※この作品はR-18です。

女神を自称するアークプリーストと酒の勢いでヤった   作:百万一回エタった猫

4 / 6
猫は四半期ランキングにもいます。うれしいね。
妄想だけして全然公開出来てない設定だらけなので供養します。
巨乳ウィザードコンビはもうちょっとまってね。



【月刊勇者】大人気企画・勇者の一日を追ってみた!~元一流冒険者にして『教導』の勇者、シミズダイチの遊惰な一日~

 冒険者、シミズダイチの朝は早い。

 まだ太陽が地平線から顔を出し切ってないような時間。彼は自宅代わりの高級宿の入口で我ら取材陣を待っていた。

 

 ―――いつもこんな朝早くから起きて活動しているのですか?

 

「まさかー。今日は冒険者稼業は休みと決めた日だけだー」

 

 ―――休みなのに早く起きるのですか?

 

「休みだからこそだなー」

 

 彼はそう言って宿の中へ我ら取材陣を案内した。

 宿の中はとても広く、駈け出し冒険者の街にある宿としては不相応な程に上等な内装であった。

 

 ―――こんな豪勢な宿にいつも泊まっているのですか?

 

「おー。高いは高いが、見ての通り良い所でなー。こんな辺鄙な場所にしては随分と上等だと思ったろ?」

 

 ―――流石【教導】の二つ名を持つ勇者。私のような者の考える事もお見通しですか。

 

「もう勇者は辞めたんだからその名前で呼ぶなと言ってるぞ前から」

 

 ―――しかし貴方の教えを受けた冒険者が今でも何百人と王都でも活躍していますし、最近も貴方が率いる冒険者パーティが魔王軍幹部を討伐したそうではないですか。【教導】の二つ名と、【勇者】の肩書が似合うのは貴方を置いて他に居ないでしょう。

 

「それ褒めてるか?【勇者】ってのは大抵国のトップが偉そうにふんぞり返りながら指図して動かす都合の良い兵器みたいなモンだろ」

 

 ちょちょちょ!カットカット!!!

 あんた勇者でも言って良い事と悪い事あるだろ!?

 

「はっはっはー。都合が悪くなりゃ隣国でも世界の果てでも逃げてやるわー」

 

 コイツマジほんとにッ!?

 消されぅッ!!王族に消されぅッ!!?

 

 

 

 ―――しかし、貴方が率いる冒険者パーティが魔王軍幹部を討伐したそうではないですか。【教導】の二つ名と、【勇者】の肩書が似合うのは貴方を置いて他に居ないでしょう。

 

「俺は別に誰かを率いちゃいないぞー。確かに俺の居るパーティが魔王軍幹部を倒したが、俺だけじゃなくてパーティの、ひいてはリーダーであるカズマ君のお陰だなー」

 

 ―――王都でも知る人ぞ知る冒険者、サトウカズマですね?

 

「おー。アイツらは見てて飽きないからな。俺も教え甲斐が有るってもんよー」

 

 ―――さて、話を戻しますが……王都でもあまり無いような豪勢な宿ですが、この駈け出しの街で利用する人なんて居るんでしょうか?

 

「まぁそこそこ居るな。低レベルの冒険者じゃ逆立ちしても一泊出来ないが、王都から来る高レベルの奴らが時折利用してるなー」

 

 ―――しかし言っちゃ何ですが……幾ら【教導】の勇者とは言えども、この様な高級宿に泊まり続けるのは難しいのでは?駈け出し冒険者の街で稼ぐにも限界があるのでは……。

 

「まぁ確かにそうだなー。だけどちゃんとカラクリがあるんだよ」

 

 そう言って彼は自室に我ら取材陣を案内した。宿の従業員によれば、実質的に彼専用の部屋と呼んで差し支えないようだ。

 部屋の中に入れば、なんと宿の外観からではありえない広さの部屋であった。現在は彼一人で寝泊まりしていると言うが、同時に6人くらいが悠々と過ごせるような広さの部屋であった。

 

 ―――この部屋の広さは一体……?

 

「随分前に空間を拡張する魔道具をいくつか作ってなー。何個かこの宿に融通する代わりに宿代を割引してもらってるからな」

 

 ―――空間拡張の魔道具!?

 

「魔道具を改造するのは俺の趣味の一つでなー。こうして朝早く起きて魔道具をイジるのが楽しいんだ」

 

 彼はそう言いながら大きなソファに座り、彼の代名詞とも言える四次元ポケットの中から四角い箱のようなものを取り出した。

 

 ―――そちらの箱はなんでしょうか?

 

「コイツはどこでもトイレが出来るという謳い文句で売られてた魔道具でな。こんな小さい箱だが、展開すれば個室トイレに早変わり。しかも水洗トイレで、トイレの音が聞こえて恥ずかしいという声にお答えして音楽が流れてトイレの音をかき消す……という魔道具だ」

 

 ―――なるほど、街の外で活動する冒険者にとってトイレの問題は大きいみたいですね。聞くだけだと既に完成されているように思えるのですが、何故改造を?

 

「それがな、水の魔法具の力で水を流すトイレなんだが、勢いが強すぎて使用者ごと設置したトイレ周辺を流すレベルな上、トイレの音をかき消す音楽というのも大爆音過ぎて周辺の魔物が寄ってくるという有様で」

 

 ―――何考えて作ったんだその魔道具!!?

 

「それはそう。で、そんな魔道具をたまたま見つけた俺が折角だから改造しようと思ってな」

 

 彼はそう言うな否や、四角い箱に手をかざす。すると淡い光が放たれ、四角い箱から幾層もの魔法陣が現れた。

 

 ―――これは一体!?

 

「コイツはこの魔道具を構成する魔法を可視化したものだ。俺はコイツを切ったり貼ったり繋いだり書き加えたりと色々して改造していくのさ」

 

 彼はそう言ってポケットから数多ものツールを取り出す。

 絵筆、炭、棒ヤスリ、彫刻刀、ドライバー、ハンマー、短杖、それらを指の間で挟むように持ち、作業に取り掛かった。

 ……我々取材陣が理解出来たのはそこまでだった。音で表すなら

 

 バリバリドガガガキュィィィギャリギャリギャリズドドドドチョドーンキリキリキリズジャザザザゴリゴリゴリアヤッベギョルギョルギョルギョルトンテンカントンテンカンガシャーン

 

 と言ったところだろうか。

 残像すら見えるような疾さで両手が動き、1時間程度で魔道具の改造を終えた。

 

「出来たぞ」

 

 ―――あの産廃とも言えるような魔道具がどう生まれ変わったのでしょうか?

