『八男なんてそれはないでしょう』ヒロインたちの別物語 作:時田士郎
ダンジョンの最奥部に近い通路を、イーナはひとりで歩いていた。長い赤髪を背後で束ね、ミスリルの槍を携えている。その姿勢は隙がなくどこか凛としていた。
今回このダンジョンに単独で潜ったのは、修練の為だ。夫であるヴェンデリンが新たな妻達を迎える事になり、気を利かせて旅に出たのである。
槍術家としてのイーナは、最近伸び悩んでいた。魔法戦士としては十分強くとも、人に教えるのには槍の腕そのものが大切である。だから実戦稽古として迷宮に潜る。
この迷宮は難度の割に報酬が渋い。だから冒険者好みの場所ではない。
(独り静かに自分を研ぎ澄ますのには、最適な場所ね。)
逆に言えば、それは何らかの危機に陥れば助けが来ない事を意味する。流石にヴェンデリンは探しに来てくれるだろうが、目撃者が少ないと苦労するに違いない。
(本当はルイーゼと来たかったけど、仕方ないか。)
ルイーゼは魔闘流の研究をすると言っていた。しかもあの様子では、何か当てがあるらしい。今回ヴェンデリンからはマンネリ防止を兼ねたとある約束を得ている。それを考えると、単独行動は都合が良かった。
「ひっ……! や、やめろ……!」
その時、通路の先から声が聞こえた。悲鳴である。
(こんな所に冒険者、それも一人で?)
イーナの感じる気配は一つで、後は魔物だ。イーナは先を急いだ。〈身体強化〉の魔法を用いて進む速度を速める。すぐに、現場に到着した。
魔物の群れに囲まれ、石壁に背を押し付けて震えている少年がいた。小柄で、男というよりは女の子にも見える顔立ち。泣きそうな大きな目が、必死に助けを求めてこちらを見ている。
(あの細腕で、よくここまで来たわね。)
イーナは逆に感心してしまった。少年の傍らには、打ち捨てられた採取籠と椅子がわりになりそうな足台がある。
(鉱石剥ぎか。きっと、私の後について入ったんだ。)
イーナはある程度気配を探れる。少年が目に見える距離なら、きっと気がついた。だが少年はイーナよりだいぶ遅れて中に入ったのだろう。
(私が魔物を倒してきたから、ここまで無事なまま来れた。そして私が戦ってる間に脇道から追い抜いたってところね。)
イーナは鉱石にはまるで興味ない。ミスリルは好きだが、鉱石を集めようとはしない。単独探索では重くなり、魔物に遅れを取りかねない。目の前の少年も、きっとそれで失敗したのだ。
(恐らくは探索済みで、数日は魔物が復活しないと思っちゃったか。)
イーナはため息をついた。関わりたくはなかった。だが、見捨てるほど冷酷でもない。自分にも関わりのある話なのだ。
「〈風〉よ、我が身を助ける刃となれ。『風斬槍』」
風属性の魔法を槍に纏わせ、一気に突きかかる。魔物は忽ち全滅した。
不可避の死を目を瞑って受け入れようとしていた少年は、急に周囲が静まり返った事に気がついた。恐る恐る目を開ける。そしてそこに、槍を携えた美女が立っているのを見た。
「助かった……ありがとう、お姉さん……!」
少年は立ち上がると、すぐにイーナの足元にひれ伏した。
「命を助けてあげたけど、それは大袈裟よ。帰れるならもう早く帰りなさい。ミスリルの鉱石は結構集めたのでしょう?」
イーナは鉱石の入った袋を見た。残されていた物なので、あまり品質は高くなさそうである。それでも良さそうなものもある。持ち帰れば、この少年には充分な稼ぎだろう。だが少年は立ち去ろうとはしなかった。
「あの、弟子にしてください! お姉さんみたいに強くなりたいんです!」
頭を地に擦りつけて、少年はイーナに請願した。熱のこもった声だ。だがイーナは、少年の細い肩と、ほとんど感じ取れない魔力の流れを冷静に見定めていた。そして才能がないと断定する。
「貴方には向いていないわ。無駄に命を落とすより、別の生き方を探しなさい」
少年に群がっている魔物は強くなかった。少年の傍らに落ちている棒切れでも、撃退出来そうなほどだ。それが最低限の立ち回りもしていなかった。つまり武の才能もない。
きっぱりとしたイーナの拒絶に、少年の顔が歪む。屈辱と憧れが混じった、どこか卑屈な眼差しだった。
「じゃ、ついて行かせてください。」
それでも少年は離れようとはしなかった。
「勝手にすればいいわ。どうせもうすぐこのダンジョンは制覇できる。それに、せっかく助けたのに帰りに襲われて死なれたら夢見が悪いものね。」
イーナの言葉に少年は目を輝かせた。既に彼の中で、命を救ってくれたイーナの存在が大きな憧れとなっている。
(強くて美しい、なんて素敵な人なんだ。そんな人の活躍を間近で見れるなんて、僕はとてもツイてるぞ!)
