「櫛内、先に鏡で顔を見てこい」
中条寺さんに指摘された陽毬さんが、チンチンをバタつかせながら洗面台に走った。
「ふぅ~~~」
ピエロとの一戦が回避され、安堵のあまりへたり込む。
「嫌なものは嫌と言わないと駄目ですよ」
「そうですね、助かりました」
「…やはり、報酬としては行き過ぎなのでは?護衛は元々仕事な訳ですし」
嬉しいはずなのに、良心の呵責に悩まされているのか。
でも、もう僕自身がする気になってるんだよな。
幾ら僕が淫乱だといっても、献精活動で全く知らない相手に抱かれるのは結構きつい。
慣れられるのかは分からないけど、役目としてのセックスもしておきたい。
「なら中条寺さんも貸し一つでどうでしょう?叶えられそうなお願いなら、そのうち聞いてください」
「…わかりました。何なりと」
ほう。何なりと?
思わぬ言質を取った。
「して欲しい雰囲気とかあれば、明日言ってくださいね」
「~~っ」
僕よりも頭一つ大きい女性が照れてる姿が可愛い。
明日はどうしてくれようか。
「顔洗ってきた!」
チンチンをプラプラさせながら護衛が戻ってきた。
ピエロメイクは消えてなくなり、スッピンで童顔になった陽毬さんは普段より幼く見える。
「ひまりん、メイクがない方が可愛らしいね?」
そしておチンチンも可愛らしいね?
「そ、そうかな…でも、なめられちゃうから」
モジモジしながら、チンコ丸出しでプロとしての矜持を語る、保安所属の護衛Bさん。
自然と脳内に音楽が流れてくる。
『仕事の流◯』のワンシーンに是非使って欲しい。
「じゃあ、トイレに行きましょうか」
「トイレはちょっと…。ひかるんを性処理の道具扱いしてるみたいで、嫌だなーって」
「どうしたんですか?急に可愛らしくなって」
「男の子にしてもらえるのは久しぶりだから、雰囲気も大事にしたくって」
「じゃあ、中条寺さんに離れてもらって、ここでしましょうか」
「…ひかるんの部屋とか、どうかな?」
「いや、姉さんの部屋でもあるから駄目ですよ」
「っ!それがいいんだよ!」
んんん?
こいつ、妙な性癖抱え込んでない?
そう言えば、初日から寝取り計画がどうこう言ってたな。
「許可が出てる母さん達の部屋でしましょう。上は駄目です」
「ちぇー」
「辞める?」
「レッツゴー!」
────────
「はー、えがったえがったー」
「さっさと下を履け馬鹿」
馬鹿が馬鹿を言ってる様子を冷静に眺める。
何故だろう。チンポに惑わされて頭が馬鹿にはならなかった。
まさかしゃぶっても冷静でいられるとは。
愛液の味で流石にムズムズはしたけど。
これはピエロの後遺症か、童顔のせいか、はたまた粗品のせいか。
朝沢山出したばかりだったから、という可能性もある。
だけどこれは大発見だ。僕はチンポに100%屈するわけではなかった。
今後一番恐ろしいのは、興奮時に妹のおチンチンを求めてしまう事だ。
幼いチンポに欲情し辛いのであれば、僕がみぃちゃんに発情するような事はなさそう。
今までもそんな気分になった事はないし、みぃちゃんの裸を想像してみたけど全然ムラつかない。心配ない気がしてきた。
────────
「ただいま」
「おかえりー」
一番早く帰ってきた妹を、今日は手を広げて出迎える。
当然のように困惑するリトルシスター。
「えっと…」
「みぃのハグを待ってる」
駄目元だったけど、文句も言わずにトトっと寄ってきて、ポフっと抱きついてくれた。
はぁ…。なんだこれ、たまらん…。
小柄な僕よりも、小さな体を抱きしめ返す。
うん、やっぱり大丈夫だ。
僕は興奮しないし、みぃちゃんも興奮してない。只々愛おしいだけだ。
「学校は楽しかった?」
「…これは美雪だけにして」
「わかった、そうする」
自分の兄を取られた感覚で落ち込んでいたようなので、希望通りに了承した。
恥ずかしいので、元々今回限りのつもりだったのだけど。
手洗いうがいをさせた後、護衛の二人も混ざってもらって妹をお茶会に誘う。
どんな風に接して欲しいのか、お兄ちゃんと行きたい場所や、遊びたい事がないか聞いてみたかった。そもそも普段どんな遊びをしているのかも知らないし、二人きりだと会話が止まってしまう事が多い。
