折角いい感じに締めたのに、何故こうなってしまったのか。
クリス姐が真剣な表情で問い詰めてくる。
「いつもあんなことしてたの?」
「いえ…つい…」
なんかもうアリス姉が可愛く思えて仕方なくて、つい、いい子いい子したくなったんだ。
そんな言い訳をしたところで、「お前背中撫でてただろ?なんでチンコ撫でんねん」って言われてしまえばそれまで。
だってこうすると栗華さんが喜んでくれたんだもん。僕も触わるの好きだし…。
「ついでやる事じゃないの?必要もないの?分かる?」
「はい…」
やべえ。マジで怒ってる。
「誰にしてたの?九条先生?」
「いえ…してないです…」
「してなかったら、お口なんて言葉が出てこないでしょ?」
「先生じゃないなら看護師?どっちの?言いなさい」
僕から離れたアリス姉は、腕を組んで仁王立ちで見下ろして詰める。
う、訴えられる。訴訟問題になるかも…。
「……搾精してくれる時に、僕も何かしてあげたくって。僕からさせて欲しいとお願いしました」
もう、自分がしたかったを強調するしかない。
栗華さん、御堂さん許して。
「そう…」
「あの女っ、やっぱり…」
「ひっ」
アリス姉が歯軋りが聞こえそうなほどの怒りで震える。
定期診断でアリス姉がついてこないように気をつけないと…。
したかったのは僕なので、大事にはしないようにとお願いして、何とか怒りの矛は収めてもらった。
のだけど、クリス姐の尋問は終わらない。
「───相手に迷惑をかけないようにずっと我慢はしてました。なので所構わずしたりはしないです」
「我慢できなくなったきっかけは何?」
「…きっかけというか、…心理士さんにも相談して、第三者の視点からも、本人からも許可を頂いてからしました」
免罪符を得てからは、それはもうやりたい放題してたのは自分自身なのだけど。
「心理士?」
「明日羽さんという凄腕の方がいらして、友達になったんです。それでそういう相談も」
「明日羽…って、もしかしてウォルピさん?」
何故かクリス姐も知っている様子だ。ならば話は早い。
「ご存知なんですか?さす明日…」
「あのイカれババア…」
「ひぃっ」
何故かアリス姉が鬼の形相に変わった。
明日羽さんは拉致事件後にアリス姉のカウンセリングをしてくれたそうで、高校卒業までの後一回、定期診断が残っているらしい。
マブダチにまで飛び火させちまったYO…。
兎に角、我慢できるという僕の言葉をどこまで信じられるかは、暫く様子を見て判断するとなってお開きとなった。
精神的に疲弊した僕は、トイレに篭ってビデ行で心を落ち着かせた。
このお水は無駄使いじゃないから、許して欲しい。
その後はリハビリの延長で筋トレっぽい事を少々。残りの時間は本を読んだり、テレビを見てみたりでのんびり。
美雪ちゃんは友達の家でお昼を食べてるらしいので、3人でホットケーキを作って食べた。
元気に楽しんでいるなら何より。口数が少ないから内気なのではと心配していたけど、杞憂だったかな。
アリス姉に教わりながらお風呂の準備もする。
浴室を洗う他、お湯を張るのは蛇口を捻っての手動。お湯張り完了や追い焚き機能もないから地味に大変だ。
準備ができると、促されるまま僕が一番風呂を頂いた。
バスソルトはなくて、鬼の絵が描いてる温泉の素があったのでそれを入れる。
昨日は余裕がなくて見れていなかったけど、お風呂場には洗顔ネットもないし、スクラブもない。体を綺麗にして湯に浸かるだけの空間。病院の個室の方がまだアイテムが充実していた。
女性しかいない家のお風呂なのに、全くワクワクしない。
天内家の女性陣は、美容に興味がないのだろうか。