少年は足台と鉱石袋を担ぎ上げた。
「僕、ザラって言います。」
「イーナよ、短い間だけどよろしくね。」
イーナはスッと前に出た。この先も魔物は出るはずだ。今度はこの少年ザラを守りながら進まなくてはならない。
(ま、それもいい訓練になるか。)
単独より難度は跳ね上がるだろう。強化魔法もなるべく使わず、少年を守りながら槍の修行をする。そのやり方でボスを倒せれば、イーナも何か掴めそうな予感がしていた。
ボス部屋の前は、おどろおどろしい気配に満ちていた。ボス部屋の直前まで、イーナはザラを引きずるように歩いてきていた。すっかり腰が抜けて、使い物にならなくなったのだ。
魔物の数も増えた。今は完全に囲まれている。ボスを倒せば霧散しそうだが、少年と別行動を取れば忽ち食い殺されるだろう。イーナはため息をついた。
「あのね。怖いのは分かるわ。戦うのは引き受ける。でも、もう少し勇気を出せないかしら?」
「む、無理ですよう。」
少年が半泣きで叫んだ。イーナは少年の想像を超えて強かった。それも鬼気迫る強さである。その美しさと不釣り合いな、魔物とどちらが苛烈かという戦い方をする。正面から圧倒し、蹂躙する。見ている側は恐怖しか感じない。
魔物とて、数多く先程までより遥かに強い。イーナに助けられた時より、ずっと大きく数も多いのだ。少年はこの迷宮に立ち入った事を後悔していた。だが、イーナと今離れたら魔物の餌食と理解している。それでも、怖いものは怖い。
だからボスのいる重い扉の前で、ザラの足が完全にすくんでしまう。恐怖で膝が震えた。今は自分が自分の足で立っているのかどうかさえおぼつかない。
「……仕方ないわね」
イーナは周囲を警戒しつつ、槍を置いた。そして少年の顔に自らの顔を近づける。
「何を?」
「勇気の出る事をしてあげる。人には、言わないでね。」
悪戯っぽく笑うと、イーナは少年の唇に自らの唇を近づけた。情熱的な大人のキス。自らの口腔内に侵入した異物に少年は悲鳴をあげそうになり、すぐに陶然とした。
イーナの長い足が、少年に巻き付くように触れる。自らの股間で少年の股間を刺激するようにして、イーナは彼の昂りを感じた。
恐怖は上書きできる。今は極限の恐怖下にある少年は、生存本能から性的刺激に著しく過敏になっている。だから性欲を刺激してやる。上手く少年を興奮させたなら、後はそれを発散させて鎮めるだけ。ヴェンデリンの妻として愛欲に満ちた性生活を送る彼女なら、その対処は容易い。これで少年の恐怖はだいぶ弱まるだろう。
「これで少しは落ち着いたかしら? 覚悟を決めなさい」
イーナは少年をキスから解放すると、彼の震える手を優しく振り解く。地に膝をついた。
少年の前にしゃがみ込んだイーナは、少年のズボンの紐を解いた。そして彼の昂りを解放してやる。まだ小さな、少し未熟なものが露わになった。
イーナは一瞬だけ眉を寄せたが、すぐに柔らかな唇でそれを咥え込んだ。おしっこの味と臭いがしたが、迷宮では贅沢は言えない。
憧れの美女の温かい口腔が、少年の逸物を優しく包む。舌が丁寧に裏筋をなぞり、唾液を絡めながらゆっくりと前後する。刺激される初めての感触に少年は身悶えした。
「ん……っ、あ、出ちゃう……!」
ザラは声を殺して身を震わせた。恐怖が、急激に欲望に塗り替えられていく。射精の快楽は一瞬で訪れた。
どくどくという律動と共に、少年の腰が自然と前に押し出される。その動きに突き動かされるイーナの赤い髪。イーナは彼の吐精を拒まず、深く咥え込み受け入れた。髪から匂い立つ彼女の淡い香りが、少年の射精の満足度を高めていく。
やがてザラは、彼女の口内に吐精し尽くした。その時には、震えはもう治っていた。イーナは少年の吐精した物を静かに飲み下し、唇を手で拭うと立ち上がった。
「これでいいわね。じゃ、行きましょう。」
少年の目にはまだ涙が残っていたが、その足はもう震えてはいない。そしてその手は、武器代わりの木の棒をしっかりと握りしめていた。
ボスは難なく討ち取られた。
イーナの槍術は美しく、容赦がなかった。魔法を使わないので時間はかかったが、巨大な魔物は多くの傷から血を流し倒れた。そしてすぐに息絶えた。ザラも、立ち回りを間違えなかった。イーナが必ず助けを出したのだ。よくボスの動きを見ていさえすれば、イーナに張り付かれたボスが少年を殺せるはずがなかった。
第6話:美しき槍術家イーナ、その惨めな敗北と逆襲
──イーナの敗北──
帰路。
少年は再びイーナに弟子入りを懇願しながら歩いていた。二人の会話は、ダンジョンの中で話すには大きすぎる音だったのかもしれない。気がつけば大きな矛を構えた男が、二人の前に立ちはだかっていた。
その場所は迷宮の出口までは半分ほど、ちょうど折り返しとなる少し広めの洞窟だった。戦うには適した場所だった。まるでそれを知っていたかのように、隣の区画に通じる入り口に男が陣取っていた。鍛え上げた筋肉を誇る巨漢で、鉾の他に長い鎖を床に這わせている。それはイーナに、ひどく嫌な予感を抱かせた。
「武芸の求道者、ドルアーガだ。試合をしたい。俺が勝てば、お前の槍に加えてその体を貰う」
低く、確信に満ちた声。イーナは即座に槍を構えた。
「やれるものならやってみなさい。私に手を出せば、殺すわ。」
「ふふ、顔もいいが威勢がいい。気に入ったぞ、今度は長く楽しめそうだ。その威勢の良さが何日保つかを楽しみにしよう。」
ドルアーガは矛を構えると、楽しげに笑った。イーナは全く楽しくない気分である。ただ、危険を前にした本気の戦いに研ぎ澄まされていく自分を感じた。この先には、何か槍術家として掴めそうなものを感じる。
(それにしても、あの鎖はやはり奴隷を拘束する為よね。)
良く観察して見れば、巨漢が手にする首輪や腕輪にするだろう金属の輪もある。用意がいいという事は、過去にも何度かこの様な真似を繰り返していたのだろう。
「手慣れてるのね。初めてじゃないって言いたいんでしょう。」
イーナの声に、巨漢は楽しげに笑った。しかし邪悪な笑みである。
「ふふ、見抜かれたか。つい先日も、奴隷女を奴等の装備と共に剥ぎ取り屋に売り払ったところよ。こんなに早く代わりが見つかるとはな。」
迷宮はボスを倒した帰路に油断し易い。必ず通る場所に網を張れば、こうして疲弊した冒険者を捕まえられる。男は殺して装備を奪い、女は捕らえて犯し奴隷とする。買い手が来たら売り払い、必要な品を買い込む。奴にとっては、それが最適化されて無駄のないダンジョンライフなのだろう。
「ゆくぞっ!」
ドルアーガの矛は、イーナの予想を超える速度で振り下ろされた。ミスリルの槍をかざし、ドルアーガの矛を受け流す。イーナが攻撃の方向を逸らし、斬撃はミスリルの槍に沿って地を穿つ。
イーナはタンっと飛びすさる。ドルアーガが矛を引き戻す前に、鋭い突きを放つ。だがドルアーガは巧みだった。素早くイーナの攻撃を掻い潜ると、引き戻した矛を振るう。今度はイーナがバックステップで回避した。互いに距離を取り、睨み合いが続く。
(技量はほぼ互角。真剣勝負としては丁度いい相手。)
イーナはそう分析した。才能と反応はイーナ、経験と身体能力はドルアーガだろう。イーナのミスリルの槍は優れた武器だが、ドルアーガの矛も劣らぬ業物である。獲物を持った際の技量はほぼ同格である。つまりこれは、奥の手をうまく決めた方が勝つ。
二人は互いの位置を移動しながら、互いに打ち合った。槍は合わせるだけではない。素早く身を翻し、生じた敵の隙を突く。それでもなお、技量の近い二人は容易に決着をつけられない。
イーナは魔法槍を振るうべきか逡巡した。もう少しこのひりつくような真剣勝負に身を置こうか、悩んでしまったのだ。それはこれまでヴェンデリンの傍らという、支援してくれる者がいたからこそのイーナの隙である。対するドルアーガは孤独に慣れている。長丁場は不利と見て決着を急いだ。
ドルアーガの矛が唸りをあげる。その攻撃の矛先はイーナではない。二人の攻防の激しさに、身の置き所を無くして佇んでいた少年だった。
彼は本来もっと遠くにいた。しかし二人の攻防は、いつしか少年の近くにまで及んでいたのだ。それはドルアーガの作戦である。
(このままでは、この子は死ぬっ!)