 

「おー。魔力を込めると、自分の正面に音の大砲を打ち出す。【爆音砲】と名付けよう」

 

 トイレの魔道具が見る影もねぇな!!?

 

「まー魔道具改造なんてそんなもんだー。はっはっは」

 

 ―――失礼しました。

 

 彼の趣味の時間が終わる頃、アクセルの街全体が目を覚ます時間になった。朝市は活気付き、ギルドの中では冒険者達が旨味のある依頼を我先にと奪い合う時間だ。

 そんな光景を横目に、彼はギルドに併設された食堂で朝から酒をあおっていた。

 

 ―――良いんですか?冒険者達が凄い目で見てますけど。

 

「構わねえよ。コレも成功者の特権ってヤツだなー。貧乏暇無し、一攫千金を夢見て冒険者になった奴らだ。極一部の成功者に向けて愚痴や文句を言えども、恨まれる筋合いはねーなー」

 

 ―――それにしては随分殺意のこもった目で見られてますが。

 

「俺も駈け出し冒険者の頃は、先輩冒険者のこんな姿を見て『いつかは俺も』と奮起したもんだー。そもそもガキンチョが何人襲いかかってきた所で、怪我せず全員返り討ちだー。はっはっは」

 

 ―――なるほど。実力あっての余裕ということですね。その先輩冒険者の方は?

 

「俺が駈け出しだった時なんて何年前だと思ってるんだ?もうとっくに死んだよ」

 

 ―――それは、失礼しました。

 

「酒に弱いクセに、酒好きなヤツだったよ」

 

 そう言って酒をあおる彼の目は、何処か寂しそうであった。

 そうして彼はゆっくりと朝食を楽しみながら酒を飲み、ギルドを出たのは1時間以上経ってからだった。

 赤ら顔のままアクセルの街を歩いて向かった先は、彼が建てて運営している醸造所であった。その入口付近には、緑色の髪をした美しい少女の姿をした植物モンスターである安楽少女が根を張っていた。

 

 ―――町中にモンスターが!?

 

「アレは俺がテイムしたヤツだ。人は襲わないようにしっかり教育してるから安全だぞー。まあ手ぇ出そうとしたヤツの安全は保証しないけど」

 

「……ア、ゴシュジンサマ……オハヨウゴザイマス……」

 

 安楽少女は、まさに花のような笑みを浮かべる。その首元にはテイムされたモンスターである証明のように首輪とテイム主の名前が書かれた札が吊り下がっていた。

 

 ―――安楽少女をテイムしたとか、普通に通報案件では?

 

「何処にだ?ちゃんとギルドからモンスターテイムの許可証を貰ってるし、役所にもテイム証明を届け出てる。ルールは守ってるんだから通報される謂れは無いなー?」

 

 ―――しかし、どう見ても可憐な少女に首輪は……。

 

「何だお前、安楽少女にも人権をーとか言うバカ丸出しの人権団体か?」

 

 ―――いえ、そういう訳では……

 

「人の姿をしてようが人の言葉を理解してようがモンスターはモンスター。そこの線引きを曖昧にする奴は、大抵がでかい声で騒いでる内にそのモンスターによって背中を刺されて死ぬ。自分一人で死ねば良いが、大体他の善良なヤツを巻き込んで死ぬんだから始末に負えないよなー」

 

 ―――それは経験則ですか?

 

「ああ、長く生きてきた経験則だ」

 

 そう言って彼は安楽少女の頭を撫でる。

 

「とは言え人の姿をして、人の言葉を理解している。線引きはしっかりするが、その上でテイマーはしっかり愛情をもってモンスターを育てるのが仕事なんだ」

 

 彼は穏やかな表情を浮かべ、安楽少女は安心するように微笑みながら彼に身を寄せる。さながら父親と娘のような間柄に我々取材陣一同は言葉を失った。

 

「あと安楽少女の作る実は、栄養は無くても味は良くてな。ダイエット食品に加工して売れるし、酒の材料にすれば王族にだって売れるレベルの超高品質なシュワシュワに化ける。金のなる木とはよく言ったもんだー。はっはっはっはっは」

 

 台無しだよ!!!

 

 安楽少女は頬を膨らませてポコポコと教導の勇者を叩いていた。

 

 彼の経営する醸造所の中を見せてもらったが、内部はとても広く、一個人で運営しているとは思えない規模であった。

 そんな我々取材陣の疑問は、彼の案内によって氷解した。

 

「中の仕事もテイムしたモンスターにやってもらってるんだ」

 

 彼の指示の下に集まってきたのは三体のモンスターであった。

 体格の小さなゴブリンに、入口で日光を浴びていた安楽少女。そしてなんと、絶滅したと思われていた雄のオークが居るではないか。

 

 ―――雄のオークは絶滅した筈では?

 

「おー。紅魔族の里から帰る道中で、雌オークに干物同然になるまで搾られていた所命からがら逃げ出してきたコイツを拾ってなー。オークの群れがコイツ追いかけるついでに俺も狙ってきやがったから全員ぶち殺してやったー。あん時はマジで笑ったわー」

 

「笑い事、違う」

 

 シャベッタァァァァ!!!!!?

 

「オデ、言葉、分かる、少し。主様、言葉、教える。オデ、酒、作る、手伝う」

 

 雄のオークはそう言って仕事へ戻っていった。圧搾機で大量のブドウを潰している。

 

 ―――此処でワインを作っているのですか?

 

「おー。ワインだけじゃなくウイスキーやシュワシュワも作っている」

 

 ―――ぶっちゃけ、儲かってます?

 

「王族に売れるレベルって言ったろー?冒険者やらずとも、朝から酒飲んでられる程度には儲かってるなー。はっはっは」

 

 ―――そんなにですか。

 

「近々ドワーフでも雇って設備を増設する予定だー。王家御用達、元勇者の使えるコネは使ってナンボだからなー」

 

 ―――それ程までに儲かっているとなると防犯対策等は?