何か買ってあげたいけど、今の僕にはお金がない。
そういえば母さんだって入院しているし、輝君の事もあった。あまりお金に余裕がないのかもしれない。
僕の生活費が増えてるけど大丈夫かな…。
もう少し筋肉がついたらアルバイトでも出来ないだろうか。
そんな事を考えながらお風呂から上がると、美雪ちゃんが無事に帰っていた。
良かった。暗くなり始めるとちゃんと帰ってくるか不安になる。
これが兄の気持ちか。
でも、まだ一度も僕に笑顔を見せてくれていない。
僕に対してだけなのか、家ではいつもそうなのか。
2番手で入浴を済ませた美雪ちゃんは、リビングには留まらず、足早に自分の部屋に戻ろうとした。
「あ、待って」
「……な、なに?」
怪訝というか、凄く困った顔で立ち止まられた。
「ちょっと、こっちに座って貰えない?」
「………」
「だめ?」
「………はい」
観念した風に俯きながら了承して、トボトボとこちらに来る。
…そんなに嫌なのか。…凹む。
胸にくるものがあるけど、ソファーに座ってもらう。
思った通り髪がちゃんと乾かせていない。お風呂に向かってから30分も経ってないからな。
ドライヤーを取りに行って、アリス姉から美雪ちゃんのブラシを借りて戻る。
僕が髪を弄ろうとすると嫌がったけど、静かに座っててもらった。
「じ、自分で出来る」
「ちゃんと乾かさないと痛んじゃうし風邪引くよ。折角綺麗な髪なのに」
アリス姉の強引さを習って、「いいからお兄ちゃんに任せなさい」とブラシを通してしまう。
困る事も多いけど、強引にでも距離を詰めてもらえるのは、ありがたくもある。
手ぐしで根元の水分を8割ほど飛ばしてから、毛束を軽く引っ張りながらドライヤーの風を当てて乾かす。髪の毛束を取ってブラシを内側に入れて、テンションをかけて風を当てる。ブラシのすぐ後ろをドライヤーが追いかけるように動かして、毛先はブラシを少し内側に回す。乾いたら冷風に切り替えて、上から下に風を当てて形を固定する。
「よし、いい感じ」
僕が自画自賛すると、美雪ちゃんは両手で自分の髪の毛先を持ち上げるように触わって確かめている。
変なことをされていないのか不安なのだろう。
ドライヤーとヘアブラシを渡して、鏡で確認するついでにこれも戻しておいてと伝えるとすぐに直行した。
乾かしている途中、僅かに精子の匂いがした気がして自分の体を嗅いでみたけど問題はなさそう。
我が事ながら、匂いが染み付いていそうで怖い。
まさかお風呂に入っても臭かったりしないよな。
嫌そうな顔をされたのが体臭のせいかも、という不安が湧いてくる。
『お前くっせーんだよ、近寄んな』
とか言われたら多分マジ泣きする。
「あ、ありがとう…光琉…お兄さん」
「うん。ちゃんと乾かしてもっと可愛いくなった」
戻ってきた美雪ちゃんは、恥ずかしがりながら部屋に戻って行った。
ほっと胸を撫で下ろす。
アリス姉やクリス姐はあんな感じだし、母さんもいないから教わる相手がいなかったのだろう。
もっとしてあげたいという、使命感のようなものが込み上がってくる。
リビングで夕方のテレビ番組の確認をしていると、タオルで拭いただけっぽいアリス姉がドライヤーを持ってきた。
「私にもして」
「はい。お嬢様、こちらへどうぞ」
「お姉ちゃんって言って」
ご機嫌取りでVIP扱いしてみたのに、お姉ちゃんの方が嬉しいらしい。
最後にお風呂から上がったクリス姐も無理やり座らせて、二人と同じようにしてあげた。
ブラシが通りにくくなっている髪を恥ずかしがっていたので、サラサラになるまでこれから何度もしてあげよう。
日常パートが長くてすみません。次回は久々にR18展開です。