咄嗟の判断で、イーナは槍を伸ばし少年を守ろうとした。それは気高い行為であったかもしれない。しかしドルアーガは易々と矛の軌道を変化させた。矛の全力を受けても、ミスリルの槍は折れない。だが不利な態勢の中、片腕で槍を伸ばしていたイーナの体が耐えられなかった。矛を振り下ろされた衝撃で、槍が弾かれる。それは狙ったかのように、ドルアーガの背後に突き刺さった。
(しまった!)
ミスリルの槍は、イーナが簡単には到達できない場所に刺さっていた。矛を携えたドルアーガという強敵を前に、槍を取りに行くのは不可能だった。だが、イーナは諦めなかった。己を高めるこの修羅場に果敢に挑みかかろうとした。
「……まだよ。決着はついていないわ。」
イーナは腰にさしていた短刀を引き抜く。槍はリーチが長い。だからこれは、懐に飛び込まれた際の備えである。
「ふん、そんなもので防げるかよ。」
イーナの不利を見透かしたかのように、ドルアーガが吠える。確かにこの短刀は、本来は魔物の皮や肉を剥ぐ為の装備だ。武器としては心許ない。が、大切なのは戦意であるとイーナは信じた。
「ゆくぞっ!」
裂帛の気合いと共に、ドルアーガの矛が振り下ろされた。その速さと威力はイーナの想像を超えた。ドルアーガの秘していた、奥の手の技である。
イーナはこれを受ければ即死すると直感した。回避は間に合わない。これまでのように短刀で受け流そうとする。だがこの短刀は、ミスリルの槍のようにはいかなかった。
短刀はイーナの手の中で砕けた。唯一の武器の喪失に、イーナが固まる。その隙を見逃すドルアーガではない。そしてこの技は、一撃で終わらない。続く連打をイーナは回避した。だがその次に振るわれた矛は、彼女の足に直撃した。続く攻撃は庇った腕ごとイーナの身体を吹き飛ばした。そして矛は唸りをあげると、イーナの側頭部を強打する。その一撃はイーナの意識を刈り取り、その身体は地に沈んだ。
「やったぞっ!」
ドルアーガは、天を仰ぎ快哉の声を漏らした。女を打ち倒し勝利する。これが彼の人生の喜びである。そして、この後はお楽しみが待っている。
ドルアーガは持参の鎖を拾い上げた。そして意識を失ったイーナの両手両足に、金属の輪を嵌めて拘束する。全てが正しく収まった事を確認すると、立ち上がる。そして少年を振り返り、声をかけた。
「で、お前はどうする?」
「えっ」
問われたザラは思わず後退りしていた。それまで逃げたらすぐに殺されそうで、動くに動けなかったのだ。
「俺に従えば、だ。殺さないでおいてやる。それどころか、働けば良い思いもさせてやろう。」
そう言ってドルアーガは、意味ありげに意識を喪失したイーナを見た。今のイーナは力無く床に横たわっており、ゾクリとするような倒錯的な色気がある。
「この女はもはや抵抗できん。お前にも、好きに抱かせてやってもいい。」
「そ、そんな事……」
続く言葉は、『できるはずがない。』か。また或いは、『していいのか』だっただろうか。それがどちらの言葉なのか、少年自身にも決められなかった。
「俺はこの女を隠し部屋に連れ去り、犯して楽しむ。戦闘で沸る血を鎮めることができるのは、女を抱くことだけだからな。で、お前はどうする?」
芝居がかった口調で、ドルアーガは問うた。
「この女とやれれば、極楽を味わえるだろう。俺に殺されれば、あの世行きだ。どちらでも好きにしろ。迷う必要もないと思うがな。」
それでも少年は即答できなかった。イーナには命を救われた恩がある。それ以上に色々なことがありすぎて判断がつかない。それでも、時間が経つにつれてイーナが本当に意識を喪失しているのが分かった。ならば、これはチャンスかもしれない。
悩む少年を見て、ドルアーガは説得の言葉を変えた。
「そうだ。強くなりたいんだろう?」
「……どうして、それを?」
少年の目が訝しむように細くなり、すぐに理解した。直前まで、彼とイーナは弟子入りの話をしていた。何度懇願しても、イーナは頑として弟子入りを許さなかったのだ。あの会話を聞かれていたかは、ドルアーガは事情を知っているのだろう。
「俺がお前を鍛えてやろう。俺を師として、弟子になれ。そうすれば、お前はこの女の分前だけでなく、力も得るぞ。」
「力を……。」
それは魔物に抗えず虐げられてきた少年の、それでも安全な生活を選べずに迷宮に忍び込んだザラの願いだった。
「分かった。いや、分かりました。僕を弟子にしてください。」
少年は土下座した。殺されるなら、命乞いはしないと決めていた。しかし強くなれるなら、この頭を下げるのは苦痛ではなかった。
(それに、僕もイーナさんを抱けるんだ。)
イーナはたった一度、口で軽く彼のモノをしごいてくれただけだ。それには深く感謝している。多分あのお陰で、彼は生き残れた。
(口でするだけでも、あんなに気持ちいいんだ。イーナさんを抱けたら、きっと物凄い。)
渇望と肉欲、その二つに身を焦がしていた少年はこうして恩人を裏切った。
「ふん、いいだろう。その槍を担いでついてこい。」
ドルアーガは満足気に笑うと、矛を片手に持ち鎖で縛られたイーナを担ぎ上げた。イーナのミスリルの槍を拾い上げ、後に付き従うのがザラである。二人は脇道を辿り、迷宮の奥深くへと姿を消した。
──凌辱──
隠し部屋はダンジョンの深部にあった。それでいてボス部屋とは方向がまるで違う。これではとても探索の手が届きそうにない。
白い石が床に敷き詰められており、元はなんらかの施設があった遺跡のようだ。端には今も水を湧き出す泉があり、その水は少し下で池となっている。その池の透明度に、ザラは驚いた。まるで曇りがないのだ。
「魚もいるぞ。たまに捕まえようとするが難しい。お前を連れてきた理由の一つだ。」
ドルアーガはザラにそう声をかけると、肩に担いだイーナをドスンと投げ落とした。イーナが苦悶の声を上げる。もしも気絶したふりをしていても、今ので意識がある事がドルアーガに分かってしまった訳だ。