 

「コイツらがそうだ。俺が直々に鍛え上げたテイムモンスター達だぞ?例え王都で活動してる勇者が相手でも負けやしない。それに異常が有れば俺に連絡が来るように魔道具も設置してるしなー」

 

 そう言う彼の目には自信と誇りに満ちていた。

 彼の醸造施設を見学していると、気付けば既に昼前であった。

 彼は醸造施設近くの食堂に入ると、そこでも酒を飲んでいた。

 

 ―――よく飲みますね。

 

「今日は取材の為に少ない方だぞー」

 

「いつものダイチさんなら朝からべろべろになるまでよっぱらってますよね〜」

 

 そう言うのは食堂の若女将だった。

 若女将が言うには、休みの日の朝はギルドで10杯は飲み、昼は此処で樽ごと飲み、夜は引っ掛けた女性と朝まで飲むとか。

 

 ―――そんなに飲んで大丈夫なのでしょうか?

 

「凡人とは稼ぎも肝臓の出来も違うからなー。はっはっはっはっは」

 

 呵々大笑と笑う彼が我々取材陣全員の年齢を足してもまだ届かない程に高齢であるとはとても信じられない。

 

 ―――ずばり、若さの秘訣とは?

 

「才能だなー。天才は老いないんだ」

 

 ―――そ、それは日々のアンチエイジングケアとかではなく?

 

「まー、好きなモン食って好き勝手に生きて、笑ってくたばるのが若さの秘訣ってヤツか。心が若けりゃ皺くちゃ顔でもガキンチョだ。心が老いりゃつるつる肌でも老害だ。酒飲んでゲラゲラ笑えりゃジジババでも美しいってもんだろ」

 

 そう言って彼は新たな酒を注文した。

 彼が一流冒険者だからこそ日々を笑って送れるのか、或いは日々笑って過ごしているから一流冒険者なのか。

 彼の強さの一端を我々は垣間見た気がした。

 

 彼が昼食を食べ終えた後に向かった先は、ウィズ魔道具店と書かれた店であった。

 彼が店に近づくと、店の前を清掃していた男性がこちらに気が付いた。

 

「ふはははは!ようこそ、慣れない取材にドギマギしているお得意様よ!」

 

「いや別に」

 

 ―――み、見通す悪魔!!?

 

「いかにも!吾輩こそが地獄の公爵にして一流冒険者御用達のウィズ魔道具店店員、そして子供達の登下校の見送りから厄介なカラス退治まで行うことでご近所でも評判の悪魔、バニルである!!」

 

「駈け出し冒険者一人に良いように振り回される地獄の公爵とやらが居るらしい」

 

「喧しいわ!!!」

 

 ―――だ、ダイチさん?

 

「あー。こいつは悪魔でも特に害は無いからなー。人の姿をしたゴキブリか何かだと思っとけー」

 

「誰がゴキブリか貴様!!!?」

 

「なんだぁお前見通す悪魔のクセにゴキブリの凄さを知らんのか?ゴキブリが落ち葉を食ってウンコするお陰で森の土は豊かになってキノコとか育ちやすくなるんだぞー。ゴキブリナメんな」

 

「誰もゴキブリの生態なんぞ聞いとらんわ!!!」

 

「ゴキブリは頭が取れても1週間くらいは生きてられるんだってよ。しかも死ぬときは餓死らしい。おおバニル、お前も確か仮面さえ残ってりゃ生存判定だったなー。悪感情さえあれば仮面だけでも生きられるお前はゴキブリ以上かもなー?」

 

「ゴキブリを基準にするでないわッ!!!」

 

 悪魔を相手に引かず、軽口を叩き続けるシミズダイチさん。高位の悪魔が恐ろしくないのだろうか?

 ……恐ろしくないのだろう。彼はかつて王都を襲った侯爵級の悪魔を単身で討伐した事もある。彼がその気になれば目の前の悪魔を倒すのも不可能ではないだろう。

 彼が見通す悪魔を押しのけてウィズ魔道具店に入る。中に入れば、ぽわぽわとした印象の美女が笑顔で出迎えてくれた。

 その胸は豊満であった。

 

「いらっしゃいませダイチさんっ!今日はすっごいおすすめの魔道具があるんですよ!!!」

 

「フン!貴様もどうせ改造されると分かっておるクセに毎度毎度ゲテモノ魔道具を仕入れて来よってからにポンコツ店主め。最初からもっとマトモな物を仕入れてこんか!」

 

「なんて事言うんですかバニルさん!?私はずっと売れると思って仕入れてますし、現にダイチさんは改造用以外にも買ってくれるじゃないですか!!?」

 

「コレクションと言う名の、無限に入る四次元ポケットとやらの肥やしになってるだけではないか!そもそもこやつ以外に全く売れない時点で貴様の商才の無さは筋金入りと言うものだ!!」

 

「いーや!今度こそ、今度こそ売れますから!それほどとっても良いものですから!!!」

 

「そう言って貴様は貴様のおすすめする魔道具が売れた記憶があるのか!?」

 

「あ、ありますよ!ちょっとすぐには思い出せないですけど……」

 

 中に他の客が居ないと言うのに騒がしい店内。

 彼曰く、朝に改造した魔道具の元となる魔道具は此処で購入したらしい。

 

 ―――魔道具店として大丈夫なんですか?

 

「何だかんだ長くやってる店だからなー。今日まで干物にならず生きてきたんだし、大丈夫なんだろー」

 

 ―――それより、今日ここに来た理由は?

 

「おっとそうだった。おいマスク・ド・貧乏、商談のお時間だぞ」

 

「誰がマスク・ド・貧乏か!?」

 

「プスー」 ※店主の笑い声と思われる

 

「おいポンコツへっぽこお荷物店主、笑っとる場合か。貴様が無駄に負債を積み重ね続けるせいで我輩の野望がいつまで経っても達成できんのだ!」

 

「喧嘩は後にしろー」

 

 そう言い、彼は悪魔の首に鞭を巻き付けて店の奥へと引きずっていく。

 残された我々は店主の方に冒険者シミズダイチについて質問を行った。

 

 ―――【教導】の勇者についてですが……

 

「ええ、勿論よく知ってますよ。昔から色々助けてもらいまして、私が現役冒険者だった頃からの知り合いなんです!」

 

 ―――昔から?現役だった頃?失礼ですがお幾つなんですか?

