取り敢えず、僕とアリス姉の部屋を中心に家の中を換気をした。
一階は換気扇を回して、台所とかの小さな窓を開ける。セキュリティをガバガバにするわけにはいかない。
あぁ…だから換気が控えめだったのか。
家族の皆はとっくに気づいていたけど、露骨に換気すると僕が傷つくと思って。
気を使わせてるなぁ…。
皆の服とかにも、イカ臭が染みついてるんだよな、きっと。
『やーい、お前んち、イカ臭やーしきー!』
とか、僕のせいで虐められたらどうしよう。
子供はいい意味でも悪い意味でも裏表がないからな。
学校に着くまでに匂いが消えてるといいけど…。
少し気落ちしながら、僕もシャワーを浴びることにした。
出かけなくても、射精したら毎回浴びるようにしよう。
「くんくん。スー、ハー」
シャワーを浴びて着替えて来た僕を、陽毬さんは至近距離で何度も嗅ぐ。
「え?何ですか?洗い足りないですか?」
思わず自分の腕や服の匂いを嗅いで確かめるが、臭くは…ないと思う。
「お風呂上がりの15歳の男の子の匂いにムラムラする」
「何でもムラムラするんじゃないですか」
「でも私が普通の反応。そこのむっつりみたいに隠してる女の方がずっと危ない」
「なるほど」
「張っ倒すぞ」
また二人のコントが始まった。
それもすぐに終わって矛先はこちらに向き、さっきの状態は本当に危ないと真面目に注意を受けた。
汗やフェロモンなら兎も角、精子の匂いはセックスアピールのような物だからちゃんと洗い流すようにと。
僕もアリス姉の部屋に篭っていた雌臭にやられたばかりだし、本当に気をつけよう。
僕も陽毬さんをクンクンして確かめていたら、興奮させてしまってガッツリ怒られた。
男のノージングはエッチしてのサインだった。
解せぬ。
先にクンクンされたのに、僕がしたら駄目ってずるくない?
女尊男卑反対。フェミニストになりそう。
「そうだ、病院で搾精して精子売ったりって出来ないんですか?」
「出来ません。献血と同じで、献精は自発的かつ無償で行われるものです」
悲しいかな。
僕の欲望で穢れ切った提案は、徳の高い理由で一蹴された。
質の低い精液や感染症の蔓延防止、経済的困窮者が健康被害を顧みずに売却に走るのを防ぐ目的らしい。
ただし、満15歳以上の男子には月に一度、検査という名で精液提供義務はある。タダでしっかりと持っていかれるわけだ。
いや、穿った考えは良くないな。無償で精子検査をしてくれるのだ。ありがたいと考えよう。
最近はこの提供義務を、精通後の満12歳以上に引き上げようという動きが強いらしい。
献精については、エッチなお姉さんが手伝ってくれたりはしなくて、個室で自慰をして出すのだと補足された。一昔前、レイプや売春、裏取引が多発して問題になったらしい。
オナニーだと、僕が献精に通うのは無理そうだ。
話は変わって、この世界にも家庭用ゲーム機は存在したけど、女性が圧倒的に多いこの世界では広く普及はしていなそうだった。
形状を聞く限りファ◯コンかスー◯ァミに近そう。僕のイメージでは女子も結構好きだったんだけど。そのイメージの元は配信者だからかな。単に仕事として楽しんでるフリだった可能性もある。
「携帯型は流行ってるよー」
「そういうのもあるんですか」
PSPみたいな物か?ファミ◯ンの時代ならゲーム◯ーイか。
「売り切れで中々買えないんだー。じゃ~ん、私のは白のレア」
『たまごっぴ』
「おお~、見せてください!」
「何で職務中に持ち歩いてるんだお前は…」
「これは持ち歩く物だし」
陽毬さんが見せてくれたのは、向こうの世界でも見たことがある玩具だった。
遊んだことがないので完全に同じかは分からないけど、僕の持つ知識ではほぼ同じ物だ。技術が遅れていると思っていたけど、追い付いている商品もあるのか。
白黒のドット絵、操作もシンプル、これは技術というよりアイディアかな?