ドルアーガは、イーナの様子をまるで気にかけていなかった。ミスリルの槍をザラから受け取ると、壁の高い位置に下向きに深く突き刺した。その槍の上に、イーナを捉えた鎖を渡らせる。そして鎖を引いて、槍を支点にイーナの身体を吊り上げた。
「ふむ、こんなものか。」
ドルアーガはイーナを好みの高さになるよう調節する。そして床に余った鎖を止めるべく、足で杭を地に打ち込む。白い床石の隙間を縫うようにして、イーナを捕らえた鎖が固定される。四肢を宙吊りにされたイーナは、仰向けでその肢体を開くようにされていた。
「さ、お楽しみの時間だ。」
ドルアーガは、宙に吊るされた美女の服を手で切り裂く。イーナが悲鳴を上げるが、容赦するはずもない。むしろその悲鳴こそが、彼にとり最上の欲望への刺激である。
ドルアーガは服を脱ぎ捨てると、イーナの脚を大きく開かせた。そして自らの太い指を二本、イーナの膣内に差し入れた。
「…いや。」
頭を強打した為だろう、未だ朦朧とした意識でイーナが弱々しく抵抗をする。だがドルアーガは、容赦なくイーナの秘所を刺激した。一見手荒なその指は、慣れた様子で女の官能を刺激する。
卑猥に吊るされたその状況か、襲われている恐怖からか。或いは逃れられぬその運命に対する防御反応からか。イーナの身体は官能を刺激され、甘く疼く。
「見ろ、今のこいつはただの穴に過ぎん。」
傲岸にそう言い放つと、ドルアーガは自らの屹立したものをイーナに押し当てた。少年は茫然と、自分の新たな師がイーナを犯そうとする様子をただ眺めていた。
太く熱を帯びた逸物が、少年の目の前でイーナの秘裂に差し込まれる。イーナは赤毛を振り乱して呻いたが、それは男達の欲情を誘う効果しかなかった。
ドルアーガの男根は、ゆっくりとイーナの中に沈み込んでいく。イーナがどれだけ抵抗しようと身をよじっても、鎖に吊られた四肢はほとんど動いてはくれない。ただ開かれた手脚の付け根が震え、男の動きに合わせて揺れるだけだった。
今イーナが感じているのは、己の最も秘めた大切な場所が晒され汚されている感覚。そこは目の前の男に容赦なく押し広げられ、男を喜ばせる為の単なる道具と化していた。
「くっ……あ、あぁっ……!」
イーナの唇から、抑えきれない声が漏れた。その声はイーナの感じる苦痛と快楽の両方を内包していた。
「こんな美しい女を抱くのは、初めてだ。」
ドルアーガは満足げに喉を鳴らし、腰を一気に沈めた。根元まで柔らかい肉が無理やり押し広げられる感触に、イーナの背が反る。だがその内壁が熱い異物を締め付け、男に妙なる快楽の疼きをもたらした。
「いい締め付きだ。強い女ほど、締め付けがいい。」
ドルアーガはゆっくりと腰を動かし始めた。その体つきは、壊れ物を扱うように妙に優しい。吊られたイーナの身体が、彼の抽送に合わせて微かに揺れる。
鎖が金属音を立て、白い石の床にイーナの汗と涙が滴る。イーナは歯を食いしばり、視線を逸らして耐えようとしていた。だがドルアーガは彼女の頭を掴み、無理やり己を直視させた。
「さあ目を開けろ。俺に犯されている現実を、見てちゃんと受け止めろ。」
己に覆い被さる巨漢。その男が吊るされている自分を立ったまま犯している様子。太いものが自分の中に出入りする様子を、イーナは直視させられる。それは揺るぎ無い程に圧倒的な現実で、イーナを絶望の淵に突き動かす。
男の抽送に突き動かされて、イーナの赤い髪が振り乱れる。押さえようとしていた声が、抑えきれずに漏れ出た、快楽も苦痛も恥辱も、その全てを内包してイーナは喘ぎ声を漏らした。
「……ヴェル、ごめんなさい。」
イーナの頬を伝う一筋の涙。彼女の反応に満足したかのように、ドルアーガの抽送が徐々に激しくなる。ドルアーガの先端が下りてくる子宮口を執拗に叩くようになると、イーナの喉から抑えきれない甘い吐息が漏れ出す。今この瞬間、与えられた快楽はイーナにとって唯一の逃げ道である。だからそれは、イーナという女性にとっては同時に生き地獄の入り口だった。
望まぬ相手に強制される快楽。見も知らぬ男に身を任せる嫌悪感。だがイーナの膣は彼女の思いに反して収縮し、彼女を犯す男の逸物をより深く咥え込む。二人の股間からは泡のような愛液の混合が漏れ出て、ドルアーガの太ももを伝って床に落ちる。
「んっ……はぁっ、や、やめ……っ」
「俺はまだまだ余裕がある。もっと啼かせてやろう。」
ドルアーガはイーナの腰を両手で掴み、より的確な刺激を加える。これまでは鎖が、突く力の半分を押す力に変化していた。しかし腰を掴まれれば、押す力の大半はイーナの中に留まる。より深く、より強い刺激。それを受け止めるイーナに、もはや余裕はない。残されているのは、雄に従う雌としての本能だけである。ただ男の体の命じるままに、イーナの身体は官能の喘ぎを奏でられ続けた。
少年は圧倒されていた。初めて見る、大人の男女の繰り広げる全力のセックス。同じことが自分に出来るとは思えない。それでも、あれだけ深くイーナを抱けるのなら。彼は自分の持つ何を差し出しても悔いはなかった。
美しく憧れな存在だった女性が、今はより強い男に抱かれる単なる雌に成り果てていた。好きでもない男の行為に、ただ従うしかない哀れな存在。それは力に対する恐怖と共に、たまらない興奮を少年に与えた。
ザラの股間は硬くより熱を帯び、先端はすでに滴を滴らせていた。いつもなら自分で自分を慰めているところだ。だが今この瞬間は、犯されているイーナから目が離せない。
そして彼の新たな師匠は約束してくれたのだ。ザラにも、この美女を抱かせてやると。だから少年は何も見逃さないように目を懸命に見開きながら、大人しく己の番を待っていた。その前に自分の子種を手で散らす事だけは、断固としてしたくなかった。
(イーナさんの中に、僕も自分のものを突き刺す。そうでなけりゃ終われない。)
