巨チンを見込まれて大人気アイドルのセックスケア担当にスカウトされました。 作:ユリイカ
隣のスタジオからやってきたという元気な声の少女は、ぱたぱたと小走りでスタッフたちへと挨拶をしてまわる。そうして当然、セリナのマネージャーであるタケルたちの元にもやってくる。
「
「あ、ああ……。よろしく」
にぱっと爛漫な笑顔を輝かせる少女に男は若干気圧される。しかし彼女の口振りから、昨日のことを蒸し返すつもりはないと悟り内心で胸を撫で下ろす。天竜ツカサは新進気鋭のアイドルで、これから売れていくところにある。トップスターであるセリナは同門の先輩であり、彼女がアイドルを志した理由でもある。それならば、成功の秘訣を獲得するためにスタジオへ突撃するのも、十分に理解できる。
「そうかそうか。タケル君はアイドルには疎いと言っていたけど、ツカサちゃんのことは知ってるんだねぇ」
隣のサングラスから視線が突き刺さる。痛いところを突かれた、というか十中八九彼女は昨日のことを把握している。だがタケルはぎこちなく笑い、偶然見かけたことがあるのだと言い訳を立てた。
ツカサが初対面という体裁を保とうとしている以上、タケルもそれに乗っかった方が色々と面倒が省けるという下心も多分に含む。
「セリナさんのマネージャーはお一人だけだと思ってたんですが……こんなに頼もしそうな男性もいらっしゃったんですねぇ」
「うおっ!? さ、最近付いたばっかりの新人なんだ。お手柔らかに頼む」
だがタケルが安堵したのも束の間、ツカサは妙に距離感近く彼の懐に入ってくる。伏せられた睫毛の下の瞳が、妙な湿っぽさを持っているように感じたのはタケルの勘違いだろうか。
ツカサは自然な所作で男のゴツゴツとした手に触れ、己の控えめな胸元へと近づけるように持ち上げる。アイドルのスキンシップはこんなものかと困惑するタケルだったが、おそらくそうではないだろう。先ほどから周囲のスタッフの視線が集まっている。
「天竜ツカサさん、でしたっけ? 私のマネージャーに何か御用ですか?」
撮影中だったはずのセリナが、いつの間にか背後に立っていた。いつもの甘やかな声とは色が違う。硬い警戒の声。
憧れのセリナと対面したツカサは、しかしタケルの予想に反して穏やかに構える。
「いえ。とても男らしくて素敵な方で、セリナさんにお似合いだと思っただけです」
手放しの賞賛だった。セリナの警戒が僅かに緩む。
「そうですね。確かにタケル……さんはとても素敵な私のマネージャーです」
「やっぱり素晴らしいアイドルには素晴らしいマネージャーがいらっしゃるんですね。勉強になります」
「ふふっ。私なんかでよければ、いつでも来ていただいて結構ですよ」
表面上は至極和やかな会話。二人の表情も穏やかな微笑みで、傍目にはとても平和的な先輩と後輩のやりとりに見える。
しかしセリナはタケルの腕に絡みつくように体を密着させ衣装の下の柔らかな膨らみを押し付けているし、ツカサは彼の手のひらを握ったまま放そうとしない。二人のアイドルに捕まえられた虜囚のような男は、どこか薄寒い恐怖さえ感じていた。
「ところでツカサさん。――タケルさんとは今日が初めて、なんですよね?」
「はい! もちろんそうですよ」
すっと美少女の目が細められる。
彼女はタケルとツカサが昨日出会っていることを知っているはずがない。タケルはきっちりと痕跡を消してからセリナの下へと帰ったし、その後はオモチャを使って散々攻め立てた。幾度となく絶頂に達して悦楽に浸っていたセリナに、何かを深く考えるような余裕はなかったはずである。
レナが何か、セリナに吹き込むということも考え辛い。
「――そうですよね。ふふ、ごめんなさい。変なことを聞いてしまいました。あんまり仲が良さそうですから」
「いえいえ、そんな。セリナさんともタケルさんとも、今後仲良くしていただきたいと思っています!」
なぜかタケルは冷や汗が止まらない。その危機感がどこから来ているのかは分からないというのに。
ツカサはタケルの指に己の指を絡めるようにしながら、隣に立つレナへと顔を向ける。
「レナさん、僕ももっと頑張って売れたらタケルさんみたいなマネージャーに付いてもらうことができるんですよね」
「そりゃあね。グラスベルは信賞必罰を徹底するから、成果には相応の報いを用意するよ」
「分かりました。――僕もセリナさんみたいなアイドルになれるように頑張ります!」
フレッシュでエネルギッシュな宣言は微笑ましい。
高らかに言い放ったツカサは、ぱっとタケルから離れる。その後は撮影が再開され、ツカサは静かに座ってセリナの働きぶりを真面目に見学していた。
やっぱり先ほどの剣呑な雰囲気は杞憂だったのかとタケルが肩の力を抜き、スーツのポケットに手を差し込むと、不意に指先に何かが触れた。
折り畳まれた紙のようだ。レシートでも入れたままだったかと引きぬけば、メモ用紙である。心当たりのないものに首を傾げながら広げ、彼は瞠目する。
『プライベートのIDです。また、いつでも連絡してください♡』
そんな可愛らしい文字に添えられた英数字。咄嗟に手のなかに握る潰しながら、捨てるわけにもいかず再びポケットへと押し込む。幸い、セリナは撮影に集中してタケルの動きに気付いた様子はない。
彼がそっと周囲に目を向けると、パイプ椅子に座っていたツカサと目が合った。
彼女は周囲のスタッフたちに見えないような角度で、口元へ手を持っていく。人差し指と親指で円を作り何かを扱くような動きをしながら、唇を突き出して舌をちろちろと覗かせる。
しっとりと光を宿した瞳に見つめられ、タケルは思わず喉を鳴らす。昨日の記憶がフラッシュバックし、血が沸騰する。
「――すまん、ちょっとお手洗いに」
彼はぎこちない動きでスタジオの外へと出ていく。天竜ツカサが感謝の言葉と共に立ち上がったのは、その直後のことであった。