※この作品はR-18です。

性器が逆転するとは聞いてない   作:momo1ng

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護衛 - お菓子作り

「───ということがあったんですよ…ハァ…」

「大丈夫だと思いますよ。混ぜるのはそれ位でいいです」

「でも、あれから一度も口聞いてくれない…」

「あれからって昨日の今日でしょう。その容器に均等に流してください」

 

中条寺さんとプリンを作りながら、悲しみの愚痴を溢す。

昨晩から、美雪ちゃんの髪の毛を乾かす事も拒否されている。

折角打ち解け始めていたリトルシスターに、完全に嫌われたのである。

 

追い討ちをかけるように、家族は僕を残して母さんのお見舞いへ。ハブられた。

一応急いで手紙を一通書いて預けることは出来た。近況やここに来て感じた事、嬉しかった事などを書き綴っただけだけど。

 

お見送りをしてから急いで商店街に買い物に出かけて、お菓子作りを始めた。

餌付けで仲直りを試みるしかない。

 

外で知ったのだけど、今日は2月14日でバレンタインだった。

こちらでは男性が女性にお菓子を渡す逆イベントになっており、折角なので僕からスイーツを作って家族へ送る事にした。勿論、中条寺さんに教わりながら。

 

買い物には何度か出ているので、もう商店街の何人かには顔も覚えられた。

平日の午前中に黒服を2人も連れ歩いてるから目立つ。しかも地毛が白髪だし。

 

*** 先週の買い物の様子 ***

 

「あんらまぁ〜愛い子っ!」

ビクッ

「……あ、どうも、こんにちは」

「こんにちわ〜。挨拶も出来るなんて、ハァ〜羨ましいわぁ〜。いいわね〜男の子は、あ〜羨ましい!」

 

大声で通りすぎて行ったおばちゃんのせいで注目を集めた。

 

「やっぱり男の子だったんだ」

「学校はどうしたの?」

「こちらはお姉さん?」

周囲のお客さんや店番の人達にあっという間に囲まれた。

 

一瞬レイプでもされるのかと恐ろしくなったけど、護衛の二人はそこまで警戒を強めることもなくて、寄ってきた人も少し会話すると満足して散っていった。

 

「あのおばちゃん、明から様に怪しかったですよね?警戒対象者ですか?」

「ただの辻褒めです。ああして心にストレスを溜めずに発散するんです」

「別に怪しくないってば。赤ちゃんとかペットにするのと同じ」

何だそりゃ。

 

「お兄ちゃん細すぎるからこれ食べなさい」

「これおまけしてあげるから」

「これ食べると精力つくよぉ〜」

 

********

 

物珍しさで構われる事はあっても、常に誰かが性的な目で見ているというような野蛮な世界ではなくて安心した。

 

午前中だから人は少ないものの、閑散としているほどでも無く、道端で井戸端会議をしているおばあちゃんもいた。少し離れた場所には大型商業施設もあるけど、客が殆どそちらに取られてるなんて事も無いみたい。人との触れ合いを好む人は多いし、商店街が無くなると逆に自治体も困るらしい。

そういう理由でなんと、商店街区画の全店舗は法人税が軽減されているらしい。それでも価格はまだ少し高いらしいけど。

余裕のある人は地域の応援も兼ねてこちらを利用しているのだとか。僕もそれを聞いてから商店街に通ってる。

ちなみに消費税はない。導入案を打ち出した当時の与党が惨敗してお蔵になったらしい。

国民の投票率は常に80%を超えているらしく、国民が政治をちゃんと監視している。

財源や労働力に余裕が無いので、国税の使い道は自分達の未来に直結する。だから投票するのは当然だと言っていた。見習いたい社会だ。

 