哀切に満ちた様子で、ドルアーガに犯されたイーナが喘ぎ泣く。二人の動きがさらに激しく、余裕のないものになった。きっとイーナの膣は、猛烈な締まりを己を犯す男に与えているのだ。果たしてそれは、イーナが男女の道ではドルアーガに圧勝した事になるのだろうか。貞操を奪った男を、女の身体が受け止め、もてなしな愉しませてしまう矛盾。イーナの興奮に煽られて、ドルアーガの最後の数突は酷く性急なものだった。この男は、イーナの名器に圧倒され焦っているのだ。
「出すぞ」
短くそう告げると同時に、男は女に射精させられていた。ドルアーガの熱い濁流が、イーナの子宮口を押し広げるように注ぎ込まれた。どくどくと脈打つたびに、イーナの内部が強制的に押し広げられた。霰もない格好で全身を震わせて、イーナは男の吐き出す欲望のはけ口を務める。
女を犯した男の勝利か、或いは女の身体に絶頂させられた男の敗北か。交合の勝者がそのどちらであるにせよ、イーナの子宮は収縮した。イーナの膣内は、ドルアーガの熱い迸りを受け止めさせられてしまっている。望まぬ相手の子種が、彼女の最奥にじわじわと広がっていった。
彼女は快楽と恥辱に悶えながら、膣内に男の放った熱が広がっていくのをはっきりと感じていた。その現実に、イーナは歯を食いしばりながら耐えていた。こうして初めてのまぐわいを済ませた男と女は、激しい試合を終えた直後のように互いに息を整えあっていた。
ドルアーガは、イーナの膣内から己の分身をゆっくりと引き抜いた。白い濁りが、開かれた秘裂からとろりと溢れる。イーナを征服した証を見て、ドルアーガは満足げに笑った。
「実に、いい女だ。飽きるまでは、何度も何度も抱いてやるぞ。」
イーナもまた息を弾ませていた。今も彼女の意識ははっきりしている。だからこそ、この状況は彼女にとって余計に残酷だった。彼女は自分の視線を天井に逃し、現実を無視し矮小化しようと試みていた。
ドルアーガは手を伸ばし、そんな風に現実から目を背けているイーナの秘所に再び指を突っ込んだ。
「くっ」
恥辱と苦痛に満ちた声で、イーナがうめく。だがドルアーガは気にする事なく、秘所から彼の放出した子種を掻き出した。そして混合物を池に投げ捨てると、少年を呼んだ。
「こい、お前の番だ。」
イーナの目が、キッと少年を射抜く。自分の置かれた今の状況が分かっていてもなお、それは受け入れがたかった。ドルアーガとの事は、勝負の上の事ではある。だがこの少年は、彼女よりも弱い。しかも、彼女は少年の恩人ではなかったか。
「ダメよ。」
そう言い放ったイーナの顔を、ドルアーガの平手が叩いた。
「俺が女を黙らせておいてやる。一度抱いておけば、戯言も言わんさ。だが、そうだな。」
ドルアーガは地に鎖を固定していた杭を抜くと、少年に手伝わせてイーナの体勢を入れ替える。仰向けから、うつ伏せに。イーナは尻を突き出した格好で、鎖で吊るされていた。その足は爪先立ちとなり、己の体重を自分の足で支えているかどうかも怪しい。
だが足の鎖は再び地に固定され、足を背後には伸ばせなくされている。少年が背後からイーナに取り掛かれば、絶対に抵抗されずに彼女を犯せる。そんな絶妙な配置だった。
「これでいいだろう。」
ドルアーガは満足そうに、イーナと少年を交互に眺めた。イーナは恥辱に満ちた表情を、悔しそうな顔で懸命に心の中を押し隠している。
「あの、師匠。僕には少し高さが……。」
少年は躊躇いがちに指摘した。少年より背の高いイーナが、爪先立ちにされている高さだ。ドルアーガには最適でも、少年には高すぎた。彼の逸物は、特別長いというわけではない。まず確実に、少年はイーナに挿入などできない。
「大丈夫だ、それを使え。」
ドルアーガは少年の荷物の中の、木の棒の横に置かれた足台を指し示した。これは鉱石を選別する際の椅子代わりに使用していた箱型の足台だが、壁面の少し高い鉱石を抜き取るのにも使える。そしてその上に立つと、少年とドルアーガの腰の高さはかなり近くなる。つまりそれは、少年がイーナを犯すのに最適な環境を提供してくれていた。
「これで支度ができたぞ。お前は背後からだ。」
ドルアーガはそう言い放つと、イーナの正面に回り込んだ。
「では、俺は女の口で楽しもう。……お前が汚したものを、口でキレイにしてもらおうか。だが、まずこれが必要だな。」
ドルアーガの取り出したのは口輪である。それは金属製の輪に、革のベルトがつけられている。
「これを取り付けるぞ。無駄な抵抗はするなよ。俺がお前に噛みちぎられるようにする為の用心よ。」
イーナにそう言い聞かせながら、ドルアーガは金属の輪をイーナに含ませて革ベルトで固定した。
「舌と唇だけを使え。綺麗に舐めとるんだ。」
言葉と共に、ドルアーガの男根がイーナの口腔内に押し込まれる。半勃ちのそれは、イーナの刺激により見る間にその精力を回復させていた。
「どうした、楽しみたいんじゃなかったのか?」
いかにも忘れていた、という様子でドルアーガは新たな弟子に声をかける。
「ほ、本当に。」
本当にそんな事をしていいのか、という気持ちをその短い言葉に乗せて少年は師匠に問うた。
「ああ、遠慮するな。この女の口は今、こうして俺が塞いでいるんだからな。気にせず女を使え、もはやただの穴だ。」
少年は足台に乗り、イーナの体に向き合った。
「早く入れろ。動くのはゆっくりでいいが、奥までしっかりな。」
少年の男根は、まだ未熟で少し小さかった。それでも、それは全力でそこにあると自己主張を繰り返していた。角度のキツいそれが、イーナの開かれた秘裂に押し当てられる。イーナが身悶えした。それは拒否の反応なのか、或いはこれで道を踏み外す少年の身を案じてなのか。
イーナの願いはなんであれ、ドルアーガはそれ以上彼女が動かないようにイーナの顎を掴んだ。
少年の男根の先端に、イーナの放つ熱と湿り気が伝わる。少年は震える手でイーナの腰に手を回して自身を支えた。そして目を瞑ると、ゆっくりと己の分身をイーナの秘所に沈み込ませた。
「あっ……あ、熱い……」
予想外の熱と、絶妙な湿り具合。そしてキュッと締め付けるイーナの膣の感触。その全てに、少年の心は深くとらえられた。遮る物のない粘膜と粘膜の接触は、イーナとザラの二人の関係を永遠に変化させた。
