知ってるやる夫スレの世界に転生したので、自分の幸せのためにやり込んで生き抜く。 作:原作のことが大大大大大好きなファン
視界を覆っていた熱い霞が、ゆっくりと引いていく。 荒い呼吸の音だけが、静まり返った寝室に虚しく響いていた。
「……あ、……ああ……」
自分の指先が、シーツにくるまった息子の白い肌に触れているのを見て、私は全身の血が凍りつくような戦慄を覚えた。 この世界において、男子は守られるべき「供給源」だ。彼らを傷つけることは、社会的な自殺に等しい。連日のニュースでは、男子生徒を襲った女子生徒が当局に拘束され、二度と日の目を見ることのない闇へと葬られる様子が報じられている。
私は息子を守るべき「盾」であり、この国の男性保護政策の恩恵を受けて高い地位を築いてきたはずだった。それなのに、私の中の「女」という本能が、彼という至高の資源を前にして理性を焼き切ってしまった。
満足感のすぐ背後に、底知れない恐怖が口を開けて待っている。 通報されれば、私の社会的地位は一瞬で灰になり、一生を塀の中で過ごすことになるだろう。
「……っ、ごめん、なさい……私は、なんてことを……」
私は呆然と立ち尽くし、罪の重さに震えることしかできなかった。 だが、その時。
「……ねえ、お母さん」
掠れた、けれど驚くほど冷ややかな声が私を呼んだ。 怯え、泣きじゃくると思っていた息子が、ゆっくりと身を起こす。その瞳を見た瞬間、私は息を呑んだ。 そこにあるのは、蹂躙された被害者の目ではない。すべてを見透かし、冷徹に計算する――まるで深淵のような「昏い光」を宿した瞳だった。
「許してあげる。だから、これからは誰よりも僕のためだけに生きてね」
その言葉は、慈悲などではなかった。甘美な香りをまとった、致死量の毒だ。 彼が微笑んだ瞬間、私は悟った。この子は壊れてしまったのではない。それよりもずっと恐ろしい「何か」に、彼は生まれ変わってしまったのだと。
「誓ってごらん。これからは僕のためだけに生きるって」
彼の瞳に映る自分が、情けなく、しかしどこか悦びに震えているのが分かった。 この世界を覆う「女性優位」という建前も、私が築いてきた地位も、この圧倒的な「上位個体」としての彼の前では何の価値もない。 私は、彼を許しを乞うべき対象としてではなく、崇めるべき「主」として見つめていた。
「誓います……私は、貴方のためだけに……」
唇から漏れた言葉は、私の人生で最も重く、そして最も自分を解放してくれる呪文だった。 それに対し、彼は壊れたように、けれど美しく笑った。
「さあ、お母さん。まずは僕に、これからの『慰謝料』として、僕専用の銀行口座と……最新の配信機材を買ってきてよ。身元
の確かな元軍人の安心安全な護衛も欲しいな」
その要求は具体的で、強欲で、あまりにも合理的だった。 配信機材――彼が何を考えて、何をつもりなのか理解できなくとも、私はもはや拒むことなどできない。
「僕に無償の愛を与えてくれるよね」
頬に添えられた彼の細い指先。その熱に触れた瞬間、私の中で「母親」という皮が剥がれ落ちた。 鏡に映る私は、息子を蹂躙した罪人ではなく、彼という絶対的な「男」に首輪をかけられた一人の「女」の顔をしていた。
この歪んだ世界で、私は彼を誰よりも高く、誰よりも奉仕しよう。無償の愛を捧げる。それが、私の犯した罪への償いであり、唯一の生きる意味になるのだから。