年も少女も、青年も中年も老人も。
全ては快を、彼女が『極星の瞬き』と呼んだ絶頂を得るための手段に過ぎない。
シラは体勢を変え、舌先でヴェイレスの体に筋を作りながら下へ下へと身を落とした。
屹立するソレを前にすると、鼻先を根元に埋めて深く吸う。
シェレトの娘が自身の股ぐらに顔を沈め、秘裂を濡らすことをこの男は好む。
ただそれだけだった。
「えぁ…」
見せつける様に口を開き、紅色の舌で下から上へと舐め上げていく。
顔を横に向け、裏筋をチロチロと蛇のように愛撫する。
ヴェイレスの顔が蕩けたのを見ると、シラはくすりと笑って息を吹きかけ、先端を口に含む。
奥まで咥え込むことはせずに先端だけを口に含んだまま、頭を僅かに上下に揺らし、それに合わせて鈴口を舌で刺激する。
ずちゅ、ずちゅ。
濁った水音が響き、シラの口の端から唾液が零れて肉棒へ垂れていく。
先端を弄んでいた舌を屹立に沿うように這わせ、今度は吸いつくようにして奥へと飲み込む。
熱を帯びた根元が鼻先を突くほどに深く咥え込むと、シラはヴェイレスを上目遣いに見遣り、濡れた唇を三日月のように吊り上げて艶然と微笑んだ。
そのまま、首筋を震わせながら頭を上下に揺らし、喉の奥でその硬さを味わう。
「…っ、おい」
快楽に呻くヴェイレスが小さく命じる。
シラは咥えたままそれに頷き返すと、ずずっと水音を立てながらソレを離す。
「ヴェイレス卿、どちらにしますか?」
手の甲で唇を拭ったシラが燭台の灯りに照らされながらヴェイレスの腰上に跨る。
前か、後ろか。
ヴェイレスが逡巡したのは僅かだった。
「前だ。さっさとしろ」
「はい、卿」
その言葉にシラは指で割れ目を押し広げながら腰を下ろす。
ずちゅ、と粘りつくような水音が響き、屹立がシラの胎内へと深く沈み込む。蜜に濡れそぼった媚肉が一瞬だけ抵抗するが、すぐにヴェイレスを迎え入れる。
膣肉が媚びるように蠢き、肉棒に絡み付く。
「あ…っ♡は、ぁぁ…♡」
シラの華奢な背が弓なりに反り、透き通るような白い喉が露わになった。血管の浮き出た肉棒が、一寸ずつ、しかし抗いがたい力強さで最奥へと押し入っていく。
下がった子宮口が肉棒と接吻を交わし、膣肉が涎を垂らす。
シラはヴェイレスの厚い胸板に手を置き、腰を前後に振る。
膣口のすぐ上で自らを主張する肉芽がヴェイレスの肌と擦れて痺れる甘さをシラの脳へと伝え、シラは狂ったように腰の上で踊った。
「あっ…はっ…♡ひんっ…!?」
ヴェイレスがシラの細い腰を掴み、自身の好きな感覚で腰を揺らす。
シラもまた、それにあわせて膣を締める。
だらしなく蕩けたシラの口の端から唾液が垂れ、顎を伝って胸を汚す。
姿勢が崩れ、上半身がヴェイレスの胸元へ倒れ込む。
それでもなお、腰は快楽を貪るように動いたままだった。
「ん、ぶっ…ぇあ…ぢゅ…」
ヴェイレスの空いた手がシラの後頭部へ伸び、強引に唇を奪う。
舌が力を無くした唇を割って中へと入り込み、口内を蹂躙する。
シラの腰にあった手は尻肉を伝い、穴を塞ぐように指を刺し入れた。
全ての穴をヴェイレスによって塞がれたシラは、まるで快楽の出口を失ったかのように体を跳ねさせた。
ヴェイレスの荒々しい舌が口内を蹂躙するたび、シラの喉の奥からは甘くくぐもった嬌声がせり上がる。二人の唾液が混ざり合い、ずちゅりと卑猥な水音を立てて鼓膜を揺らす。
後孔へ入り込んだ指が内壁を穿つ肉棒の拍動に呼応して弄られ、前後二つの孔から同時に注ぎ込まれる猛烈な刺激に、シラの理性は跡形もなく蕩け去っていく。
「ん゛っ…あ゛…♡」
もはや腰の揺らめきがどちらの意志によるものか、その判別さえも定かではない。ヴェイレスが強靭な腰で下から突き上げるのを、シラは貪欲なほどに深く飲み込み続けた。激しく擦れ合う結合部から泡立った白濁が溢れ出し、二人の太ももを無残に汚していく。
「…っ、射精すぞ…!」
「あっ…!は、い…っ!ヴェイレス、卿…♡」
ヴェイレスの肉坊が硬く膨らむのを感じたシラは、いつものようにヴェイレスの名を嬌声に交えて呼ぶ。
こうすれば彼が更に興奮し、最後の激しさを増すことを彼女はよく知っていた。
「―――っっっ!」
熱い精が迸り、シラの子宮口に叩きつけられる。
同時に視界が明滅し、極星の瞬きが彼女の頭を犯す。
噴き出した潮がヴェイレスの股座を汚し、シーツにいくつもの染みを作った。
絶頂の余韻に浸る彼女の膣内で肉棒がびくびくと震えるたび、その口から短い嬌声が漏れる。
これだから止められない、そう彼女は頭の中で呟いた。
ずるりと肉棒を引き抜くと共に、卑劣からは白濁色の精液が零れた。それを指で掬い取り、口へと運ぶ。
鼻に抜ける精の香りに頭が痺れる。
細い指で輪を作り、肉棒から蜜と精液の混ざったものをこそぐ。
それもまた口へと運び、舐めとり、吸い付くようにして味わう。指の間に垂れたものも、ヴェイレスに見せつける様にして舌を伸ばして掬う。
「……っ」
ごくりと、ヴェイレスの喉が動いた。
シラはそれにくすりと笑みを浮かべ、彼の耳元に濡れた声で囁いた。
「まだ、できるよね?ヴェイレス」
シェレト家息女の命令を拒否できる余地は、ヴェイレスには無かった。
久しぶりに書いたぁ…