雄が雌を犯す。それは全ての生物に共通する摂理である。雄の持つその唯一の特権は、少年の心を今自由に解放する。
目の前にはイーナの豊かな尻と白い背中が広がり、前に立つドルアーガはイーナの口を犯していた。
前に手を伸ばす、そこには揺れるイーナの乳房がある。下に手を向ける。自らの肉棒が刺さるその少し前に、柔らかなイーナの陰毛が広がっている。その中にはイーナの小さな突起がヒダの中に埋もれており、少年は指でその突起を摘んでみた。イーナの反応が変化する。その突起を摩り、彼女に挿入しながら少年は変化するイーナの反応を楽しんだ。
「おい、動かないのか。もっと腰を動かせ。」
ドルアーガの叱咤に似た激励。少年が慌ててイーナの腰に両手を回すと、懸命に腰を動かし始めた。イーナとの交合はこれで終わりというわけではない。彼らのこの新たな関係は、まだ始まったばかりだ。二人はこれからイーナを所有し、いつでも自由に使うのだ。ならばこれは、単なる初めての一回でしかない。貴重な機会ではあるが、早く済ませるべきただの通過点だ。
少年はイーナの女の反応にまだ少し戸惑いながらも、徐々にリズムを掴んでいく。最初は浅く、次第に深く。イーナの中が熱く締め付けるたび、少年の吐息が荒くなる。
「いい……この女とても気持ちいいです、師匠……」
その言葉に、イーナの眉がわずかに歪んだ。彼女が助けた少年が、今はその彼女の中に子種を放つべく懸命に腰を振っている。その事実が、痛みとは別のところで彼女の心を深く抉った。
だがイーナの心に反して、彼女の身体は別の動きをした。身体は迎え入れた男を咥え込み、快楽を与えて持て成そうとしたのだ。そしてただひたすら全力で、少年の男根から彼の与える子種を絞り尽くそうとする。その為に彼女の下半身はその全ての能力を解放し、少年を深く刺激していた。
イーナの膣のもたらす感触に、少年は引き込まれた。もはやこの欲望を止められない。止められる筈がない。動き方を覚えた少年の動きが徐々に激しくなる。己の快楽の為、彼はただひたすらにイーナを犯す速度を加速する。
バターの塊の中に熱いナイフを突き刺すように、彼は己の肉棒でイーナを何度も貫いた。やがて彼は小さく悲鳴を上げた。それは痛みに似た強い刺激、初めて女に挿入したままでの絶頂を感じたのだ。
少年は本能の命じるまま、律動と共に体を前後させた。そしてイーナの中に己が子種を刻みつけるべく、より深く腰を押し出した。熱い精が、未熟な少年の腰の動きとともにイーナの最奥へ迸った。どくどくと脈打つたびに、少年は「自分がこの女を汚している」という征服感に打ち震えた。
遂に少年に完全に犯された事に、イーナもまた反応していた。雌としての官能が、抑えようもなくイーナの心を惨めさの極致へと突き落とす。だがそれもまた新たな官能の入り口であり、イーナは少年の子種と共にその被虐的な快楽を脳に刻み込まれる。
自分より弱い者に裏切られ、犯される。いいように弄ばれ、蹂躙される。そんな己の身の不甲斐なさと哀れさ。文字通りの性奴隷として力無き者に扱われる恥辱。それさえも官能の種になり得ると、イーナは今ここで分からされてしまった。少年がイーナの中に呑み込まれていく中で、イーナもまた少年により快楽の果てに導かれていた。
少年の初めての膣内射精が、イーナの内部を熱く満たした。それはイーナやドルアーガの愛液と混じり溢れ出して、イーナの腿を白く汚した。
初めてをイーナの中に射精し尽くした少年は脱力し、吊るされている彼女の体に崩れるように寄り掛かった。それでもまだ、彼の肉棒はイーナの女性器を貫いている。イーナの秘所もまた、少年の肉棒を深く咥え込み離さなかったのだ。
「初めてにしては上出来だ。だがどけ、次は俺の番だ。」
ドルアーガは果てている少年を押しのけると、すぐに自身のものをイーナの中に押し入れた。イーナがくぐもった悲鳴を上げる。少年が果てた時、イーナもまた何度目かの絶頂を迎えさせられていた。
それで酷く敏感になった秘所を、より大きく巨大な肉棒が襲ってきたのだ。今のイーナには、強烈すぎる刺激だった。少年とドルアーガの体格差。それが思わぬ落差となり、イーナの中のまた新たな別の官能の扉を開く。
ドルアーガは容赦なく腰を振り、イーナの子宮口を何度も叩く。イーナの内壁は敏感に反応した。もはや抑えきれずにイーナの喘ぎ声が、口輪を嵌められたその口から漏れ続けた。
「んあっ……あ、あぁっ……!」
すでに二度も出された後の敏感な最奥に、熱い精が容赦なく叩き込まれた。ドルアーガの逸物がどくどくと脈打つたびに、イーナの内壁が痙攣する。もはや彼女の意思とは関わりなく、その腰が快楽に反応して大きく跳ねる。
「よしいくぞ、受け止めろ。」
「いやっ、もういやっ。ヴェル、ヴェル。お願い、早く助けて。」
イーナは男の射精を逃れようとするかのように動いた。これ以上の刺激には、彼女の身体だけでなく心が耐えられない。だが、逃れる事は不可能だった。ドルアーガはイーナのその動きを、串刺しにするかの如き抽送で押さえ込む。
深く官能を刻まれたイーナの身体は、男の放つ奔流から逃げることも拒否することもできず、ただ放たれた男の欲望を受け止め咥え込む。そして吐き出された白い子種を、イーナの膣は貪欲なまでに子宮の中へと呑み込み続けた。
その日から数日が、ほぼ同じような日常が繰り返された。食べる時と眠る時そして師弟として鍛錬に励む時以外は、二人の男のどちらかはイーナの体を楽しんだ。
男達は果てると、泉でその身を清めた。イーナにその贅沢は許されなかった。男達は、指で秘所から性液を掻き出して新たに挿入を繰り返すだけだったのだ。
流石に汚れたまま放置するのは、イーナの女らしさの濫用である。夕方には、ドルアーガは少年に命じて水桶でイーナの体を清めさせた。どうせその後で激しく犯されるのだが、綺麗に水を弾くイーナの肌は男達を楽しませた。