「美雪ちゃんも好きかな」
「流行ってるからねー、あの年頃の子は特に欲しがるよ。あげないけどね」
「ぐっ」
そんなに高いものじゃなさそうだし、くれないかなと期待したのがバレていた。
「さっき脱いだショーツと交換してもいいけど」
「ぐっ…」
「やめろ馬鹿」
売りに走る子の気持ちが少し分かってしまった。
何故自分を大切にしないのかと不思議だったけど、自分が同じ立場になってみると『パンツ位別に良くね?』と思ってしまっている。
「体の匂いならいつでも嗅がせてあげますから、変な誘惑はしないでください」
「いいのー?やった!」
「その代わり、護衛は頼りにしてますからね」
「まっかせなさーい」
見た目は全然違うけど、この明るさは栗華さんを思い出してホッとする。
「安易にそんな約束をしないで下さい。お母様からも注意されたばかりです」
「どんなですか?」
注意とは出掛けの前に話していた内容だった。
思っていた以上に僕がエッチ、警戒心が薄い、スキンシップを取りたがる、女性を喜ばせる事が好き、それに慣れている、女性側の自制心が問われる、依存性が高い、搾精が必要になった場合は自分も興奮しないようにくれぐれも注意、求められても奥への刺激は絶対にしないようetc。
うーん、淫乱。
「近くでムラムラされても困るので、お二人には早く慣れて貰った方が良くないですか?」
「む…それはそうですが…」
「ソファーに並んで座りましょう。今相当スッキリしてて一番安全だと思うので、襲ったりしませんよ」
「いや、何で君が襲うんだ…」
中条寺さんが思わず素で突っ込む。
表向きは雇われ護衛だから、僕にも敬語を使うらしい。陽毬さんは気にせず友達みたいに話してくるけど。
「いいよー、早くー」
はえーよ。
さっきまで向かいのリビングチェアに座っていた陽毬さんは、もう向こうのソファーに座ってこちらに顔を覗かせている。
「何でつかさの方に頭を乗せるのさ」
「安心感です」
「ち、近すぎませんか…」
何をするでもなく、陽毬さん、僕、中条寺さんのサンドイッチ状態でテレビを見ている。
ワイドショーのしょうもない感じはこちらも同じか。コメンテーターが深刻そうな雰囲気を出しながら偉そうに自論を展開している。やっぱ苦手だな、これ系の番組。
「うーん、駄目かも」
「く、臭いですか?」
中条寺さんが慌てた様子で聞いてくる。
そうではなくて、上着を脱いで近くにいるとムラムラしてくる。女性の体臭を強く感じてしまうし、仕事中の堅物女が僕にだけ隙を見せている、というシチュエーションも昂りを助長させる。
下腹部が疼いて早く精子作らなきゃ!って頑張り始めたと説明する。
「嘘ですよね…」
「嘘じゃないから困ってます」
「私はいつでもいいよー」
陽毬さんはマッサージと称して僕の腕や手、太ももをモミモミしてる。
慣れるためという免罪符を得ているので自重がない。
「そういえば、もし搾精が必要になったらお二人のマンションに移動するのですか?」
「奥様方の部屋を使うように仰せつかっています」
「それは何というか…」
「息子の寝取りっぽいよねー」
『天内光琉、寝取り計画』
ガチじゃん。あれ冗談じゃなかったんかい。
慣れるのと我慢するのが目的なので、お互いに暴走しないようにこの位で離れることにした。留守を預かって初日から、親の部屋で他人とSEXは人として終わってる。
「何処が高危険度の任務なのさー、こんなの単なる拷問じゃん」
「僕も我慢してるんですから、文句ばっかり言わないでくださいよ」
「あーエッチしたいエッチしたいエッチしたい」
「ムラつくからエッチエッチ言わないでくださいよ」
「したい者同士すればいいじゃん」
「僕は普通の社会生活を送りたいんです」
「なら尚更するべきじゃん」
どういう理屈だよ。
「はぁ…何で若いお二人が僕の護衛に選ばれたんですか?我慢で辛いでしょうに」
「20代が一番我慢強いからね」
「いや、全然我慢出来てないでしょ」
「チッチッチッ、思春期と30代は性欲の化け物だよー?」
おい、クリス姐に土下座して謝れ。
「ヒマが高校の時なんて、………」
くだらない会話がピタリと止まる。
トイレから戻った中条寺さんを、何故か陽毬さんがジト目で見つめる。
「なんだ?」
「…今、ヌいて来たでしょ?
「ばっ、するわけないだろ!」
「妙に長かったしその顔。…光琉のショーツ、漁ったでしょ。ちょっと見てくる」
言うや否やソファーをふわっと飛び越えて脱衣所にダッシュして行った。
「おぉぉぉ、はえぇ」
瞬発力というかバネがあるなこの人。
「やめろ馬鹿!お前がする気だろ!」
二人が子供のようにバタバタと脱衣所の方に走って行った。
仲良いいな、あの二人。