「わぁー、ティラミス」
「ご飯の前だから少しだけね」
緊張していた様子から、一転してこの笑顔。やはりスイーツは偉大だ。
紅茶は僕の好きなアールグレイ。
これも淹れ方があるようで、カップを温めたり沸騰後に一気に注ぐと習った。プロのケーキ屋さんを真似したせいか美味しく感じる。舌は違いを感じ取れないけど、雰囲気だけで美味しさが増す不思議。
「でね、ひかるんは遊びを何も知らないから、教えてあげてくれないかなーって」
「でも、にーに…、兄さんがつまらなかったら…」
「気にしすぎー、てかにーにで良いよ?は〜あ、羨ましいよー。ヒマも兄弟欲しい」
「陽毬さんは一人っ子ですか?」
「妹が二人だよ。みゆっぴみたいに可愛いならまだしもさぁ───」
隣にいる僕よりも、正面の陽毬さんがずっと妹と喋ってくれている。
みぃちゃんも結構喋るのね。ちょっと陽毬さんに嫉妬する。
普段は家に帰ってきても友達の家に行くかすぐ部屋に篭ってしまうので、まだ護衛の二人ともそれほど仲良くなってない筈なんだけど。懐に入るの上手だなあ。
というか陽毬さんの妹さん、どっちも子持ちなんだ。そりゃ焦るよな。
聞き耳立てるのもあれだし、僕は向かいの中条寺さんとお喋りでもしていよう。
「───隙あらばくっついたり触わったりしないと勿体無いでしょー?」
「でも、触わる理由を作るの、難しい…」
君達は僕の隣で一体何の話をしているんだ。
けど、僕もナデナデしたり抱っこしたいです。
「難しく考えないでさー、部屋で一緒に漫画読むとかは?」
「…美雪の部屋で、にーにと、二人で?」
「そうそう、二人でゴロゴロなんて兄妹特権だよー。やらなきゃ嘘だよー」
もっと言ってやって。
「そんなの、無理です…」
「ガーン」
「あっ、ちがうの、にーにが嫌とかじゃ!……緊張しちゃうから」
つい横の話に反応してしまった。
緊張は僕も未だにしてるから、仕方ないね。
「ならここで勉強を見てもらったりとかは?」
「…にーにはイヤじゃない?」
「みぃの勉強を見せてもらえるなら嬉しいよ。教科書は読んだけど身についてるか自信ないし」
「今しても良い?」
「うん。今なら先生が2人もいるしね」
ケーキは皆とうに平らげているのでお皿を下げる。
空いたテーブルの上に、みぃちゃんがランドセルからノートと教科書を取り出して並べていく。
置き勉してないのか、偉い。
一限目の英語から順に、教科書とノートを広げる。
ノートの右側は全て空白のままだ。不思議な使い方をしてる。
今日はどの範囲をやって、何をどう覚えたのか。自信がないのはどの辺りかを説明してくれる。
理解が曖昧な部分を僕らが教えて、みぃちゃんが理解できたら覚えた言葉や内容をノートの右側に書いていく。
要約と自分なりの解釈、先週習った内容とどう繋がっているかのメモまで書いてる。
えぇ…この子、本当に凄いんだけど…。
僕のノートなんて、黒板を写すことにしか使っていなかったんだが?
英語に続いて、他も同じように終えていった。
僕は算数と理科なら問題なく教えられた。陽毬さんは英語と社会が得意なようだ。
オールマイティな中条寺さんは、僕らが悩んだら口を出す形。
学校に行っていない経歴の僕から教われるとは思っていなかったようで、知識量や計算速度にみぃちゃんはかなり驚いていた。
1時間を過ぎた位で、今日の復習は終わった。
駆け足というか、手慣れているというか。解らないなりに、ならば何を聞くべきか既に頭の中で整理されているようだった。
僕の妹、賢すぎんか?
あまりの優秀ぶりに、舌を巻いて褒めちぎった。
護衛の二人も誉め殺しするので、みぃちゃんは顔を真っ赤にして恥ずかしがっていた。
このやり方はアリス姉から教わったのだと言う。
毎日この復習をするのが日課というかノルマらしい。
アリス姉が忙しくて一緒にできない日でも、ノートのチェックだけは欠かさずしてくれるそうだ。
めちゃくちゃ妹想いじゃん…。
それなのに普段は何故、お互いに笑顔の一つも交わさないのか。
不思議で仕方ない。