少年は、イーナを何度も抱いた。飽きることを知らなかった。ベッドもない迷宮の片隅で、ドルアーガの女を吊る技術は精緻を極めていた。少年は知らなかったが、或いはそれはベッドで女を抱く以上の濃厚な男女の結びつきを可能にしていたのだ。
彼らを邪魔をする者は誰もいない。眠り、食べ、女を犯す日々。そんな中で、少年はイーナの身体の反応から女体の神秘を学習していた。
最初はイーナに対して、ザラも欲望だけでなく恩義と共に恐怖という感情も抱いていた。だが今は、イーナを己の所有物とみなすに至っている。その概念こそ、少年を激しく欲情させた。それは彼が遂に手に入れた、完全なる自由だったのだ。
ドルアーガが泉で火照った身体を冷やす間に、少年は鎖に吊られたままのイーナにそっと手を伸ばす。乳房に触れると、イーナの体が小さく震えた。
「……やめて」
「ダメだよ、イーナさん。僕はしたい時に、イーナさんとする事が出来るんだから。」
イーナの拒絶の声はない。ただ黙って諦めたように、彼女は沈黙を選んだ。
少年はイーナの秘裂に指を這わせ、すでに何度も男達に犯された秘所を優しく弄る。イーナは歯を食いしばり、少年からそっと視線を逸らした。
それでも、少年の指がイーナの秘所の内側に忍び込むと、彼女の内壁が絶妙の締め付けを少年の指にもたらした。イーナの反応する箇所を覚えた少年が、的確にイーナの官能を高めていく。
イーナの膣は少年の指をその意思に反して締め付け、イーナの口からは微かに甘い吐息が漏れる。この美女が乱れて秘所を濡らすその仕草に、少年の欲望もまた掻き立てられた。
「今、イーナさんの中に入れたらさ。絶対に二人とも気持ちいいよね。」
イーナの返事はなかった。ただ顔を伏せて、切なげに身体を揺らしている。少年はそのまま静かに彼女の中に押し入り、ゆっくりと腰を動かした。
少年がそうするのを待ちかねていたかのように、イーナがより深く大きな喘ぎを漏らす。或いはそれは、また犯されてしまったという悲憤の唸りなのか。
ドルアーガが暫し離れている今、この瞬間はザラがイーナを占有しているささやかな独占の時間。ドルアーガというノイズがなく、イーナの反応が少年にはより詳細に伝わる。
赤髪を揺らすイーナの横顔は、陵辱を繰り返された今も変わらずに美しかった。そしてザラの男根がもたらす快楽の動きに、そんな綺麗なイーナが懸命にその秘所の締め付けでいつも応えてくれる。それは少年に幸福感と共に、常に小さな征服感をもたらしていた。
イーナの膣内に射精する瞬間、少年はイーナの首筋に顔を埋めた。そうやって彼女の香りに包まれて、少年は自らの所有物に満足した。熱いものが再びイーナの最奥に放たれた。少年に犯されたイーナは腰を振るわせて、ただ小さく喘いだ。
「イーナさん、ありがとう。今日の具合も最高だ。」
イーナの返事はない。ただ彼女の体は少年の欲望を受け止めて、その証として微かに痙攣していた。そのあるべき姿に、少年は深く満たされた。少年はイーナと共に完璧な日々を過ごし、かつては憎んだこの世界に深く満足をしていた。
──結末──
ドルアーガは、少年にイーナの身体を泉で洗うように言いつけた。流石に、水桶で洗うだけでは彼女の清潔や要素を保てなくなっている。垂れ流しの汚しっぱなしでは、イーナを抱く上で限度が訪れていたのだ。
イーナは、数日が経過した今ではすっかり反抗心を見せなくなっていた。少年もまた、イーナを物として扱う事に慣れきってしまっていた。
ドルアーガが岸辺に鎖を打ち込み、口輪を外したイーナを泉の中で自由にさせる。
「見張っておけ。油断はするなよ。」
ドルアーガは弟子にそう伝えると、イーナに向き直った。
「コイツを人質にしようとしても無駄だぞ。俺は気にしないからな。」
そう言って、いいジョークだとでも言うように少年に笑いかけた。ドルアーガは少年が殺されても多分気にしないのだろう。その雰囲気は、イーナにも少年にも伝わった。
ドルアーガは泉から離れた。イーナに身体を洗わせている間に、彼女を拘束していた場所を掃除するのだろう。武器がなければ、イーナが少年を倒したとしてもドルアーガに勝てるはずがなかった。
「ねえ、この鎖を外してくれないかしら?」
泉の中で身を清めながら、イーナは監視役を務めている少年にそう声をかけた。少年は一瞬考えてから、首を横に振った。
「ダメだ。」
師匠は怖い。イーナが勝てない以上、師匠を敵に回せる筈がない。だがそれよりも大きな理由が他にある。
「アンタを、まだ抱き足りないんだ。これくらいで俺達の欲望が収まるはずがないだろう?」
笑ってそう言いながら、少年はこの後を思って股間を熱くした。もう食料は残り少ないが、後少しくらいはこの場にいられる。人のいる場に出るときにどうするか。魔獣の肉は、流石に美味しいとは言えないのだ。
少年だけ食糧の買い出しに出る。それがきっと一番いいだろう。たらふく食べて師匠が満足したら、またイーナを長々と少年一人に使わせてくれる筈だ。
「そう、なら仕方ないわね。巻き込まれた気の毒な子なら、助けてあげようかと思ったのだけれど。」
「……なんだって?」
イーナは何か場にそぐわぬ発言をしていた。だから少年は、彼女に意図を問い返した。手にしているこの木の棒で、彼女を叩く方がいいだろうか?
ドルアーガの指導のお陰で、少年の体には肉がつき始めている。彼は武術より、肉体強化に重きを置いていた。少年の身体は引き締まり始めている。最初に魔物に襲われた時より、今の彼は格段に強くなっているはずだ。
「〈風〉よ、我が爪に力を授けよ。」
イーナの長く伸びた爪、その周辺に風の渦が巻き起こる。それは魔法だった。
「そんな、魔法が使えたのか!」
少年は慌てた。慌ててイーナに駆け寄り、彼女が何かしようとするのを止めようとする。しかし彼女の爪は、既に彼女を拘束する鎖を破壊していた。それは少年には、ほぼ一瞬の出来事として体感された。
(これ、魔法で鍵穴を破壊したんだ!)
