「アリス姉ってそんなに面倒見が良かったんだ」
「姉さんは命令するし、怒ってばっかり」
「毎日見てくれるって、中々できる事じゃないよ。感謝しないと」
「…美雪は、にーにと陽毬お姉さんがいい」
そんな事言ったら、流石にアリス姉が可哀想だよ。
「えへー、照れちゃうなー」
「陽毬お姉さんは分かりやすいし、楽しくて好き」
「もうひまりんでいいよぉ〜」
なんかもう、本当の姉妹みたいに仲良しになってるし。コミュ力お化けだな。
本当の姉妹同士でも仲良くして欲しい。
やり続けてるみぃちゃん自身が偉いんだけど、それでも僕はアリス姉を見直した。
「褒めてくれなくても、勉強を見てもらってるお礼は言おうね?」
「………姉さんは、美雪のために教えてくれてる訳じゃないもん」
「みぃのためを思って無いと出来ないよ?」
「…始めは、帰ってくる輝にぃのためにちゃんとしろって。今は光琉にぃのためにちゃんとやれって」
その言い方はいかんでしょ。
本当にさぁ…そういうとこだよアリス姉…。
「多分本心じゃ無いよ?アリス姉は口下手だし」
「………」
「そろそろ帰って来るから、お礼を言って仲直りしよう?」
「……ご褒美」
「うん?」
「…頑張ったご褒美くれたら、姉さんにお礼を言う」
「ご褒美?」
ご褒美が隠語みたいに聞こえるのは、邪な自分のせいだろう。
「ならソファーの方が良いでしょう。お皿は洗っておきますね」
「ヒマも手伝おーっと」
この動き、みぃちゃんと事前に意思疎通を計っていたな?
僕がトイレに立った時に、何か話をしていたのか。
妹に手を引かれるまま、ダイニングからリビングに移動する。
「…にーにが先に座って…抱っこして欲しい」
「良いよ」
少し安堵しながら腰を下ろす。
ティアードスカートと言ってたかな。フリフリが重なったスカートの可愛らしいお尻を、僕の股の間にちょこんと収めた。二人から聞いた話で少し警戒したけど、エッチなご褒美とかではなくて良かった。
大体、お帰りなさいのハグでも勃起は感じなかったし、今もやっぱり勃ってないと思う。
僕は胸が何度もキュンキュンしてたけど、それは性的な興奮ではない。
やっぱり大丈夫だ。僕とみぃちゃんは健全な兄妹として、問題なくやっていける。
「…頭を撫でながら、褒めて欲しい」
「今日も可愛い髪型だね〜、すごく似合ってる。世界で一番可愛い」
「それはにーにが…」
こんなの僕へのご褒美ですよ。
母さんがいないのに頑張ってること、家のお手伝いがなんでも出来ること、毎日家でも勉強していること。みぃはこれが凄い、あれが凄いと沢山褒めてあげた。
ずっとこんなやりとりがしたかったのだろうか。
頭を揺らしながら、本当に嬉しそうにしている。
振り返りながら、学校ではこんな事も出来る、あんな事も出来ると色んな事を楽しそうに教えてくれた。
「それでみぃがね…、みぃがうつっちゃった」
良いではないか良いではないか。
「にーには、なんでみぃって呼ぶの?」
「呼んだら口元が笑うでしょ」
「…みぃ、みぃ、みー」
「笑顔でお話ししたいから。釣られてみぃが笑ってくれると嬉しいんだ」
「………」
にーにって言ってくれる時も可愛いけどね。
「…にーに」
「なーに?」
「みぃは、にーにが大好き」
振り返ったみぃちゃんが、可愛らしい笑顔でそう言ってくれた。
「にーにも、みぃが大好きだよ」
そう返すとみぃちゃんは僕に抱きついた。
はぁ〜〜〜〜、至福ぅぅぅぅぅ。
世の中の妹持ちってこんな幸せを体験してたの?
この体験を脳裏に焼き付けながら、頭と背中を撫でる。
これが母性なのかな?父性?兄性?
この子はなんとしてでも守らなきゃいけない。そう感じさせる愛おしさで溢れている。
ピンポーン
妹成分を堪能しているとチャイムが鳴った。
「多分姉さんだから、お迎えしに行こう?」
「…まだ終わってないもん」
顔をうずめたまま、離れる気は無いと主張する。
「いいよー、ヒマが出るから」
陽毬さんが笑顔をこちらに向けながら玄関に向かった。
やっぱりアリス姉だったようで、なんであんたが、みたいな不穏な会話が聞こえてくる。
良い加減仲良くしなさいよ。
「ほら、帰ってきたよ?仲直りするんでしょ?」
「………」
みぃちゃんは半身を傾けていた体を完全にこちらに向け、馬乗りになって僕の首にしがみついた。
「どうしたの?」
仲直りするのが怖いんだろうか、背中と頭に手を回してまた撫でてあげる。
なんでちっちゃい子ってお日様みたいな匂いがするんだろう。
くんかくんか。いい匂い。
ドサッ
「…なにを…してるの?」
入ってきた来たアリス姉が、目を見開いて僕らを見ている。
制服にダッフルコートがとてもよく似合っているのに、怒った表情のせいで台無しだ。
別にいかがわしい事など何もしていない。むしろ仲直りの仲裁だ。
「みぃが勉強見てもらってるお礼が言いたいって。ほら、ちゃんと言おう?」
促すと、僕にくっついたまま顔だけをアリス姉に向けた。
「姉さん、今までありがとう。これからはにーにがいるから」
んんん?
そういうお礼だっけ?ちょっと違くない?
「戯言はいいから、そこから降りなさい」
「嫌、にぃにが良いって言ったもん」
「光琉はまだリハビリ中「大好き」」
「って、みぃにも言ってくれた」
みぃちゃん?どうしちゃったの?
まさか、喧嘩しないよね?
「…美雪。貴方いつから『みぃ』になったの?」
「にーにが喜ぶの」
「へぇ…」
あかん。
予定が大幅に狂ってる。
「どうしたのみぃ?いつもありがとうのお礼をして、アリス姉と仲直りするんでしょ?」
「もうお礼は言ったもん。怒ってるのは姉さんだもん。にーに、みぃ怖い」
わざとらしく怖がって、再び顔を僕にうずめてしがみつく。
こら、はしたないからお股をグリグリ押し付けるんじゃありません。
…お股?
なんか、下腹部にちっちゃい何かが。