 

「20歳です」

 

 ―――現役冒険者だった頃というのは……

 

「20歳です」

 

 ―――あの?

 

「20歳です」

 

 室内の温度が急速に下がってきた気がする。

 嫌な予感がしたので、我々は別の質問をすることにした。

 

 ―――ズバリ、【教導】の勇者の事をどう思いますか?

 

「そうですね……世界の広さを、この世界で生きていく知恵と力を、そして理不尽に立ち向かう勇気を、とにかくいろいろな事を私に教えてくれた、大事な人です」

 

 ―――彼とはどういったご関係で?

 

「ど、どぅ!?どうって!?いや、その、別に!?ふ、普通のパーティメンバー……じゃなくて、その、普通のお客様と店主の関係ですよ!?」

 

 ―――それでは彼と関係を持ったことは無いと?

 

「せ、セクハラです!セクハラですよそれは!!!?」

 

 王都で発生した刺傷事件の内、半分以上がシミズダイチが被害者として関わっていると言う伝説はアクセルの町でも通用するらしい。

 王都で最前線を張る某勇者一行の女性陣全員に刺されてもピンピンしていた彼がアクセルの町でも変わらないようだ。

 

 そんな話をしていると商談が終わったようで奥から見通す悪魔と彼が戻ってくる。見通す悪魔はホクホク顔で今にも大声で笑いだしそうであった。

 

 ―――商談はどうでしたか?

 

「おー、まあ良い感じだぞー」

 

 ―――どのような物を取引したのでしょうか。

 

「朝作った魔道具とか、まあ色々だー」

 

「お得意様よ。以前作っていた熱湯を作り出す魔道具だが、あれをもっと生産する事は出来ないのか?あの小僧が考案した即席麺とセットで販売出来れば、冒険者だけでなく一般の市民にも爆売れ間違いなしであるぞ!」

 

「あれかー。ポケット無しでも冒険先でラーメン食えるのは革命的だよなー。材料が手に入り次第作ってやるよー」

 

「ふははははは!では我が配下に手配させようではないか!!何だったら作り方を教えてくれれば配下に作らせるぞ?貴様も手間が減って楽になろう」

 

「馬鹿だなー。趣味の時間減らして何になる?金を使うのも金を稼ぐのも俺の趣味だ、早々に作り方なんて教えてやんねー」

 

「チッ。貴様の作る魔道具はどれもこれも特殊な造りであるが故、模倣品を作るのも一苦労である」

 

「ま、美女を寄越すってんなら~?俺の口が軽くなるかもな~?俺が満足いく美女が来ればな~?」

 

「ふははははは!ならば丁度良いのが居るではないか此処に!ほら仕事だぞガラクタ極潰し店主!貴様の身体を使って金の生る木の一つや二つ捥ぎ取ってくるが良い!」

 

「なななな何を言うんですかバニルさん!!!?ダイチさんもです!お店の中でそんなふ、ふ、不潔な事を言わないでください!!」

 

「へっぽこ店主のくせに何を臆するか!!そもそも一度抱かれてるのだから二度や三「わーッ!わーッ!!!」ええい喧しいわッ!!!」

 

 実に騒がしい。店舗の中では拳と光線が飛び交う修羅場と化した。

 しかし何故だか、まるで長年連れ添った友とでも言うような気安さが彼らの中にはあった。

 

 日が傾き始めた頃、ウィズ魔道具店を出たダイチさんは再びギルドへと向かった。

 

 ―――またお酒を飲みに行くんですか?

 

「いいや?この時間に飲んでもまだガキンチョ達は帰ってきてないしなー。今ちょっと面倒を見てる子が居てな。そいつとちょっと遊ぼうかと」

 

 ―――遊ぶ?

 

 そうしてギルドに到着した彼は中をチラと確認すると、目的の人物の元までスタスタと歩いていった。

 彼が向かった先には黒い髪色をした赤い眼、そしてこんな時間にギルドの一角でトランプタワーを積み上げている女性が居た。

 

「お前ギルドでドミノするの好きだな、ゆんゆんちゃん」

 

「えっ、あっ、だ、ダイチさん!?」

 

 後ろから声を掛けられた女性は驚き振り向いた拍子にトランプタワーを崩してしまう。

 その胸は豊満であった。

 

 ―――彼女は?

 

「えっ、な、なんですかこの人達……なんか妙な話し方してますけど……」

 

「あー気にすんな、王都からわざわざ来た変人だ。んで変人共、コイツがさっき言ってた面倒見てるって子だ」

 

「面倒!?私の事面倒くさい人って言った!?」

 

「そーいう意味じゃねーよ」

 

 黒髪に赤い瞳、そして変な行動。もしやこの方は悪名高い噂に名高い紅魔族なのだろうか。

 

「ほらゆんゆんちゃん。この変人共もお前が紅魔族と察しが付いたらしいぞ、挨拶しなさい」

 

「挨拶って……ええっ!?あ、あれをやれって言うの!?」

 

「冒険者になればこそ、だ。この変人共も王都ではそこそこ名の通った文屋だ。名声は一流冒険者になるための大前提だぞー」

 

「う、うぅ~……や、やればいいんでしょう!?」

 

 そう言った女性は、変なポーズをとり、大声で名乗りを上げた。

 

「わ、我が名はゆんゆん。アークウィザードにして上級魔法を操る者。やがて紅魔族の長となる者……!」

 

 ―――……これはふざけているのでしょうか?

 

「ふ、ふざけてなんか無いわよ!ちょっと恥ずかしいけど、ちゃんとした名乗り何だから!!」

 

「分かってんなら恥ずかしがってんじゃねーよ。中途半端に恥ずかしがるからふざけてると思われるんだ。50点」

 

「ひ、酷いわ!私も結構頑張ってるのよ!?」

 

「ならもっと頑張って名声を上げるんだなー。50点」

 

「二度も言った!二度も言った!!」

 

 ―――もしや王都にもその噂を轟かすという、あの頭のおかしい紅魔族というのが……

 

「頭のおかしい紅魔族!!!?」

 

「そりゃ別人だなー。頭のおかしいのはもっとちんまいガキンチョだ。コイツは頭のおかしくない……いや、まあ、そうだな……」

 

「何で歯切れが悪くなるの!?私別に頭はおかしくないでしょ!?」

 

「だってお前ギルドの中でトランプタワーを積み上げるのは……」

 

「べ、別に何も悪くないでしょ!?めぐみんみたいに毎日のように街の近くで爆裂魔法を撃ったりしないわ!!?」

 

 ―――毎日爆裂魔法を撃つ……?