店舗で感動したのはお豆腐屋さん。創業百年近い老舗で手作りしていた。なんとオカラが一袋30円で売っていて、思わず光沢が美しい絹ごし豆腐と一緒に買い込んでしまった。

冷奴は自分で作った。切ってねぎを乗せるだけだから僕でも簡単。

アリス姉にはオカラ炒めとオカラハンバーグを作って貰った。自分で食材を選んだ効果も相待って、めちゃくちゃ美味しかった。

 

護衛さんとの買い物は全て保安の経費で落ちた。全てだ。

お昼ご飯の材料も、お菓子の材料も、一緒に買ってもらった雑貨も豆腐もオカラも全部。

月に一定額まではノーチェックらしい。

民間なら1000円だろうとネチネチ指摘されるのに、信じられない…。

 

作ってみたいお菓子を直接見るために、ケーキ屋さんにも行った。

素人でも作れそうなおすすめを聞いて、それをティーセットにして3人で店内で頂いた。一口ずつ分け合いながら。わざわざ実演で紅茶の淹れ方も教えてくれるくらい、接客も温かくていいお店だった。

生クリーム系に合うのはダージリンだったかな?紅茶の種類や違いは忘れてしまったのでまた行きたい。経費で。

 

そんな感じで、最近は上級国民になった気分で外を練り歩いてる。

 

「司紗さん、財布をお出しなさい」

「一万円お預かりします。…え、お客さん待って、お釣り忘れてますよ」

「取っときな」

…素敵…トゥンク。

 

こんな妄想をしながら。

現実は司紗さんが「領収書ください」って言うだけだ。

 

 

 

「『美雪ちゃん』なんて他人行儀な呼び方が良くないよー」

「ん?」

お菓子を作りながら回想に耽っていると、ソファーの背もたれから陽毬さんがこちらに顔を覗かせた。

今日はもう手伝う気はないらしい。

 

「呼び捨てにしてキモいって言われたら立ち直れないですよ」

「そんな訳無いじゃん。女子の憧れのお兄ちゃんだよー?」

「僕はぽっと出のお兄ちゃんですから」

「はぁ~~~」

なんだそのクソデカため息は。

 

「エッチで優しくて、エッチで格好良くて、エッチな兄が突然現れて?文句を言う女?そんなのがいたら泣いて許しを乞うまで殴っちゃいそう」

「おいふざけんな」

美雪ちゃんに手を上げたら僕がお前を……どうにかして泣かせる。

腕力以外でな。

大体魅力がエッチばっかりじゃねーか。妹にはそんなの要らないんだよ。

 

「ちゃんと好かれてますよ。怖がる必要はないです」

「そうですかね…」

「この状態にしたら、鍋に水を張ってください」

「布巾が敷かれたままですけど?」

「沸騰の対流で容器がガタつくのを防ぐんです。それと熱の伝わりが和らいでなめらかに仕上がります」

「へえ~」

20回くらいへーボタンを押したい。

 

IP◯dなんて存在しないこの世界には、you◯ubeやクッ◯パッドなんてサイトも当然ない。

実地で手取り足取り教えて貰えるのがありがたすぎる。

プリンなら司紗さんが作れるので、ケーキ屋さんがパフェを勧めてくれたのだ。失敗しづらいし、しても市販の物で代替が効くから初心者が挑戦するには良いと。

 

「湯気がたってきたら弱火にして2、30分蒸します」

「結構アバウトですね」

「揺らして表面が軽く波打つのが目安です」

「なるほど」

位とか、適量、少々って字面だと分かんないから助かります。

 

「司紗と同じでむっつりだね、あの子は」

「私はむっつりでは無い」

リビングから陽毬さんの茶々が逐一入る。

ほんと仲良いね君たち。

 

「はぁ〜、何を馬鹿なことを。うちの天使を一緒にしないで下さい」

「…私も違いますよ?」

知らないけど、僕にもむっつりに見えてる。

 

「ひまがあの子ならー、みゆとかみゅ~って呼ばれて抱っこされながら目一杯甘やかされたいなー」

「それはキモすぎでしょ。絶対嫌がるから」

「嫌がるわけがありません」

「え?」

「…あ。…いえ、一般的な話です。…後は、火を止めて粗熱が取れたら冷蔵庫で冷やすだけなので、もう休んでいて大丈夫です」

なんか、誤魔化したなこれ。

見た目に反して、中条寺さんも甘えん坊か?

