巨チンを見込まれて大人気アイドルのセックスケア担当にスカウトされました。 作:ユリイカ
生まれてこの方芸能界と呼ばれる界隈に一切の関わりがなかったタケルが、マネージャー業をすぐにこなせるはずもない。しかもマネジメントするのが天下のトップアイドル芹川セリナともなれば、素人が手出しできると思う方が不遜であった。
「君ねえ、アイドルの首に跡付けちゃダメだろ」
「面目ない……」
そしてマネージャーとして働き始めた初日、彼は早速怒られていた。相手は今日もブラックスーツに身を包み、黒いサングラスをかけたセリナの本来のマネージャー、佐藤レナである。
「私は全然大丈夫ですよ。ご主人様に愛されてる証ですから♡」
「キミもアイドルとしての自覚を持ちなさい。これから撮影なのに、下手な匂わせみたいなことするんじゃないよ」
のほほんと相好を崩すセリナにも、レナの矛先は向かう。
清純な黒髪少女の白いうなじに、しっかりと赤い痕が残っていた。タケルが昨日彼女にプレゼントし、その後取手代わり使い倒した黒革の首輪の痕跡である。
「虫刺されだと言えばいけませんか?」
「こんな奇妙な虫がいるならぜひ研究所にゆうパックで送りたまえ。とにかく、衣装とメイクと相談して徹底的に隠すしかない」
純粋無垢なイメージで鮮烈な光を放っているセリナには、一片の翳りさえも許されない。レナの指示の下、撮影スタジオのスタッフたちが芹川セリナの淫行の痕跡を塗り隠していく。
「念の為今日の予定をグラスベル直轄案件で固めておいて良かったよ。外部の人間もいる中で、そんな会話でもしたら即流出して炎上沙汰だからね」
「肝に銘じます……」
チクチクと言葉の針で抉ってくるレナに、タケルは申開きのしようもない。このスタジオのスタッフたちは全員グラスベル所属であり、いわば身内だ。ここならばギリギリセーフだという、レナの安全マージンが有効に発揮された。
「じゃあセリナちゃん、撮影入りまーす」
「はい。よろしくお願いします」
白いスクリーンの前に躍り出たセリナに、無数のフラッシュが焚かれる。一枚ごとに次々と表情とポーズを変えながら、そのどれもが磨き上げた至高の芸術に等しい。数秒前まで、昨夜はどれほど強く愛されたのかと熱弁していた変態雌犬と同一とは誰も気付かないだろう。
そしてタケルもまた、芹川セリナのアイドルとしての姿を初めて真正面から見ていた。
「綺麗だな……」
「そりゃそうだ。彼女は美そのものさ」
どこまでも清らかで、澄み渡る青空のように透明な光。弾けるような笑顔を浮かべたかと思えば、凛と背筋を伸ばした氷のような美しさを見せつける。女性的なプロポーションが魅力的に見えるのは、彼女が己の肉体を熟知し、どう見せれば良いか理解しているからだ。
どの写真を見ても、一流雑誌の表紙を飾れるだけのポテンシャルがある。スタジオのスタッフたちの技量も最上級に違いないが、彼らの実力を引き出すのもまた、燦然と輝く芹川セリナその人なのだ。
「セリナはこれまで、自分を殺して自分を磨き続けてきたんだよ。そこらの一般人じゃ追いつけないくらい、過酷な道を走り続けてきた。その頂点がまさに今、ここにある」
風格が違っていた。
何も知らないタケルでさえもこれが完璧であると理解してしまうほどだ。
なるほど、彼女と比べると、並のアイドルなど木偶に等しい。
「でも、これが頂点なのか?」
「そうだ」
レナの突き放すような断言が引っかかった。もう一度問い直しても、敏腕マネージャーはしっかりと頷く。
「何かを犠牲にして得られるものには限りがある。彼女はもう、プライベートというものを食い尽くしてしまった。限界なんだよ」
セリナはまだ若い。スターダムへとのし上がる道は、まだまだ果てしない。国内はともかく、世界を見据えるならば、その先は茫洋としている。
誰よりも理解しているのは本人。そして彼女と伴走してきたレナ。
「グラスベルが"ご褒美"を用意しているのは、その限界を越えるためさ。自分を食い尽くして、何もできなくなった子は星の数ほどいる。彼女たちが失った輝きは、グラスベルの無念でもある。だから何かを犠牲にし尽くした子には、充足による変化を与えるんだよ」
己の羽すらもぎ取ってしまう前に。
数多の無念、幾億の挫折を見てきたからこそ。
「言ってしまえば、滅私による研鑽は
「セリナの場合は、俺だったのか」
「そうであることを期待してるのだよ」
自惚れそうになるタケルに、マネージャーは釘を刺す。
セリナはまだ、次の階段へと足をかけたところだ。そこから更に駆け上がるか、バランスを崩して転落するかは、タケル次第でもある。
重責である。
今や億単位の金が動く"美"となったセリナの行末を、タケルが左右するのだから。
「……ところで君ぃ。昨日、何かしなかったかね?」
「な、何かってなんだ。セリナとの買い物はちゃんと報告したじゃないか」
「それはそうだけどね」
話は急に方向転換し、サングラスを貫通して訝る視線が突き刺さる。タケルは身じろぎして撮影中のセリナに集中しようとするが、レナは執拗に追いかけて逃さない。
「君がプライベートで何をしようと基本関与はしないけどね。……ウチの商品を壊しちゃ困るよ」
十中八九、両者の脳裏には同じ少女の顔が浮かんでいる。
そもそもグラスベルの"保養施設"内で起こった出来事を、把握されていないはずもない。その上でレナは強く糾弾まではしなかった。
「心配するな。ちゃんと言って聞かせたから、もう近寄っても来ないだろうさ」
「どうだかねえ」
あの少女も厳つい大男に蹂躙され、心の底から恐怖したことだろう。首を絞められ、喉を詰まらせ、窒息死寸前まで追い詰められたのだ。またのこのこと現れるようなことがあるはずもない。
タケルがそのような腹積りで言い放つも、レナは納得がいっていない。むっちりとした巨乳を持ち上げるように腕を組み、悩ましげに吐息を漏らす。
「こっ! こんにちは! 隣のスタジオで撮影してた天竜ツカサです! セリナちゃん、じゃなくてセリナさんの撮影、見学させてもらいにきました!」
勢いよくドアが開く音。続けて、緊張に硬くなりつつもよく通る声。
じろりとサングラスに睨まれながら、タケルは思わず頭を抱えてうずくまった。