 

「頭のおかしい紅魔族ってのは爆裂魔法狂いでなー。こいつは普通のアークウィザードだー」

 

 ―――アークウィザードの時点で普通ではないと思うのですが……

 

「それはまあそう。んで、コイツはもう王都でも一線級の実力があるのに、なんでかアクセルの町に居続けるヤツでなー」

 

 ―――ダイチさんに直接育てられて、まさに次期勇者候補……といったところでしょうか?

 

「いんや、次期と言わずに十分勇者候補だなー。魔王軍の襲撃に参加すれば勇者ってすぐに認められるだろ、知らんけど」

 

 ―――それほどまでの才能を……

 

「い、いやいやいや、私なんてほんとまだまだですから!!」

 

 ワタワタと手を振って否定する女性は、年齢不相応に幼くも見えた。

 

 ―――時に、彼女は幾つなのでしょうか?

 

「14歳だぞ」

 

 ―――14歳!????

 

「今何処を見て言ったんです???」

 

 彼女の胸は豊満であった。

 

 ―――ま、まさかダイチさん、貴方の言う遊び相手ってそういう……

 

「無粋な詮索は止めてもらおうか。それと言葉には気をつけろよ?この場に身元不明の死体が幾つか増える事になる」

 

 ―――大変申し訳ございませんでした。

 

 彼はゆんゆんさんが座っていた椅子の反対側へ座り、崩れたトランプタワーを回収して手早くシャッフルした。

 

 ―――何をやるので?

 

「冒険者が遊ぶカードゲームなんてコレしか無いだろ」

 

 そう言って彼は手早くこの場に居る人数分のカードを5枚ずつ配る。

 

「賭けポーカーだ。俺は優しいからな、有り金全部で許してやるよ」

 

 ニヤリと笑う彼は、ゆんゆんさんと我々一同に有無を言わせず椅子に座らせた。

 王都で運営されるカジノから出禁にされる程の豪運の持ち主であるシミズダイチ相手に、我々は勝ち目のない戦いを強いられたのだった。

 

 あっという間に有り金全て奪われた我々と財布の中身を辛うじて死守したゆんゆんさんを後目に、シミズダイチは優雅にワインを飲んでいた。

 

 ―――何故そこまでポーカーが強いのですか?

 

「運が良いってのもまああるが、一番は観察力だなー」

 

 ―――観察力?

 

「ポーカーフェイスって言葉があるぐらいには表情が見せる情報ってのは侮れない。だが何も表情だけが見える情報じゃないって事だ。相手の視線、汗、指先に加わる力加減、呼吸の回数。見える物は色々だー。一流冒険者なら決して見過ごせない違和感を嗅ぎ取って相手の手を暴く。ある時にはあえて自分の手の内を見せ、相手の僅かな違和感を誘い出したり、逆に自身の違和感を紛れさせたり。冒険者なんだ、相手取るのはモンスターだけじゃ食っていけねえって事だなー」

 

「なんですかソレ!私初めて聞いたんですけど!?そういうコツがあるならもっと早く言ってくれてもいいじゃないですかー!!?」

 

「ぜぇ~んぶ教わんなきゃ歩けねぇようなら冒険者止めろー。テメェで考え、テメェで歩き、テメェで戦え。それともまだまだ教わり足りない赤ん坊なんでちゅか~???」

 

「む、むきゃぁぁぁ~ッ!!!」

 

 そう言って泣きながらシミズダイチに殴りかかるゆんゆんさん。今日は財布の中身を守れたが、きっと以前は財布どころか身包み剥がされた経験もあったのだろう。

 女子供相手にも全く容赦無い彼は片手で高レベルアークウィザードの攻撃を凌ぎながらワインを飲む。ワインは一滴も零れていなかった。

 

 日も暮れていき、多くの冒険者達がギルドへ帰ってきた。

 ゆんゆんさんと遊びながら、ワインだけでなくウイスキーも樽ごと飲み干した彼も流石にかなり酔いが回っているようであった。

 ゆんゆんさんを始めとして美しい女性を侍らせて酌をさせる彼は、さながら酒場の王とでもいう有様であった。

 

「がっはっはっはっは!」

 

 ―――彼はいつもこのような事を?

 

「え、ええ。まあいつもという訳ではないですけど、今日みたいにお休みの日はまあ、大体……」

 

 ―――冒険者稼業がある時は?

 

「大抵はその時のパーティメンバーと一緒に飲んでますね。飲んでない日は無いんじゃないんですかね……」

 

 ―――飲み代は一体どのようにして稼いでいるのでしょうか?

 

「ダイチさんは色々やってますし、沢山お金を稼いでパーッと使うのが楽しくて仕方ない……ってこの前言ってましたね」

 

 ―――今、彼にお酌している冒険者たちは?

 

「ええっと……皆さん、ダイチさんのお金目当てというか……気分が良いと、ああいう人たちに結構な大金をお小遣いと称して渡すんですよね……だからそれ目当てに女性冒険者が集ってると言うか……」

 

 ―――同じ女性冒険者として、そういった人達の事はどう思いますか?

 

「いやー……まあ、そういった身体で稼ぐやり方もあるって、ダイチさんも教えてくれたので別にどうとかは無いんですけど……冒険者なんだから魔物討伐とかで稼ぎなさいよとも思わなくもないと言うか……やってる事がまんまそういう商売の女性と言うか……」

 

 ―――ゆんゆんさんって意外と口悪いですか?

 

「ええ!?な、なんでそう思ったんですか!?私そんな口悪くないですよね!?なんですか意外と口悪いって!?」

 

 ―――話は変わりますが、彼の事をどう思っていますか?

