そういえば、いつかfan boxとかやりたいですね。そのときのためにも少しでも上達しなければ。
──ロクサーヌ
それは『異世界迷宮でハーレムを』と云う作品のメインヒロインだった。
両親を亡くして育ての叔母が税金を払えなくなり、売られた先の商館で店主のアランによって主人公と引き合わされた人物であり、性格は忠義の士といったもの。
心技体に優れた獣戦士のロクサーヌだが、絆を深めるとかわいらしくいちばん奴隷としてのプライドや嫉妬も見せ、そういったところも魅力的だった。
悠二もコミックで読んだだけなためうろ覚えだが、ロクサーヌが魅力的な女の子だとは記憶していた。
「あの……それで、これからどうしたら? その、せめて身を隠せるものを貸していただけないでしょうか?」
覚えている範囲のロクサーヌの経歴を思い出していた悠二は、その当人に声をかけられてハッとする。
「あ、ああ、すまない。えっと、そうだな……」
悠二は、アイテムボックスを操作してライザが作ってくれた外套を取り出した。
「これしかないんだが……」
「い、いえ、充分です。ありがとうございます」
差し出された外套を受け取り、ロクサーヌは裸身に羽織った。
「──いい外套ですね」
外套を見つめ、生地を触り、ロクサーヌはそう評した。
「ありがとう。作った人も喜ぶよ」
ライザのことが褒められ、悠二は我がことのようにうれしかった。
「それで、あの……あなたは探索者なのですか?」
「? いや、違うと思うが……」
「そう、なんですね……たしかに私の知る探索者とは違うようです」
ロクサーヌは、悠二の否定に訝しげだったが、探索者にしては詠唱もなく、アイテムボックスも現れなかったため、ひとまず納得してくれたようだ。
「それじゃあ、仲間のところに案内する。女の子だから安心してくれ」
「は、はい、わかりました」
悠二はそう言って先導し、ロクサーヌもおとなしくついてきてくれた。
その際に悠二は、ロクサーヌを鑑定スキルで確認した。
名前:ロクサーヌ 年齢:16
レベル:1
状態:処女
経験人数:0
初体験:なし
バストサイズ:H
スキル:ビーストアタック
セックスポイント:0
漫画の内容はうろ覚えだが、スキルはロクサーヌの固有職業か何かのものだったと、悠二は記憶していた。
(そういえば、ロクサーヌは身体能力が高かったと思ったが……そういうのも使えないんだろうか?)
疑問だったが、下手に初対面の相手にわけ知り顔で訊いては、面倒なことになると、悠二はひとまず拠点へ向かうことを優先するのだった。
少しずつ慣れた道を行き、ロクサーヌを連れて戻った悠二は、ライザに出迎えられた。
「──あ、おかえり、ユウジ! って、その子は?」
笑顔のライザは、悠二のうしろのロクサーヌにも当然気がついた。
「ああ。どうやら新しく流されてきたみたいだ」
「ロ、ロクサーヌといいます」
悠二の紹介にロクサーヌは、緊張か警戒かそう言って頭を下げた。
「おお、ついに新しい住人が!」
賑やかなのが好きなライザは、そのことを歓迎しているようだった。
「あたしはライザリン・シュタウト。ちょっと長いからライザって呼んでね」
「は、はい、ライザ。私のことも名前でかまいません」
「わかった。よろしくね、ロクサーヌ」
「はい、よろしくお願いします、ライザ」
ライザとロクサーヌのファーストコンタクトは、特に問題なく済んだ。
ロクサーヌもライザの裏表のない明るさに、表情を和らげていた。
「それでユウジ。ロクサーヌにはどのくらい話したの?」
「ああ。まだ触り程度なんだ。事情が事情だからな。同性のライザがいたほうがいいと思って」
「そっか。もちろん、あたしも説明は手伝うよ!」
「ああ、頼む」
「うん、任せて!」
悠二とライザは、あらためてロクサーヌに向き直った。
「あの、それでここはいったい?」
「その前に……キミはここに来るまでの記憶はあるか?」
「えっと……はい。私は──」
悠二の問いにロクサーヌは、記憶を手繰るようにして話しだした。
両親を亡くしてから育ての叔母のもとに身を寄せていたが、税金が払えなくなり、奴隷として売られたこと。
商館で教育を受けつつ過ごしていたが、ある日、自分を気に入った相手がいて待ち合わせがないため五日の猶予を設けられ、売却済の部屋に移動しようとしたが──。
