暫くしてお見舞いから家族が帰ってきたので、入れ替わりで中条寺さんと陽毬さんは戻って行った。
母さんの回復は順調で来月には退院出来そうとの事。手紙も喜んでくれたらしい。
美雪ちゃんも母さんが帰ってきそうで嬉しそうなのに、まだ僕の方は見てくれない。
やっぱり甘味パワーでの仲直りに賭けるしかないないようだ。
皆に手作りのバレンタインスイーツがあると伝えて準備をする。と言っても後は盛り付けだけだし一人でも出来る。
ワイングラスを借りて、プリン、アイス、フローズンホイップを順に乗せていく。ミントを添えて、最後にストロベリーソースをかけたらバレンタインパフェの出来上がりだ。
三人とも手伝いたくてハラハラしてたけど、不恰好ながらもそれらしい盛り付けにはなったと思う。プリンは味見もしてあるし、美味しいものしか乗せていないから不味い筈はないのだけど、ドキドキしながら感想を待つ。
まずクリス姐とアリス姉が一掬いして口へ運び、美味しいと笑顔で喜んでくれた。
確実にそう言ってくれる二人ではあるけど、喜んで貰えるとやっぱり嬉しい。
でも一番の問題は、リトルシスターのご機嫌だ。
昨日、女としての魅力がないと勘違いさせてしまってから、殆ど会話をしてくれない。
ウザがられないように、チラチラと食べる様子を見守る。
「ん、美味しい…」
褒めてくれたけど、こちら見てくれないし笑顔でもない。
もっと笑ってほしいなあ。
「………みぃ」
「………え?」
たっぷり間を置いて、口元でスプーンが止まった。
僕を見ながら、私の事?という表情で固まっている。
そうですマイシスター。お兄ちゃん、今勇気を出してみました。
「って、呼んでもいい?」
「………別に、……良いけど」
目を逸らしながらも、恥ずかしそうに受け入れてくれた。
ぃぃぃやっっっっった!
本当に愛称で呼んでも嫌がられなかった!
「みぃちゃん」
「な、なに?」
「呼んでみただけ」
恥ずかしそうな顔が堪らん。
あかん、めっちゃテンション上がってニヤニヤしちゃう。
本当はもっと仲良くしてもいいの?
あ、パフェ全部食べてくれそう、ちゃんと美味しかったんだ。
「みぃ、美味しかった?」
「…も、もう、やっぱりダメ!ご馳走様!」
「あっ…」
なんてこった、怒って2階に行ってしまった。
調子に乗りすぎた…。
思わずテーブルに突っ伏して項垂れる。
「あれは照れてるだけ。すごく喜んでたわよ」
そうかな?そうだといいな。
「ねーねー」
「うん?」
「私もねーねーって呼んで」
顔を上げると、横のアリス姉が無表情で僕に要求している。
まだ諦めてなかったんだ。
そしてこの顔、妹をそう呼ぶなら、姉の要望も通って当然だと思っているな。
僕はもう高校生になるんだけど。
「恥ずかしいから、…偶にだよ?ねーねー」
アリス姉の眉間に皺が寄ったのを見て、僕の口は零戦並みに急旋回した。
「もう一回」
「ねーねーも、プリン美味しかった?」
「うん。光琉も一口食べてみて、美味しいから。はい、あーん」
「…あーん」
僕は空気の読める男だ。
クリス姐に
中条寺さんに聞いた通りの使い方を教わるが、横からの視線が突き刺さる。
アリス姉が怪訝そうな表情で、一連のやり取りを見守っている。
なんか、察してるような…。
「
「あ、そうね。まだ義務はないけど、セックスする時は使ってちょうだい」
どうやら回数や時間のデータを蓄積することで、精液検査の時に健康管理のアドバイスも貰えるらしい。
「…光琉は、もう私とのセックスが怖くないの?」
「ずっと怖くないよ?」
険しい顔が一転、嬉しそうな笑顔に変わった。
…あれ?これ勘違いさせたかも。
初日以来、アリス姉は手と口だけで搾精してくれてる。何となく暗黙の了解みたいな雰囲気でそうなってるので、わざわざ指摘はしていない。
正直、膣はずっと苦しい。護衛の二人と子作りセックスをする決断には、理由を作ってセックスしたかったという側面もある。
それでも、アリス姉とはこのまま挿入は避けた方がいい。
…いや、もう自分の頭だけで考えるのは辞めよう。
「アリス姉との搾精、セックスの事なんだけど───」
また同じ過ちが起きないよう、今の気持ちを口に出して伝えることにした。
18歳で母親にしてしまうかもしれない不安、父になる不安、経済的な問題、アリス姉の将来、家族が歪んでしまうのではないか。
他人を孕ませる義務に関しては、この社会の仕組みとしてもう納得しつつある。
それでもアリス姉だけは、仕組みとか雰囲気に流されずに大切にしたい。
恋愛とは違うけど、僕が今一番大切にしたい異性はアリス姉だから、苦労したり不幸せになるような事はしたくない。
「それって光琉はアリスが相手なら、結婚しなくても一緒に子育てをするつもりなの?」
「ええ、勿論です」
「ですって」
「う、うん…」
「妬けるわね。私が結婚した時はこんなに愛されて無かったわよ?」
何でか分からないけど、いい話みたいな雰囲気になっている。
おかしい。
クリス姐は、僕の認識が一般と乖離している部分を説明してくれた。
僕が想像してる以上に出産・育児のサポートは厚く、最低限の衣食住は可能になっている。
そもそも子供は授かれたら万々歳で、タイミングのコントロールは出来ない。だから学校の休学、職場の育休は当たり前。それで成り立つ社会構造になっている。
「子育てがひと段落したら税金がグンと上がるけどね。半分も取られるわ。でもそれがお世話になった社会への還元なのよ」
この話は僕というよりも、アリス姉に言い聞かせるように話していた。
半分?…グンと上がって?