 

「へっ!?ど、どう思ってるって……別に、普通のと、と、とも、ともだ、ともだ……ち……って言うか……その、この町に来てから色んな事を教えてくれたお兄さんって言うか、その……ちょっと、い、良い人だな~って……思ってます……」

 

 尚、この後ゲラゲラと笑っている彼にゆんゆんさんの事を聞いたが

 

「ゆんゆんちゃん?あー、まあ後5年くらいじゃないと年齢がちょっとなー」

 

 との事であった。彼は色んな意味で破天荒ではあるがその辺のモラルはしっかりしてるらしい。

 

 

 そして我々はついに読者一同が気になっているであろうことを聞き出す事に成功したのだった。

 

 ―――ダイチさん。ずばり、王都に戻ってくるつもりは無いのでしょうか。

 

「なんだー改まって。王都かー、王都ねー……稼ぎに向かう事はあっても、あんま戻る気しねーなー」

 

 ―――それは一体何故?

 

「エリス教がちょっとなー」

 

 どうやら彼とエリス教との間には確執があるようであった。

 

 ―――それはダイチさんがアクシズ教徒である事と関係が?

 

「いーや、別に。ってか俺はアクシズ教徒であってアクシズ教徒じゃない宗派だから」

 

 ―――そこはまあどうでも良いです。では何故王都に戻らないのですか?

 

「あー、まあ単純にエリス教が嫌いなんだよ」

 

 ―――エリス教が、嫌い?

 

「勿論、良いエリス教徒が居るってのは知ってるんだよ。現に今のパーティメンバーのダクネスとか熱心なエリス教徒だしなー。でもほれ、あのナントカっていうハゲ教皇ってぶっちゃけカスじゃん」※現在の教皇はハゲでは無いので、別の人物である可能性大

 

 ―――ハゲてるから嫌い?

 

「ちげーよ。そもそもエリス教の偉い奴ってどいつもこいつも守銭奴だらけだしよー。俺が金儲けしてる時に大体邪魔してくんのは魔王軍かエリス教って決まってんだよ」

 

 ―――どういった事を?

 

「前は、悪魔を使ったとあるサービスを王都でやっててなー。法律に引っかからない事を確認してたし良い弁護士も居たんだが、ナントカってハゲ教皇が乗り込んできてよー。サービスに使うために契約した悪魔達を片っ端から地獄送りにしやがって、マジでぶち殺してやるところだったぜ」※重ね重ねお伝えするが、現在の教皇はハゲでは無く清廉な方なので別の人物である可能性大

 

 ―――悪魔を利用したサービスなんて潰されるのは当たり前では?

 

「別に悪魔を直接使ってる訳じゃねーし、俺がその悪魔を管理してたんだから問題無いっての。とにかく、契約した悪魔とは違約金で揉めるし、ムカつくエリス教の教会片っ端から襲撃してやったら神敵認定されてなー」※少なくともここ100年の間王都のエリス教会が複数襲撃にあった事は、アクシズ教徒による被害を除いて皆無である

 

 ―――他には何かしたのですか?

 

「あとアンデッドを使った金儲けも昔やってたんだが、それもぜぇーんぶ当時のエリス教徒の連中にパーにされてよー。アイツら口をそろえて『ご神託によってエリス様に代わり神罰を与えに来た』だの言いよって大損害だー。んで、俺が金儲けに使ってた施設をアイツらがそのままブン捕りやがって、今じゃ立派にエリス教の資金源の一つになってるんだってよ。笑えるよな」

 

 ―――そ、それはまあ。

 

「使えるモンは何でも使って、悪魔の力を利用して金儲け。疲れ知らずのアンデッドを利用して金儲け。でもエリス教の奴らは、完成したモンにタダ乗りどころか俺から奪っていきやがった。何が国教だ。運だけで国教に選ばれたような癖に、調子に乗ってお金の単位にまでなりよった意味不明な女神を信仰してる奴は頭が平和で結構じゃねえかよ、ああ?」

 

 ―――ちょちょちょ、飲みすぎですよ。

 

「エリス、エリス、エリス!!ああ俺だってエリス信者だよ!無論運だけのツマラナイ真面目委員長みてーな女神じゃなくて金の方のな!!奴らエリスと付くモンは何だって集めやがる!エリス教って要するに愚かで真面目な信者から金を巻き上げる偉い奴らって作りになってんだよ!ひゃはは!!!」

 

 ―――だれか水!水持ってきて!!!

 

「俺に股を開くエリス教徒だけが良いエリス教徒だ!それ以外は皆拝金主義の金の亡者さクヒャハハハハ!!!!」

 

 カットカットカットぉ!!!

 いくら何でもコレはあかん奴ゥ!!!?

 

 

 

 ―――エリス教についてなのですが

 

「あー、アイツらなー。あいつら『アクシズ教徒より真面目でござい』みてーな顔してっけど、中身は変わらねーからなー」

 

 ―――というと?

 

「むしろアクシズ教徒の方がガス抜き上手い分、エリス教徒が暴走しだすと止めらんねーからなー」

 

 ―――何か具体的なエピソードとかありますか?

 

「おー。エリス教徒はなー……」

 

 ―――エリス教徒は?

 

「エリス教徒はなー、どいつもこいつもベッドの上じゃマグロ同然でな」

 

 ―――は?

 

「一見すると堅物に見えるが、実際はちょろっと甘い言葉を掛けながら酒の一杯でも奢れば簡単に宿まで連れ込めるような奴らばっかりだ。一緒に酒場に行けた時点でもうナンパ成功したようなモンで、さりげなーく肩を抱きながら隣の席に座らせればほぼ100%ヤれる。だけどアイツら、判を押したようにベッドじゃマグロでガッチガチに固まったまま。ぜ~んぶイチから教え込んでようやく一発だ。そん時にはもう夜明け。しかも一晩寝ただけで彼女ヅラ嫁ヅラ当たり前。その後もず~っとストーキング、粘着、責任とれとれ大合唱。他の女とナンパじゃねえ会話してるだけで割り込んでくるし、ナンパしてようモンなら包丁持ってその女を刺し殺そうとしやがる」

 

 ―――ま、まあそういった女性が居るのは否定しませんが……

 

「一人だけじゃねえぞ?もう何十人エリス教の聖職者とヤったが、全員処女で全員最終的に包丁持ち出してきやがった」※王都で発生した刺傷事件の犯人の内、3分の1がエリス教徒の女性であるのは事実

 

 ―――女性はそういう物なのでは?

