「───という事があったんですよ…ハァ…」
「大丈夫だと思いますよ。混ぜるのはそれ位でいいです」
「でもあれから二人が険悪なままで…」
「あれからって昨日の今日でしょう。その容器に均等に流してください」
中条寺さんとお菓子を作りながら、弱音を吐く。
今朝のドライヤーはどっちが先かで喧嘩になりかけて、先に出ていくアリス姉から済ませたら、ドヤ顔でもされたのかみぃちゃんがまた怒っていた。
折角家族皆と打ち解け始めたのに、由々しき事態である。
餌付けで仲直りを試みるしかない。
「姉にだけ搾精させてるのがよくないよー」
陽毬さんはリビングのソファーの背もたれから、こちらに顔を覗かせている。
今日はもう手伝う気はないらしい。
「それって、みぃちゃんにも搾精させろって意味ですか?あり得ないんですけど?」
「ちょっ、本気で怒んないでよー」
性はデリケートな問題、そんな事をさせたら家族崩壊まっしぐらだ。
「姉妹などそんなものです。すぐに忘れてまた別のことで喧嘩してますよ」
「そうですかねぇ…」
家族としてどちらが大切に思われているのか、結構根の深い問題な気がする。
二人の輝君を失って空いてしまった穴を埋めてあげられなければ、僕が家族として迎えられた意味がない。どちらかを贔屓になんてできない。
「姉には姉の、妹には妹の接し方をすればいいんですよ。きっと美雪ちゃんは甘えたいんです」
「そりゃそうだよねー。でもムラムラもしてると思…ってのは冗談でー」
いい話にくだらない茶々を入れられて、また陽毬さんを睨みつけてしまった。
「実際、兄と姉が隣でセックスしてて、トラウマとか人間不信になりませんか?」
「嫌がる人間もたまにいますが、
「むしろ興奮するね。学校に行けばそんな話ばっかりしてるのがあの年頃だよ?ひかるんも今頃誰かのオカズになってるよー、シシシ」
とうとう護衛主の僕も愛称になってしまった。
いいのか?僕がいいならいいのかな?ならまあいいか。
「小六ってオナニーするんですか?」
僕は中学生からだったぞ。
「しますよ。早いと5歳から。残りのビスケットを敷き詰めて、もう一度クリームを流してください」
「…は?」
「あ、すいません。余ったエスプレッソを先に染み込ませてください。忘れてました、よく気づきましたね」
「いや、そうじゃなくて。…5歳で、オナニーをするんですか?」
「あーそちらですか。物心がつけば勃起もしますし愛液も出ますから。クリームは均等に慣らしてくださいね」
待て待て待て、全然料理の話が入ってこない。
「僕のみぃちゃんは、勃起なんて一度もしてませんが?」
「お年頃だし男の前では隠してるに決まってるじゃーん。いっつも両手を前で組んでるし」
「いや、テント張ったり中腰にもなってないから」
「まだちっちゃいからねー。位置さえ調整すれば、ちょちょいのちょいだよー」
嘘だろ、あの天使が?
そんなのあり得ないんだが。
「何度かチンポジを直すところも見ました。美雪ちゃんは健康そのものですよ。これで終わりです、冷やしましょう」
はあ?チンポジ?あんたまで何言ってんの?
「ひかるんさー、女の性欲をまだ舐めてるよねー」
「いやいや、もうかなり知識が深まってますよ」
ひまりんさー、そんなに話しかけてくるならこっち来て手伝ってよ。
「櫛内の言う通りです。まあ周りの人間も過保護がすぎるというか、ある意味では悪いのですが…」
中条寺さんは冷蔵庫にティラミスを入れながら、少し申し訳なさそうに言う。
「どういう意味ですか?」
「ひかるんは我慢強い女にしか出会ってないの。環境が特殊すぎ」
「いえ、既に結構な事されてますから。僕もしてますけど」
特に御堂さんとか。
「リミッターな上にエッチで流され易いひかるんなんて、普通なら毎日輪姦されてるよ?病院でも家でも、ヒマ達にもねー。本当、感謝して欲しいなー。はーエッチしたいなー、チラチラ」
「…いつもの冗談ですよね?」
「充分あり得る事です。流石に校舎内での護衛は許可が降りませんから、トイレや空き部屋への連れ込みは本当に気をつけてください」
真顔で警告される。
そういえば、高校だと男の半数がレイプ被害に遭ってるんだっけ。
ちょっと怖くなってきたぞ。
たとえ最中は気持ち良くなれたとしても、レイプは後で病みそうで嫌だ。
「そもそも、あのお姉さんが軟禁したりレイプしないなんて、お母さんには感謝した方がいーよ?」
「まあ、それは何となく…」
クリス姐もアリス姉みたいな人だったら、高校も許可されてないだろうし。
「…あ、そうだ。
「な…今の流れでそれを言いますか…」
「折角なので明日は普通の女性を教えてください。直接吸引さえしなければ、中条寺さんの好きにしていいので」
「~っ」
一旦色々忘れたい。現実逃避ともいう。
「ずるいずるいずるい!ヒマもヒマも!ヒマもしたい!」
「陽毬さんは排卵期過ぎちゃったんでしょ?快楽目的のセックスはやめておきましょう」
「ずるいいぃぃ!なんでぇ、…ぐずっ、なんでヒマだけしてくれないのぉ…」
あれ、泣いちゃった。嘘泣き?
「ぐず。…私だって、頑張ってるのにぃぃ、うぅぅ…」
いや、ガチ泣きじゃん。
あぁ、僕もアリス姉におチンチンを入れてもらえなくて泣いたっけ…。
何故か、人生の終わりみたいな気分まで落ちるんだよな。
この世界の体だからここまで性に執着してしまうのかは分からない。
でも自分の時と同じ状態だと思うと、流石に居た堪れなくなる。
「はぁ…。朝、シャワーは浴びてきました?」
「っ、してくれるの!…ぐず、浴びた!浴びてきたよ!」
「しませんよ、それは約束と違いますから」
「そんなぁ…、ぐず…、ならなんで…、期待させないでよぉ…ひっく…」
「貸し一つということで口でしますから。それで次まで我慢してください」
「~っ、ほんと!?」
鼻水と涙でぐしゃぐしゃになった顔が、パッと花が開いたような笑顔になる。
でもメイクが崩れてホラーだな。
目の下に流れる黒い汚れは、マスカラか?
陽毬さんはその場でベルトをカチャカチャして、ズボンをストンと下ろしてパンツもずり下ろした。
ピエロみたいな女が、下半身丸出しで僕に微笑んでいる。
こえええ…。
これにレイプされたら間違いなく夢に出るぞ。
これからこのピエロに、頭を掴まれてシャブらされるのか…。
「ひまのは小さいから、怖くないでしょ?」
馬鹿、こええよ。
「ねえ早くぅー」
「ひっ」
「……え?」
笑顔で寄ってくるピエロに気押されて、つい後ずさってしまった。
放心状態のピエロの表情が、僕の恐怖心を更に煽る。
ビビってる場合じゃない。
今の僕の反応は良くない。陽毬さんの自尊心を傷つけてしまった。
口ですると言い出したのは僕だぞ。
胸に手をやり、拳を握りしめて勇気を振るい立たせる。
心臓を、捧げろ。
…しゃぶるしかない。
…このピエロのチンポを。