 

「……つーちゃん?」

「なっ、なんですかそれは!?」

「つぅねえ?」

「くっ、揶揄わないで下さい」

「ねーねは、お料理上手だね?」

「ふぐぅ…」

胸を掴んで苦しんでる姿には、既視感がある。

 

アリス姉に呼んでほしいと言われた『ねーね』はこの世界では需要が高そうだ。『ねーねー』だったかな?どっちでもいいか。

勝気なお姉さんタイプなのに、甘えられるのもいける口とは。

料理といい、見た目と違って色々と器用ですね?

 

「ずるい!それひまにもして!」

 

 

手が空いたので順に2人を膝枕してナデナデしてあげた。

バレンタインだし、恩返しも込めてこれ位は良いよね。

 

ただ、陽毬さんは堂々と僕の股間に顔を埋めて深呼吸してた。確かに嗅いでいいとは言ったけどさ。

匂わないと思うんだけど、「あー効くー」って言いながら、めっちゃ勃起させてておっさんくさかった。

見た目はグレージュの前髪ぱっつんのボブヘアーで女子大生っぽい。160cm位で僕より少し大きいけど可愛い系。だけど常に欲望全開だから、見た目の可愛らしさと中身が解釈不一致を起こす。

中条寺さんを膝枕してる間、彼女はトイレから帰ってこなかった。

ナニをしてるんですかね、あの護衛は。

 

 

 

「桜蘭学園は男子警護にも対応してますし問題ないでしょう。念のため教員周りは洗っておきます」

「良かった、お願いします」

 

「僕が部活とかに参加すると迷惑ですか?勤務時間の兼ね合いで」

「構いませんよ。元々24時間勤務みたいなものですから」

「ええ…何それ怖い…」

そういえば、栗華さんや御堂さんのシフトもおかしかった。夜勤までやってたからな。

 

「この任務では休みはあまり取れませんが、自由時間は長いので悪くありません。護衛対象にも恵まれましたし」

「そう言ってもらえるのは嬉しいですけど、ブラックすぎるでしょ」

「ブラック?」

「あ、真っ黒。過酷すぎるって意味です」

無いのか、その言葉自体が…。

 

「そう思うなら、役得も早くしてねー?」

「何だかそう思えてきました」

「対価に体を提供するような事はなさらないで下さい」

ふーむ。

 

「でもさー、うちらコンパにもいけないし、愛人も作れないまま干からびてくんだよ?」

「…それが仕事だ」

 

不穏な会話をしているので労働条件を聞き出すと、居た堪れなくなってきた。

任務中の固定休日は月に1日、他は体調不良や私用の休暇申請のみ。実質月に一度、体外受精で病院に行く日以外は休みがないのと変わらない。

この世界って労基ないの?保安が超絶ブラックなの?

 

「お二人は僕の精子が欲しいわけではないんですよね?手とか口、何か希望はありますか?」

「欲しい欲しい!精子欲しい!ひまは子作りエッチがしたい!」

「~っ、何を言ってるんですか!?」

 

「思ってた以上にSEXが生活に深く関わっているので、もう少し柔軟に考えた方が良いのかなって」

「凄く良いと思うよー」

「良くありません」

 

折角なので陽毬さんと中条寺さんにも、一般的な価値観を聞いたりしてみた。

柔軟すぎて天内家の面汚しにはなりたくないからね。

 

 

ピピピピ

 

キッチンからタイマーが鳴ったので、プリンを冷蔵庫に入れる。

美味しく仕上がるといいな。美雪ちゃん喜んでくれるかな。

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