「出来るだけ早く、体力のある若いうちに一人目の出産と子育てをしたいのが女の希望よ」
こちらは僕に向けてだ。
「若い内は遊びたいのでは?」
「節度を持った遊びなら子供がいたって出来るわよ」
「そういうものですか」
「金銭的な負担の意味でも、許される範囲でずっと子作りされる方も多いわ」
10歳差、20歳差の姉妹も珍しくはないらしい。
税率が大きく変わるとそういう事もあるのか。
小学生未満の子がいると、会社側には残業や夜勤をさせにくい法律が組まれている。
かつ託児所、保育園、小学校には夜間対応の児童会館が併設していて、働きながらの育児がし易い。何かあればマニュアルに従って病院にも連れて行ってくれるから、勤務中に呼び出される事はない。
現役を退かれた方が多くいるシルバー保育所なんてのもある。二馬力ならヘルパーさんを雇う事もあるし、ご近所さんで募る協働ヘルパーと言う仕組みもある。
東京では天内家のような核家族は珍しくないけど、田舎は3世代、4世代の同居家族が圧倒的に多いそうだ。そういえばお婆ちゃんという存在を忘れていた。聞いてみようかと思ったけど、言いたくなさそうだったのでやめておいた。
一方で男性は、広く種を蒔く事が何よりも優先される。
月に一度の精液検査という精子提供。15歳から55歳までの愛人契約。性育学習、献精活動。
他の細かい義務も含め怠ればペナルティが課せられるし、対応できずにいれば政府管理の種馬になる。
加えて社会貢献の義務もある。
これは男性にしかできない活性活動を指す。職業としてなら俳優や歌手が分かりやすく、病院・矯正施設・企業への訪問活動・外交活動も該当する。
普通に働いてもいいけど、それで一人分の納税をするよりも、女性1000人の生産性を1%引き上げる活動をしてくれた方が、結果10人分の生産力に値する。
条件とかが少し複雑で、最も簡単なものだと地域清掃。どれだけ無能な男でも健康なら引きこもりは許されない。
父親がいなくても子供は育つ。だから国は男性に育児参加を求めていない。
子育ての暇があるなら社会貢献を、もっと多数の女と関わって人口減少の歯止めに努めてほしい。
国がそう願っても、夫婦円満・父母で子育てする家庭は多くの人が渇望する。
これが一般的な感覚。
「僕は高校へ行ったら、愛人に加えて社会貢献の仕方も学ばなければいけないと?」
「そうよ。アリスを大切に思ってくれるのは嬉しいけど、身内ばかり見てちゃ駄目なの」
うーん。男女共に生き方に義務や縛りが多いな、この世界。
でもこれも前世の日本と比較するからかな。
あの日本は先人達が積み上げてくれた努力のお陰で、いい意味で狂ってる国だった。
この世界は男性の生産力がほぼないのだし、尚更あれとは比べちゃいけない。
皆んなが好き勝手に生きて、高度社会が維持できるはずがない。
「結婚のしやすさに出産歴は関係しますか?」
「男性とするならね。出産歴のある女性を選ぶ人は少ないわ」
「私は光琉以外の男と結婚なんてしたくない。したいと思った事もない」
「…多分、本心よ。きっと私のせいね」
質問の意図はバレバレだった。
「私は別れた旦那の、一人目の愛人だったの。アリスを授かったのを聞いて結婚しようって言ってくれて舞い上がって。…まあ、私はこんなだし、すぐに飽きられちゃったけど」
笑って誤魔化すクリス姐の笑顔を見ていると、胸が苦しくなる。
「今頃手放して後悔してますよ。いい気味です」
「?………励ましてくれたの?」
「クリス姐は格好良くて綺麗で優しくて、素敵な女性です」
「…ありがとう。私はあなた達がいてくれるから、今がとっても幸せよ」
クリス姐は少しだけ目尻に涙を溜めて、嫌な思い出を吹き飛ばすように笑った。
その表情はとても眩しくて、愛しい気持ちに駆られて隣に移動する。
椅子を近づけて姐さんの肩に頭を乗せたら、どうしたのと言いながら優しく頭を撫でてくれた。
気持ちが温かくなるんです。
「ねえ光琉。なんでいつもママには甘えるの?」
「…安心するから?」
「光琉は私が一番なんでしょ?」
「アリス姉は、心配でほっとけない感じ」
「…私がお姉ちゃんなのに」
「ふふ。光琉もお兄ちゃんだからね」
「そうです」
「………」
アリス姉も無言で移動してきて僕に寄りかかり、サンドイッチになった。
いつも頼ってオーラを出してくるけど、姉さんも甘えたかったりするのかな。
結局、アリス姉との搾精セックスは最低一年避妊をする事になった。
なったというよりも、クリス姐とアリス姉で事前に話し合いがされていたようだ。
子作りよりも、まずは家族としての絆を深める。
学校で友達を作ったり新しい出会いを経験する。
ただ避妊は排卵期のセックスを避けるだけで、ゴムや薬は使わない。
成人女性と完全な避妊セックスをするのは、女性の尊厳を著しく傷つける行為で勃たなくなったり精神的に病む事があるらしい。
こちらの世界でも、おチンチンは案外ナイーブみたい。
R18の次話を連投してます。