百貨店からは出ずに、そのまま地下二階の洋風レストランで食事をする。
僕は家では作りにくい油物、カニクリームコロッケのセット。
味は前世に劣らず美味しい。寧ろここの方が美味しいかも。
今の僕には丁度いいけど、量は些か少ない。家でもそうだけどご飯一杯からして少なめが標準っぽい。
「さっきD2とか言ってたのは何ですか?」
「後で説明します」
内緒じゃないなら後でいいか。
店内には想像してた上に男性のお客さんもいる。
家に閉じ込めておくって不穏な話もあったせいで偏見が強かったけど、何事も自分の目で見てみないと分からない事は多い。
「さっきの女性は何しにあの部屋に入ったんですか?」
「自分で性欲を処理するためよ」
まさかのオナニー部屋だった。
痴漢衝動を抑えられなくなる前に発散させるそうだ。
男性が多く利用する店舗や施設にはほぼ設置されているらしく、桜蘭学園にもあるのだとか。
校内でオナニーするのか…変な性癖が芽生えそう。
「それ一口食べたい。あーん」
食べかけをねだられたのでお口に運んであげる。
「アリス、外ではやめなさい」
そうだった。僕も止めなきゃいけないのに。
注意されて尚、アリス姉の口元を拭いてあげてる僕も良くない。
アリス姉はリップは塗るけど口紅は塗らない。それどころか化粧もほとんどしない。ファンデーションをつける程度。
なのに唇もプルプルしてて…。
「…光琉?お外よ?」
クリス姐の一言で正気に戻り慌てて離れる。
「…なんか、おかしいです。アリス姉、今日は特に綺麗じゃない?」
「そ、そう?そんなに?」
アリス姉の真っ赤な顔を見ていると、可愛いく思えて仕方がない。
「…なんか、なんでだろう?」
常にキスしたくなるし、搾精してもらったのに下腹部がいつもより苦しい。本当におかしい。
「排卵期だから肌艶がいいのよ。お化粧のノリも良くなるわ」
僕が戸惑っているとクリス姐が教えてくれた。
ホルモンの分泌で潤いや艶が出るらしい。
前世の女性にそんな違いを感じた事はなかったから、こちらの世界特有なのかな?
ほっぺをツンツン触らせてもらうと、確かにいつもよりモチモチしてるような。キスしたい。
「確かにそうかも。排卵期の司紗さんも綺麗だったし」
「…は?」
「ぶっ、ごほ…」
司紗さんが咳き込んだ。
ちょっと、マナー悪いですよ。
「なんでこの人の排卵期を、光琉が知ってるの?」
…あ…そうなるのか。
食事を楽しんでいたはずの空間が、一瞬にして凍りついた。
や、ヤバい…。
「…偶々聞いただけで」
「嘘吐かないって約束したよね?本当に偶々聞いただけ?」
どうしようどうしよう…。
「話の途中でごめんねー。司紗、車回して来て」
「逃がそうったって…」
「C1シングル」
「了解。面は?」
「抑えた」
突然二人が仕事モードに切り替わり、司紗さんが席を立った。
一瞬で空気がピリついたものに変わり、テーブルの下でアリス姉が震えながら僕の手を握りしめた。
「…どうしたんですか?」
「周りを伺ったりしないでね、普段通りにしてて。念のため帰るよ」
「…何が、そんなにまずい状況なんですか?」
「後でそうなる可能性があるだけ。今危険な訳じゃないから、緊張しなくていいよ」
陽毬さんはそう言いながら、何でもないようにストローでカラカラと氷を回す。
そうは言われても緊張してしまう。辺りを見渡したくて仕方がない。
暫くして陽毬さんの携帯が鳴ると、皆んなで揃って席を立った。
お会計は司紗さんが済ませていたので足を止める事無く、正面口から堂々と建物を出る。
目の前の大通りに出ると、計ったようなタイミングで黒塗りの護衛車が横付けされた。
大急ぎで開けたドアに僕が押し込まれ、続いて全員が乗り込んだ。
「追っ手は?」
「無い」
「尾行も素人だし、一般人かな」
まるでスパイ映画か何かのようで、変な汗が止まらない。
「…結局、なんだったんですか?」
陽毬さんは相変わらずなんでもないような表情で喋っているけど、ずっと心臓がバクバクいっている。
アルファベットは警戒レベル。それにチーム数、チームの人数。
Eはこちらを何度も意識している者がいた。
Dは後をつけらていた。
Cは尾行されていた。
対象は学生服売り場に向かう途中で警戒網に引っかかった。終始単独だったらしい。
「解析が出るまで気を抜くな。学生狙いには違いない」
「元々光琉を狙っていた訳じゃないの?」
「わかりません」
にしたって、買い物を待ち構えてたとか意味が分からない。
「試着室で盗撮されてたとか?」
「鳳仙百貨店でそれは無理でしょう。それらしき物もありませんでした」
ちゃんと調べてたんだ。全く気づかなかった。
「アリス姉、心配ないってさ」
「うん…」
唇まで真っ青になってしまっている姉の手を摩りながら、そのまま帰路に着いた。
Side 通りすがりの女子生徒(姫乃瑛凛佳)
「見つけたのに見失った!?何のために朝から張らせたと思ってるのよ!」
「プロの護衛相手に私一人では…」
「はぁ~、ほんっと使えないわね」
「で、イカれ姫川が接触してたんでしょ?名前は聞いたんでしょうね?」
「アマナイと名乗ったそうです」
「ふ〜ん、…アマナイヒカル君ね。あんたのリストには?」
「い、いませんでした…」
「ほんっと、あんた何ならできるわけ?」
「
「咥えるしか脳がない雌猿でしょ」
「………」
「何してるの、さっさと舐めなさいよ」
「…失礼します。あぐっ…」
「誰がチンポを許したのよ。無能は足に決まってるでしょ」
「…申し訳ございません」
学校、病院のリストにも上がってこない。誰かが意図的に隠匿している。
調べるほどおかしな点だらけで、余計に興味が湧いた。
だけど姉が居た。なら恐らく細多摩の制服はその女の物。もう家が割れたも同然。
ただ、三人で行為室に入ったというのが気になる。
日常的に息子を性処理に使っている母親か。そこに姉も当然のように混ざっている。
…そういうタイプには見えなかったけど。
まあ、女なんてそんなものよね。
でもそれなら、鳳仙乙葉を気に入ってたのは何故?
…あぁ…金か。なんて浅はかな考え。
見目の良い息子で成り上がろうという訳ね。
「はぁ〜、これだから庶民は」
「ぷはっ…す、すみません…」
「何勝手に止まってるのよ」
「むぐっ!」
流石にあの女を、あの家を舐め過ぎよ。
あの護衛も息子の体を使って付けただけ。護衛にもセックスせていそうね。
底が知れて興味が一気に失せた。
でもまあ、金で釣れるタイプなら話は早い。
愛人はやめた。
あの子はペットにしよう。
ゴネるようなら母親の方に圧をかければ済む。
「姉は細多摩中学の卒業生、アマナイ。そこから母親の勤務先と家族構成を調べておきなさい」
「れろぉ、ちゅぱ、…わかりました」
「勝手に止まるなって言ったでしょ」
「むぐっ!」
こいつも飽きてきたし、あの母親も使用人に加えたら面白そうね。