知ってるやる夫スレの世界に転生したので、自分の幸せのためにやり込んで生き抜く。 作:原作のことが大大大大大好きなファン
高級マンションの最上階、最新のセキュリティと元軍人の護衛バラライカに守られた「聖域」から、僕は全世界に向けて配信を行っていた。
画面上のコメント欄には、各国の政財界を牛耳る『支配』階級の女性たち「上位リスナー」から、数億、数十億という投げ銭と共に「結婚してほしい」という切実な、あるいは狂気的な求婚が殺到している。
「……ふ~ん。結婚?君たち、自分が何を言っているか分かっているのかい?」
僕は超高感度マイクに向かって、わざとらしくため息をついて見せた。この世界において、男性は絶対的な「供給源」であり、その独占は戦争の火種にさえなる。
「いいだろう。もし、すべての国の支配者が僕に『無償の愛を誓う儀式』を捧げ、世界連邦を成立させるというなら、結婚を考えてあげてもいい。……もし本当にそうなったら、僕からの結婚祝いとして、すべてのリスナーに精子を提供してあげるよ。さらに、特別に、リスナー全員を奴隷から奴隷妻に昇格してあげるね」
心底ありえない戯言に、久しぶりに心からの笑顔がこぼれてしまう。さすがに、いくら何でも、それはありえないだろうと。
どうせ不可能な、冗談のつもりだった。国同士の利権や歴史、この世界の根深い「男性資源争奪戦」が、そんな簡単に解決するはずがないと思っていたのだ。
だが、僕は忘れていた。 この世界は、僕が思う以上に「供給源」に飢え、狂っていたのだ。
「――緊急入電です、ご主人様」
画面外で控えていたバラライカが、見たこともないほど動揺した顔でタブレットを差し出してきた。 配信の接続数は、いまや数十億を超えている。画面の向こうでは、主要国の国家元首たちが次々とカメラの前に跪き、僕の構築した「無償の愛を誓う儀式」を全世界に向けて同時中継し始めていた。
「『我々は主のために、すべての争いを止める』……だそうです。たった今、世界連邦の設立が電撃的に合意されました」
「……は?」
翌日。 僕は、昨日までの僕が想像もしていなかった規模の祭典の主役となっていた。
新しく成立した「世界連邦」の初代総統として即位した僕の隣には、花嫁衣装に身を包んだ『支配』階級の代表たちが並んでいる。 式場である巨大スタジアムの外には、僕の「結婚祝い」を求めて、数億人のリスナーが狂喜乱舞しながら列をなしていた。
「さあ、約束の時間です、ご主人様。全世界への『供給』の準備は整いました」
エリート女性リスナーだった妻の一人が、恍惚とした表情で巨大な医療用ポッドを運び込ませる。 「すべてのリスナーへの精子提供」。 冗談で口にした公約は、いまや人類史上最大の国家プロジェクトとして実行されようとしていた。
(……いや、ちょっと待って。全リスナーって、ここだけでも数億人いるよね? 僕の体、物理的に保たないんじゃないかな……?)
僕は、鏡に映る自分の可憐な姿を見た。 前世の知識を武器に、他人の幸せを奪ってでも「規格外」の幸福を掴もうと生きてきたた。その結果、僕は世界を手に入れ、唯一無二の王となった。
だが、目の前には、僕という「供給源」を最後の一滴まで搾り取ろうと、獲物を狙う猛獣のような瞳をした数億人の女性たちが待ち構えている。
(あ、あれ……? 僕の計画では、もっとこう、優雅にふんぞり返って、たまに女の子を弄ぶくらいの生活だったはずなんだけど……)
「供給、開始!」
医師や看護師、そして妻たちの熱狂的な視線によってポッドへと押し込まれながら、僕は遠のく意識の中で、自分があまりにも完璧にこの世界を「やり込み」すぎてしまったことを悟った。
「…………これ、ハッピーエンド……なんだよね?」
世界は平和になり、人類は救世主の遺伝子を等しく手に入れ、僕は永遠の王となった。信じられるかな?これが、この世界なんだよね。最高だよ。本当に。
――『知ってるやる夫スレの世界に転生したので、自分の幸せのためにやり込んで生き抜く。』 完