イーナの両手が解き放たれ、鎖が泉に落下する。少年は彼女を縛る鎖を引っ張る。こうすればイーナは足を取られ、水の中に転倒するはずだ。そこを握りしめた木の棒で叩けばいい。しかし、少年の思い描いた通りにはいかなかった。この少年の攻撃は、イーナに回避されたのだ。
「まさか、そんな。」
イーナは目にも留まらぬ速度で、既に足の鎖を破壊していたのだ。少年には、手の鎖の破壊を優先するように見せていた。意図的に手の鎖の破壊に時間をかけて、足の鎖の状態から少年の目を逸らしていたのだ。
(僕は、騙された)
イーナの知略に、少年はほぞを噛む。だが、状況はこれ以上悪くなりっこない。イーナには、師匠に勝てるような武器がない。
「自由の身になれたって、武器もないのに師匠に勝てるわけない。」
そう口にしながらも、少年は一つの着想を得ていた。イーナは前回、魔法の力を使わずに敗北したのだ。
(もしも魔法の力を使っていたなら、きっと勝利の可能性があるんだ。だからこそ、勝てる実力をこれまで隠していたんだ。)
「さあ、それはどうかしらね?」
イーナはニコリともせずにそう告げると、その細い腕を振るった。彼女が掴んでいたのは先ほどまで彼女の身を縛っていた鎖である。鎖は少年のこめかみに直撃し、失神した彼は岸辺に崩れ落ちた。少年の刹那の思考は、そこで停止した。
「さ、リベンジマッチはこれからね。」
イーナは目をつけていた木の棒を拾い上げた。それは少年が棍棒がわりに魔物に振るっていた、あの棒である。鎖から抜け出しただけでは勝機がない。今のイーナには、ドルアーガを打ち倒す武器が必要なのだ。
「これで、槍の代わりが手に入ったわね。」
それはおあつらえ向きの長さだった。なかなか太い立派な木の棒。放置していれば薪にされていたかも知れなかったが、今はこうしてイーナの手の中にある。
単なる棒では鋼鉄の槍には勝てない。それは自然の摂理である。だが、イーナには『身体強化』と『属性槍術』の魔法がある。肉体を強化し、イーナが槍と認識する対象を強化する魔法だ。
「『風斬槍』」
イーナが魔法を解き放つ。棒の先端が風に包まれた。この状態の槍は、硬い岩さえも斬り裂ける。木の棒の先端でさえ、それは変わらない。爪に魔法を宿したのは身体強化と組み合わせたその応用だが、こちらは持続時間は極めて短かった。魔力の消費が激しすぎるのだ。しかし槍の強化である『属性槍術』は、何時間だって続けられる。
「さ、これで武器の用意はできた。」
イーナが気配を感じて見上げると、ドルアーガがそこにいた。異変を察知してやってきたのだ。
「再試合の挑戦よ、なんとしても受けてもらうわ。」
イーナが挑発気味に言い放つ。その目は鋭く、復讐の意欲に燃えていた。
「望むところだ。性奴隷女として、躾直してくれるわ。片足と片腕、失うのはどちらがいい?」
「やってみなさいよ。やれるものならねっ!」
少年が目を覚ました時、猛烈な痛みが下腹部を襲っていた。それは耐えられない程の激痛だった。そして見上げると、先端が燃え盛る槍を持ったイーナがそこに立っていた。
(イーナさんに何かされて、僕は起こされたのか。)
イーナは、怒りと憎悪でまるで燃えているかのようだ。その鋭い視線は、迂闊に動けば即座に殺すと少年に告げていた。暫く黙って少年を見下ろしていたイーナが、長い沈黙の後で遂に口を開いた。
「貴方を、殺さないでおいてあげたわ。」
それはさも、恩を与えたかのような口ぶりだった。確かに少年や師匠の所業を考えると、イーナがそう考えても無理はないのかもしれない。
少年は賢明にも口をつぐんだ。『あんたも楽しんだじゃないか』などと口にしたら、文字通り今度は胴体から頭がお別れする筈だ。実際、イーナの背後には首を飛ばされた彼の師匠の身体が見えていた。
「もう二度と、悪さをしたいだなんて思わないようにしておいたわ。ちょっと可哀想だから、完全に男をやめるかどうかは自分で決めさせてあげる。」
イーナの言葉に少年はうめいた。自分の状態と照らし合わせて、その意味を理解したのだ。手が恐る恐る自らの下腹部を弄る。逸物は無事だ。まだある。しかしその下の、あるべき二つのものがどちらも無かった。
「傷は焼いておいた。薬を塗れば、死なないでしょうね。あれだけの事をしたのに、この寛大な処置。感謝してよね。」
赤毛を振り乱しながら、イーナが去り行く。そしてふと立ち止まり、振り返った。
「これは正当な報復よ。でも余計な事を言えば、私が必ずこの手で殺してあげる。それにね、私の夫はヘルムート王国では屈指の権力者だから。王様とも知り合いなのよ。」
そう言い捨てて立ち去るイーナを、少年はただ呆然と見送っていた。
──後日談──
二年と少し後、少年は領都の繁華街にいた。今の仕事は酌夫である。
(男でも、酌夫が務まるのか)
何も知らない少年には驚きだった。男性としての機能を部分的とはいえ喪失した少年は、背も伸びず声変わりもしなかった。イーナにも認められた可愛い顔立ちと小柄な骨格。それは女の服を着てお酌をする酌夫の仕事にちょうどよかった。
「な、ザラはどうしてこの仕事をしてるんだ?」
馴染みの客、酔った冒険者が問いかける。髭も生えず、女にしか見えないザラは人気の酌夫だった。
「忘れちゃいましたよ、そんな昔のこと。それより、今日は二階に上がりますか?」
流し目をすると、馴染みの客は頷いてくれた。ザラは会話の受け答えも上手い。心は男だから、男の話題がなんでも通じる。それでいて、男が心に描く理想の女も演じられる。歳を取ればどうなるかは分からないが、今この瞬間は心の底から天職だとそう感じていた。
「お前、色っぽいよな。とても男には見えねえよ。」
「嫌だな、もう。昔好きだった人を真似してるんです。」
「昔好きだった女って、どうなったの?」
女の格好をしているのに女が好き、そう聞かされて客は興味を抱いたらしい。
「手酷い恋の火傷を負いました。治るのに、半年はかかりましたよう。」
ザラは正直にそう答えた。基本、会話は本音を語るようにしている。男は火傷の意味を誤解したのだろう。いや、正確には男がそう誤解するようにザラが単純化して伝えたのだ。
(なんだかんだいって、イーナさんこそが僕の理想の女性。)
ザラはうっとりとイーナの綺麗な顔を思い浮かべた。イーナと過ごした時間に覚えた彼女の反応や仕草。それを自分なりに再現するだけで、男たちは簡単にザラに夢中になった。
(イーナさんて、やはりいい女だったな。)
幸福な思い出に浸りかけていたザラは、すぐにイーナが最後に見せた目の色を思い返し身震いした。去勢されたのはその後の事である。次会えば、命の保証はない。
(ま、もう二度と会いたくなんてないけどね。)
ザラは目の前の盃を飲み干すと、頭を振ってイーナの事を脳内から追い払った。そんなザラの仕草を見定めて、これは本当の話だと馴染みの客も思ったらしい。
「女に振られたから、男の理想の女を演じてるってか。よくできてるねぇ。」
嘆息しながら、男はザラに続いて自分の盃を干した。そんな馴染みの客に、ザラはしなだれかかった。正直、こういう動作は得意だ。指先を、相手の顎にそっと這わせる。
「私も、お兄さんみたいにカッコよく生まれたらさ。こんなこと、してなかったな。」
男が、グッとその気になったのが分かった。この後の展開はもう読めている。ザラは男から搾り取れるだけの快楽を得て、更に報酬までも得る。男は満足して、また来ると約束してくれる。そうやって正しい場所で正しい役割を果たせば、この世はうまく回るように出来ているのだ。
『美しき槍術家イーナ、その惨めな敗北と逆襲』をお読みいただきありがとうございます。今作で「最も感情を揺さぶられた要素」について以下の選択肢から回答をお願いします。
-
イーナの美しさと敗北が抜ける
-
欲望に忠実な少年に共感
-
ドルアーガの手慣れた様子は常習犯
-
NTR性癖を植え付けられた
-
長文だけど分割しないのは正解
-
今作の形こそはNTRの神髄
-
イーナの大逆転にスカッとした
-
後日談の結末が秀逸
-
因果応報の物語構造が見事!