落ち着かせてゆっくりと話を聞いた。
順番に、何をどう考えてどういう結論に至っていたのか、聞き出すのは中々骨が折れた。
僕が部屋に鍵をかけたいと言ったのは、エッチしたくなったというサイン。
ベッドに寝転んだのは、私に全部任せるから早くしてとせがんでいる。
このような解釈がなされた。
弟の僕は
そのために今、頑張って性技の勉強をしている。
まだ自信がない状態で、思っていたよりも早くこの瞬間が来た。
でも弟は、勃起した私の様子を見て心変わりし、お前じゃ生理的に無理だと拒絶した。
『私はお姉ちゃんとして役立たずだ』
うーん。
世の中の姉って本当にこうなの?
教えてYO!
「兎に角、僕はアリスね…、姉さんにそんな事をさ「そっちがいい」」
お話の途中なんだけど、言葉を被せて遮られた。
が、僕は慌てない。まだ慌てる時間じゃない。
アリス姉との接し方にも慣れてきたからね。話があっちこっちに飛ばないよう、言葉を最後まで待ってあげる。反射で言葉を発してはいけない。
肩の力を抜け、リラックスだ。
「アリス姉。それかねーねーって呼んで?」
「ねーねーは恥ずかしいよ」
「ならお姉ちゃんでいいよ」
今決めなきゃいけない様な事では無い。が、彼女の目は真剣だ。
ふむ。
流れるように『アリス姉』から『お姉ちゃん』に変更され、『お願い』が『許可』に変わったな。
まるで投手と捕手が入れ代わり、投げた軟球は硬球で返されたかのようだ。
しかしここに触れてはいけない、ツッコんでもいけない。
ややこしい事になるからな。
要件は聞いた、話を戻そう。
「アリス姉に搾精させるつもりはないよ」
「………。私が嫌なら、ちゃんと言って」
お姉ちゃんをスルーしたせいで、少し機嫌が悪くなってしまった。
しかし上々だろう、会話は成立している。
「そうじゃなくて、アリス姉が大切だからさせたくないの。わかるでしょ?」
「嘘よっ!!ならママがいいの!?」
「誰にもそんな事させないって」
「いやっ!嘘はいや!お願い光琉、嘘はやめてよ!隠し事はしないで!一人で何かしようとしないで!」
アリス姉が発狂してしまった。
何が逆鱗に触れたのか、地雷を踏んだのか、全く分からない。
落ち着け、冷静に。
「嘘はついてないし、隠し事もしてないよ」
「じゃあ光琉は誰に頼むの!?」
Who?
搾精器、僕的にはあれはバイブと変わらないから、多分手マン同様にオナ中になる。
そもそも、僕はお金を持ってないから買えない。
医療器具って馬鹿みたいに高いって聞いた事があるし。
護衛候補の2人がしてくれるって言ってたから、現実的には彼女達に相談かな。
「ほら、やっぱり嘘…、何で、私じゃダメなの…うぅ…」
短い沈黙が誤解を確信に変えたのか、アリス姉がボロ泣きし始めた。
僕の頭がアラートを鳴らして、脳がフル回転する。
これはもしや、『光琉は嘘つき』『アリスは役立たず』が彼女の中で成立したのか?
恐ろしく早い誤認定。僕でも見逃しちゃうよ。
…ここから立て直せるか?
だがまだ『ごめんね』は使えない。『謝ったということは、僕が悪い(=姉さんの言うことが本当だった/事実だった)と認めた』という、認知の不協和が確実に発動する。
だが、回答にまごついてもいけない、3秒過ぎればゲームセットだ。急げ!
「まだ、ちゃんと考えてなかったんだ」
「やだぁ、ぐず…、もう嘘は嫌…うぅぅ」
「アリス姉の事は好きだし、嘘でも無いよ?」
「…ぐず、…好き。…本当に?」
「うん。好きだよ」
そう伝えると、アリス姉は分かってくれたのか、泣き止んでくれた。
いま!ここだ!
「不安にさせて、ごめんね」
何に対する謝罪かを明確にしてから、ごめんなさいをする。
どうだ?やったか?
「良かった…」
アリス姉は心底といった表情で安堵した。
僕も家族難を逃れて心底ほっとする。
僕は、やり遂げたぞ。
「私、上手にセックス出来るように頑張るね」
アリス姉は涙を拭いながら、満面の笑みで言い放った。
ねえ、アリス姉。
姉さんの思考回路、どうなってるの?
やっぱり僕、全然わからないよ。
「…その話は、また今度にしよう?今日は葵衣さん…、母さんを迎えてあげないと。そうでしょ?」
「…うん。…そうだね。するのは次、だよね」
アリス姉は恥ずかしそうに照れ笑いをした。
私ったら、先走しっちゃった、てへ。
とでも言いたげに。
僕は今日もまた、未来の僕に、姉の問題を丸投げした。