「気がついたら、海岸に流れ着いていました」
いきなり風景が変わり、裸で放り出されて困惑していたロクサーヌだったが──。
「そこであなたに出会ったんです」
と、悠二に視線を向けた。
「──なるほど。話してくれてありがとう」
まず悠二は、礼を言って頭を下げた。
会ったばかりの相手に身の上を必要だからと話させたのだから、悠二にとっては当然のことだった。
「それで、俺たちの置かれた状況についてだが……」
悠二とライザは、ロクサーヌにあらためて自己紹介し、ここが異世界の無人島であることを説明した。
男から言いづらいことは、ライザが説明してくれて悠二は助かった。
「──どう? わかった?」
「──は、はい。私たちは、もといた世界とは別の場所に移されたのですね。原因はわからず、脱出方法もなく、サバイバルを強いられていると……」
ライザの確認にロクサーヌは、戸惑いながらも理解したようで頰を赤くして悠二をチラチラ見た。
「わ、私たちが生きていくには、その人と交わる必要がある、んですね」
「うん、そう。何か能力を持っている場合も、使うにはその、お、男の子の体液を摂取する必要があるんだ」
「……なるほど。だから声をかけられるまで、気づけなかったんですね」
ライザの説明にロクサーヌは、得心がいった様子だった。
ロクサーヌは、身体能力と嗅覚に優れ、匂いで気配を探ることができる。
だが、いくら磯臭い場所だったとはいえ、人の匂いを、ましてや自分の背後まで接近した匂いを拾い損ねることなどはない。
しかし、島のルールで封じられていると考えると、辻褄が合う。
「……信じてくれるのか?」
「えっと……は、はい。私の身に起きたこと、あなたたちの生活の様子なども考えると嘘ではないかと。奴隷の私にそこまで大掛かりに騙す価値はありませんから」
悠二の確認にロクサーヌは、頰は赤いが応じてくれた。
聡明で温厚なロクサーヌは、しっかりと考えて答えを出したようだ。
(まあ、ロクサーヌくらいの美少女なら騙してでも手に入れたい奴はいると思うが……)
ややこしくなるため、悠二は口にこそ出さなかったがそう思った。
そんななか、ロクサーヌは憂いを浮かべる。
「それに帰れるとしても、私は帰らないほうがいいのかもしれません」
「どういうことだ?」
美女の憂い顔にドキドキとしたが、悠二が問うとロクサーヌは、卑屈になることなく毅然として言う。
「私がもといた場所でいまどうなっているかはわかりませんが、無断でいなくなった以上、おそらく私は逃亡奴隷として犯罪者扱いになっていることでしょう。仮に戻ったところで許されるとは思いませんし、逃亡先で娼婦に身を窶し、日銭を稼ぐくらいが関の山です。でしたらここで生きていくというのも、悪いことではありません」
文化の違いだろうが、壮絶な境遇にもロクサーヌは、凛とした様子が崩れなかった。
「どこにいようと生きているなら生きていくしかありませんし、幸い人には恵まれましたから」
そう言って悠二、ライザを見つめて微笑んだ。
「すごいね、ロクサーヌは」
「そうですか?」
「うん。強いと思うよ」
ライザの賞賛にもロクサーヌは、不思議そうに首を傾げていた。
「だが、生きていくには、いま言ったとおりのことが必要なんだが……その、だいじょぶか?」
「はい。私は、だいじょぶです。その、もとは性奴隷としての役目もこなすつもりでしたから」
悠二の問いかけにロクサーヌは、頰を赤くして答えた。
どうやらロクサーヌは、奴隷として戦闘、性奉仕が業務として盛り込まれ、了承もしていたようだ。
(よかったって言ったら失礼だが、無理やりする必要はないみたいだな)
無理やりしたら島のルールでペナルティだが、目の前で女の子に死なれるのは堪えるだろう。
(問題は、そのペナルティが何かわからないのが怖いんだよな。もちろん、無理やりなんてしたくないが)
その不明瞭さもストッパーとなるのかもしれないと、悠二は感じていた。
「とりあえず、ロクサーヌの着るもの用意しないとね。いまある素材で足りるかなぁ?」
ある程度の状況説明と理解が及んだことで、ライザがそう言いだした。
「この島は常夏のようだし、薄手の服くらいならいけるんじゃないか?」
「うん、たしかに。とりあえずやってみるね」
悠二の提案にライザは、さっそく錬金釜の前で素材を放り込んでいく。
