※この作品はR-18です。

幽霊監獄の淫らな秘め事   作:調味みりん

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同人誌で書き下ろした話。
完結済みの話を分割して載せてます。
完全版は頒布中の同人誌にて全て読めるようになっています。
BOOTHにて通販中なので気になる方はお手に取っていただけると幸いです。


幽霊監獄の淫らな秘め事 1

「ぅ、んん……んっ」

 

 暗い室内。僅かに色づいた女の吐息が響く。

 ベッドの中、眠る立香の傍らには誰もいない。一人きりの部屋の中、自らを慰めている訳でもない彼女――藤丸立香の身体は、不思議と火照りを抱いていた。

 

 誰もいない部屋の中。立香の身体を覆っていたはずの布団は、何故か勝手にずり下げられていく。布団に包まれていたパジャマ姿の立香の身体が露わになったかと思うと、彼女の衣服が捲り上げられる。

 素肌が空気に晒された刺激。それに立香が僅かに身動ぎしたその時。誰も触れていないにも関わらず、彼女の発育の良い胸が、人の掌に揉みしだかれたように歪んだ。

 

「ん、んんっ……」

 

 むにゅ、むにゅ、と掌で愉しむように立香の胸が揺らされ、彼女の鼻からくぐもった声が漏れ出す。そんな立香の肌の上を、胸を弄ぶ手とは別の手が撫で回していく。

 

「ぁ、……は、ぅ、」

 

くすぐったさに近い感覚に、立香が吐息を漏らす。そのタイミングでパジャマのズボンが下ろされて、サテン生地でできた立香のショーツが空気に晒される。その途端、立香の肌から下着を剥ぎ取ってやろうとしてか、彼女の太腿の上を蟲のように幾つもの手が這い回る。

 立香の太腿に、複数の手で揉まれたような跡がくっきりとついたかと思うと、彼女の下着がずるり、と下げられ――

 

「はっ!」

 

 瞬間、立香はハッと弾かれたように目を開けた。急激に眠りから引き離された感覚とは裏腹に、寝覚めたばかりの脳は、夢と現の狭間を行ったり来たりを繰り返している。

 

「んー……、? っ、さむ……」

 

 うつらうつらとしていた立香だったが、寒気で一気に覚醒した。ぶるり、と身震いをした彼女は、外気に曝け出されてしまっている足元を見遣った。布団をかけて眠りについたはずなのに、いつの間にか布団もパジャマのズボンも剥ぎ取られてしまっている。

 

「まただ……」

 

 立香は乱された衣服を見て溜息を漏らした。

 ……最近、こういう事が続いていた。淫らな夢を見せられ、目覚めると衣服が乱されているのである。今日もその例に漏れず、パジャマのズボンが脱がされてしまっていた。

 

衣服が乱れている。それだけでも十分に不気味で恐ろしいのだが、近頃はそれ以上の実害が出始めていた。

携帯を手元に引き寄せた立香は、震える指でライトを点けた。

 

「――ッ、!」

 

ライトが照らし出した先。彼女の太腿には、人の手で握られたと思しき痕跡がくっきりと残っていた。

 

 ――夢で触れられたのと同じ箇所に、手形のような痕がついている。

それを見た立香は、偶然とは思えない一致に震えあがった。

 

「夢と、同じだ……」

 

そう呟いた立香は、溶けだそうとする雲の端を掴むように、今にも記憶から遠ざかっていってしまいそうな夢の内容を思い返していた。

 

……今日は電車の中で多数の人に服を暴かれ、身体を弄られるとんでもない夢を見せられた。下着をずり下げられる寸での所で目覚めたからいいものの、そうでなければどうなっていたことか。

 

 偶然とは言い難い箇所に残る痕跡。もし、あの夢でスカートに滑り込んできた手を止めなければ、きっと――

 そこまで考えて身震いした立香は、この怪現象が納まることを願いつつ、服を整えてベッドから抜け出した。

 

 

 こういった怪現象が始まったのは、ほんの一月前からのことであった。

昔から若干の霊感的な物があったのだが、大学に通うためにマンションに引っ越してきてからというもの、その感覚は悪化の一途を辿っていった。

以前は霊感といっても、どこかから視線を感じるとか、肌に触れる何かの感覚を僅かに拾いあげる程度であった。

 

 それが一か月前、このマンションに越して来た頃から強くなってきて、遂にしっかりとした感覚に結びつくようになってしまったのであった。

 心当たりのようなものは無い……はずだ。あるとすれば、この街に引っ越して来た時に妙にはっきりと見えた、男性の背後霊的な存在……ぐらいだろうか。

 

(それにしても、あれは一体何だったんだろう……? 幽霊にしては、妙にはっきりしていたような……)

 

 今まで見えたことのない霊の存在を目に捉えたのは、その時が初めてであった。すれ違った男性の姿と重なって見えた霊の姿が、余りにもくっきりと視えたものだから、霊とも思わなかったことを覚えている。

 

 おかしいと気が付いたのは、その男性とすれ違ってから数分後のこと。その違和感の正体に気付くのが遅れたのは、現代的な服を着ていた男性にダブって見えたのが、〈全く同じ顔〉をした、時代錯誤な服を纏っている男だったからだ。

 

 そんな不思議な体験を思い出しながら、立香は溜息を漏らす。恐怖に上書きされてしまって、眠気はすっかり遠ざかってしまっていた。この調子では、今晩も眠ることはできないだろう。そう思うと、憂鬱な気持ちになってしまう。

 

 カチ、カチ、カチ……。壁掛け時計の秒針の音が、やけにゆっくりと聞こえるような気がする。眠りたいけれど、眠れない。そんな夜ほど、時間が経つのが遅く感じられる。

 

「はあ……」

 

 台所でインスタントコーヒーを淹れた立香は、思わず漏れ出た溜息を呑み込むように、カップの中の熱を飲み下した。

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