 

「いーや違うね。その点アクシズ教徒の奴らはめちゃくちゃ良かった。まずナンパの成功率がダンチで違う。アイツら一見すると誉め言葉や酒を奢ればでホイホイと付いてきそうなくらい軽いが、その実最後の一線を回避するのがめちゃくちゃ上手い。イケると確信して宿に連れ込もうとした瞬間にするりと抜けて家に帰っていくとか、ま~ザラにある。だけど宿に連れ込んで事を成し始めるとそりゃ凄いぞ。アイツらはめちゃくちゃ上手い。その辺の商売女よりもテクが凄い上、頼めばマジでなんでもしてくれる。前から後ろから、上に乗ったり乗られたり、抱きしめたままと思いきや激しいプレイにも対応してくるし、複数の女の子と同時でも構わないくらい度量が広い。しかも思いもよらないスキルを持ってる事が多くてな。一晩の付き合いで楽しいのは間違いなくアクシズ教徒だ。あと何より後腐れが全くないのが良い。少なくとも、アクシズ教徒に刺された事は無いな」※アクシズ教徒による軽犯罪は数あれど、刺傷事件で捕まったアクシズ教徒が居ないのも事実

 

 ―――それは……その……

 

「あ、でもそういえば昔に遊んだエリス教徒の盗賊の子は良かったな。スゲーよかった。アレはもう唯一と言ってもいい良いエリス教徒だった。でもやっぱ信仰してる女神が違うと、信者の質も違うのかねー。カスの総元締めである女神も見習えばいい」

 

 ―――それはエリス様を侮辱していると?

 

「あ?なんだお前?少なくともアクシズ教徒はキチンと司祭が教育してっからマトモだろ。エリス教徒は偉い奴が大抵ゴミカスド変態拝金主義者だから、上が腐ってりゃ下も腐り始めるってもんだろ」※個人の感想です

 

 ―――アクシズ教も司祭が腐ってるのは間違いないのでは?

 

「馬鹿だな、あれは腐ってるんじゃなくて性根からド変態なだけで何にも悪くねえよ。腐ってるどころか元気一杯だわ。つーかお前も拝金主義者の匂いがするな。くっせえくっせえくっせえわ」

 

 ―――お前に拝金主義者と言われたくはない。

 

「阿呆。俺は稼いだ金は溜め込まずにパァっと使う。経済を回してんだよ。金は天下のまわりものって言ってな、金を稼ぐのは悪い事じゃない。使う事も悪い事じゃない。溜め込んで固着させる事こそが悪なんだ。それこそ俺から言わせりゃ、冒険者を襲う悪魔よりも金をため込んで使わない貴族の方がよっぽどの悪だね。金が動きゃ雇用が生まれる。雇用が生まれりゃ給料が生まれる。給料が生まれりゃ金を使う。金は回って回って回しまくるのが正しいんだよ」

 

 ―――黙れこのサタニストが!

 ―――おいコイツを黙らせろ!つーかこんな奴取材陣に居たか!?

 ―――いや知らねえ!誰だお前は!?

 ―――かの教導も酒に飲まれて耄碌したようだな!此処がお前の墓場だ!死ね!!!

 

 パァンと空気が弾けるような音と共に倒れる男。

 我々取材陣に紛れ込んだ謎の人物が、手に黒いナイフを持ったまま床に倒れていた。

 

「言ったろー?ガキンチョが何人襲いかかってきた所で、怪我せず全員返り討ちだ」

 

 そう言って床に倒れる男を踏みつけ、鞭で首に縄をかけるのは我らが勇者であるシミズダイチ。

 その後すぐに表れた検察官が拘束されている男を捕まえ、事情聴取としてダイチさんも連れられて行った。

 

「あーあ、今日は可愛い子と一晩過ごすつもりが、まさか検察官と一晩過ごす事になるとはなー」

 

「わ、私じゃ不満だとでも言うつもりですか!?」

 

「男が複数なのはなー」

 

「セクハラでとっ捕まえますよ!?」

 

 そうして彼は拘置所へ移動していき、我々は彼への密着取材を終えた。

 

 冒険者シミズダイチ。彼は王都を離れて、駆け出しの町アクセルにてその二つ名に恥じぬ教導を多くの冒険者に教え導いていた。

 だが、そんな彼も休みの日には我々と同じように酒を飲み、遊び、笑って過ごしていた。

 今でも王都では、勇者として彼の復帰を願う声は大きい。だが彼は次代の勇者を育て、いずれは魔王を討伐する者を導いてくれるだろう。

 しかし、そんな勇者も我々と変わらない人間であると、今回の取材で気付かされた。

 我々は勇者という幻影ばかり追っていたが、その実勇者もまた等身大の人間であったのだ。

 

 そんな事を思い出させてくれた冒険者シミズダイチの今後の活躍を祈り、ここで筆を置かせていただく。

 

 

 次回!魔剣の勇者ミツルギキョウヤの一日を追ってみた!彼の持つ魔剣グラムに隠された秘密を暴く!乞うご期待!!

 

 

 

※ この記事はシミズダイチが彼のパーティメンバーと婚約を発表する前に取材し、書かれたものです。

  ご成婚おめでとうございます。(取材陣・編集者一同より)

 

 

 

 

 ◆ ◆ ◆

 

 

 

 

「……なーんだコレは」

 

 サトウカズマは自宅のリビングで一冊の雑誌を読んでいた。

 

「カズマカズマ、珍しく本を読んでると思えば、急にどうしたのですか?」

 

 そう言ってアークウィザードであるめぐみんが四つん這いでサトウカズマに近寄る。

 その無防備さに思わず赤面しながら、サトウカズマは手に持った雑誌をめぐみんへ渡した。

 

「ほらこれ、ダイチさんが前言ってた取材がどうのって奴が載ってる本だよ」

 

「ほう、『月刊勇者』ですか。王都でも流行りの本だとか聞きましたね。ふっ、私もいずれはこの表紙を飾る勇者に相応しい姿を見せてあげましょう」

 

「へーへー、期待して待ってるよ。んで、コレがその記事だ」

 

「どれどれ。…………ふむ。ダイチさん、休みの日には何をしてるのかと思えば……あんまり変わらないんですね」

 

「こういうのって普通もうちょっと美化されたりするんじゃねえの?」

 