杖で窯を掻き混ぜるライザのうしろ姿を見て、やっぱり不思議な光景だなと、悠二は思った。
「あの、ライザは何をしているんですか?」
「ああ。ライザは錬金術が使えるんだ」
「金が作れるのですか!?」
「どうだろうな。金属が足りないし、仮に作っても無人島じゃあな……」
「そ、そうですよね。取り乱してしまい、すみません」
そんなふうに文化の違いの会話をしていると──。
「──よし、できたー!」
ライザが声を上げた。
見るとライザの手には、村娘を彷彿させるような服が握られていた。
草や木から作った繊維だが、ライザのイメージが反映されるのか丈夫で色鮮やかな服となっていた。
「はい、ロクサーヌ! 着てみて?」
「ありがとうございます」
ロクサーヌほ立ち上がると掛けていた外套を脱ごうとしたが、悠二のことが気になって手を止めた。
「あ、ご、ごめん!」
悠二は慌てる顔を背けた。
本来なら洞窟から出るべきだが、緊張で抜け落ちていた。
ライザも裸でいても慣れているし、感覚が麻痺してきているようだ。
ロクサーヌは、恥じらいながらも隅のほうに移動して外套を脱いだ。
そして、ライザの作ってくれた服に着替えた。
下着は、ショーツだけだがとりあえず充分だった。
「着替えました」
「おお、我ながらなかなかのできだね!」
ロクサーヌを見て、ライザが感心の声を上げる。
悠二もそちらを見ると、異世界の村娘を彷彿とさせる格好だった。
スカートではなくズボンタイプで動きやすさを重視し、その姿を見ていると悠二のなかでロクサーヌの姿が、記憶のものと一致する。
(細部は違うし、何巻かは忘れたがコミックの表紙になっていたような? とにかく、俺の記憶にあるロクサーヌだ)
そう考えた悠二だが、口には出さない。
「似合っているよ」
「ありがとうございます」
「うんうん。とりあえず、せっかくだからロクサーヌの歓迎会でもしよっか?」
悠二に褒められたロクサーヌは、少し恥ずかしそうだが笑顔を浮かべた。
そして、ライザの提案でロクサーヌと親睦を深めるため、今日の残りは休むことにした。
塩で味付けたきのこと水くらいしかないが、それでも状況の変化もスパイスになり、楽しめた。
宴もたけなわ、夜も更けてきた頃、日々の疲れもあってかライザは先に眠ってしまった。
悠二は、ライザをベッドに運んでやり、ロクサーヌの隣へと戻った。
ふたりは、しばらく黙っていたがこういうのは男からと、悠二は口を開く。
「──ロクサーヌ」
「──は、はい」
ビクッと体を震わせたロクサーヌに、悠二は語気を和らげて言う。
「今後のためにも、俺たちは仲良くなるべきだ」
「……はい」
「だが、そんな建前とか関係なく、俺はロクサーヌと仲良くなりたい」
「なぜ、ですか?」
「ロクサーヌが魅力的な女の子だからだ。俺は、ライザも、ロクサーヌも、死なせたくないんだ。そんな身勝手で、島のルールで言い訳して付け込んで悪いとは思ってる。でも──」
悠二の言葉に驚いていたロクサーヌは、その誠意に微笑を浮かべた。
「私は……」
「ロクサーヌ?」
「私はだいじょぶです。あなたなら安心して身を任せられます」
ロクサーヌは、緊張しながらもやさしく微笑んだ。
悠二のことはもちろん、ライザのことも見てロクサーヌには、ふたりの為人が少しわかっていた。
善人のライザが悠二を慕い、いまの状況でも溌剌としていることから、悠二はやさしいと短い付き合いのロクサーヌにも理解できた。
先ほど言ったようにもしいま帰れても逃亡奴隷として犯罪者扱いであり、逃げながら日銭稼ぎの娼婦をするのが関の山。
仮に奴隷として買われても、その主人がいい主人とは限らない。
ならばこんな状況でもやさしい相手を選べるならば、自分は幸せなほうだとロクサーヌは感じていた。
「ただ、その、私は初めてなので、やさしくしていただけたらうれしいです」
恥ずかしそうにロクサーヌは、はにかんだ。
「ああ、もちろんだ」
ライザとの経験がなければ飛びついていただろうと、悠二は内心思いながらも頷いた。
いまから悠二とロクサーヌの初夜が始まる。
To be continued
次回はいよいよロクサーヌ回となります!
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