「何を言うんですかカズマ。ダイチさんは美化しなくても、ありのままで十分―――なッ!!?何ですかコレは!!!!?」

 

 突如立ち上がって雑誌をテーブルに叩きつけるめぐみん。その背中には炎が燃え上がっているのを幻視した。

 

「ど、どうしたんだよめぐみん。そんな変な事書いてあったか?」

 

「カズマ!よく見てください!此処!コレ!ゆんゆんの奴、私を差し置いて雑誌記事に載ってますよ!!!?」

 

「記事に載ってるって、ただのインタビューだろ……しかも本人についてじゃなくてダイチさんのおまけみたいなもんだし」

 

「おまけでもなんでもこれでは王都にゆんゆんの名が知れ渡ってしまうじゃないですか!?くっ、こんな事なら私も取材の日にダイチさんの所で待機してれば……カズマ!今からでも王都に行って、この雑誌を発行している所で我が爆裂魔法の輝きを見せてやりましょう!」

 

「行かねーよ!真面目に働いてる人の邪魔すんな馬鹿!」

 

 カズマとめぐみんがじゃれ合っていると、クルセイダーであるダクネスがリビングに入ってくる。

 

「何の騒ぎだ?」

 

「ダクネス!貴方も一緒に王都に行って盛大な爆裂魔法の花を咲かせましょう!!」

 

「何の話だ!!?王都の中で爆裂魔法をぶっ放すんじゃない!!!カズマ!どういう事だ!!?」

 

「オレに聞くんじゃねーよ!コレ見ろコレ!」

 

 そう言ってサトウカズマは雑誌をダクネスに投げ渡す。

 飛んできた雑誌を受け取ったダクネスは表紙をまじまじと見つめる。

 

「【月刊勇者】か。表紙にはダイチが鞭を振るっている瞬間の写真……ふっ、私もあの鞭に打たれたらタダでは済まないだろう……ああっ!いかんぞダイチ!お前にはアクアが居ると言うのに、私の事を肉奴隷にだと!?……んくッ!」

 

「表紙じゃなくて中身を見ろこの妄想逞しいドМ馬鹿!!」

 

 

 

 ◆

 

 

 

「おーい、前にご主人が受けてた取材のアレ、載ってる雑誌買ってきたぞー」

 

「チッチッ……んおー、パパの取材のアレ、やっと来たか」

 

「オデ達も載ってる?」

 

「来る途中ちょっと見たけど、あんま載ってなかったわなー」

 

「ま、だろーな。チッチッ……」

 

「記事だとライムめっちゃぶりっ子してて受けるわー」

 

「あーうるせえうるせえ。そーいう生態なんだからしゃーねーだろーが。チッチッ……」

 

「……オデ、めっちゃカタコトになってる。なんだよコレ……オデ、言葉、分かる、少し」

 

「ぶふっ。今時そんなコッテコテな奴居ねーわ!」

 

「っていうかリーナに至っては喋ってない。ただのゴブリンと思われてる」

 

「っは!そりゃアタイがそう思わせてるだけだからなー!」

 

 アクセルの町の一角にある醸造施設の中。そこで三体のモンスターが一つの雑誌を囲んでワイワイと見ていた。

 

 アクセルの町は今日も平和であった。

 

 

 

 

 

 

「『ヒール』!『ヒール』!」

 

「アクア……もう止め……」

 

「嫌!もう浮気なんて出来ないように、空っぽになるまで徹底的に搾ってやるんだから!!!」

 

「マジで死ぬぅ……」

 

「死んでも絶対に逃がさないんだからねっ♥」

 

 ……アクセルの町は今日も平和であった。

 





感想いっぱい嬉しいね。感謝の更新。
じゃあ更新しないって事は感謝してないって事ですか!?男の人ってみんなそうですよね!



・ライム(安楽少女)
LV:?
職業:【防衛者(ガーディアン)

 シミズダイチが金になりそうと思ってテイムしたモンスターの一体。非処女。
 とある森の奥深くに存在する安楽王女から産まれた。父親は―――(この先は滲んで読めない)
 ダイチがテイムした直後から好感度マックス。ダイチの事をパパと呼んでいる。
 ダイチが運営している醸造所の守りを担っている。攻撃性能は皆無に等しいが、防御力と耐久力は2ダクネスくらいある。
 たまに来る暴漢や酒金目当ての強盗、ダイチが何処かから()()()()()『栄養満点の餌』をたっぷり吸収してとても成長している。ただし普段は平均的な安楽少女の姿に擬態している。
 酒カス。


・リーナ(ゴブリンクイーン)
LV:?
職業:【魔術王(マスターウィザード)

 シミズダイチがたまたま拾った雌ゴブリンが進化し、テイマースキル習得と同時にテイムされたモンスターの一体。妊娠中。
 外見は一般的なゴブリンに擬態しているが、擬態を解けばサキュバスも腰を抜かす程の絶世の美女である。
 ダイチが運営している醸造所を実質的に仕切っている。その魔法力を十全に使い、酒をバンバン造っている。
 たまに来る暴漢や酒金目当ての強盗、ダイチが何処かから()()()()()『栄養満点の餌』をたっぷり食べてとても成長している。お腹の子供の名前を考えている。
 酒カス。


・オデ(種馬オーク)
LV:5
職業:【モンク】(武道家+プリースト)

 搾られ続けて死にかけてた所を偶々通りがかったシミズダイチに助けられ、そのままテイムされた。雌オークが死ぬほど嫌い。
 外見こそ強そうではあるが、実際には同じ場所で働く他のモンスターよりも遥かに弱く、目隠しして両手足を縛られたまま地面に埋められた状態といったハンデを貰っても勝てない程。
 それでも一応一般人相手なら勝てるが、そもそも建物の外に出る事が稀。万が一にも雌オークに襲われないように、常に引きこもっている。
 たまに来る暴漢や酒金目当ての強盗、ダイチが何処かから()()()()()()『栄養満点の餌』をたっぷり食べてとても成長している……という事は一切なく、絶食の修行を行って精神を鍛えている。
 オーク顔ながらイケメン(ただし雌オークは雄であれば何でも良いため、イケメンである意味があまり無い)。
 月に一度程度、サキュバスの夢サービスを受けている(給料代わり)。本人はそれで十二分のようだ。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。